プルートーの胤裔

ゆさひろみ

文字の大きさ
123 / 131

キメラの宝木

しおりを挟む
 羽深と貝沼、二人のパトロール隊は、スノーモービルのフロント部分、シュラウドと呼ばれる外装パーツをはぐって、中に懐中電灯の光を当てた。忘れた頃になると、エンジンをかけて声高に話す。
「プルトニウムを、水に?」と言ってわたくし、晦冥会の祠の方角を仰ぎ見て、
「あの扉の向こう、その中には、廃炉と水があるだけなのか?」
 測定器を取り出して、オレンジ色のバックライトに顔を照らす敷島。
「そうだ、そうなのだが、しかし、プルトニウムが完全に無毒化して、ただの水に変わったとは言え、祠の内部にこもった放射線は、相当なものだ」
 上げたり下げたり、色々に測定器を動かして、
「ここに立っているのでさえ、日本政府が除染実施の目安としている、毎時〇・二三マイクロシーベルトぎりぎりのレベルだ」
「それじゃあ、やっぱりあの後」
 巽たちは………。
「無論、彼らは生きていないだろう。祠の扉が開いた途端、放射線測定器の数値が跳ね上がった。あの奥に踏み入れば、ネズミだろうが何だろうが、生物であれば生きてはいられない。巽と上月加世、二人は間違いなく高線量の中で斃れているだろう。
 プルトニウムの無毒化、不幸中の幸い、とはいえ、こうなってしまっては、内閣府は、電磁分離工場と変わらない晦冥会の祠の内部、その除染作業を最優先させ、周辺地域の土の除去や草木の伐採などの除染作業に乗り出し、帰還困難区域に指定はしないものの、個人線量計で立ち入る住民などが、みずから被ばく量を管理することや、区域内の詳細な放射線量マップをつくり、情報提供することで、放射線量が自然に減衰して行く状況を見守る、という方針を打ち立てるだろう」
 ペンションの二階の窓がパッと明るくなった。加藤刑事の部屋だろうか。わたくしは敷島に顔を戻して、
「いずれにせよ、あすには一斉に、各テレビ局が本件を報道するわけだな。避難指示は出るのか?」
 ポケットに測定器を突っ込んで、敷島は腕を組む。
「うーん、そこはなんとも言えない。報道局がこの事件をどう取り扱うか、その報道の方針によっては、世論の反応も変わるし、海外からの非難の目もある、チェルノブイリの事故を例にとって、放射能汚染と健康被害を訴える医師が登場すれば、事態の重さも変化する。しかしまあ、行政機関の放射線量モニタリングでは、今のところ異常は検知されていない。あすから開始されるであろう、専門家チームによる祠内の内部の調査結果によっても、国の判断は大きく左右される」
 避難指示はなさそう、こう解釈してわたくしは、大いに安心し、煙草に火をつけた。
「それにしても、上月加世だ。プルトニウムの半減期は数万年だっけ? そんな厄介な代物、彼女は一体どうやって水に変えてしまったんだ? 超能力と一言で言ったって、そんな簡単な話ではないだろう」
 敷島は斎の顔を見て、
「簡単な話ではない。そうだ。これはもう、そんじゃそこらの悪魔祓いとはわけが違う。なあ斎、当事者である君が、一番それを分かっているはずだ。
 そもそも、紀瑛総連と月宗冥正会という、二つの宗教団体が、これと言った理由もなく、突然合併して、晦冥会という膨大な組織が誕生した。その本当の目的というのが、実は、紀瑛総連の負の遺産の清算が前提だったと考えられている。恐らくは、紀瑛総連の側から上月加世の元に、極秘の依頼が舞い込んでいたに違いない。〝あなたのそのちからによって、プルトニウムを無毒化できないか〟。その依頼に注意深く耳を傾け、彼女は、縦に首を振った。そしてその偉業を達成するために、前人未到の超難問に没頭するために、その条件として彼女は、月宗冥正会の信者たちの受け入れを申し入れた。これから大がかりな儀式に没入すれば、月宗冥正会の開祖として、今まで通り彼らを導く事ができない、彼女はそう考えたわけで、その証拠に、晦冥会が誕生してからと言うもの、統主という立場にありながら、上月加世は表舞台から姿を消した」
