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第2章
陽向と自転車①
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陽向と許嫁だということが判明し、さらに彼が私と幼なじみだと公言してから数日。
私たちの関係があれから劇的に変化することはなく、私はいつも通りの日々を過ごしていた。
「えー。今日は来月の球技大会に向けて、色々と決めたいと思う」
今日の5限目のホームルームでは、5月上旬に行われる球技大会の種目決めをするらしい。
ああ、ついにこの日が来てしまった。
種目は、バスケットボールと卓球とサッカーらしいのだけど。私は陽向と違って運動が不得意で、中でもバスケが大の苦手なんだ。シュートなんて、今まで一度も決めたことがない。
だから、どうかバスケ以外になりますように。そう心のなかで、何度も神様にお願いしたのだけど……。
「うう……よりによって、一番苦手なバスケになるなんて」
「星奈、ドンマイ!」
私は卓球に立候補したものの、希望者が多くジャンケンで負けてしまった。
「でも、良かったじゃない。愛しの一之瀬くんと同じバスケになれて」
天音ちゃんはそう言うけれど……。
「それとこれとは別だよ」
バスケ部エースの陽向と水上くんは当然バスケに決まったらしい。エースの二人がいればウチのクラスの男子チームは優勝間違いなしだという声も聞こえてくる。
「おっ。星奈ちゃんもバスケなんだ? よろしくーっ!」
黒板のバスケの欄に書かれている名前を見た水上くんが、人懐っこい笑顔でパチンと私にハイタッチしてきた。
この間学食で握手をして以来、水上くんは私のことを下の名前で呼んでいる。
「バスケのみんな、頑張ろう」
水上くんは私以外のバスケメンバーになった子たちにも、ひとりひとりハイタッチしてまわっている。
ほんと誰に対しても気さくで、フレンドリーだなあ。
せっかく水上くんに、ハイタッチしてもらったんだもん。男子と女子でチームは別々だけど、私も頑張らなきゃ。
◇
数日後。今日の体育の授業は、球技大会に向けて競技ごとに分かれて練習をするらしい。
チームのみんなで準備運動をしたあと、体育館で男子と女子でコートを半分ずつに分けてバスケットボールの練習開始。
しばらくドリブルの練習をしたあと、次はシュートの練習。ひとり3回続けてシュートを決めたら、次の人に交代するのだけど。
──バンッ!
私は何度か挑戦するも、バックボードにボールが当たってばかりで、いくらやっても悲しいくらいにシュートが決まらない。
だけど、ここで諦めたらダメだと思い、私は外したボールを拾いにいっては繰り返し挑戦する。
やっぱり、できることなら陽向が好きなバスケを私も好きになりたいし。
「えいっ」
バンッ。
ああ、また外しちゃった。
コロコロと転がっていくボールを、私は追いかける。
「おいおい。澄野のヤツ、めっちゃ下手くそじゃん」
そのとき、どこからかそんな声が聞こえてきてそちらに目をやると。
「あんな調子で、うちのクラス大丈夫かよ~?」
「ほんとにー」
体育館の隅であぐらをかいているクラスの派手な男子二人が、私を見てバカにしたように笑っていた。
あの男子たち、自分たちよりも勉強や運動が出来ない人のことをよく笑ったりするから苦手なんだよね。
「あれじゃあ、女子チームは球技大会1回戦で敗退じゃねえの。ギャハハ」
く、悔しい……。私は、手のひらをぎゅっと握りしめる。
いくら私が下手だからって、何もあそこまで言うことなくない?
私はうつむき、その場に立ち止まってしまった。
悔しいのに、すぐに言い返せない自分が情けなくて、目の奥が熱くなりかけたとき──。
「……君たち、星奈ちゃんのこと笑ってるけど、何がおかしいの?」
えっ、この声は……。
「オレは、バスケが苦手でも諦めずに一生懸命頑張ってる星奈ちゃん、すごいって思うけどな」
顔を上げると、いつの間にか私の前に水上くんが立っていた。
「さっきからずーっとそこでサボってる、君たちよりもずっとえらいよ」
「う……」
水上くんに言われて、何も言い返せない男子たち。
「誰にでも得意不得意はあるんだから。人のこと、そんなふうに言うのは良くないよ」
「そ、そうだな。悪かったよ、澄野さん」
「ごめん!」
二人はコロッと態度をかえ、私に謝ってくれた。
「おい、お前ら。いつまでそこで休んでんだよ。俺と同じバスケチームになったからには、びしばし行くぞ」
陽向に睨まれ、男子たちはおとなしく駆けていく。
「はは。オレたちのチーム、ヒナくんがリーダーになったから。これから厳しく特訓させられそうだなあ……はい、星奈ちゃん」
ボールを拾ってくれた水上くんが、私に渡してくれる。
「あっ、ありがとう。助けてくれて」
「ううん? オレは何も。練習、お互い頑張ろうね」
にこっと笑うと、水上くんは陽向のもとへと走って行った。
「星奈~。ごめん、あたし助けられなくて」
しばらく水上くんのほうを見ていたら、天音ちゃんが私に抱きついてきた。
「ううん。心配してくれてありがとう」
「でも、こうちゃんに助けてもらって良かったね。あたし、こうちゃんのこと見直した! あんなビシッと言うなんて」
ほんと。ふわふわ癒し系の水上くんが、男子たちにあんなふうに言ってくれるなんて。
「キャーッ!」
男子側のコートで陽向と水上くんがそれぞれシュートを決めたらしく、女子たちから歓声があがる。
陽向も水上くんも、綺麗なフォームで次々とシュートを決めていてかっこいい。
