俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第十章 「フラクチュエーション」

Intermission 32 「リーリア in 魔法学校Ⅳ」

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 ペンダント捜索の騒動から数日が経った。

 王立エルドレイン魔法学校では、いつもと変わらない授業と笑い声が続いていた。

 中庭で昼食を広げる一年生たちの輪の中で、リーリアとニナはいつものように隣に座っていた。
 
「ニナ、このサラダおいしいね! 島でも食べるの?」

「いえ……こんなに野菜が多い料理はあまりなくて……だいたい、魚と香草で……」   

「わぁ~! 絶対おいしいやつじゃん!」

 リーリアの目は、好奇心でいっぱいだった。

 ニナはそんな視線にくすぐったさを感じつつ、小さく息を吐いた。

「……リーリア、あの……」

「ん? どうしたの?」

「私、ずっと……お礼をしたいと思っていて……」

 ニナは、胸元のペンダントをそっと握った。

 あの大騒動から、胸の奥にずっと残っている思いがある。

「助けてもらったのに……何も返せていません。だから……」

 そう言って、ニナは小さな布袋を差し出した。

 淡い虹色の刺繍が施された、島の伝統的な巾着袋。

 リーリアが開けると――

「わ……きれい……!」

 七色に輝く小さな貝殻が数枚、光を反射して揺れていた。

「これね……虹貝っていうんです。私の島の……通貨です」

「えっ、お金!?」

 リーリアはあわてて袋を押し戻そうとした。

「だ、だめだよニナ! そんな大事なもの! ニナにとってはお金なんでしょ?」

「い、いいんです……!」

 ニナは珍しく強く言い切った。

「島では、アルカナプレートが使えません。魔力の流れがどこかで途切れていて……トークンコアの力が届かないみたいで……」

「そうなんだ……!」

「だから、島の外に出るときは……ロピカルハの首都、カルハ島に寄って……ディムに両替してもらうんです。商人さんがいて……お願いすれば交換してくれて……」

 そこまで言ってから、ニナは少し言いよどむ。

「……でも、これは島では大切な貝殻で……お祝いの時や、感謝を伝えたいときに渡すものなんです。リーリアに……ずっと渡したかったんです」

 ニナの手は震えていた。

 リーリアはそっとその手を包む。

「……でも、こんなにきれいなもの、もらっていいの?」

「リーリアだから……渡したいんです。リーリアのおかげで……私の宝物も、気持ちも助けられましたから……!」

 リーリアは一瞬、言葉を失い、それから満面の笑みを浮かべた。

「……ありがとう、ニナ。大切にするね!」

 ニナは胸を押さえて俯いた。嬉しさで顔が熱い。

 しばらくして、リーリアは虹貝をそっと眺めたまま、ぽつりと呟いた。

「ねえニナ……これ、アル兄――私の大事な人にも、一枚送ってもいい?」

「……大事な……人」

 その言葉に、ニナの胸が小さく揺れた。

 羨ましさとも憧れともつかない感情が、ほのかな痛みとなって滲む。

――リーリアがそんな風に想える人……どんな方なんだろう

 しかし、ニナはすぐに首を振って笑った。

「もちろんです! リーリアが渡したいなら……ぜひ!」

「やった! アル兄、絶対びっくりするなぁ!」

 リーリアは嬉しそうに虹貝を見つめる。

 その横顔があまりにもまぶしくて、ニナは胸が少し切なくなった。

――こんなに大切に思える人がいるんだ……いいな……

 そんな感情に気づき、ニナは自分自身に驚いた。

 その夜。

 二一五号室の窓から差し込む月明かりの下で、ニナは静かに切り出した。

「リーリア……もし……もしよかったら……」

「?」

「次の長期休みに……私の島へ来ませんか?」

 リーリアは反射的に跳ね起きた。

「いく!!」

「は、はや……っ!」

「だってだって! 海でしょ? 魚でしょ? 香草でしょ? 絶対楽しいよ!!」

 その即答ぶりに、ニナは思わず吹き出した。

「ふふ……リーリアらしい……」

「ねぇねぇ、ホントに行ってもいいの?」

「……はい。父もきっと喜びます。島にお客さんが来るのは珍しいので……!」

「じゃあ決まりっ!」

 リーリアがニナの手を掴むと、二人は机に広げた地図を覗き込む。

 ロピカルハの広大な海域。その西端に、小さく描かれたニナの島――香草の森に囲まれ、海風が吹く故郷。

 リーリアは、その小さな島を指さしながら目を輝かせた。

「ニナの島、楽しみだなぁ……!」

 ニナはそっと瞳を閉じた。

――リーリアが来てくれる。あの海を……家族を……見てもらえる。

 胸の奥が、じんわりと温かくなる。

 窓の外では、ロピカルハへ続く海の方角に、星が一つ瞬いた。
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