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狂った天秤
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冴えわたる、雪山の、静けさ。その静寂をやぶって、たくさんの野鳥たちが飛来した。盛んにジュッジュと鳴いて、そのハギの花のような冬羽から、たぶんハギマシコだとは思うが、冬の小さな地表を求め、植物の種子などを採餌していたけれど、そのうちの一羽が突然羽音を立てて、飛翔したのを合図に、野鳥の群れは、跡形もなく飛び去って行った。
そこから顔を戻して、敷島。
「俺はな、宗村、俺はこの十年で、敷島探偵グループを一流企業にまで育て上げて来た。我が社は今や、新聞の広告や、テレビのCM、バラエティー番組にも取り上げられて、人探しや浮気調査はもちろん、海外法人の身辺調査や、デューディリジェンス(企業の精密検査)など、ありとあらゆる相談を受付け、今も電話が鳴りやまない。年間一万件もの依頼が殺到して、しかも顧客満足度で言ったら、我われは業界トップクラス。非公開会社ではあるが、探偵業としては珍しい、一部上場企業として、いまも投資家たちの視線が熱い。
なぜ、どうして我が敷島探偵グループだけが、突出して、大手企業の仲間入りを果たす事ができたのか、そこには、他社にはない、強靭な事業精神があったからだ。
そもそも一般的な探偵事務所は、全国にオフィスを構え、その数をうたい文句に、集客を見込んでいるが、実はそのほとんどがバーチャルオフィスである事が多い。そのバーチャルオフィスには、下請け(探偵業無届者)が連絡を待っていて、本社からの指示を受け、簡単なマニュアルに沿って、調査が開始される、とまあ、これが一般的な事業拡大の方法なのだが、そこへ来て我が社は、他とは違った、まったく新しいスタイルで事業拡大に尽力した。まずはヘッドオフィス。これは世界に一拠点のみ、都心部にドンと大きく構え、全国に、全世界に、支店は一店たりとも開設しない。そして、直接探偵業務に当たる社員は、二十人いればいいところ、これは大手探偵事務所としては、極めて人数が少ない。あとはなにか、あとは何千人規模の情報技術者たちだ。我が社は特に、ネットワークエンジニアの比率が高く、クラウド・コンピューティング技術によって、コンピュータ資源のサービスの拡充に力を注いでいる。これがうちのミソになるのだが、例えば美咲は入社一年、一般的な企業で言えば、少しずつ仕事には慣れてきたけど、まだまだ業務の知識では先輩たちにかなわない、新人さんと言ったところ。しかし彼女は今やSTGの看板を背負って、依頼人の要望に対応し、一流の探偵業務をこなしている。それは他の従業員にも言える事だが、彼女らはまったく経験に頼らない、その行動や方法論が、一貫性ある標準業務として、本部から指示を受けている。いちいち、関係者への聞き込みに時間を割かなくても、必要な情報は、必要なだけ、クラウドから共有できる。さらに担当業務の期間中は、移動中であっても、就寝中であっても、彼女らの位置情報、健康状態、精神状態まで、データ管理システム部と、オンラインで交信されており、緊急時の応援や、医療・メンタルヘルスなど、いつでも本部からサポートが受けられる」
〝聞き込みなんてしなくたって、これくらいの情報はSTGサーバーから入手可能です〟
わたくしを横目に、くすりと笑う美咲。
〝敷島探偵グループのデータベースです。社員のわたしでも驚くほど大量な個人情報がSTGサーバーに保存されています。わたしや宗村さんのデータだって、検索すればちゃんとレポートとして発行されます〟
STGの驚異的な情報システムは、敷島自らが生み出したものか。
「人材に頼らない、事業精神。頼るべきものは、正しい情報。いち早く、それこそ光の速さで、世界を駆けめぐって、すべての情報は、クラウドから。これが、我が社が一流企業にまで発展した、いわゆるB・I(ビジネス・インテリジェンス)システムだ」
正直なところ、これまでの話は、社長がステージに立って、会社の経営方針についてプレゼンしている、そんなバイタリティーあふれる姿を眺めている気分だった。
