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第十一章 「デッドクロス」
第106話 「幻惑の夜Ⅲ」
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――ギャアァァァァ!!
地の底から、獣の叫び声が響いた。
重なり合う咆哮。
一体や二体じゃない……複数。
「……魔獣」
アイラが息を呑む。
次の瞬間、闇の中から一つの影が飛び出した。
四足の獣型。
骨ばった外骨格に、濁った赤い目。
対峙する。
さらに血に飢えた鳴き声がダンジョンから響いてくる。
「次々来るぞ!」
「街に出るとまずい!」
レクスが即断する。
「ここで迎撃するしかない!」
俺は歯噛みした。
――まずい、武器を持ってきていない。
そのことに気づいた瞬間、レクスがこちらを見た。
「……銃は使えるか?」
「は?」
一瞬、間抜けな声が出る。
「銃だ。魔法銃を含めて」
俺は一拍置いて答えた。
「……覚えはある」
脳裏に浮かぶのは、アクアレイジ。
「十分だ」
レクスは懐から、小型の銃を取り出した。
ピストル型のそれには、魔力石が装填されている。
「使え」
迷いのない動きで、俺に放る。
反射的に受け取った。
受け取った瞬間、手に馴染む感触があった。
アクアレイジに比べて小型だが、しっかりとした重み。
「……いいのか?」
俺が言うと、レクスは短く答えた。
「消去法だ」
適切な判断だ。
カイルが肩をすくめる。
「荒事は苦手なんですけどねぇ……ま、死なないようにかんばります」
そう言いながらも、剣を抜く動きに一切の迷いはなかった。
アイラは、ヒカリの方を振り返る。
「ヒカリさん! 大丈夫ですか!?」
ヒカリは膝をついたまま、荒い息を吐いている。
顔色は悪く、瞳は焦点が合っていない。
「……ちが……う……」
か細い声。
「……止めなきゃ……」
その言葉を最後まで聞く暇はなかった。
ダンジョンの闇が、まるで呼吸するかのように脈打ち――
次の瞬間、魔獣が溢れ出した。
「来るぞ!!」
レクスの叫びと同時に、最初の一体が地面を蹴った。
「――っ!」
俺は反射的に、渡された銃を構えた。
引き金に指をかける。
照準を合わせる。
魔力石が、低く唸る。
「……いける」
アクアレイジほどの威力はないが十分だ。
引き金を引く。
乾いた音と同時に、青白い弾丸が放たれた。
魔獣の頭部に直撃。
衝撃で、頭蓋が弾ける。
「――よし!」
すぐさま次弾。
もう一体。
さらにもう一体。
丘の斜面を転がり落ちる死骸。
だが――
「数が多すぎますね!」
カイルが剣を振るいながら叫ぶ。
剣を振るうたびに、金属音と肉を断つ鈍い感触が伝わってくる。
魔獣は一体一体がそこまで強くはない。だが、途切れることなく湧き続ける数が、明らかに異常だった。
「このペースだと……!」
俺は歯を食いしばりながら、引き金を引き続ける。
弾丸が尽きる気配はない。魔力石が供給されている限り、撃てる。
だが、それでも――
「押し切られるぞ!」
斜面の上から、さらに魔獣が飛び出してくる。
「下がれ!」
その瞬間、澄んだ声が夜に響いた。
「アルさん、いきます!」
アイラだった。
アイラは一歩前に出ると、両手を掲げる。
魔力が、一気に周囲へと展開された。
「風よ、刃となれ――エアロウィング!」
瞬間、丘の上を駆け抜ける突風。
それはただの風じゃない。
圧縮され、研ぎ澄まされた斬撃だった。
――ズバァァッ!!
魔獣の群れを横一線に薙ぎ払う。
前列にいた魔獣たちは、悲鳴を上げる間もなく切断され、霧となって消えた。
「……!」
一瞬、戦場が静まる。
魔獣の数が、目に見えて減った。
一瞬だけ、丘に静寂が戻る。
裂けたダンジョンの縁から溢れていた禍々しい気配も、わずかに後退したように見えた。
カイルも剣を構えたまま、肩で息をしている。
「おお……さすがですね」
軽口を叩く余裕すら、少し戻ったようだった。
レクスも、短く息を吐く。
「……今の一撃で、第一波は抑えた」
だが、その声は決して楽観的ではない。
夜風がアイラを中心に渦を巻き、髪を揺らす。
「次、来ます」
静かな声。
だが、その瞳には迷いがない。
アイラがいれば――
少なくとも、今は持ちこたえられる。
そんな希望が、確かにあった。
だが、長くは続かなかった。
ダンジョンの奥――闇のさらに奥から、低く、粘つくような振動が伝わってきた。
地鳴りとは違う。
「……来るぞ」
レクスが低く告げる。
その直後だった。
――ゴンッ。
丘の下から、腹の底を叩くような衝撃。
先ほどよりも、明確な揺れ。
「っ……!」
足元が、不自然に沈んだ。
地面が揺れた、というより――
何かが、下で繋がった。
そんな感覚。
そして、決定的な変化が起きた。
「……え?」
アイラが、小さく声を漏らす。
掲げていた両手が、わずかに震えた。
さっきまで確かに感じていた、周囲の魔力の流れが――途切れている。
「……アルさん?」
不安を含んだ声。
その瞬間、俺の背中を冷たいものが走った。
――切れた。
はっきりと、わかった。
俺とトークンコアを繋いでいた、あの感覚。
常に背後にあった供給が、消えている。
