俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第三章 「アセンディング・トライアングル」

第17話 「初陣」

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 翌日、まだ陽が昇りきらないリアディスの朝。

 それでも取引所のある区画には、すでに無数の足音が響いていた。

 ここは、空気の匂いが違う。熱気と焦燥、そして欲望の匂いがする。

「……アルさん、緊張してますか?」

 隣を歩くアイラが、いつもより少しだけ声を低くして俺を見上げる。その金色の瞳は、不安と、ほんの僅かな決意の色を帯びているように見えた。

「いや、してない。……むしろ、楽しみだ」

 そう言ってみせたが、内心では鼓動の速さが気になっていた。これは緊張なのか、それとも前世でも感じたことのある、高揚感。将又はたまた、相場に再び立ち会える喜びか。

 取引所の入口に立つと、俺は深呼吸を一つし、扉を押し開けた。今日は、今年最後の取引日ということもあり、ロビーにはいつも以上に多くの人々が行き交っている。俺とアイラは人混みをかき分け受付に向かい、リアナに挨拶をする。

「おはよう、リアナ」

 リアナは笑顔で応じた。

「おはようございます、アルヴィオさん、アイラシアさん。お二人とも、いよいよ最初の取引ですね。頑張ってくださいね」

 リアナは優しい声で励ましの言葉をかけてくれた。

 アイラは少し緊張しながらも微笑んで、「ありがとうございます」と頭を下げる。

「それでは、行ってきます」

 俺は軽く手を振り、リアナに別れを告げる。

 長い回廊を抜け、中央広場に足を踏み入れる。
 
 巨大な球体アーティファクト――トークンコアが浮かぶ中央広場には、すでに無数の人々が集まっていた。売買の準備をする者、黙々と魔導スクリーンをにらむ者、戦の始まりを待つ戦士のような空気が広場を包んでいた。俺とアイラが歩みを進めると、その場にいる数人の視線がちらりと向けられた。

 その視線が、俺ではなくアイラに向いていることに気づくのに時間は掛からなった。

「……あれ、ルミナスの」

「廃棄姫が、取引に? 見世物か?」

 ささやき声は、小さくとも耳に残る毒を含んでいた。アイラは何も言わずに俯いた。俺は歩みを止めず、念話を送る。

<気にすんな。しっかり稼いで見返せばいい>

 アイラは顔を上げ、少しだけ微笑んで頷いた。

 そのとき、群衆のざわめきが、唐突にひとつの方向へ流れた。

 広場の奥から、ゆったりと現れた一団――取引所で最も影響力を持つと噂される大商会『エストラン商会』の取引魔法士たちだ。周囲の魔法士や投資家たちは自然と道をあけ、緊張感が走る。不覚にも一瞬気を取られてしまったが、自分たちのことに集中する。

「……行こう、アイラ」

「はい、アルさん」

 アイラが魔法陣を展開すると、トークンコアの魔力場に乗ってゆっくりと浮遊してく。俺は、地上のブースからその様子を見守る。ここからは、念話の出番だ。

<アイラ、行けるか?>

<はい! いつでも行けます!>

 そして…

 カンカンカンカン!

 鐘が鳴る。

 取引開始の合図だ。

 鐘が鳴り響いた瞬間、トークンコアを囲む空間が一気に熱を帯びた。

 空中の魔導スクリーンには、株式、債券、商品といったあらゆる銘柄の情報が文字列となって流れ、視認した瞬間にはすでに次の情報に置き換わっていた。魔法士たちはその情報を目で追うのではなく、リクエストリンクによって直接取り込んでいく。

 パートナーのアルカナプレートには魔法士が取り込んだ情報が表示される。俺は焦る心を抑えて、深く息を吐いた。

<アイラ、リクエストリンクは問題ないか?>

<はい、アルさん。トークンコアとの接続、正常です。今、ご指定の銘柄の買気配と売気配、出来高、時間ごとの変動幅を読み込みました>

 アイラの声は、落ち着いていた。初陣の緊張はあるはずだが、それを微塵も感じさせない口調だった。アイラの取り込んだ情報が、アルカナプレートへ反映されていく。周囲の魔法士たちは、すでに次々とオーダーフォームを展開して売買の魔法を打ち込んでいた。いくつもの魔法の軌跡が交差していくのが見える。