「頼るべきものは、正しい情報。この事業精神は、実は、東大生などエリート集団の学術研究から生まれたわけではない。そんな大それたものではなくて、それは、そこら辺にあるもの、町の人びとの生活の中から、その精神が生まれたのだ。正しい情報のあるべき姿。きっかけは、世の中に絶望した少女の悲鳴だった」
罪の告白でもするように、そっと目を閉じて、敷島、
「今から十年前、埼玉県は所沢市の、とある低層住宅のアパートで、母と娘、二人の親子が、母子家庭という形で暮らしていた。母親は、近くのショッピングセンターの弁当屋で、仕出しや料理の盛り付けをしながら、夜は、青葉台の小さなスナックで、人情味あるカウンターレディとして、男性客らといっしょに酒をのんで、そこそこの収入を得ては、月々の生活費と、娘の学費と学資保険に回して、あとは、同僚の自殺に関わったとして、服役中の夫のローン返済に充てていた。
あるとき母親は、スナックの接客中、熱心に言い寄られる事もあって、相手は天涯孤独の身だと言い、自由で、金回りが良さそうで、仕事が終わってから、あちこちでご馳走になって、そうこうしている内に、二人はいつしか男女の関係に落ちて、その交際相手は、母親のアパートへまで上がり込むようになっていた。
男は、五十は行っているだろう、派手なクロコ柄の鞄に、ゴールドのネックレスを身につけ、根っからのギャンブル好き。自身をプロギャンブラーと名乗るくらい、昼間は競馬にオートレース、夜はパチンコに賭け麻雀、ギャンブルと聞けば目の色を変えて、好き放題やったあと、遅くに部屋へ帰って来ては、ニコニコしながらちゃぶ台に札を置く。今日はツキが良いといって、プロ野球のニュースを見ながら、上機嫌でビールをあおる。こんなのは良い方で、賭けに負けて帰った日には、もう自棄のやん八、やさしい言葉をかけていた母親に対して、ひどい八つ当たり。金を貸せ、あとで返す、今から取り返すんだ、今日スッた金は今日取り返す、こう意気込んで、部屋の引き出しをかき回す始末。そしてある日を境に、この男は豹変する事となる。どう豹変したのか、こう豹変したのだ。男は日によって、コロコロ態度が変わる。まるっきり変わる。服装も変わる。朝からジャージ服姿でギャンブルに興じたかと思えば、次にはキョロキョロとあたりを気にしながら、白のダブルスーツ姿で現れる。そして、ごそっと金を持って行く。母と娘、二人の親子は、男のこの病的なまでの豹変ぶりに、強い危機感をおぼえ、我慢も限界、いよいよ行動に移す時が来たのだが、これが、二人にとって運命の日となった。
母親は、部屋へ上がって来る男に対して、居住まいを正して、別れ話を持ち出した。もう限界、あなたに渡すお金は無いから、早くここから出て行って、そして、もう二度と、こんな事はしないで。それを聞いた男、アタッシュケースを放り投げ、怒りを露わにする。殺すぞ、こんな危険な言葉まで飛び出して、一触即発。ところがその時に限って、一歩も引かない母親は、近くにあった雑誌を投げて、男を追い払おうとする。急にだんまり、した後で、男は台所から包丁を手に、ドンドンと足音を立てて戻って来る。脅し文句など何もない、逃げる母親の脇腹をひと突き、もう突き。その血みどろの犯行現場は、押入れに隠れた娘がぜんぶ見ていた。何があっても(押入れから)出て来るな、絶対に。こう母親から何度も約束させられていた。自分の身に何か起きたら、見たまま、ありのままを刑事さんに伝えて、あの男を刑務所へ送ってもらうんだ。その言葉を胸に、少女は、血が出るくらい指をかんで、母親の殺される現場を目撃していた。母親は、しばらくは畳の上で動いて、うがいをするような、妙な音を立てて、ちゃぶ台をひっくり返した。何かを言っている。聞こえない。よく聞こえない。必死に耳を澄ましているうちに、いつか母親はこと切れていた。男は「はあはあ」と荒い息で、部屋の中をうろついて、あちこちの引出しをかき回すと、そのまま何事も無かったかのように部屋から出て行った。
この事件、当時はテレビにも報道され、遺族の有力な目撃証言から、男に逮捕状が発付された。そして男は、被告人という立場になって、法廷に立たされる事になったのだが、犯行の瞬間が目撃されている以上、有罪判決はまぬがれない、こういった見方が、各情報番組で解説されていた。
にもかかわらず、裁判所は、被告人に対して無罪判決を言い渡した。裁判長は、被害者家族の目撃証言ではなく、被告人の言い分を採用して、無罪を言い渡したのだ。これに対して検察側は、即日控訴,被告人に勾留請求を行った。