〝一方の上月加世は、自らが統主であるにもかかわらず、講演や式典の席に顔を出さないばかりか、晦冥会とは全く無縁の地へと足を運んで、自由な行動を取り続けたと聞きます〟
 統主としての上月加世、彼女の事を美咲はこう語った。なるほど、統主としての責任を果たさず、信者たちの前から姿を消した彼女は、実は、プルトニウムの無毒化に全身全霊をささげたというわけか。
「教祖と崇められる地位、順風満帆で優雅な暮らし、愛すべき信者たち、それらを全て投げ打って、いち超能力者として、上月加世が全身全霊をかけて打ち込んだもの、それがプルトニウムの無毒化だった。そう決心してからの彼女の姿は、まるで、数々の天才が挑んでは敗れ去った、超難問、『フェルマーの最終定義』を証明して、三六〇年の歴史にピリオドを打った、あの、アンドリュー・ワイルズの背中に似ていた。
 プルトニウムの完全なる無毒化。夢見るような向こう見ずの挑戦。そもそも上月加世と言えば、どんな液体でも純水に変えられると評判があった。どんな液体でも、しかしプルトニウム化合物は、全て放射性物質であり、工学者である小出氏曰く、『かつて人類が遭遇した物質のうちでも最高の毒性をもつ』ほどの悪魔的な液体。しかも調べれば調べるほど、放射性物質というやつは、超能力者のちからに対してキラー(特定のものに対して強い力を発揮する)があり、強力な毒性を示す事が分かった。実際俺自身、あの祠に近づいただけでも、憑依のちからが失われて、立っている事さえ困難な状態になった。恐らくあの場にいた不知火忍も、相当ちからを弱められていただろうし、理穂に憑依した斎、彼女の透視についても、数々の失敗が目立った。さらに質が悪い事に、上月加世の研究の結果、プルトニウムに神通力を加えると、そのちからを〝伝って〟、ちからの源の超能力者にまで牙をむく、という大きな課題に直面した。このため彼女は、度々内部被曝の被害を受けて、身体汚染治療を受けていた」
「伝って、来る? ホラー映画の呪いのようだ」
 敷島は一笑して、
「そうだ。見た者を呪い殺すという、アレに似ているな。とにかく上月加世は、地獄の神を相手に、一進一退の死闘を繰り広げた。そんな或る時、身体汚染の治療に当たって、その病室で彼女は、突然すばらしいひらめきが頭に浮かび上がった。それは、プルトニウムに神通力を加えて、例のごとくちからを伝って来た放射性物質は、その相手が人でなかった場合、いかなる反応を示すか、というもの。このひらめきに彼女は興奮した。それを検証するためには、そこに必要になって来るのは、例の〝キメラの宝木〟という儀式だったのだ。キメラとは、同一の個体内に、異なる遺伝情報を持つ細胞が混じっている状態を表す言葉だが、この場合、斎の霊魂が、理穂の肉体に宿っている状態を意味する。つまり、理穂の肉体に斎の霊魂を憑依させて、同一の個体内に異なる霊魂が混じっている状態を創り出し、理穂が持つ不思議なちから、それを植物のさねに例え、そのようなさねを斎へ受け渡し、そして、斎の霊魂に植わった不思議なさねを発芽させる、というのが、キメラの宝木の本当の目的だった。
 そこへ来て、当時の久慈理穂は、自分の過失によってこの世に悪魔を放ち、三人の同級生と、一人の担任の先生を殺してしまった。彼女の罪の意識は、心の奥底にまで浸潤して、自ら命を絶つ事さえ平気で考えるようになっていた。出来る事ならこのちから、全く失ってしまって、普通の人間として一からやり直したい、そう大伯母である上月加世に泣きついていた。
 彼女は思った。いま目の前に広がっている状況、これはプルトニウムの無毒化にとって、とても追い風となってはいないか? ちからで言えば、自分に匹敵するほどの才能を持ちながら、そのちからを持て余している理穂。失意の底に斃れ、全く新しく生まれ変わる必要のある斎。この二人、お互いがお互いに補完する事ができれば、これは自分にとってとんでもない追い風になる。この考えの答えというのが、キメラの宝木だったというわけだ。
