俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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第十二章 「レラティブバリュー」

第123話 「装置」

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 巨大な空間の中央に立つ装置は、近づくほど異様さを増していった。

 床一面に刻まれた幾何学的な溝、それらはすべて中央へ向かって収束している。

 そして、その中心。

 円形の基壇の上に巨大な筒状の構造物が鎮座している。

 塔のようにまっすぐ天井へ伸びているそれは、古代の遺物にありがちな石材ではない。金属とも違う。黒く滑らかな素材でできており、表面には細かい紋様が無数に刻まれていた。

 その周囲を取り囲むように、環状の装置がいくつも重なっている。

「古いですわね……」

 フィリアが装置を見上げる。

「……これが」

 エルヴィナが低く呟く。

「龍脈の装置、というやつかですか」

 俺は筒を見上げながら、ゆっくり首を振った。

「断定はできない」

 だが――

 確かに、それらしくは見える。

 床に刻まれた回路。

 円形の基壇。

 中央の巨大構造物。

 この空間全体が、巨大な術式の一部のようだった。だが――

「……完全に止まっていますわね」

 フィリアが静かに言う。

「術式は残っているように見えますが、魔力が流れていませんわね」

 キアヌが腕を組む。

「死んだ装置、ということか」

「……そんな」

 ヒカリは落胆した様子をみせる。

 フィリアは床に刻まれた溝へ視線を落とす。

「回路は生きていますわ。ですが、起動していない。魔力の流れが完全に止まっています」

 レイラが基壇の縁にしゃがみ込み、装置の一部に触れた。

「ここ……外殻が割れてる」

 見ると、筒の下部にひび割れた箇所があった。内部の構造が露出している。黒い管のようなものが何本も走っているが、そのいくつかは断裂していた。

「だが、中は生きてるようだ。さすがだな」

 レイラが言う。

 俺は中央の筒を見上げる。

 もしこれが本当に龍脈に関係する装置なら――動かすことができれば状況は変わる。

 龍脈の乱れが収まれば、この島でもアルカナプレートが使える可能性がある。

 それにトークンコアとの接続が回復すれば俺の戦い方は一気に広がる。

「……これを動かせれば」

 思わず呟く。

 そのときだった。

――ゴォン。

 腹の底を叩くような重い振動が、足元から突き上げてきた。

「っ――!」

 床が揺れる。

 いや、揺れるというレベルじゃない。

 巨大な何かが、この地下空間そのものを叩いたような衝撃だった。

 天井の岩盤から砂がぱらぱらと落ちる。

「地震か!?」

 キアヌが叫ぶ。

 だが、クロエは首を振った。

「違う」

 その目は、すでに奥を睨んでいた。

「……来るぞ」

 次の瞬間。

 空間の奥――暗闇の向こうから、低いうなり声が響いた。

 ゴォォォォ……

 空気が震える。

 嫌な感覚だった。濃密な魔素が、一斉にざわめいたような気配。

 そして――

 暗闇が、動いた。

「……なんだ、あれ」

 思わず声が漏れた。

 それは、巨大だった。

 まず目に入ったのは、赤く光る二つの眼。

 次に現れたのは、鱗に覆われた身体と巨大な翼。

 その巨体が暗闇からゆっくり姿を現す。

 節くれだった脚が、床を砕きながら前へ出る。

 これは――ドラゴンか?

 体長は二十メートルはある。

「……ダンジョンボスというわけか。おあつらえ向きだ」

 キアヌが槍を構える。

 巨大魔獣は、低く唸りながら首を振った。

 そして――

 まっすぐ、中央の装置を見た。

 次の瞬間。

 ドンッ!!

 魔獣が飛んだ。

「装置を狙ってる!」

 レイラが叫ぶ。

 巨大な影が、空間を横切る。

 信じられない速度で中央へ突進してくる。あの質量であの速度――まともにぶつかれば、装置はひとたまりもない。

「守れ! プロテクション」

 レイラの魔法が巨大な魔獣の前に立ちはだかる。

 次の瞬間。

 ドォォォン!!

 巨大な魔獣が防壁へ激突した。

 衝撃波が空間を揺らす。床の溝に溜まっていた砂が一斉に跳ね上がった。

「くっ……!」

 レイラが歯を食いしばる。

 防御壁は持ちこたえたが、表面に亀裂のような光が走る。

「長くは持たない!」

「分かっている!」

 キアヌが前へ飛び出した。

 槍が唸る。

 ギィン!

 金属を叩くような音が響いた。槍の穂先が鱗に弾かれる。

「硬ぇな!」

 巨大魔獣は低く唸り、尾を振った。

 ドン!!

 キアヌの身体が横へ弾き飛ばされる。

「お父さん!」

 ニナの叫び声がこだまする。

「問題ない!」

 地面を滑りながら立ち上がる。

 だがその隙に、魔獣は再び装置へ向き直った。

 まるで――それだけが目的のように。
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