どうして、こんな耳を疑うような判例が生まれてしまったのか。血みどろの犯行現場は、被害者の娘によって、その一部始終が目撃がされている。なのにどうして、被告人に実刑判決が下されない。
それは、次のような手続きがあったからだ。
被告人は、被告人質問において、犯行当時、自分は全く別の場所にいたという、アリバイの事実を証言した。証拠裁判主義において、被告人が取調べを請求した証拠は、裁判所の判断によって、法律の手続に従い取り調べが行われる。これにより、特別の学識経験を持つ専門家が、男のアリバイについて、その物的証拠の鑑定が行われる。これがいちばん大きかった。
次に、反対尋問へ移って、被告人の弁護士は、証人である娘に対して、親が殺されているのを黙って見ていたというのは、道徳的規範から考えて、理解できない、視覚心像の薄れやすさ、記憶の忘却もまた、積極的な過程であり、個人の願望や、偏見そして自尊心などを満たすように、もともとの記憶像が変形されてしまう、などと、目撃証言の真実性や信用性の攻撃がなされた。平たく言えば、被害者の娘は、被告人を憎むあまり、押し入り強盗の犯人と、被告人の姿を、記憶の中ですり替えてしまった、こう弁護士は主張したのだ。この尋問の目的は、裁判官に対して、目撃証言への疑問を抱かせ、証言内容に基づいた事実認定を阻止することにあるのだが、これが裁判官の心象にさらなる影響をあたえ、検察側の起訴事実は退けられた、というのが、今回の裁判のあらましだった。
あり得ない、こんな不毛な裁判を目の当たりに、少女は、わっと証言台に泣き崩れてしまった。そして声にならない、悲痛な叫び声を上げて、廷吏らに抱きかかえられた。その声は、この世に正義の存在しないことを知った純粋な絶望の叫び。その声は、今もこの耳にしっかりと焼きついている。この耳に。なぜならこの時、俺は、険しい表情を上げて傍聴席に座っていた。
最近では、警察にも、機動捜査隊と呼ばれる初動捜査のプロが、聞かれるようになったが、それはまだ限定された地域のことで、署内には依然として、ブルシット・ジョブと呼ばれる無駄な業務が多く、捜査が後手に回るケースが多い。今回も例によって、警察の動きは鈍かった。俺は、こうなる事を恐れていたのだ。まったく、見ちゃいられない。これでは犯人にせせら笑われて、都合の良いように逃げられてしまう。俺はイスラムワッチの帽子をかぶって、颯爽と立ち上がった。
被告人は見たところ、アリバイ工作が出来るような人物に見えなかった。ギャンブルをこよなく愛して、狂乱している男に、そんな知識は必要ない。これは第三者の手ほどきが存在していると思われた。待っていろ、娘さん、殺された母親の仇は、必ず俺が討ってやる。こう胸に誓って、俺は庁舎を飛び出した。
君も知っての通り、当時の俺は、天狗になっていた。学生の身分でありながら、迷宮入りした事件を見つけては、誰もがあっと驚く着想でもって、被告人の主張をひっくり返す。実際その勝率を考えれば、プロも顔負けの仕事っぷりで、自分には探偵業に素質があると、こう思いあがった青二才だった。そしてこの時も、検察官が黒星を喫したこの裁判、こいつをひっくり返すのはこの俺しかいないと、慢心を胸に、被告人のアリバイ崩しに乗り出した。
ところがこの事件、今までの犯罪事例とは段違いの、難事件である事くらい、俺は承知していた。母親が殺害された時刻、その時間に、被告人はまったく別の場所にいた。この主張立証は、相当かたかった。アリバイの有無は、犯行の可能性を左右するため、弁護側と検察側で大きな争点となった。新橋の場外車券売場、そこに設置された防犯カメラの映像や、購入券の日時、会食したギャンブル仲間たちの証言など、被告人には十分過ぎるくらいの証拠がそろっていて、裁判所が被告人の言い分を採用したのも、うなずける話だった。されど警察だって、馬鹿ではない。世界有数の規模を誇る、警視庁捜査一課、その沽券にかけて、そうとう聞き込みに力を入れたようだったし、被疑者への取り調べだって、一日八時間、限界まで行われていたが、それでも男のアリバイは、かたく、その物的証拠がアダとなって、捜査は膠着した状況に落ちた。この男はホンボシだ、間違いない、刑事たちの勘が決め手となって、思い切って、少女の目撃証言いっぽんで被告人の起訴へ踏み切った。そこからの、無罪判決。
