俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第九章 「リヴァージョン」

第83話 「余韻」

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 夜。

 セレスティア商会のホールでは、小さな祝勝会が開かれていた。

 テーブルには、ヒカリとエルヴィナが腕によりをかけた料理が並ぶ。

 フレイジアのパン、パスタ、チップス、香草を練り込んだミートローフ。

「乾杯ですわ!」

 フィリアが声を上げ、グラスを掲げた。

 テーブルを囲む顔ぶれは、いつものセレスティア商会の面々だけではなかった。

 情報屋のミラ、リアディス経済新聞のセリナとダリル、そしてレイラの姿もある。

「まさか、書いた記事がここまでの騒ぎになるとは思ってなかったわ」

 セリナがグラスを傾けて笑う。

「結局、みんなアディスさんの手のひらの上で動いてたわけね」

「たまたまだ。タイミングが良かっただけだ」

 そう答えると、ミラがにやりと笑った。

「いや、実際タイミングすらコントロールしていんじゃないかと疑ってしまう」

「買いかぶりすぎだ」

 笑いが小さく弾む。だが、その穏やかな空気を破るように、ティタニアが口を開いた。

「ねえ、アルヴィオ。どうしてあんなにも小麦が上がってたの? 戦争があるにしてもあまりにも不自然だわ。そして、あんな激しい暴落……いったい何がどうなってたのよ?」

 その場が、わずかに静まった。

 音が止み、全員の視線が俺に集まる。

「――偶然じゃない。誰かが、意図的に相場吊り上げていたからだ」

 俺はゆっくりと椅子の背にもたれ、グラスをテーブルに戻した。

「……灰牙の蛇ね?」

 セリナが呟く。

「恐らくは。そして、彼らがアズーリアを動かしている。複数の商会と財団を使って資金を分散し、小麦を買い漁っていた。少なくとも、戦争の始まるもっと以前から動いてたはずだ」

 ミラがうなずく。

「こちらでもある程度裏を取った。巧妙に偽装されていたが、資金の流れを追えばおおよそ一本の線に繋がる。アズーリアの国家ファンド――その運用母体の裏に、ヤツらがいる」

 沈黙が流れる。

「……帝国戦略投資機構……存在は知っていたわ。ルキウスの取り巻きが始めたお遊びだと思っていたけど……」

 ティタニアがそう言いながら、目を細めた。

「そしてこの戦争……戦費を、と言って差し支えないだろう」

 俺の言葉に、重い沈黙が落ちた。

 アイラが小さく息を呑み、フィリアがぽつりと呟く。

「でも、それももう終わった……そうではなくて?」

 俺は軽く頷いた。

「ああ、今日の暴落で、ヤツらのポジションは吹き飛んだ。俺の計算では、ヤツらの平均取得コストは9ディム前後。午後の水準で始まれば、逃げられないはずだ」

「つまり……あなたは、それを狙ってすべて仕込んでいたと」

 ティタニアの目が、鋭くなる。

「狙ったというより……流れを読んだだけだ」

「流れを読む?」

「過去の取引履歴を追えば、資金の偏りは見える。奴らは戦争の資金を確保するために、市場を押し上げていた。あとは、どこで崩すかだけだった」

 ミラが口角を上げる。

「……で、そのが、君にしか見えてなかったのね」

 レイラが静かに頷く。

「……アズーリアは痛手を負うだろうな。でも、戦争はまだ終わってない」

「ああ、わかってる」

 俺はグラスを持ち上げ、琥珀色の液体を静かに揺らした。

「たぶん、ヤツらはまだ別の資金源を探すはずだ。けれど、ひとつの柱を折った。それだけで十分だ。戦争は金で動く。金が枯れれば、どんな軍勢も一時的止まる」

 ティタニアはしばらく沈黙していたが、やがて微かに笑った。

 その表情には、何かを決意したような光があった。

「正直、あなたの戦い方、少し怖い……でも……同時に、希望もあるわね」

「希望?」

「戦わずに戦う方法。それがあるなら、まだ救えるかもしれないと思ったの」

 俺はその言葉に、静かに頷いた。
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