如月さん、拾いましたっ!

霜月@如月さん改稿中&バース準備中

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13話(9)新手のマスターベーションは元カノとのえっちでウィンウィンです?!

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「皐と結婚……?」


 神谷と帰ってきたかと思うと、突然の報告に、驚きで呆然とする。


 睦月さんはあまり興味なさげに、夕飯を作りながら耳を傾けているが、私からしたら、衝撃的告白で現実が受け止めきれない。


 皐は私がいる限り、ずっと独身を貫くと思っていた。う~~ん。地味にショック。睦月さんと別れた後の寄生先を失ったことになる。


「まぁ、ちょっとね。告白のつもりが、プロポーズしちゃった……」
「結婚を前提にって言えば良いんじゃないの~~? 知らんけど」
「いやぁ~~言える雰囲気じゃなかったよね……」


 卯月と神谷が話す様子をじぃっと見つめる。哀れみの目をした睦月が、夕飯を持ってリビングに来た。睦月がテーブルの上に夕飯を置き、口を開いた。


「乙。良い結婚ライフを」
「乙。地獄の食生活を」
「2人して憐れむなよ! 卯月ちゃんは祝ってくれるよね?!」
「あんな子どもみたいな人、嫁にするとか乙」
「ひどい! 今、ご両親へ挨拶に行く予定考えてるのに!!」


 あぁ、冗談ではなく、本当に皐は結婚するんだな。食卓を4人で囲い、夕飯を食べながら考える。


 何か結婚祝いを贈った方がいいのだろうか。ショックもあるけど、寂しさもある。色んな感情が交錯する。思うように、食が進まない。


「ごちそうさま」


 わいわいと会話する、お祝いの雰囲気に居た堪れなくなり、空いた食器を持ち、キッチンへ向かう。別れているのに、この精神的ダメージ。


「……はぁ」
「……寂しいの? そんな顔されると妬けるんだけど」


 食べ終わった食器を持った睦月が隣に来た。唇を尖らせ、拗ねている。本当に妬いてくれているのが分かり、笑みが溢れる。


「自分の大切な人がお嫁に行くのはさびしいですよ」


 睦月の頬にキスをしようと顔を近づけ、ふと、我に返る。


 いや、ダメでしょ。


 無意識に一体何を……。こんなことしてるから、相手のことを考えず、歯止めが効かなくなって、シたくなるんだ。やめよう。


「如月?」
「う、卯月さんたちが待っているので行きましょう」


 途中でキスをやめた私のことを、明らかに不審がっている。誤魔化すように、睦月の背中をグイグイ押し、リビングへ連れて行く。


「…………」
「私、お、お茶持っていきますね~~」


 睦月の肩を上から無理やり押して、座らせ、キッチンに戻った。はぁ。大丈夫かな。


「……如月変じゃない?」
「そう? 皐さんが結婚するって聞いて、動揺してるんじゃない? 仲良いし、元恋人だもん」
「う~~ん、まぁ確かに。とりあえず、神谷、結婚おめでとう」
「ありがとう、1人でも祝福してくれる人がいて嬉しいよ」


 4人分のコップをお盆に乗せ、お茶を注ぐ。恋人になる前の感覚でやり過ごせば、きっといちゃいちゃは発生しないはず!!!


 深呼吸をして、お盆をテーブルまで運ぶ。コップを一人一人の前に並べていると、睦月が口を開いた。


「相談がある……。蒼に付き纏われている訳なんだけど……1回セックスしたら、もう付き纏わないって……どう思う……?」


 大方予想通り。彼女は自分が女性であることに、絶対的に自信を持っている。私に勝つと思われる、唯一の方法を出してきた。


 だが、これはチャンス!!!


 ーー如月は昨日までの怒りと自分のしたことを忘れるほど、考えすぎておかしくなっていた!!


 1回女性とセックスしてきてもらった方が睦月さんの体を元に戻すことが出来るのでは?! 女性への挿れる喜びと締まる快感を思い出させれば、軌道修正ができるかもしれない!!!


 蒼も居なくなり、睦月さんの体も元に戻って私さえ、気をつければ最早、ウィンウィン!!(?)


「キモ」
「それって、本当に付き纏わないって保証あるの? 僕は信じられないなぁ」
「如月は? 如月はどう思う?」
「えっ? ウィンウィン……?」


 ん? ウィンウィンなのか? 自分で言って分からなくなり、眉にシワが寄る。


 こちらとしてはウィンウィンだ。睦月さんだって、元カノの迷惑行為がなくなり、女性とセックス出来て気持ちよくなーーらない? ならないかも?!


 はっ……調教してしまったではないか!!!


 イケない可能性も多いにある。いや、まだ深く開拓はしていない。『……如月ぃ…俺、お前じゃないとたたないみたい…はぁっ…(照れ顔上目遣い)』とか言われたらどうしよう!! イイ、凄くイイ!! 言われたい!! ぁああああぁ!!


 いやいやいや、そんなことになったら、軌道修正以前の問題!!! 挿れたらダメでしょうがぁあぁあ!!!


 ーー振り出しに戻る。


「ぁああああぁああ!!!」


 床にうずくまり頭を抱える。どうしていいか分からない!!!!


