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25話(11)全裸より怖いものは黒き六本脚(G)?!妹vs踏みつけファイトです?!
しおりを挟む「お兄ちゃんがお姫さま抱っこされてる……」
「……弥生もすごい可愛がりようだな」
小春と一緒に浴室へ向かう2人の姿を、和室の襖の陰から見つめる。お姫さま抱っこに至るまでの一部始終はばっちり小春と見ていた。
お兄ちゃんが膝枕されにいって、如月に熱烈キスされて、『だっこ』の甘えんぼ、か~ら~の! お姫さま抱っこ!!!! この流れは、まさかのお風呂で?!?! あ~~ん?!?! 気になる!!!!
「今から浴室へ行く」
「中学生が見ちゃいかんって~~」
2人が脱衣所に入ったのを確認して和室から、忍び足で脱衣所へ向かう。
「なんで小春さんがついてくるの?!」
「気になるから」
脱衣所の扉の前で、音を立てないように、小春さんと扉に耳を当てる。水が流れる音は聞こえない。まだ脱衣所にいるのかもしれない。何してるのかな?
どきどきどきどきどき。
『如月っ…俺むりっ……できないっ……あぁっ……』
『睦月さん早くして……っん……もっと奥……あっ…』
ぉおおぉお!!! 脱衣所で既にえっちなことが!!!!! なんといういかがわしい!!! 一体何をしているというの?!?!
『むりだってばぁっ…あっ……やっ…ぁっあっ!!』
『…はぁ……もっと奥っ…あっ…睦月さんっ睦月さぁあんっ!!』
ハードぷれい?!?! 奥とはやっぱりあ~~ん的な結合された奥なのか?!?! むりとは?!?! 何がむり?!?! むりとは言いつつ求めるのが兄だというのかぁあぁあ!!! こここここれは気になる!!!
全身を密着させ、より脱衣所の扉に張り付く。
『……早く!!! 睦月さぁあん!!! もっとその奥!! 奥っ!! 早くして!!! 逃げる!!!』
『もう無理ーーーー!!! あっ!!! 動いた!! 無理無理!! 絶対無理ぃ!!! こういうのは卯月担でしょぉ!!!』
ん?
スパン!!
脱衣所のドアが開いた。気まず。兄の顔は青ざめている。パンツ一枚で出てくるな。
「何してんの?」
「よ、呼ばれたから……」
「睦月さん!! 早く!!!」
如月が脱衣所で大声で呼んでいる。何かあるのか?
「行ってこい」
兄が脱衣所の中を指差した。仕方なく覗いてみる。
「如月どうしたの?」
あまり見たことがない如月の下着姿に新鮮さを感じる。
「コックローチ(G)が出ました」
「まじか。殺虫剤は? それかほうきとか新聞紙はないの?」
カサカサカサカサ!!
「ぎゃああぁあぁあぁあ!!!!」
如月が脱衣所の外に瞬間移動した。
「卯月ちゃん、殺虫剤はなかったけど、ほうきはあった」
小春から玄関用ほうきを受け取り、握りしめる。あいつらはダメだ。私がやるしかない!!!
「どこいった? 黒き魔王」
「見当たらないね~~。男のくせにあいつらビビリだな~~」
カサカサカサカサ!!
「卯月!! 下!!! 床!! 洗濯機の近く!!!」
兄に言われ、床へ目線を落とす。居た!!!
「だぁあぁあぁぁあっ!!!!」
ばしっ。ほうきで叩くも、私をバカにしたように避けてくる。くそがぁあぁあ!!!
「魔王め、よくも私の鉄槌を避けたな!!!」
ばしっ。当たらない。
「小春さん!!! ちりとり持ってきて!!!」
「え? おっけー!!! 今持ってくる!!」
「こんの!!! 勘弁しろ!!! せっかくのえっちを邪魔して!!! 聴くもの聴けなかったじゃん!!!」
「本当は何しにきてたの?」
兄が冷たい目で見てくる。しまった、本音が出てしまった!!!
「え? 幸せな時間をお裾分けしてもらいにーー」
むに。
なんか踏んだ。
「……………」
「……………」
「……………」
誰も何も言わない。
「今……」
如月がそれだけ言って口を閉じた。
「居るでしょ……その下に……」
兄が如月の後ろに隠れた。
「いやいや、まさかぁ~~」
足の裏で何か動く感覚がする。
「俺、今日は銭湯に行くよ」
「私も一緒に銭湯行きます」
兄が脱いだ服を脱衣所から回収し、如月と一緒に後退りする。2人が少しずつ、私から離れていく。私をここに置いていくつもり?!?!
「ちょっと!!! 待って!!! どこいくの?!?! 動けないじゃん!! 場所分かってるんだから退治してよ!!! 足上げちゃうよ?!?!」
足の裏側で何かが、もぞもぞ動く。黒い2本の触角が見える。
「いやぁぁぁあ!!! 無理ですから!!!」
「姉さんにどうにかしてもらって!!!」
2人が私を顧みず、2階へ去っていく姿に腹が立つ。
「覚えとけよぉおぉおおお!!!」
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しゃがみ込み、足の裏に手を近づけた。
「頑張れ私!!! 見た目がアレなだけでカブトムシみたいなもの!! 西洋の方だと家の守神として、引越しの際に連れていくんだから大丈夫!!! イケる!!!」
足の裏に手を差し込み、黒き魔王を掴み取る。私の勝ちだ。私は黒き魔王に打ち勝ち、魔王を支配する者になったのだ。あはははは!!! 黒き魔王を握りしめ、玄関へ向かう。ちゃんと逃そう。殺生は良くない。
玄関に行くと兄と如月が銭湯へ行く準備をしていた。
「今から銭湯にいくの?」
「……何持ってるの?」
如月と兄の視線が手に集まる。
「黒き魔王」
「「ぎゃあぁあぁあぁあぁあ!!!!」」
如月と睦月が逃げるように玄関から走り去る姿を見送り、握っている黒き魔王を見つめた。
「なんかもう一周回って可愛く思える」
サンダルを履き、玄関の外へ出る。黒き魔王を茂みに離した。
「もう入ってくるなよ」
家の中に戻り、洗面台で一生懸命、手を石鹸で洗う。体感、コオロギみたいなもんだけど、やっぱ、手で触るのはよくない気がする。
もう、足で踏むのも手で掴むのもごめんだよ。
ごしごしごし。
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