私もあの二人のように少しでも上手くできるように、頑張りたいな。
私たちの関係があれから劇的に変化することはなく、私はいつも通りの日々を過ごしていた。
「えー。今日は来月の球技大会に向けて、色々と決めたいと思う」
今日の5限目のホームルームでは、5月上旬に行われる球技大会の種目決めをするらしい。
ああ、ついにこの日が来てしまった。
種目は、バスケットボールと卓球とサッカーらしいのだけど。私は陽向と違って運動が不得意で、中でもバスケが大の苦手なんだ。シュートなんて、今まで一度も決めたことがない。
だから、どうかバスケ以外になりますように。そう心のなかで、何度も神様にお願いしたのだけど……。
「うう……よりによって、一番苦手なバスケになるなんて」
「星奈、ドンマイ!」
私は卓球に立候補したものの、希望者が多くジャンケンで負けてしまった。
「でも、良かったじゃない。愛しの一之瀬くんと同じバスケになれて」
天音ちゃんはそう言うけれど……。
「それとこれとは別だよ」
バスケ部エースの陽向と水上くんは当然バスケに決まったらしい。エースの二人がいればウチのクラスの男子チームは優勝間違いなしだという声も聞こえてくる。
「おっ。星奈ちゃんもバスケなんだ? よろしくーっ!」
黒板のバスケの欄に書かれている名前を見た水上くんが、人懐っこい笑顔でパチンと私にハイタッチしてきた。
この間学食で握手をして以来、水上くんは私のことを下の名前で呼んでいる。
「バスケのみんな、頑張ろう」
水上くんは私以外のバスケメンバーになった子たちにも、ひとりひとりハイタッチしてまわっている。
ほんと誰に対しても気さくで、フレンドリーだなあ。
せっかく水上くんに、ハイタッチしてもらったんだもん。男子と女子でチームは別々だけど、私も頑張らなきゃ。
◇
数日後。今日の体育の授業は、球技大会に向けて競技ごとに分かれて練習をするらしい。
チームのみんなで準備運動をしたあと、体育館で男子と女子でコートを半分ずつに分けてバスケットボールの練習開始。
しばらくドリブルの練習をしたあと、次はシュートの練習。ひとり3回続けてシュートを決めたら、次の人に交代するのだけど。
──バンッ!
私は何度か挑戦するも、バックボードにボールが当たってばかりで、いくらやっても悲しいくらいにシュートが決まらない。
だけど、ここで諦めたらダメだと思い、私は外したボールを拾いにいっては繰り返し挑戦する。
やっぱり、できることなら陽向が好きなバスケを私も好きになりたいし。
「えいっ」
バンッ。
ああ、また外しちゃった。
コロコロと転がっていくボールを、私は追いかける。
「おいおい。澄野のヤツ、めっちゃ下手くそじゃん」
そのとき、どこからかそんな声が聞こえてきてそちらに目をやると。
「あんな調子で、うちのクラス大丈夫かよ~?」
「ほんとにー」
体育館の隅であぐらをかいているクラスの派手な男子二人が、私を見てバカにしたように笑っていた。
あの男子たち、自分たちよりも勉強や運動が出来ない人のことをよく笑ったりするから苦手なんだよね。
「あれじゃあ、女子チームは球技大会1回戦で敗退じゃねえの。ギャハハ」
く、悔しい……。私は、手のひらをぎゅっと握りしめる。
いくら私が下手だからって、何もあそこまで言うことなくない?
私はうつむき、その場に立ち止まってしまった。
悔しいのに、すぐに言い返せない自分が情けなくて、目の奥が熱くなりかけたとき──。
「……君たち、星奈ちゃんのこと笑ってるけど、何がおかしいの?」
えっ、この声は……。
「オレは、バスケが苦手でも諦めずに一生懸命頑張ってる星奈ちゃん、すごいって思うけどな」
顔を上げると、いつの間にか私の前に水上くんが立っていた。
「さっきからずーっとそこでサボってる、君たちよりもずっとえらいよ」
「う……」
水上くんに言われて、何も言い返せない男子たち。
「誰にでも得意不得意はあるんだから。人のこと、そんなふうに言うのは良くないよ」
「そ、そうだな。悪かったよ、澄野さん」
「ごめん!」
二人はコロッと態度をかえ、私に謝ってくれた。
「おい、お前ら。いつまでそこで休んでんだよ。俺と同じバスケチームになったからには、びしばし行くぞ」
陽向に睨まれ、男子たちはおとなしく駆けていく。
「はは。オレたちのチーム、ヒナくんがリーダーになったから。これから厳しく特訓させられそうだなあ……はい、星奈ちゃん」
ボールを拾ってくれた水上くんが、私に渡してくれる。
「あっ、ありがとう。助けてくれて」
「ううん? オレは何も。練習、お互い頑張ろうね」
にこっと笑うと、水上くんは陽向のもとへと走って行った。
「星奈~。ごめん、あたし助けられなくて」
しばらく水上くんのほうを見ていたら、天音ちゃんが私に抱きついてきた。
「ううん。心配してくれてありがとう」
「でも、こうちゃんに助けてもらって良かったね。あたし、こうちゃんのこと見直した! あんなビシッと言うなんて」
ほんと。ふわふわ癒し系の水上くんが、男子たちにあんなふうに言ってくれるなんて。
「キャーッ!」
男子側のコートで陽向と水上くんがそれぞれシュートを決めたらしく、女子たちから歓声があがる。
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私もあの二人のように少しでも上手くできるように、頑張りたいな。
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