俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第九章 「リヴァージョン」

Intermission 23 「ティラナ島防衛戦」

 ティラナ島北部を覆う空は、灰色の煙で染まっていた。

 焦げた鉄の匂いと、焼けた木の粉塵が風に乗って流れてくる。

 エリーナ・ルミナスが、モスタール要塞陥落の報を受けたのは――もう三日前のことだった。

 同時に伝えられたのは、老将グレン・プロブディフ中将の戦死。

 尊敬した将の最期に、エリーナは言葉を失った。

 だが、立ち止まる暇はない。

 今まさにティラナ島の防衛線が、帝国軍の猛攻にさらされている。

「北岸砲台、沈黙しました!」

 報告が飛ぶ。

 砂にまみれた伝令兵が血走った目で駆け寄ってきた。

「第二防壁も突破されました! 敵は――新型魔導艦を前面に出しています!」

「新型……あれか。モスタールを落としたという収束砲だな」

 副官ガルド・ヴァレンが顔をしかめた。

「確認を急げ。残存の砲台に伝えろ。射角を十五度下げて、海面すれすれを狙え」

 エリーナは冷静に指示を飛ばした。

 砂と灰にまみれた軍服を翻し、双眼鏡を構える。

 波間に浮かぶ黒鉄の艦影。艦首には歪な魔導装置が突き出し、青白い光を帯びて脈打っている。

「また撃ってくるぞ! 防御陣、最大展開!」

 エリーナの声に、周囲の魔法士たちが一斉に詠唱を重ねた。

「――プロテクション!」

 幾重にも重なった光の盾が前方を覆う。

 だが次の瞬間、空が裂け、眩い閃光が海面を走った。

 轟音と共に、世界が揺れる。

 海岸の防衛塔が一瞬で蒸発した。

「陣が……破られた!?」

「持たないっ!」

 青白い閃光が砂丘を貫き、砲台を次々と焼き尽くす。

 防御魔法を維持していた魔法士たちが、次々と崩れ落ちた。

 帝国の新兵器――魔導収束砲。

 一射ごとに、中規模都市が一日で消費する魔力石を喰らうという、狂気の兵器。

 その威力を前に、ティラナの防衛線は崩壊寸前だった。

「……だが、撃てば撃つほど、奴らの国庫は干上がる」

 エリーナは低く呟いた。

「時間を稼げば、勝機はある。ガルド、北翼の砲隊を山麓に移せ」

「了解です!」

 指示を終えると同時に、遠方で再び閃光。

 エリーナは歯を食いしばる。

 ――あの光の線の先に、無数の命がある。

◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆

 後方、野戦病院。

 焼け焦げた布と血の匂いが漂う中、メグメル・ルミナスは負傷者の治療を続けていた。

「大丈夫ですよ。……あらあら、もう少しで痛みも引きますからね」

 穏やかな声とともに、淡い光が包み込む。

 傷ついた兵士の呼吸が落ち着き、周囲の医務兵たちがほっと息をつく。

「聖女様……、無理をなさらないでください」

「心配しないで。私はできることをやっているにすぎません」

 メグメルは微笑んだ。

 そのプラチナブロンズの髪が、陽光を反射して柔らかく揺れる。

 そこへ、伝令が駆け込んだ。

「報告です! 前線指揮官より――北部防衛線、崩壊寸前とのこと!」

 メグメルの微笑みが一瞬だけ止まる。

 それでも、すぐに穏やかな声に戻した。

「そうですか……。エリーナは?」

「なお指揮を執っておられます!」

「なら、大丈夫。あの子は、泣き言を言わない子ですから」

 そう言って、再び治療を再開した。

◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆━◆◇◆

 前線。

 海風に混じる焦げた鉄と血の臭い。

 エリーナは砲台の残骸に身を伏せ、再び魔力を練り上げた。

「敵艦、距離七百――照準固定!」

 ガルドの報告が飛ぶ。

「全員、下がれ!」

 エリーナの瞳が、青白く輝いた。

「――インフェルノランス・オーバードライブ!」

 天を裂く炎柱が放たれる。

 火炎が海面を焼き、一直線に帝国の艦首を貫いた。

 次の瞬間、艦体が膨張し、内部の魔導炉が暴走。

 轟音とともに爆炎が上がり、黒煙が空へと吹き上がった。

「……撃沈、確認!」

 歓声が上がる。

 だが、エリーナは息を切らしながら膝をついた。

「ふぅ……さすがに、今のは……魔力を持っていかれた」

「エリーナ様!」

 駆け寄るガルドに、エリーナは手を振った。

「平気だ。……だが、もうここは持たない」

 遠方では、再び帝国の艦が光を灯す。

 山岳部の要塞群に退避しなければ、全滅は時間の問題だった。

「全軍に通達! 北部防衛線を放棄、第二防衛線――山岳要塞群へ撤退!」

「了解!」

 号令とともに、兵たちが動き出す。

 撤退を援護するように、エリーナは防御魔法を展開した。

「――エリア・ハイプロテクション」

 砲撃の光線が襲いかかる。

 しかし今度は、青い障壁が海岸線全体を覆い、爆光を防ぎ切った。

 レオリア軍は、エリーナの魔法に守られながら北岸からの撤退を開始したのだった。 
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