俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

文字の大きさ
97 / 173
第八章 「ディセンディング・トライアングル」

第72話 「多分色々」

しおりを挟む
 場所を移して、セレスティア商会の応接室。

 テーブルを囲むのは、俺、アイラ、フィリア、そしてティタニア。ラウラはティタニアの傍らに立っている。

「――それで、事情を聞かせてもらえるかしら?」

 フィリアが穏やかな声で切り出す。

 ティタニアは姿勢を正し、まっすぐにフィリアを見返す。

「事情といっても、大したことじゃないわ。帝都でちょっとした騒ぎがあってね。殺されそうになったから逃げてきたのよ」

「ちょっとって……」

 ラウラが困った表情で呟く。

「ええ、そう。ちょっと。クーデターという名の、つまらない家族喧嘩よ」

 ティタニアは平然と笑った。

「城の外に出るとき、ちょっとだけ危なかったんだけど、クロエに助けてもらえたっていうところね」

「クロエが?」

 俺が思わず聞き返すと、ティタニアは微笑んだ。

「約束がどうのって言ってたけど、どういう事情で助けてくれたか、詳しくは知らないわ」

「……いかにもクロエらしい」

 俺は、苦笑しながら答える。

「それで、ここに来たのはクロエのすすめか?」

「そういうこと。クロエにと言われたの。私、悪運だけは強いのよね。だから大丈夫かと思って」

 ティタニアは、カップに手を伸ばした。

 フィリアは、しばらくその様子を眺めていたが――やがて、柔らかく笑った。

「まあ、事情は理解しましたわ」

 そして、わずかに身を乗り出す。

「ここにいるのは構いませんけれど――タダでは置きませんわよ」

「……働けということ?」

「ええ。その通りですわ。アルヴィオの役に立っていただきますわ」

 ティタニアが目を瞬かせる。フィリアはさらりと続けた。

「あなたには、アイラの補助。取引魔法士として、アルヴィオと共に取引所で働いてもらいますわ」

「わたしが……取引所で?」

「ええ。あなたも、経済とお金についてアルヴィオから学んでおいた方がいいですもの。それにそちらの方が結果的に安全かもしれませんわ」

 ティタニアはカップを置き、ゆっくりと頬杖をついた。

「取引所ね……悪くないわ。退屈しなさそう」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 アイラが慌てて手を上げた。

「フィリア様、この方、アズーリアの王女なんですよ!? そんな立場の人が取引所で働くなんて――!」

「バレなければ問題ありませんわ。そういう意味では、わたくしと同じでしょう?」

 あっさり言い切るフィリアに、俺は頭を抱えた。

「仮にも敵国の王女だぞ? もし誰かに知られたら――」

「その点は心配いらないですわ。我に策ありですわ」

 フィリアが手を叩くと、すぐに扉が開き、エルヴィナが入ってきた。

 手には一本の小瓶。淡い紫色の液体がゆらゆらと光を反射している。

「お呼びでしょうか、フィリア様」

「ええ。それをティタニアに」

「……これは?」

 ティタニアが首を傾げる。

 フィリアがにこやかに答える。

「イオナの新作ですの。髪の色を一定期間変える魔法薬。これであなたの目立つ銀髪をどうにかできますわ」

「へえ……そんなものまで作ってるのね」

 ティタニアが興味深そうに小瓶を手に取る。

 瓶の中では液体がゆっくりと揺れ、まるで光を吸い込むように輝いていた。

 そのタイミングで、廊下から元気な声が響いた。

「ちょっと待ってー!それ、試すなら僕にも見せてー!」

 扉が勢いよく開く。青髪の獣人――イオナが現れた。

「……やっぱり来たわね、イオナ」

「僕が作ったのに、僕抜きで実験しようとするなんて酷いよ。フィリア」

 イオナは駆け寄ると、ティタニアの目の前に立った。

「飲むだけで髪と瞳の色が変わるんだよ! 3週間は持続するはず。副作用は――、ない!」

って……」

 アイラが冷たい目を向ける。

「だ、大丈夫! たぶん!」

 イオナは両手をぶんぶん振って弁解した。

 ティタニアはそんな様子を見て、ふっと笑う。

「面白そうね。ぜひ試させてもらうわ」

「ひ、姫様!? 少しお待ちを――!」

 ラウラが慌てて止めようとするが、ティタニアはすでに瓶の栓を抜いていた。

「まあまあ。こういうのは勢いよ」

 ごくり、と飲み干す。

 一瞬の静寂。

 次の瞬間、淡い光がティタニアの髪を包み、銀から柔らかな桃色へと変わった。瞳の色も、琥珀のように輝きを帯びる。

「おおーっ、成功っ! すごい、僕の理論完璧だったね!」

 イオナが歓声を上げる中、ティタニアは髪を一房取り、楽しげに眺めた。

「悪くないわね。この色、気に入ったわ」

 フィリアが満足げに頷いた。

「これで誰にも気づかれませんわね。――あなたもセレスティア商会の一員ですわ」

「了解。お給料はちゃんと出るんでしょうね?」

「ええ、働き次第ですわ」

 ティタニアは口角を上げて微笑み、ラウラが小さくため息をつく。

「姫様、また勝手を……」

「だって、せっかくの機会だもの。楽しまなきゃ損でしょう?」

 フィリアがくすくすと笑い、アイラは呆れたように肩を落とす。

「よろしくね、アルヴィオ。あなたの世界――楽しませてもらうわ」

 その言葉に、アイラが苦笑し、ラウラは小さく頭を下げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法至上主義の世界で『筋力』だけカンストした男が拳一つで全てを覆す

ポポリーナ
ファンタジー
魔法こそが至高——この世界では呼吸も移動も戦闘も、あらゆる営みが魔力で成り立っている。 筋力は「野蛮人の遺物」と蔑まれ、身体を鍛える者は最底辺の存在とされていた。 そんな世界に転生した元・体育教師の剛田鉄心は、魔力適性ゼロ、しかし筋力だけが測定不能のカンスト値。 魔法障壁を素手でぶち抜き、転移魔法より速く走り、最上位魔法を腹筋で弾く—— 「なぜ魔法を使わないんだ!?」と問われるたびに「だって使えないし」と笑う男の、 常識を腕力でねじ伏せる痛快・逆転無双が今始まる!

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう
ファンタジー
 小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。  しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。  士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。  領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。 異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル! 圧倒的不利な状況を武と知略で切り抜ける! ☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

処理中です...