犯行当日、男は、新橋の車券売場にいた。売場の防犯カメラの、それも複数のカメラの映像に、ギャンブルに興じる彼の姿が映っていた。それが、他の証拠と組み合わさって、アリバイの事実が証明された。となると、同じ時刻、約五十キロメートルも離れた、所沢のアパートの一室において、同じ人物が母親を殺害するなど、不可能な話だった。にもかかわらず、押入れの中で娘さん、被告人と母親が言い争っている現場を目撃している。これはまさに、男がテレポーテーションしたとしか思えない。そうとしか思えない、それぞれ否定し合う、人証と物証。
こうなって来ると、否が応でも、目撃者の信憑性というのが争点となって来る。弁護士が主張した通り、娘さんの記憶は、変形されてしまったのだろうか。
被告人のアリバイが、ローマ帝国のアウレリアヌス城壁のごとく、かたく閉ざされ、それをこじ開ける糸口さえつかめない俺は、いやしくも、少女の記憶の正しさ、いわゆる帰納的に実証された正しさ、を求め、その必要性を感じて、今回のような事例がないかどうか、中央図書館の開架に足を運んだ。そうして、ロフタスとパティスの両博士の論文をひも解いて、いつしか俺は、娘さんの記憶に、虚偽記憶の存在を仮定していた。
彼らの論文によると、人は、何かを体験して、その後から、別の情報を与えられると、記憶が変化する、というのだ。学術的にこのことを、事後情報効果と呼んで、記憶というものは、後から与えられた情報が、多少食い違っていたとしても、ぴったりと来ていなくても、そこは、つじつまの合うように、整合性がとれるように、記憶を変化させるというのだ。そしてその多くの場合、記憶の変化というのは、まったく意図せず、無意識の内に、生じている。その考えを後押しする、次のような事例まで報告されていた。
シィーと呼ばれる、驚異的な記憶力を持った、ユダヤ人が、一九二〇年頃、神経心理学者であるルリヤ博士のもとを訪れ、完璧なまでの記憶力を披露した。驚くことに、彼が記憶できる量は、際限がないと言って、その記憶は、十六年後にも正確に思い出すことができたというのだ。彼はその後、記憶術師として舞台へ上がり、当時話題にもなったそうだが、それから彼は、人びとの前から姿を消した。シィーは、我われが普段おこなっている、ざっくりとした情報をひと言でまとめたり、似たような情報を思い出したりする、簡単な作業が、まるでダメで、会話をしていても話が脱線する、頭の中の映像と現実が区別つかない、など、日常での障害に苦しみ、ときに紙に記憶を書いて、丸めて燃やしたくらい、晩年の彼は、『忘れること』を必要とし、切実に願っていた。
この事例からも、我われ一般的な人の記憶は、正確に情報を記録するためのものではない、そう彼は身をもって示してくれている。正確に情報が記憶できない、当時の娘さんにも、虚偽記憶が生じた、こう考える事で、すべては解決するのではないだろうか。娘さんは押し入り強盗を目撃して、その顔を頭の中に記憶した。そしてその後で、警察の事情聴取において、知人男性の犯行ではないか、母親とトラブルになっていた人物はいないか、こうくり返し問い質される中で、少女の頭の中で、押し入り強盗の男の顔と、自分たちを困らせていた被告人の顔が、多少食い違っていたとしても、ぴったりと来ていなかったとしても、想像と現実が、つじつまの合うように、整合性がとれるように、変形されてしまった。それはまったく意図せず、無意識の内に、事後情報効果によって、被告人が母を殺したと思い込み、最終的には、無罪判決が下された法廷において、悲痛な叫びを上げるに至ってしまった。これらは、記憶のしくみを考える上で、医学的にも認められた、脳の科学的な反応であり、被告人がテレポーテーションをした事を考えるよりも、妥当であった。
このようにして、娘さんの目撃証言が、認知心理学上の虚偽記憶に当たるとして、俺は、公園の騎馬像などを見上げながら、はあと肩を落とし、それから月日は流れ、ある日のこと、講義中にあくびを噛んでいる俺のもとに、一本の電話が入った。
〝だいぶ遅くなってしまった。『例の件』についてだが、少しいいかな〟
俺は、恥ずかしい事に、一瞬なんの事だかさっぱりだった。電話の主は、どうやら司法書士で、ああそうだった、万一の事を考え、俺は、法律の専門家を頼って、ある事をお願いしていたのだ。
