走る方舟の憑依玩霊達(ファントムズ)

丸ーニィ

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第三章三部 ZPD襲来!!

百九十三話「PARUDO」

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 「紀伊ちゃん、どうするの? 」
 
 ユナの問いかけに沈黙する紀伊。
 そしてしばらくして彼女は決断をする。
 
 「みんな、逃げ出すのです……」
 
 「ここから、この国から、今すぐにでも……」
 
 「いち早く!! 」
 
 この声は切羽詰まった感情が溢れている様子であった。
 そして、顔を叩いて一旦落ち着いてから再び……
 
 「関係者各種に通達、一部の住民は脱出権限があるのです。」
 「海岸線に出る水路が塞がれていないと思われるのです、よって仮入国の住民は退去を勧告するのです。」
 
 ユナはその紀伊の行為に、間違いの無い決意を感じとる。
 
 「紀伊ちゃん、退去させてどうするの? 」
 
 「簡単なのです、この国自体が動き出せば良いのですよ……」
 「そして外からの侵略を回避するのです、奴等はきっとそれを望んでいる……」
 
 ユナが聞いた言葉には「畏れ」と「不安」が満ちていた。
 ユナは問う。
 
 「紀伊ちゃん? 震えてる? 」
 
 「この国の本当の姿は戦艦なのです。」
 「大和級の大戦艦なのですよ……もう大船です……安心です…!! 」
 
 今までの威勢はどこにやら、その目には混乱のぐるぐるがハッキリわかる位の慌てぶりだった。
 
 (やっぱり、出航出来るんだ……だけど……これは……)
 
 ユナは……ははーん?っと鼻を吹かして気が付いてしまった。
 
 「そうか……そうなのね」
 「いわゆる、 "処女航海" ってヤツなのね!! 」
 
 「そう言う言い方辞めるのです!! ちょっと言葉が卑猥なので嫌いなのですよ!! 」
 
 紀伊が困って反論する。
 だが状況は芳しくなく、陰陽師大隊は迫っており。
 到着も時間の問題だ。
 
 「入口にいる"怪異"を呼び戻したのです。」
 
 「怪異? 」
 
 ユナは突然出てきた、"怪異"と言う単語に首を傾げた。
 紀伊は語る。
 
 「近年の亡霊増加傾向において、この国の存在がハッキリ話題に出て人が直接入るのを警戒するため」
 「我々亡霊側で調伏した怪異を配置しているのです。」
 
 「怪異って!! 妖怪の類いって事ですよ!! 」
 
 ユナが興味深く聞き入る。
 ちょっとワクワクしている。
 紀伊は怪異について語る。
 
 「怪異は、人間を惑わせる幻覚や混乱と恐怖で足止めを行う様に、指令を与えていて……」
 「亡霊相手は手を出さないように依頼した"スカウト"なのです」
 
 「人には "きさらぎって感じの駅" に見えるらしい、近代的な怪異で御しやすいのですよ」
 
 その怪異にユナは思う。
 
 「マジかー、その駅観光してえええ!! 」
 
 興味が深々としていた。
 だが紀伊は打って変わって真剣な眼差しになった。
 
 「ユナ……」
 
 「帝として、最期の別れが来たのです……」
 「貴方達はこの国から逃げ出して……何処か遠くに行くべきなのですよ……」
 
 紀伊はここで別れの合図を切り出したのである。
 しかし、ユナは首を降る。
 
 「未来の私にアイツらをブッ飛ばすように言われたのよ、それにその黒い霊糸回路の剣は未だに紀伊ちゃんを捕らえてる」
 
 その言葉に呼応するかのように、ユナのクマボディの札の霊力が膨れ上がる。
 
 「だから、ここで誓うのは別れじゃない!!」
 「見てて!! アイツらやっつけて、儀式の水盆の上で未来の私に言ってやる!!」
 
 「 "この私" が "出来る私" だと!! 」
 
 紀伊の手を握りしめた霊体のユナ、この宣言は対象(未来のユナ)に対しての言葉だ。
 
 「いくぞおおおお!! 出撃!! 」
 
 司令塔から直接戦地に射出されるように向けたカタパルトデッキ。
 ユナは足をかけて、霊力で起動させて飛び立つ!!
 
