隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい

藤永ゆいか

文字の大きさ
9 / 27
第2章

彗くんと急接近!?②

しおりを挟む
「いいよ、菜乃花。俺にも不注意があったのは、間違いないし」

彗くんがすっと私の前に立ち、片手を上げて私を制止した。

「……ごめん。悪かったよ」
「ふんっ。次からは気をつけてよね」

彗くんが謝ると、相手の女の子はようやく満足そうに顔を上げて、歩き去っていった。

「彗くん……言い返さなくて良かったの?」
「変に言い争ったりして、騒ぎになるのは嫌だったから」

言われてみれば、そうだよね。彗くんは、わざわざおばあさまの旧姓を使って、変装までして学校生活を送っているのだから。

目立つことは、なるべく避けたほうが良いよね。

「私ったら何も考えずに……ごめんね? 私は彗くんのボディーガードなのに、あの子との衝突を防げなかった」

幸い、彗くんに怪我はなかったけど。もし負傷してたりしたら、私はボディーガード失格だよ。

「ううん。俺は、菜乃花があの子に言い返してくれて嬉しかったよ。ありがとう」

微笑まれ、ドキンと鼓動が大きく高鳴った。
こんなときでも、彗くんは優しいな。

**

「今日は、来月の体育祭の出場種目について決めていくぞー」

音楽の授業のあとのホームルームでは、5月に行われる体育祭の種目決めが行われた。

体育祭……もうそんな時期なんだ。前に通ってた中学校では、体育祭は10月にあったから。

個人種目は、50メートル走と借り物競争、障害物競争のなかから選べるらしい。

この中なら、50メートル走かな。普通に走るだけなら、私にもできそうだし。

そう思い迷わず手を挙げたけど、希望者が多くジャンケンをすることに。

うう、負けた……ついてない。

ジャンケンにあっさり負けてしまった私は、その代わりに障害物競争に出ることが決まった。

「へー。菜乃花って、ケンカは強いけどジャンケンは弱いんだ?」

教壇から自分の席へと戻るとき、彗くんの席のそばを通りかかった私に、彼が私にだけ聞こえる声で言った。

「ひ、人には、得意不得意があるから」
「確かにそうだね」
「そういう彗くんは? 何の種目に出るの?」
「俺? 俺は、借り物競争」

借り物競争かあ。引き当てたお題によっては、探すのが大変そう。

「まあ菜乃花も、障害物に足を引っかけたりして転ばないようにね?」
「こ、転ばないから!」

それだけ言うと、私は急いで自分の席へと戻った。


数日後。

この日の5限目の体育では、A組とB組の合同で、来月に行われる体育祭の練習が行われている。

私が出場する障害物競争も、今日は本番のように実際に障害物を配置して、練習することになった。

平均台の上を歩いて網をくぐって、ハードルを飛んで……と、なかなかハードだけど頑張ろう。

「きゃ~! 速水くんー!」
「やばい、蓮くん超かっこいい」

いきなり女子たちの黄色い声がしてそちらに目をやると、彗くんのいとこの速水くんがハードルを飛んでいるのが見えた。

速水くんも私と同じ障害物競争なんだ。

長い足で、悠々とハードルを飛び越える速水くん。

男女別で練習しているけど、女子たちはみんな、練習もそこそこに速水くんを見つめている。

速水くんって、バスケ部のエースらしいし。そのうえ御曹司でイケメンだから、やっぱりモテるんだなあ。

自分の番がやって来て、私はスタートラインに立った。

「それでは、位置についてー」

ピーッ!