 だが、俺たちはまだ動かない。まずは観察だ。ここで下手に手を出せば、情報を持つ大口の餌になる。俺は、アルカナプレートから浮かぶ画面に銘柄リストを表示する。

<アルさん、最初の取引は何を買うんですか?>

<目星はつけてる。でももう少し待ってくれ>

 手元の資金を確認する。

――22,145ディム。

 そんな時だ。

 『サンクタム同盟』の値動きが、微妙に不自然なのに気付いた。値動き自体は緩やかだ。だが、板の厚みと出来高が、明らかに先日までと異なる。誰かが静かに、しかし大量に買い集めている気配がある。 

――なにか、ある。

 俺は、直感で確信した。これは単なる材料待ちではない。今この瞬間、誰かがを持っている。 

<アイラ、サンクタム同盟……買っていくぞ。登録番号は06861だ>

<わかりました。いつでも行けます!>

<アイラ、気取られないように買っていくぞ。まず34.2ディムで100株だ>

<はい!>

 すぐさま、アイラは右手を掲げ、詠唱もなしに魔法陣を展開する。文字が浮かび上がり、オーダーフォームの構文が編まれていく。その動きは、一切の迷いはなく、魔術式は正確だ。

――約定。

<初約定だな。問題なさそうだ>

<そうですね。でも、緊張しました>

<大丈夫だ。アイラ、次も行くぞ>

<34から33ディムまで0.2ディムごとに40株ずつ指値さしねを入れてくれ>

<わかりました。行きます!>

 ピシィッという音を伴って、魔法陣が6つ展開される。アイラは同時発動で6つのオーダーフォームを起動していた。並み魔法士なら、1分はかかる注文をほんの数秒で難なくやってのけていた。

 梯子注文ラダーオーダー指値さしねが、次々と約定していく。サンクタム同盟の株価は、買いが入った直後に、逆に値を下げ始めたのだ。

――これは、おそらくチャンスだ。

 サンクタム同盟は、普段あまり値動きがない安定的な株だ。多少リスクを取っても問題ない。

<32.9ディムで100株の買いだ>

<了解です!>

 さらに買い入れる。

 そして、次の瞬間――空中の魔導スクリーンが明るく光った。

『速報! センチネル王国東部・ブランタイア渓谷にて、未発見のダンジョンと思われる構造体を確認。センチネル王国政府は、発掘及び冒険者への出動要請を表明』

――来た!

 俺は叫びそうになるのをこらえた。サンクタム同盟は、センチネル王国やサンクタム山脈周辺で活動する最大手の冒険者クランだ。新ダンジョンの発見は、彼らの業績拡大を意味する。

 チャートが跳ね上がる。サンクタム同盟の株価が、怒涛のように買われ始めた。今、投資家たちの意識は、サンクタム同盟に向いている。だが、すぐに関連銘柄へも意識が向くはずだ。

 俺は、瞬時に関連銘柄を思い浮かべる。

【トークンコア登録番号06773】冒険者クラン センチネル冒険者組合
【トークンコア登録番号07011】ファルクス装備開発
【トークンコア登録番号02768】ツヴァイ商会

<アイラ、関連銘柄を拾う。06773センチネル冒険者組合、07011ファルクス装備開発、02768ツヴァイ商会だ。成行《なりゆき》で1500ディムになる株数で買いを頼む>

