走る方舟の憑依玩霊達(ファントムズ)

丸ーニィ

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第三章二部 ディルムン襲撃編

百七十四話「呼び水」

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 ******
 
 場面変わり、ここは夜の病院。

 フォッカー達の居るような亡霊の病院ではなく、人間が入る病院である。
 その病院の非常灯が光る薄暗い廊下を飛ぶ小さな物体。

 赤い装甲のロボットプラモデル    ……陰陽師の頭目、芦屋みちよのヴァリアント・ドーマンである。
 
 「頭目様、やはり今行くんですね……事実を確かめに」
 
 黒服の通信を聞く頭目、ある目的があった、眠っているユナの本体が何故動いて居るのかが気になっているのである。
 
 「ワシも知ったときは、ジョークでも噛まして済ませた訳じゃが……気になっておってな」
 
 病室の扉の前にヴァリアント・ドーマンが到着した。
 
 「人間の体のままならこんな苦労せんのじゃがな、病院一つ入るにしてもこんなにコソコソせんとイカンとはな」
 
 愚痴を語る頭目は、苦労しながらも病院に潜入したのである。
 何故なら今(夜)でしかそのユナの様子を見れないのだから……
 
 「よし入るぞ! って鍵とかかかっておらんじゃろうな? 」
 
 病室の前で頭目がドアをスライドしようと、ヴァリアントドーマンの体をピョンピョンと跳ねながらノブに手を掛けようとすると……
 
 「どうぞ……開いてますよ」
 
 突然の声……間違いなくその声の主は……ユナだ。
 
 「なんじゃと……」
 
 この声は頭目はまだしも、黒服達までもがザワつき始める。

 その扉の向こうに居るのは眠っている筈の少女、ユナなのである。
 霊体は間違いなくぬいぐるみの中の札に囚われているのだろう、だが頭目は臆することもなく病室の扉をスライドさせた。
 
 「お主、いったい何者じゃ、霊体の居ない留守の体に取り憑いた悪霊か! 」
 
 病室に飛び込む様に入った頭目の駆るヴァリアントドーマン、ユナの姿を確認しようと飛び込み、病室の分け隔ているカーテンを霊体の手で払う様に開ける。
 
 「騒々しくすると誰か来るかもしれませんよ、まあここの病室の方々は霊体が抜かれている人ばかりで誰も起きないでしょうけど……」
 
 病室のベッドに座る少女、明らかにしっかりと意識を持って居るようで、魑魅魍魎に乗っ取られている様子には見てとれない。
 頭目はその少女ユナに取り憑いたと思われる意識体に問いかける。
 
 「一体お主は何者じゃ……何故その体に入っておる……」
 
 少女は答える。
 
 「何者も何も、私はユナです」 

 「ですが……少々、"未来"からやって来ました、ちょっと統合性を持たせる為にね」
 
 このユナの発言は、頭目や中継を受けている黒服達を困惑させる。
 "少々未来から"と言うワードは余りに奇妙な因果関係を醸しだしていた。
 
 「未来……じゃと?」
 
 困惑している頭目を尻目に、ユナ(本体)は立ち上がり、体を動かす仕草を見せる。
 
 「運動しとかないといけないんですよ、しばらくこの体は起きないでしょうし……何より運動するのが結構新鮮で、快感なんです」
  
 「それは、ようわかった……だが未来から来たと言うのはどう説明が付く!? 」
 
 頭目は疑いの目をユナの本体に向けて言う。
 ヴァリアントドーマンはいつでも徐霊の可能性を考慮している。
 
 「説明しようにも、証明するものを持ち合わせていないんです、……でも頭目さん、私は家族に安心をもたらすためにもやって来た訳ですから……」
 
 「家族じゃと? 」
 
 頭目は家族と言うワードに、ハッと思い当たる節があった。
 この一連の騒動にユナの家族と言えば、余りにも落ち着いているのである。
 
 「ええ、私はいち早く家族の枕元に現れて安心するようにと"神託"と言う形で、未来の残滓を授けました」
 「あれほどの事件なのに、寝たきりの私に対して慌てる素振りは無かったでしょう? 」
 
 それを聞いた頭目が、ヴァリアント・ドーマンの後ろに見える霊体のまま愕然としている。
 
 「つまりは……何か? お主の手のひらで全て転がされていると言うのか!! 」
 
 一泊置いて頭目が言う。
 
 「「お主の……目的は何じゃ!! ……未来のユナよ!! 」」
 
 ベッドに再びユナ(本体)が座る、そして頭目にここに来る様にと、ベッドの上を指して催促する。
 
 「こちらにどうぞ……」

 「大丈夫、何もしないわ、ただ病室の監視はされているだろうから一応警戒はしていて欲しいの……」
 
 ヴァリアントドーマンでベッドに上がった頭目は、その言葉に反論する。
 
 「監視も何も、陰陽庁の息が掛かった病院じゃ」

 「何があってもワシが居るなら無意味じゃぞ! 」
 
 ユナ(本体)はそれを聞くと、何か知っているかのように語る。
 
 「陰陽師さん達にとっては、被害者の一括管理が出来て、人員も統括出来る好条件な施設として選んでいるのでしょうね……でも」
 
 「未来に起こる滅亡の……」
 
 「"呼び水"はここから起こったと踏んでいるわ……」
 
 ユナ(本体)の言葉に、頭目は理解が追い付かない。
 だが、被害者を集めたと言う行為は陰陽庁のトップである陰陽寮の幹部があくまで管理一括であり、それ以外に意図など無いと知っての事だが。
 
 「その滅亡とか言うのは何じゃ!? 以前に二依子に書いてもらったN型巨大霊体事件報告書にあった"札が見せた光景"とか言う奴か? 」
 
 報告書……それは事件の際、概要を詳しく当事者から聞く為に本人から書いてもらったモノだ、如何なる滑稽無糖でも良いから全て報告して欲しいと二依子に書いてもらった。

 結果、本当に滑稽無糖な内容だったが、しょっちゅう滑稽無糖な報告書を出していた頭目にとっては、余り疑いは持たなかった様子。
 
 「二依子さんってば、随分色々書き込んだみたいね、でもあくまでそれは一部でしかないの、まあ仕方ないかな」

 「でも結局、未来でも一部の情報だけしか掘り出せなかったの……」

 「ここから先、この場所で起こる"ナニか"は、完全な暗黒史よ……」
 
 ユナ(本体)はそう言うと、立ち上がって運動を始めた。
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