〝実はね、おもしろい事が分かってね、君に見てもらいたい物があるんだが、どうだろう、今からこっちに来られないかな〟
被告人は、防犯カメラの映像など、その物的証拠によって、アリバイが証明されていたにもかかわらず、実はその裏では、法律上、致命的なミスを犯していたのだ。
そこから顔を戻して、敷島。
「俺はな、宗村、俺はこの十年で、敷島探偵グループを一流企業にまで育て上げて来た。我が社は今や、新聞の広告や、テレビのCM、バラエティー番組にも取り上げられて、人探しや浮気調査はもちろん、海外法人の身辺調査や、デューディリジェンス(企業の精密検査)など、ありとあらゆる相談を受付け、今も電話が鳴りやまない。年間一万件もの依頼が殺到して、しかも顧客満足度で言ったら、我われは業界トップクラス。非公開会社ではあるが、探偵業としては珍しい、一部上場企業として、いまも投資家たちの視線が熱い。
なぜ、どうして我が敷島探偵グループだけが、突出して、大手企業の仲間入りを果たす事ができたのか、そこには、他社にはない、強靭な事業精神があったからだ。
そもそも一般的な探偵事務所は、全国にオフィスを構え、その数をうたい文句に、集客を見込んでいるが、実はそのほとんどがバーチャルオフィスである事が多い。そのバーチャルオフィスには、下請け(探偵業無届者)が連絡を待っていて、本社からの指示を受け、簡単なマニュアルに沿って、調査が開始される、とまあ、これが一般的な事業拡大の方法なのだが、そこへ来て我が社は、他とは違った、まったく新しいスタイルで事業拡大に尽力した。まずはヘッドオフィス。これは世界に一拠点のみ、都心部にドンと大きく構え、全国に、全世界に、支店は一店たりとも開設しない。そして、直接探偵業務に当たる社員は、二十人いればいいところ、これは大手探偵事務所としては、極めて人数が少ない。あとはなにか、あとは何千人規模の情報技術者たちだ。我が社は特に、ネットワークエンジニアの比率が高く、クラウド・コンピューティング技術によって、コンピュータ資源のサービスの拡充に力を注いでいる。これがうちのミソになるのだが、例えば美咲は入社一年、一般的な企業で言えば、少しずつ仕事には慣れてきたけど、まだまだ業務の知識では先輩たちにかなわない、新人さんと言ったところ。しかし彼女は今やSTGの看板を背負って、依頼人の要望に対応し、一流の探偵業務をこなしている。それは他の従業員にも言える事だが、彼女らはまったく経験に頼らない、その行動や方法論が、一貫性ある標準業務として、本部から指示を受けている。いちいち、関係者への聞き込みに時間を割かなくても、必要な情報は、必要なだけ、クラウドから共有できる。さらに担当業務の期間中は、移動中であっても、就寝中であっても、彼女らの位置情報、健康状態、精神状態まで、データ管理システム部と、オンラインで交信されており、緊急時の応援や、医療・メンタルヘルスなど、いつでも本部からサポートが受けられる」
〝聞き込みなんてしなくたって、これくらいの情報はSTGサーバーから入手可能です〟
わたくしを横目に、くすりと笑う美咲。
〝敷島探偵グループのデータベースです。社員のわたしでも驚くほど大量な個人情報がSTGサーバーに保存されています。わたしや宗村さんのデータだって、検索すればちゃんとレポートとして発行されます〟
STGの驚異的な情報システムは、敷島自らが生み出したものか。
「人材に頼らない、事業精神。頼るべきものは、正しい情報。いち早く、それこそ光の速さで、世界を駆けめぐって、すべての情報は、クラウドから。これが、我が社が一流企業にまで発展した、いわゆるB・I(ビジネス・インテリジェンス)システムだ」
正直なところ、これまでの話は、社長がステージに立って、会社の経営方針についてプレゼンしている、そんなバイタリティーあふれる姿を眺めている気分だった。
「頼るべきものは、正しい情報。この事業精神は、実は、東大生などエリート集団の学術研究から生まれたわけではない。そんな大それたものではなくて、それは、そこら辺にあるもの、町の人びとの生活の中から、その精神が生まれたのだ。正しい情報のあるべき姿。きっかけは、世の中に絶望した少女の悲鳴だった」
罪の告白でもするように、そっと目を閉じて、敷島、