<えっと…はい、わかりました!>

 今度は、3つの魔法陣が一気に起動する。

<約定しました!>

 アルカナプレートを確認する。

――高速かつ正確だ。

 サンクタム同盟の株価は、スクリーンに速報が出た瞬間から爆発的に動き始めた。トークンコアに向けたオーダーフォームの数が跳ね上がり、売気配が次々と飲み込まれていく。

――完全に、火がついた。

 買いを入れていた他の銘柄も少し遅れて動き出す。

 センチネル冒険者組合はセンチネル王国の中堅冒険者クラン。

 ファルクス装備開発はダンジョン向けの装備を手がける有名な軍需企業。

 そして、ツヴァイ商会は、センチネル王国内で敵なしのアイテム販売業者だ。

 それらの銘柄も、ほぼ同時に――飛んだ。

「センチネル冒険者組合の上昇率が、15%を突破したぞ!」

「ツヴァイ商会も、動意づいている!」

「ファルクス装備、出来高急増!」

 周囲から、様々なざわめきが聞こえてくる。しかし俺は、まだ手を止めなかった。

<アイラ、サンクタムの追撃、いくぞ。高値に乗せろ。50株成行で!>

<了解です! いきます!>

 魔法陣がさらに展開され、浮かび上がる文字列が空間に浮遊する。光の線がトークンコアへ吸い込まれ約定が成立する。アイラへと視線を向ける。その金色の瞳に宿った光が、まるで今までとは違う輝きを放っているのがわかる。

<アルさん、わたし、もっといけます。今なら……>

 アイラも相場に当てられ熱くなっているみたいだ。だが、そんなときこそ冷静さが大切だ。

<もう十分だ。利益は出た。ここが天井だ>

 俺は、市場のでそう感じた。買いが勢いづいたときの加速。だが、あまりに急すぎる上昇は、必ずどこかで調整される。

<全銘柄、売り転換だ。アイラ、一括でいけるか?>

<……はいっ。任せてください!>

 アイラの返事と同時に、4つのオーダーフォームの魔法陣が空中に現れる。その起動速度は、まさに風のようだった。売りの注文が放たれ、俺たちの保有株は次々と約定していった。高値から数ティック下ではあるが、十分すぎる成果だ。

 息をつく間もなく、取引の通知が続々と届く。しばらくして取引終了の鐘が鳴ると、広場の熱気は一気に冷めていく。アイラが魔法陣を収束させて、地上に降りてくる。
 
「お疲れ様、アイラ。初めての取引、完ぺきだったな」

「ありがとうございます!」

 浮かんでいた魔導スクリーンの情報表示も徐々に消えていき、魔法士たちの多くは、今日の戦績を記録するために、アルカナプレートに向かっていた。中には、肩を落とす者も、勝って笑っている者もいる。

 その中で、俺たちの一日目は――

「利益、合計で8,244ディムです。アルさん、すごいです」
 
「初戦としては、上出来だな」

 初日の利益は8,000ディムを超えた。だが、油断はできない。

 相場には、天使と悪魔が共存している。どちらが笑うかは、常に読めないのだ。

「運がよかっただけかもしれない。次も、こううまくいくとは限らない」

「それでも、嬉しいです。わたし、役に立てた気がして」

 アイラの笑顔には、これまで何度も踏みにじられてきたという名に、ようやく灯った小さな誇りが見えた気がした。広場を後にして、各種手続きを行うために受付を訪ねるとリアナが笑顔で出迎えてくれた。

「お見事でした、アルヴィオさん、アイラシアさん。おふたりとも、初陣とは思えない見事な連携でしたね」
 
 リアナの笑顔は、なぜか誇らしげだ。リアナは少しだけ声を落とすと、俺の耳元で囁いた。

「今日の銘柄選定、お見事でした。次回からは、注目を集めるかもしれません。次は……周囲からのにも、注意したほうがいいかもしれません」

 そう言ってリアナは、いつもの営業スマイルに戻った。その言葉が意味するところは、十分理解していた。リアディス取引所。ここは、儲ければ賞賛され、外せば笑われる――それだけの単純な場所じゃない。

 この世界でも、やっぱり市場は市場だ。誰もが金の匂いに敏感で、容赦がない。利益を得れば、誰かの利益を削る。それは、敵を生むということでもある。

「気を抜かない方がいいな、アイラ。ここからが、本当の勝負だ」

「はい。アルさんがいれば、わたし、戦えます」

 強い覚悟を宿したその声に、俺もわずかに口元を緩めた。こうして、俺たちの初陣は終わった。

 得たのは、利益だけじゃない。魔法が使えない俺と、最弱の魔法使い。その二人が、魔導と経済の戦場で確かに戦えた。

――自信だ。

◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆
 【資産合計】30,388ディム
 【負債合計】0ディム
 【純資産】30,388ディム
◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆
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