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55話(2)ちゃんと俺の元へ帰ってこい。他の人のものになるのは許さないーー。
しおりを挟む「ごめんね、急に口なんて塞いで……」
「あ、いえ……」
如月の妹の琴葉さんだ。あんまり話したことはない。緩いパーマのかかった茶色の髪はどこか如月と似ている。物が沢山置かれた、せせこましいこの部屋に琴葉と座り込んだ。
「私も話、聞いちゃった……お姉ちゃんたちは知ってるのかなぁ?」
「分からないです……北条って誰ですか?」
「仲の良い地主さんだよ!」
「え……それって相手…澪…さんとか……?」
「知ってるの?!」
『年明けによろしく』とはそういう意味だったのか? 頭の中が真っ白になる。それと同時に如月を失うのでは? という恐怖が自分を支配する。琴葉に背中が、ぽん、と叩かれた。
「大丈夫? 顔、青いよ」
「う、うん……ねぇ澪さんってどんな人……?」
琴葉が首を傾げ、考え始めた。
「う~~ん、活発で明るいイメージはあるかな」
活発で明るい。確かに、カフェで出会った時、明るい雰囲気のある女性だった。そういえば俺、あの時、恋人ってちゃんと伝えたよね? お義父さんも断ってるのに、如月と繋がろうとする執念に怖さを感じる。
「風の噂だけどね、一度婚約して、ダメになったって聞いたことあるよ」
「破棄したってこと?」
「婚約して、同棲したけどうまくいかなくて婚約破棄になったって。理由は知らないけど。まぁ、色々あるよね~~、一緒に住んでみたら合わなかった! みたいなの」
だから婚活対象に如月が選出されてるってことなのかな。『如月氏は優良物件』神谷の言葉が蘇る。会話の中で、如月が断ると言っているとはいえ、不安だけが募っていく。
「そんなに心配ならお見合い一緒に見に行く?」
「えっ……?」
「ちゃんと自分の目で断る現場みたら安泰じゃない?!」
「確かに……一緒に来てくれる?」
「もちろん!!」
「琴葉さぁあぁあん!!!」
ガチャ。
閉まっていた扉が開いた。あ。如月。感謝のハグを琴葉にしようとしていた俺。如月からみたらこの現場は浮気の密会にしか見えない!!!!! ぎゃあぁあぁあ!!!!
「やっぱり……胸の大きな若い女の子が良かったんですね……」
「えっ? 違っ!!! これは!!! その!!! 色々訳があって!!! 言えないけど!!!」
「弥生お兄ちゃん、違うから」
「言えないようなことをシようと……!!! うっうっ……」
「何故そうなる!!!」
如月が目を瞑り、口元を押さえ、更には泣き真似をしている。なんだその演技!!! 嘘だと分かっていても、ちゃんと弁明したい俺の乙女心!!! 立ち上がり、如月に抱きついた。
ぎゅうぅ~~。
「違うんだってばぁ。俺が如月以外、見るわけないでしょ、ばかぁ~~」
「あはは、うそうそ。分かってますって。琴葉、ちょっといちゃいちゃするので、出ていけ」
「出て行ってくださいでしょ!!!」
バンッ!!!
琴葉が扉を強く閉め、部屋を出て行った。如月と2人きり。お見合い話を思い出し、抱きしめる腕にギュッと力が入る。気になるけど、聞けない。聞くことは悪いことじゃないはずなのに。
「何か事情があったとしても、密室に2人きりは少し妬けるなぁ」
「あ……ごめんね……んっ…待っ……でも……その……きさらぁっ…」
如月の手が素肌に触れ、背中を優しく撫でる。ただ撫でてるだけなのに肩がビクッと上がってしまう。
「可愛い。背中も感じるの?」
「如月が俺の身体をおかしくしたんだよ……?」
目線を上げ、如月をじぃっと見つめると、手がゆっくり下がり、ズボンの中に入った。俺の片尻が下着の上から掴まれる。指先が窄みに触れ、鼓動が早くなる。
「…あっ……如月っ…んっ……お風呂入らないと……」
「そうだね、入ろうか」
何かを誤魔化すように、俺の身体へ触れたように思えた。俺に妬いておきながら、明日女と2人で会うんだろ?
下唇を静かに噛んだ。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
ーー2日 朝
朝食を食べ終わると、如月はそそくさと部屋に戻ってしまった。部屋からリビングに戻って来た時には、緩い部屋着からジャケットにタートルネック、テーパードパンツと、緩さを残しつつも外向きの格好になっていた。
結局、昨日、如月は俺にお見合いの話はしてこなかった。
断るし、余計なことは知らなくて良い。くだらないことで傷つけたくない、そういった類の如月の配慮だと思うが、言って欲しかった。
「どこ行くの?」
「少し、野暮用」
「そう……」
言わないか。玄関に向かう如月の後ろをついて行く。まぁ、俺もすぐ後を追うけど。如月が靴を履き終わると、俺の頬を手で包むように撫でた。
「心配することは何もないですよ」
「行かないでって言ったら?」
「それは出来ませんが……」
苦しげな表情で如月が俺を見る。分かってる。それは出来ない。でも、俺の素直な気持ち。
「睦月さん、私の首筋に痕付けて?」
「えっ? なんで? 困るんじゃない……?」
「印があった方が睦月さんを感じられて、頑張れる気がする……」
如月が俺の目の前で膝をつき、両手を腿に乗せ座った。指先で如月のタートルネックを下げ、湿らせた口唇で首筋を吸い上げる。紅い、愛情の証がくっきりと首筋に滲んだ。
「ん……付きました?」
「うん、くっきり。俺も上手に付けれるようになったでしょ?」
「ふふ、そうですね」
下げたタートルネックを戻し、如月の頬を両手で挟む。前に屈むと、額と額がこつんと当たった。
「ちゃんと俺の元に帰ってきて。他の人のものになるのは許さないから」
「……分かってますよ」
如月の顔を自分へ引き寄せ、唇を重ねる。何度も啄むのではなく、目を閉じて、口唇を押し付けた。
ここが如月の実家だと分かっていても、家族の人が俺たちのこと見ていたとしても、今は如月が俺の元に帰ってこれるように願いを込めて、口付けを交わす。
「ーーはぁっ……いってきます、睦月さん」
「いってらっしゃい、如月」
両手から如月の顔がすり抜ける。大丈夫、ちゃんと帰ってくる。そう、自分に暗示をかける。立ち上がった如月に、ぎゅっと抱きしめられた。
「愛してますよ」
「……うん」
「ふふ、そんな顔で見つめられると、行きたくなくなっちゃうなぁ。いや、元々行きたくないんですけどね」
ちゅ。
俺の額にキスすると、頬が赤くなっている俺を見てクスッと笑い、今度こそ、扉の向こうへ出掛けて行った。
スマホをポケットから取り出し、琴葉に今如月が家を出て行ったことを連絡する。琴葉は先に外で見張をしている。ちょっと待たせちゃったかな?
玄関扉の覗き穴から如月の姿を確認し、気付かれないように、外に出た。
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