「……アイラ、魔法が――」
「使えません……!」
アイラの声が、わずかに裏返った。
地の底から、獣の叫び声が響いた。
重なり合う咆哮。
一体や二体じゃない……複数。
「……魔獣」
アイラが息を呑む。
次の瞬間、闇の中から一つの影が飛び出した。
四足の獣型。
骨ばった外骨格に、濁った赤い目。
対峙する。
さらに血に飢えた鳴き声がダンジョンから響いてくる。
「次々来るぞ!」
「街に出るとまずい!」
レクスが即断する。
「ここで迎撃するしかない!」
俺は歯噛みした。
――まずい、武器を持ってきていない。
そのことに気づいた瞬間、レクスがこちらを見た。
「……銃は使えるか?」
「は?」
一瞬、間抜けな声が出る。
「銃だ。魔法銃を含めて」
俺は一拍置いて答えた。
「……覚えはある」
脳裏に浮かぶのは、アクアレイジ。
「十分だ」
レクスは懐から、小型の銃を取り出した。
ピストル型のそれには、魔力石が装填されている。
「使え」
迷いのない動きで、俺に放る。
反射的に受け取った。
受け取った瞬間、手に馴染む感触があった。
アクアレイジに比べて小型だが、しっかりとした重み。
「……いいのか?」
俺が言うと、レクスは短く答えた。
「消去法だ」
適切な判断だ。
カイルが肩をすくめる。
「荒事は苦手なんですけどねぇ……ま、死なないようにかんばります」
そう言いながらも、剣を抜く動きに一切の迷いはなかった。
アイラは、ヒカリの方を振り返る。
「ヒカリさん! 大丈夫ですか!?」
ヒカリは膝をついたまま、荒い息を吐いている。
顔色は悪く、瞳は焦点が合っていない。
「……ちが……う……」
か細い声。
「……止めなきゃ……」
その言葉を最後まで聞く暇はなかった。
ダンジョンの闇が、まるで呼吸するかのように脈打ち――
次の瞬間、魔獣が溢れ出した。
「来るぞ!!」
レクスの叫びと同時に、最初の一体が地面を蹴った。
「――っ!」
俺は反射的に、渡された銃を構えた。
引き金に指をかける。
照準を合わせる。
魔力石が、低く唸る。
「……いける」
アクアレイジほどの威力はないが十分だ。
引き金を引く。
乾いた音と同時に、青白い弾丸が放たれた。
魔獣の頭部に直撃。
衝撃で、頭蓋が弾ける。
「――よし!」
すぐさま次弾。
もう一体。
さらにもう一体。
丘の斜面を転がり落ちる死骸。
だが――
「数が多すぎますね!」
カイルが剣を振るいながら叫ぶ。
剣を振るうたびに、金属音と肉を断つ鈍い感触が伝わってくる。
魔獣は一体一体がそこまで強くはない。だが、途切れることなく湧き続ける数が、明らかに異常だった。
「このペースだと……!」
俺は歯を食いしばりながら、引き金を引き続ける。
弾丸が尽きる気配はない。魔力石が供給されている限り、撃てる。
だが、それでも――
「押し切られるぞ!」
斜面の上から、さらに魔獣が飛び出してくる。
「下がれ!」
その瞬間、澄んだ声が夜に響いた。
「アルさん、いきます!」
アイラだった。
アイラは一歩前に出ると、両手を掲げる。
魔力が、一気に周囲へと展開された。
「風よ、刃となれ――エアロウィング!」
瞬間、丘の上を駆け抜ける突風。
それはただの風じゃない。
圧縮され、研ぎ澄まされた斬撃だった。
――ズバァァッ!!
魔獣の群れを横一線に薙ぎ払う。
前列にいた魔獣たちは、悲鳴を上げる間もなく切断され、霧となって消えた。
「……!」
一瞬、戦場が静まる。
魔獣の数が、目に見えて減った。
一瞬だけ、丘に静寂が戻る。
裂けたダンジョンの縁から溢れていた禍々しい気配も、わずかに後退したように見えた。
カイルも剣を構えたまま、肩で息をしている。
「おお……さすがですね」
軽口を叩く余裕すら、少し戻ったようだった。
レクスも、短く息を吐く。
「……今の一撃で、第一波は抑えた」
だが、その声は決して楽観的ではない。
夜風がアイラを中心に渦を巻き、髪を揺らす。
「次、来ます」
静かな声。
だが、その瞳には迷いがない。
アイラがいれば――
少なくとも、今は持ちこたえられる。
そんな希望が、確かにあった。
だが、長くは続かなかった。
ダンジョンの奥――闇のさらに奥から、低く、粘つくような振動が伝わってきた。
地鳴りとは違う。
「……来るぞ」
レクスが低く告げる。
その直後だった。
――ゴンッ。
丘の下から、腹の底を叩くような衝撃。
先ほどよりも、明確な揺れ。
「っ……!」
足元が、不自然に沈んだ。
地面が揺れた、というより――
何かが、下で繋がった。
そんな感覚。
そして、決定的な変化が起きた。
「……え?」
アイラが、小さく声を漏らす。
掲げていた両手が、わずかに震えた。
さっきまで確かに感じていた、周囲の魔力の流れが――途切れている。
「……アルさん?」
不安を含んだ声。
その瞬間、俺の背中を冷たいものが走った。
――切れた。
はっきりと、わかった。
俺とトークンコアを繋いでいた、あの感覚。
常に背後にあった供給が、消えている。
「……アイラ、魔法が――」
「使えません……!」
アイラの声が、わずかに裏返った。
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