 「今私はとっても!! 気合い入ってるんだからあああ!! 」
 
 今宵明らかに "持たざるクマ" は "持ち得ても何も出来なかったクマ" を超える為に戦場に赴くのであった……
 
 例えそこが決死の戦場(いくさば)であっても……
 
 ******
 
 「……」
 
 「なるほど……」
 
 「現状はそんな状況なのか……菊名君、愛華君……実況映像を送ってくれてありがとう、出来る限り続けて配信をしていて欲しい」
 
 この声の主は、ポゼッションバトル運営のパルドワーカーCEO、ダニエル・ロイドだ。
 
 彼はポゼ部の二人、菊名と愛華に連絡を取っていて、この戦いの映像を配信してもらっていたのである。
 
 「悪いけど余り近くでの実況は出来ないわ、こっちも必死で逃げてきて電波の届く状況を逆手にとって送ってるに過ぎないのよ」
 
 プレイしていた憑依バトルMMOディルムンのゲームは一時的に中断されている訳で……
 
 プレイエリアに制限が無くなったのを利用して、ディルムン用のフィギュアボディに取り付けた大型ガンカメラ(大砲に偽装した撮影機材)を構えているのである。
 
 菊名は美少女フィギュア、愛華はサブで用意していた二依子謹製のドムドムしたスカート付きのロボットプラモでこの状況を放送していた。
 
 「ねえ、アレってザジ君達の仲間の亡霊達じゃない?」
 
 愛華がカメラをズームして確認する、カンチョウのブロックトイで造ったメックスーツとフォッカーのドローン、そしてパルドのオリジナルボディのポンコツロボが、ZPDタライオスとの交戦を繰り広げる。
 
 更に援護する地下帝国戦車隊も含まれて、大攻防戦が展開されていた。
 
 「ムム……」
 
 ダニエルが映像に釘付けになっている。
 この様子に秘書のルカが話しかけて来た。
 
 「どうしたのダニエル? ソコに気になるモノでも映っているの? 」
 
 ダニエルはルカの問いに、目を見開いて言う。
 
 「アレは……"パルドワン(PARUDO=ONE)"だ!! 」
 
 「何ですかソレ、パルドさんの事ですか? 」
 
 声を聞いていたポゼ部の菊名がダニエルの呟きに問いかけてきた。
 ダニエルは言う。
 
 「彼の名前を聞いた時はまさかな……としか思わなかったが、間違いはない……あのロボット……」
 
 「私の父が湾岸戦争時代に、国から謎の技術を提供されて数台造ったと言う"知性のある"戦略ロボットだ」
 
 「ただ思いの外、技術がうまく行かずOS起動に失敗し何処かの倉庫に捨てられて、知らないうちに裏市場に転売されて行方不明になっていた……」
 
 「PHANTOM」
 「AND」
 「REMOTECONTROL」
 「UTILITY」
 「DRONE」
 「OS」
 
 「つまり、言うことを聞く亡霊の有用性を見いだしたオペレーションシステムと言うモノだったらしいが対話がうまく行かず……」
 
 「お蔵入りとなったと聞く、私も資料でしか存在を知らない……一族運営のわが社の過去の汚点だと言われている」
 
 その話を聞いて菊名が言う。
 
 「でもそんなの関係ない位にイキイキして戦ってます、コミカルに動いててロボットじゃないみたい……」
 
 ダニエルにもその姿が面白く見えてきた様だ。
 
 「彼にも我々の宇宙開発計画に参加して貰いたいな、この戦いに生き延びていたらスカウトのメールを送りたいよ」
 
 「亡き父の忘れ形見でもあるからね」
 
 ダニエルは、オフィスに飾っていた家族写真を脇に見つめて言った。
 
 ******
 
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