「今から十年前、埼玉県は所沢市の、とある低層住宅のアパートで、母と娘、二人の親子が、母子家庭という形で暮らしていた。母親は、近くのショッピングセンターの弁当屋で、仕出しや料理の盛り付けをしながら、夜は、青葉台の小さなスナックで、人情味あるカウンターレディとして、男性客らといっしょに酒をのんで、そこそこの収入を得ては、月々の生活費と、娘の学費と学資保険に回して、あとは、同僚の自殺に関わったとして、服役中の夫のローン返済に充てていた。
あるとき母親は、スナックの接客中、熱心に言い寄られる事もあって、相手は天涯孤独の身だと言い、自由で、金回りが良さそうで、仕事が終わってから、あちこちでご馳走になって、そうこうしている内に、二人はいつしか男女の関係に落ちて、その交際相手は、母親のアパートへまで上がり込むようになっていた。
男は、五十は行っているだろう、派手なクロコ柄の鞄に、ゴールドのネックレスを身につけ、根っからのギャンブル好き。自身をプロギャンブラーと名乗るくらい、昼間は競馬にオートレース、夜はパチンコに賭け麻雀、ギャンブルと聞けば目の色を変えて、好き放題やったあと、遅くに部屋へ帰って来ては、ニコニコしながらちゃぶ台に札を置く。今日はツキが良いといって、プロ野球のニュースを見ながら、上機嫌でビールをあおる。こんなのは良い方で、賭けに負けて帰った日には、もう自棄のやん八、やさしい言葉をかけていた母親に対して、ひどい八つ当たり。金を貸せ、あとで返す、今から取り返すんだ、今日スッた金は今日取り返す、こう意気込んで、部屋の引き出しをかき回す始末。そしてある日を境に、この男は豹変する事となる。どう豹変したのか、こう豹変したのだ。男は日によって、コロコロ態度が変わる。まるっきり変わる。服装も変わる。朝からジャージ服姿でギャンブルに興じたかと思えば、次にはキョロキョロとあたりを気にしながら、白のダブルスーツ姿で現れる。そして、ごそっと金を持って行く。母と娘、二人の親子は、男のこの病的なまでの豹変ぶりに、強い危機感をおぼえ、我慢も限界、いよいよ行動に移す時が来たのだが、これが、二人にとって運命の日となった。
母親は、部屋へ上がって来る男に対して、居住まいを正して、別れ話を持ち出した。もう限界、あなたに渡すお金は無いから、早くここから出て行って、そして、もう二度と、こんな事はしないで。それを聞いた男、アタッシュケースを放り投げ、怒りを露わにする。殺すぞ、こんな危険な言葉まで飛び出して、一触即発。ところがその時に限って、一歩も引かない母親は、近くにあった雑誌を投げて、男を追い払おうとする。急にだんまり、した後で、男は台所から包丁を手に、ドンドンと足音を立てて戻って来る。脅し文句など何もない、逃げる母親の脇腹をひと突き、もう突き。その血みどろの犯行現場は、押入れに隠れた娘がぜんぶ見ていた。何があっても(押入れから)出て来るな、絶対に。こう母親から何度も約束させられていた。自分の身に何か起きたら、見たまま、ありのままを刑事さんに伝えて、あの男を刑務所へ送ってもらうんだ。その言葉を胸に、少女は、血が出るくらい指をかんで、母親の殺される現場を目撃していた。母親は、しばらくは畳の上で動いて、うがいをするような、妙な音を立てて、ちゃぶ台をひっくり返した。何かを言っている。聞こえない。よく聞こえない。必死に耳を澄ましているうちに、いつか母親はこと切れていた。男は「はあはあ」と荒い息で、部屋の中をうろついて、あちこちの引出しをかき回すと、そのまま何事も無かったかのように部屋から出て行った。
この事件、当時はテレビにも報道され、遺族の有力な目撃証言から、男に逮捕状が発付された。そして男は、被告人という立場になって、法廷に立たされる事になったのだが、犯行の瞬間が目撃されている以上、有罪判決はまぬがれない、こういった見方が、各情報番組で解説されていた。
にもかかわらず、裁判所は、被告人に対して無罪判決を言い渡した。裁判長は、被害者家族の目撃証言ではなく、被告人の言い分を採用して、無罪を言い渡したのだ。これに対して検察側は、即日控訴,被告人に勾留請求を行った。
どうして、こんな耳を疑うような判例が生まれてしまったのか。血みどろの犯行現場は、被害者の娘によって、その一部始終が目撃がされている。なのにどうして、被告人に実刑判決が下されない。
それは、次のような手続きがあったからだ。
