愛犬家と悩ましい隣人~距離が近い彼女に困っちゃう~

ちんく

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ステイホームしちゃった私と彼女

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遠くから聞こえてくる犬の鳴き声。

籠められた喜びの響きは、春美の姿を見た時、愛犬がいつも奏でたものだ。

ああ……早く行かないとハチが待ってる。

春美は、駆け出す。

待っててね。今行くから。

全力疾走する。流れる見慣れた景色。後少しで家に着く。

今行くからね……、今……って、行くとこ違う!

大きく目を見開く。覚醒した春美はベッドサイドの時計を見て、そして絶叫した。

「お母さん!どうして起こしてくれなかった
 の!? 遅刻でしょ!」

とりあえず、制服着ましたとばかりに
頭はボサボサ、スカートを一部下着に
挟んだ格好で春美が吼える。

おそらく日本中の子を持つ母親が一度は
受けた事のあるクレームに、春美の母親、
美奈は溜息をついた。

「また、そんな格好で。女の子でしょ。
 ちゃんとしなさい」

「そんな格好でもいいんだもん!どうせ、
 遅刻なんだから!お日様の下を歩けない
 身分なんだから!」

どういう理屈なのか。
ここに良子がいたら、
『格好より人として歩けない気がする』と
でも言ってきそうだ。(何で!BY春美)

育成責任がある美奈はそんな事は言わなかった。

「まあ、いいわ。外出れないなら出ないで。
 今日は休みなんだし、家にいなさい」

「えっ!?学校休んじゃうの!?」

春美は驚く。色々と規格外の彼女では
あるが、学校をサボるだとか休むだとか
は基本的に頭にないのだ。
(だから、『隣人』トラブルが起きても通うのだ)

 動きはいいが、考えるのが得意でない娘に
美奈は言う。

「だって、今日は学校お休みでしょ。
 創立記念日だって言ってたじゃない」

「あっ!」

春美は思い出す。そう、彼女の通う高校は
ちゃんと創立記念日にはお休みをくれる
ホワイト校なのだ。
最近、バタバタと落ち着かない事が多かったため、脳のメモリーがいっぱいで忘れてたらしい。

な~んだ!そうだった!そうだった!
最近、あの子の事で頭いっぱいで他の事が頭に入ってこないから忘れてた。

口に出すと微妙に誤解を生みそうな考えをしながらも、ふと、気付く。

そう、今日は平日であるので世間は休みではない。

社会人は働き、美奈のような母親は自分の務めをまっとうし、学生は学校へ行ってるのだ。

あの子は……?バスに乗ったのかな?

鼓動が早くなる。脳裏に浮かぶのは、昨日の悲しみに沈んでいた姿。

そして、自分が隣に座った時の輝く瞳。

まさか、待ってたりして……。いやいやいや、そんな事ないよね!?遅刻しちゃうし。

時計の方を勢いよく向く。もちろん、騒いだ
とおり遅刻確定の時刻を指している。
つまり、いつものバスには乗れない時間だ。

やっぱり! ほら、間に合わないよ。今から走っても絶対ダメだし。
タクシー呼んだって、ここに来るまで時間かかるし、来てから100キロぐらい出したって……。
信号につかまらなくっても……無理だし……。

不可能、と理性が告げてくるのに切羽つまった気になる。

何で焦ってるの!?これでいいんだって。
だって、これ以上一緒にいてもキモいだけだし(もちろん、春美の方であるのを良子に言われた)
余計変になるだけだし(もちろん以下略)

先日、失敗の報告をしたところ、新たに追加された属性を思い出し自分を納得させようとする。

だが、頭に浮かぶのはあの時の光景。悲しみと喜び。気持ちを伝えるように寄り添ってくる彼女。
春美はその場を飛び出した。
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