 上月加世は、大学図書館をめぐって、海外の超常現象を扱った文献を読みあさった。無論、俺はその道には門外漢であるが、彼女に言わせれば、東西の洋を問わず、超能力というものは、血筋で考えるものではなく、霊魂と対になって、その周囲に漂う霧のような存在。人がこの世に生を受けるという事は、親から霊魂の一部を与えられるということ。その時に超能力という霧も、霊魂の周囲に漂いながら、初めは小さく、幼いなりに引き渡される。この事から分かるように、一年半前のキメラの宝木、その儀式で理穂と斎の霊魂が入れ替わって、その後にワームホールで未来の理穂の身体に憑依、さらに理穂の肉体の中で透視能力を使う事で、斎の霊魂に怪しくも美しい霧が漂い始めた。それから五時間十七分後、斎の霊魂は過去の世界へ戻って、しかしこの時にはすでに斎の霊魂にはしっかりと超能力者のさねが受け渡されていた」
 りおこと斎は、美咲の透視に失敗して、悪魔の世界からやばいのを一体、この世に連れて帰ってしまった。それから後は、誰にも迷惑をかけないようにと、ひとり終電間際の駅のホームに身を隠していた。ところがその数時間後には、あっけなく駅員に保護されてしまった。つまりそれは、こういう事なのか? 理穂のちからが斎に渡されて、彼女はその時すでに普通の人間に戻っていた。普通の人間に戻ったのだから、やばい奴の存在が感じ取れず、従って彼女は、不用意に駅のホームを歩き出した。
「以上がキメラの宝木の全容で、そしてそれは見事に成功を収め、そもそも超能力者としての資質の無かった不破斎は、理穂の肉体に憑依する事で、彼女からふしぎなちからのさねを引き受け、それは思いのほか開花した。上月加世は、これら追い風を受けて、本格的にプルトニウムの無毒化に乗り出した」
 わたくしはその時、何となく斎の顔を見た。彼女は夜の雪の上に立って、身じろぎ一つない。
「でも、どうやって」
 敷島は、鹿の手袋でもって、両方の頬を撫でた。さすがに冷えるらしい。
「どうやって、ちからを伝って来るプルトニウムの無毒化に成功したのか。それは、先述の通り、上月加世の突然すばらしいひらめき、プルトニウムに神通力を加えて、例のごとくちからを伝って来た放射性物質は、その相手が人間でなかった場合、いかなる反応を示すか、という所に話は戻って来る。要は、神通力を使用して、ちからを伝って来た相手が、斎の霊魂だったらどうか、という事だ。斎の霊魂には肉体は存在しない。肉体が存在しなければ、被爆もない。そういう寸法で、斎の霊魂を介して、間接的に、上月加世は神通力を使って、プルトニウムにちからを与える。プルトニウムがそのちからを伝って斎の霊魂に達しても、彼女には肉体は存在しない。滞りなく儀式は進行する。
 一年半前、不破斎は服毒により自刃した。これは君も知っての通りだ。しかしそれは、愛する者の死や、義兄の陰謀に悲観しての事ではなく、日本の国土、国民の生命を守るために、自らの肉体を捨てて、霊魂の姿となってまで人々を救わんとする、エクレクトスの姿だった。死してなお現世にとどまり、プルトニウムの無毒化を一手に担うため」
 わたくしは、姿勢よく立っている、二十歳そこそこの少女を見た。幼少の頃より、それこそ、物心がつく以前から、精神の鍛練を積み上げ、そうして成長した姿には、オーラがあった。そのオーラ、それにはもう一つ、この土地の人々と、国土を守るために、平気で自らの肉体を投げ捨てた人に漂う、高遠なオーラがあったのだ。
「プルトニウムの無毒化。それが成功したのは、いつの事だ?」
 斎はしずかに口をひらく。
「一週間前のことです。四週間前まで、祠には宮國瑞希さんが幽閉されていましたから、それが終わって、御母様とわたし、祠の扉の前に座って、本格的にプルトニウムの無毒化の儀式に取り掛かりました」