被告人は、被告人質問において、犯行当時、自分は全く別の場所にいたという、アリバイの事実を証言した。証拠裁判主義において、被告人が取調べを請求した証拠は、裁判所の判断によって、法律の手続に従い取り調べが行われる。これにより、特別の学識経験を持つ専門家が、男のアリバイについて、その物的証拠の鑑定が行われる。これがいちばん大きかった。
次に、反対尋問へ移って、被告人の弁護士は、証人である娘に対して、親が殺されているのを黙って見ていたというのは、道徳的規範から考えて、理解できない、視覚心像の薄れやすさ、記憶の忘却もまた、積極的な過程であり、個人の願望や、偏見そして自尊心などを満たすように、もともとの記憶像が変形されてしまう、などと、目撃証言の真実性や信用性の攻撃がなされた。平たく言えば、被害者の娘は、被告人を憎むあまり、押し入り強盗の犯人と、被告人の姿を、記憶の中ですり替えてしまった、こう弁護士は主張したのだ。この尋問の目的は、裁判官に対して、目撃証言への疑問を抱かせ、証言内容に基づいた事実認定を阻止することにあるのだが、これが裁判官の心象にさらなる影響をあたえ、検察側の起訴事実は退けられた、というのが、今回の裁判のあらましだった。
あり得ない、こんな不毛な裁判を目の当たりに、少女は、わっと証言台に泣き崩れてしまった。そして声にならない、悲痛な叫び声を上げて、廷吏らに抱きかかえられた。その声は、この世に正義の存在しないことを知った純粋な絶望の叫び。その声は、今もこの耳にしっかりと焼きついている。この耳に。なぜならこの時、俺は、険しい表情を上げて傍聴席に座っていた。
最近では、警察にも、機動捜査隊と呼ばれる初動捜査のプロが、聞かれるようになったが、それはまだ限定された地域のことで、署内には依然として、ブルシット・ジョブと呼ばれる無駄な業務が多く、捜査が後手に回るケースが多い。今回も例によって、警察の動きは鈍かった。俺は、こうなる事を恐れていたのだ。まったく、見ちゃいられない。これでは犯人にせせら笑われて、都合の良いように逃げられてしまう。俺はイスラムワッチの帽子をかぶって、颯爽と立ち上がった。
被告人は見たところ、アリバイ工作が出来るような人物に見えなかった。ギャンブルをこよなく愛して、狂乱している男に、そんな知識は必要ない。これは第三者の手ほどきが存在していると思われた。待っていろ、娘さん、殺された母親の仇は、必ず俺が討ってやる。こう胸に誓って、俺は庁舎を飛び出した。
君も知っての通り、当時の俺は、天狗になっていた。学生の身分でありながら、迷宮入りした事件を見つけては、誰もがあっと驚く着想でもって、被告人の主張をひっくり返す。実際その勝率を考えれば、プロも顔負けの仕事っぷりで、自分には探偵業に素質があると、こう思いあがった青二才だった。そしてこの時も、検察官が黒星を喫したこの裁判、こいつをひっくり返すのはこの俺しかいないと、慢心を胸に、被告人のアリバイ崩しに乗り出した。
ところがこの事件、今までの犯罪事例とは段違いの、難事件である事くらい、俺は承知していた。母親が殺害された時刻、その時間に、被告人はまったく別の場所にいた。この主張立証は、相当かたかった。アリバイの有無は、犯行の可能性を左右するため、弁護側と検察側で大きな争点となった。新橋の場外車券売場、そこに設置された防犯カメラの映像や、購入券の日時、会食したギャンブル仲間たちの証言など、被告人には十分過ぎるくらいの証拠がそろっていて、裁判所が被告人の言い分を採用したのも、うなずける話だった。されど警察だって、馬鹿ではない。世界有数の規模を誇る、警視庁捜査一課、その沽券にかけて、そうとう聞き込みに力を入れたようだったし、被疑者への取り調べだって、一日八時間、限界まで行われていたが、それでも男のアリバイは、かたく、その物的証拠がアダとなって、捜査は膠着した状況に落ちた。この男はホンボシだ、間違いない、刑事たちの勘が決め手となって、思い切って、少女の目撃証言いっぽんで被告人の起訴へ踏み切った。そこからの、無罪判決。
犯行当日、男は、新橋の車券売場にいた。売場の防犯カメラの、それも複数のカメラの映像に、ギャンブルに興じる彼の姿が映っていた。それが、他の証拠と組み合わさって、アリバイの事実が証明された。となると、同じ時刻、約五十キロメートルも離れた、所沢のアパートの一室において、同じ人物が母親を殺害するなど、不可能な話だった。にもかかわらず、押入れの中で娘さん、被告人と母親が言い争っている現場を目撃している。これはまさに、男がテレポーテーションしたとしか思えない。そうとしか思えない、それぞれ否定し合う、人証と物証。
