俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第七章 「ディストリビューション」

第63話 「ケモ耳チェイスⅡ」

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「囲め!」

「逃がすな!」

 黒装束の追っ手が倉庫の屋根や路地の両端から飛び降り、イオナを取り囲む。十人を超える影が一斉に迫り、短剣が鈍く光を放つ。

 追い詰められたイオナが小さく悲鳴をあげた。

 同時に、ミラが地を蹴り、影の一人に飛びかかる。短剣同士が火花を散らしてぶつかる。

 俺とアイラも続いた。

 アイラが光魔法を構える。だが、イオナと敵が近すぎる。

「くっ……!」

 掌に集めた魔力が光弾となって膨らみ、軌道を描こうとする――けれど、その先にはイオナの背。

「……撃てない!」

 アイラの声が震えた。魔力の流れが中途で滞り、光弾が不安定に揺れる。

「アイラ!」

 俺が叫ぶ。だがアイラは歯を食いしばり、必死に出力を落とす。

「当てたら……イオナさんに……!」

 追っ手の刃が迫る。ミラがそれをはじくが、数が多すぎる。アイラの魔法が撃てないことで、戦況はじりじりと押されていく。

 そのときだった。

 イオナが灰色の瞳をこちらに向けた。

 恐怖に揺れる瞳の奥で、必死に何かを訴えている。両手は小袋を握りしめ、指先が震えている。

――何かをしようとしている?

 アイラの魔法の射線上にイオナがいるように、俺たちが、イオナの射線上にいる。

――そうか!

 俺は瞬時に判断した。

「左右に散開だ!」

 ミラが驚いたように目を見開いたが、すぐに理解した表情をする。尾を振り払い、敵を押し返しつつ脇へ跳ぶ。

 アイラも息を呑み、魔力を収束させてから、俺の合図に従って横へ移動する。

 道の中央、射線がぽっかりと開けた。

 イオナが、袋をから何かを撒く。

 無数の小さな粒が、石畳に散らばる。

 次の瞬間――。

 緑が爆ぜた。

 芽が一斉に伸び、瞬く間に蔓となってうねりを上げる。木箱を押し倒し、壁を突き破り、黒装束の追っ手たちを絡め取った。

「なっ……!」

 驚愕の声をあげる影たち。

 腕や脚に絡みついた蔓が容赦なく締め付け、短剣を落とさせる。

 一瞬の隙。

 俺たちは、緑の障害物を搔い潜りイオナを守るように立ち塞がる。

「こ、こんな魔法……」

 アイラが息を呑む。視線はイオナの足元から伸びる蔓に釘付けだった。

 イオナの小袋はすでに空。残ったのはイオナの蒼白な顔と震える肩。

「やはり……その力」

 追っ手の一人が低く呟き、懐から符を取り出す。火の印が走った。

「焼き払え!」

 叫びと同時に、炎の奔流が路地を駆け抜けた。

 蔓が一瞬で炭化し、焦げた匂いが立ちこめる。

「チッ!」

 ミラが舌打ちし、尾で炎を散らす。

 イオナは顔を伏せ、歯を噛みしめる。

「アイラ、今なら撃てる!」

 俺は叫び、アイラに合図を送った。

 アイラは大きく息を吸い込み、両手を前に突き出す。

 光弾が編み上げられ、狭い路地をまっすぐに貫いた。

 眩い閃光が炸裂し、炎を操っていた追っ手を吹き飛ばす。

「やった……!」

 アイラの肩が上下に揺れ、汗が額を伝う。

「……ふう。危なかった」

 俺は小さく息を吐く。だが安心する暇などない。

 路地の向こうから、さらに黒装束が姿を現した。

「まだ来るのか」

 ミラが歯を剥き、唸り声を上げる。

「ここで長引けば……不利だぞ」

 俺は視線を走らせた。まだ燃え残る蔓、焦げた木箱、震えるイオナ。

――どう守るか。

 考える暇もなく、再び刃の影が迫ってきた。
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