「一週間前。メルトダウン、ぎりぎりだな。ほんの一週間前の出来事という事は、君もそうだが、上月加世は、相当へばっていたんじゃないか?」
 敷島はくるりと背中を見せて、
「だろうな。斎の霊魂を媒体として、間接的に神通力を使ったとは言え、そのちからは計り知れない。上月加世の体力は相当弱っていただろう。こんな時には、特に女性の能力者は、満月の月光浴で体力の回復が必要だとも言われている。だからあんなにも簡単に、巽に捕まって」
 一発の銃声。続いて、もう一発。上月加世は、信じられない、といった表情を見せて、ゆっくりとみずからの腹部を見下ろした。七紋帰依のマークの入った純白な服が、みるみる赤く染まって行く。
 この時わたくしは、小さな違和感を覚えた。その違和感、小さいながらに、喉に刺さった魚の骨のように、いつまでも引っ掛かって、なかなか考えがまとまらない。そしてその違和感を助長させているのが、たまたま見た斎の表情、そこには義母の死に対する悲観が一つもない。恐ろしく冷静で、義母の死を全く悼まない。
 わたくしは、燃え尽きた煙草の先を見つめながら、
「だけどさ。俺もよくは分からないんだけどさ。どうして上月加世は、ワームホールを創造して、一年半後の今日を選んで、斎の霊魂を理穂の肉体へ送ったのかな。キメラの宝木の目的、理穂が持つ不思議なちから、それを植物のさねのように、斎の霊魂へ受け渡し、そして、そのさねを発芽させて、開花させて、プルトニウムの無毒化に乗り出す、というのであれば、それは一年半後の未来でなくてもいいわけで、いつでもよかった」
 素朴な疑問だった。敷島の話について行けているのか、いつまでも怪しく思う状況の中で、生じた疑問。しかしそれは、敷島にある変化を与え、話の方向が急展開して行くようだった。わたくしは続けて、
「ワームホールを通過して、俺の目の前に現れて、透視のちからを使って美咲の危機を救ってくれた、斎。俺にとっては感謝すべき存在であるが、しかしそれは、上月加世にとっては直接関係ない。彼女にとって、美咲の命のそれよりも、自分の未来を守る方が先決ではないか?」
 敷島の長い髪が、風もないのに広がった。
「宗村の言う通りだ。キメラの宝木の儀式によって、本日の夕方に出現した斎の霊魂、その役目としては、秘密の祠へと宗村を導き、美咲の命を救うというもの。そして同時に、巽の魔の手から不知火の命をも救った。これにより、巽は祠の奥へと消えて、俺や宗村も、どうにか事なきを得た。しかし肝心の、上月加世が死んでしまっては、話がおかしい。これは、どういう事だ? 普通に考えれば、上月加世は、斎の霊魂を未来へ送り込んで、自分の命も守ろうとするはず」
 あごに指を当てて、真剣に考え込む敷島。
「待てよ」
 星明りにも、敷島の顔が青ざめたのが分かった。
「まさか」
 敷島はふり返って、斎の両肩をつかんで、強く揺らした。
「斎、君は今日、一年半前の過去から現れて、宗村の前で美咲の透視を行った。その後で失敗したとか何とか言って、宗村に後を追わないよう忠告して、ペンションから飛び出して行った」
 うなずきさえ見せない斎。
「まさか、キメラの宝木の真の目的とは」
「おい敷島、どうしたんだよ急に」
 わたくしは敷島の肩をつかんだ。その肩は、小刻みに震えていた。
「何と言う事だ。この俺が、いっぱい食わされたというのか? 上月加世がキメラの宝木を執り行った本当の目的とは、そういう事だったのか?」
 斎の目、それは今朝、偶然にも見掛けた上月加世の目、プロビデンスの目にそっくりだった。
「おい斎」と敷島、もう一度相手の肩を揺さぶって、
「答えろ斎。君は、ペンションから飛び出したあの後、一体どこへ行っていた? M駅のホームに身を隠しているとか何とか、宗村に嘘を言って、その裏で君は、どこで何をしていたのだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...