「如月氏って知的でクールな小説家のイメージだったんだけど」
「知的でクール? 常識なしの変人の間違いでしょ、1話から読み直せし」
「1話とか僕、まだ出てない!!!」
「はい、どうぞ」


 卯月は片手でお茶を飲みながら、アルファポリスを開いて神谷にスマホを手渡した。


「……待ってウィンウィンって? ぇえ…? ヤッてこいってこと? 如月は俺が蒼とヤッても良いの?」
「良くはないですが、(元に戻すためには)致し方ないです」


 淀んだ瞳をする睦月の目を、同意を促すように見つめる。


「何それ! 如月にとってはその程度なの?!」
「反対してほしいんですか? その方法でケジメがつくなら、良いじゃないですか。む、睦月さんも……き、気持ち良くなれる訳ですし……新手のマスターベーション的な……」
「はぁ?」


 自分で言いながら、かなり意味不明だ。睦月が眉を中央に寄せ、嫌な顔をしている。ですよね。でも致し方ないんだ!!!


「こりゃ、ケンカするな。僕帰るわ」
「ぇえ~~、この状態で帰るの?」
「皐さんも待ってるしね。同棲始めましたからぁ。じゃあ、またね。2人によろしく」


 卯月が怠そうに、神谷を玄関まで見送った。遠くから神谷に手を振る。目の前にいる私の可愛い恋人は、怒りに震えていた。


「もういい!! 如月がそう言うなら、一発ヤッて、ケジメつける!! 文句言うなよ!」
「え……あ…はい……」


 睦月が立ち上がり、洗い物を片付けにキッチンへ向かった。怒ってはいるが、とりあえず作戦は成功?


 少し心が痛い。あとは睦月さんが頑張ってくれれば、上手く行くはず! 自然に過ごそう。恋人になる前みたいに。大丈夫、やればできる!!!


「先にお風呂入りますね」
「…………」


 一応睦月に声をかけ、脱衣所へ行く。着ているものを全て脱ぎ、浴室に入った。


 はぁ。やっと1人。体と頭の洗浄を済ませ、湯船に浸かる。ぬくぬく。あったかい。お風呂は癒し。睦月さんには一旦、リセットしてもらって、関係をやり直そう。それがきっと1番、良い。


 ガチャ。


「え?」


 浴室のドアをみて青ざめる。睦月さん?!?! 何故、入ってきたぁああぁああ!!! バカなのかぁあぁあ!! お風呂なんて一緒に入ったら……シたくなる!! くっ!!


「……ごめん。別にケンカしたいわけじゃないから……」


 湯桶で掛け湯をして、こちらを見つめてくる。髪、濡らすな!!


 水滴の垂れる髪。浴室の温度で染まる頬。しゅんとした顔。掛け湯で濡れた少し筋肉質の身体。うっ……可愛くてえっち……首筋にキスして鳴かせた……うぁああぁあ!!!


「うわぁあああぁあ!!! むり!!」


 勢いよく湯船から立ち上がり、急いで浴室から出た。これ以上一緒に居たら、たつ!!!


「え? 如月?」


 バスタオルで水滴を拭き取り、着替えを急いで済ませ、脱衣所を出る。足早にキッチンへ向かった。


 落ち着け。落ち着くんだ。元々距離感がちょっとおかしい人だったではないか。意識し過ぎているのはこちらだ。睦月さんにはその気はない!!! 冷静を保て!!!


 でも前よりドキドキしてる気がする。なんで?! 宣告して抑えてるから? 我慢は良くないということか?!?!

 
 あぁ~~~もう~~~。


 濡れたバスタオルに顔を埋め、その場にへたり込んだ。


「大丈夫?」


 背後から睦月さんの声。これは危険ーー。


 ぎゅぅ。


 後ろから抱きしめられた。ダメだって!!! 睦月の吐息が耳元にかかり、心臓の鼓動が早くなる。睦月が私を後ろから覗き込んできた。


「俺、なんかした?」
「何もしていないです」


 バスタオルから顔を離し、横を向く。大きな瞳と目が合った。ぐはっ。すぐ顔を逸らす。


 か、かわいい……。こちらを見ることで、目線が上向きになり、眉と目尻が下がっている。そのしょんぼりした顔、かわいすぎる。


 キスしたい。めっちゃキスしたい。顎を持って、いきなりキスして、舌を無理やり入れて……ダメだ! 抑えろ弥生!! そんなことしたら、シたくなる!! いやぁああぁあ!!!


「いやぁああぁあぁあ!!! だめぇ!!!」


 以前の失敗を踏まえ、突き飛ばさずに、回されている腕を優しく外す。早歩きで和室に入り、ふすまを閉じた。鼓動は更に早まる。


 瞼を閉じても睦月の顔が浮かぶ。頭の中は睦月、睦月、睦月、睦月。笑ってる顔が、甘えてくる姿が、喜怒哀楽が分かりやすいところが。おひさまみたいに一緒にいるとあたたかくて居心地がいいところが。そんな貴方が好き、大好き。


「……心臓がうるさい……」


 襖に背を付け、膝を抱え、座り込む。先の見えない自分たちの関係。自分の恋愛経験上、同性愛で、片方がバイセクシュアルの場合、行き着く先は別れだと分かっている。


 どこか、これ以上深入りしないように気持ちをセーブしていたのかもしれない。いつか、その日が来た時、自分が後腐れなく身を引けるように。


 そして、自分自身が傷つかないために。


 たった1回だ。たった1回許してしまった体の繋がり。ただ、それだけのことで、かけていたブレーキが壊れてしまい、睦月への気持ちと欲求が溢れ出る。


 これは、辛抱だ。睦月さんが蒼とのことが済めば、きっと全てが丸く収まる。


 睦月さんに施した身体も、蒼の迷惑行為も、私の、この、今まで以上にもっと愛情を注ぎたいという気持ちも。大丈夫、きっと大丈夫。


 元に戻るーー。
 

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