笛の音を合図に、5人が一斉にスタートする。

「おっとっと……わっ!」

平均台の上をバランスを取りながら歩く途中で下に落ちそうになるも、私は何とか歩ききった。

そして大きな網をくぐり抜けて、次はハードル。

──『菜乃花も、障害物に足を引っかけたりして転ばないようにね?』

先日の彗くんの言葉がふと頭の中を過ぎり、私はゴクリと唾を飲んだ。

もし、ハードルに足が引っかかったらどうしよう。

そんなことを思ったけど、それもほんの一瞬だけ。私はハードルへと向かって、走り出す。

ひとつ目は、何とかクリア。そして、ふたつ目に挑んだとき。

「あっ」

ハードルを飛び越えようとする際に、足が上のバーに引っかかってしまった。

ハードルを倒し、私は地面に派手に転ぶ。

「うう、痛い……っ」

膝を擦りむいたのか、ズキズキと痛む。

『足を引っかけたりして転ばないようにね?』って、彗くんに言われていたのに。その通りになってしまった。

でも今は、痛さよりも恥ずかしさのほうが大きい。

すぐに立ち上がろうとするけど、バランスを崩して上手く立てずにふらついてしまう。

私と一緒にスタートした他のみんなは全ての障害物をクリアし、ゴールへと向かって走っている。一人だけぽつんと取り残されて、なんてみじめなんだろう。

私は仮にも、彗くんの彼女なのに……そう思ったとき。

「大丈夫か!?」

彗くんが、私の元に走ってきた。

「菜乃花、ケガしてるじゃない。保健室行こう」

そう言うと、彗くんは膝裏に手を入れて私を軽々と持ち上げた。

「え!?」

うそっ。これってもしかして、お姫様抱っこ!?

「きゃーーっ」

私がお姫様抱っこされていることに気づいたのと同時に、グラウンドには女子たちの黄色い悲鳴のような声が響き渡った。

「す、彗くん!」

こんなことをしてくれたら、一気にみんなの注目の的だよ! 彗くんも自分が三池財閥の御曹司だってことを隠したいのなら、あまり目立つことはしないほうが良いんじゃないの!?

私の心の叫びなど聞こえていないかのように、彗くんは涼しい顔のまま私を抱いて歩きだす。その顔には、一点の迷いもない。


「ねぇ、彗くん。下ろして!?」
「ダメ」

私のお願いを、彗くんは全く聞き入れてくれない。

昇降口から、校舎内に入っていく彗くん。授業中の廊下は、しんと静まり返っている。

「ねぇ、彗くん。私は彗くんを守る立場なのに、こんなことをしてたら……」
「菜乃花はボディーガードである前に、俺の彼女なんだから。自分の彼女がケガしてたら、助けるのは当たり前だろ?」

彗くんの優しい言葉に、私の胸はドクン、と大きく跳ねた。

「で、でも……」
「それ以上余計なこと言ったら、口塞ぐよ?」

彗くんの声が、一段と低くなる。

「へ? く、口を塞ぐって??」

意味が分からず聞き返すと、彗くんはさらに顔を近づけ、私の唇すれすれのところで囁いた。

「……俺が菜乃花にキスするってことだよ」
「ええっ! キ、キス!?」

その言葉の意味を理解した途端、私の顔はカッと熱くなり、瞬く間に全身に火が通ったように感じた。

そして私はとっさに、両手で自分の口元を覆った。心臓がうるさいくらいに鳴り響いている。

そんな私を見て、彗くんは口の端を上げてフッと微笑む。

「分かったなら口じゃなく、俺の首に手をかけてくれる? そのほうが安定するから」

見上げた彗くんの表情は凛としていて、私はドキドキしながら、その首元に両腕を巻きつけた。

それから彗くんに抱えられたまま、保健室に到着。

「それじゃあ先生、菜乃花のことよろしくお願いします」
「はーい。任せてちょうだい」

彗くんは養護教諭の先生に私を託すと、グラウンドへと戻っていった。

「ねぇ。今の男の子って、彼氏?」
「はっ、はい……」

ニヤニヤ顔の先生に、私はコクコクと頷く。

今まで、ドラマや漫画でしか見たことのなかったお姫様抱っこをされたからだろうか。

彗くんがいなくなったあと、先生に膝を手当してもらっている間も、胸のドキドキはしばらくおさまらなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※noichigoさんに転載。 ※ブザービートからはじまる恋

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

オバケの謎解きスタンプラリー

綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます! ――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。 小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。 結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。 だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。 知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。 苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。 いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。 「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」 結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか? そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか? 思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。

処理中です...