こうなって来ると、否が応でも、目撃者の信憑性というのが争点となって来る。弁護士が主張した通り、娘さんの記憶は、変形されてしまったのだろうか。
被告人のアリバイが、ローマ帝国のアウレリアヌス城壁のごとく、かたく閉ざされ、それをこじ開ける糸口さえつかめない俺は、いやしくも、少女の記憶の正しさ、いわゆる帰納的に実証された正しさ、を求め、その必要性を感じて、今回のような事例がないかどうか、中央図書館の開架に足を運んだ。そうして、ロフタスとパティスの両博士の論文をひも解いて、いつしか俺は、娘さんの記憶に、虚偽記憶の存在を仮定していた。
彼らの論文によると、人は、何かを体験して、その後から、別の情報を与えられると、記憶が変化する、というのだ。学術的にこのことを、事後情報効果と呼んで、記憶というものは、後から与えられた情報が、多少食い違っていたとしても、ぴったりと来ていなくても、そこは、つじつまの合うように、整合性がとれるように、記憶を変化させるというのだ。そしてその多くの場合、記憶の変化というのは、まったく意図せず、無意識の内に、生じている。その考えを後押しする、次のような事例まで報告されていた。
シィーと呼ばれる、驚異的な記憶力を持った、ユダヤ人が、一九二〇年頃、神経心理学者であるルリヤ博士のもとを訪れ、完璧なまでの記憶力を披露した。驚くことに、彼が記憶できる量は、際限がないと言って、その記憶は、十六年後にも正確に思い出すことができたというのだ。彼はその後、記憶術師として舞台へ上がり、当時話題にもなったそうだが、それから彼は、人びとの前から姿を消した。シィーは、我われが普段おこなっている、ざっくりとした情報をひと言でまとめたり、似たような情報を思い出したりする、簡単な作業が、まるでダメで、会話をしていても話が脱線する、頭の中の映像と現実が区別つかない、など、日常での障害に苦しみ、ときに紙に記憶を書いて、丸めて燃やしたくらい、晩年の彼は、『忘れること』を必要とし、切実に願っていた。
この事例からも、我われ一般的な人の記憶は、正確に情報を記録するためのものではない、そう彼は身をもって示してくれている。正確に情報が記憶できない、当時の娘さんにも、虚偽記憶が生じた、こう考える事で、すべては解決するのではないだろうか。娘さんは押し入り強盗を目撃して、その顔を頭の中に記憶した。そしてその後で、警察の事情聴取において、知人男性の犯行ではないか、母親とトラブルになっていた人物はいないか、こうくり返し問い質される中で、少女の頭の中で、押し入り強盗の男の顔と、自分たちを困らせていた被告人の顔が、多少食い違っていたとしても、ぴったりと来ていなかったとしても、想像と現実が、つじつまの合うように、整合性がとれるように、変形されてしまった。それはまったく意図せず、無意識の内に、事後情報効果によって、被告人が母を殺したと思い込み、最終的には、無罪判決が下された法廷において、悲痛な叫びを上げるに至ってしまった。これらは、記憶のしくみを考える上で、医学的にも認められた、脳の科学的な反応であり、被告人がテレポーテーションをした事を考えるよりも、妥当であった。
このようにして、娘さんの目撃証言が、認知心理学上の虚偽記憶に当たるとして、俺は、公園の騎馬像などを見上げながら、はあと肩を落とし、それから月日は流れ、ある日のこと、講義中にあくびを噛んでいる俺のもとに、一本の電話が入った。
〝だいぶ遅くなってしまった。『例の件』についてだが、少しいいかな〟
俺は、恥ずかしい事に、一瞬なんの事だかさっぱりだった。電話の主は、どうやら司法書士で、ああそうだった、万一の事を考え、俺は、法律の専門家を頼って、ある事をお願いしていたのだ。
〝実はね、おもしろい事が分かってね、君に見てもらいたい物があるんだが、どうだろう、今からこっちに来られないかな〟
被告人は、防犯カメラの映像など、その物的証拠によって、アリバイが証明されていたにもかかわらず、実はその裏では、法律上、致命的なミスを犯していたのだ。
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