上 下
6 / 6

告白

しおりを挟む
 校舎裏か。まるで告白みたいだな。
 周りから見たら俺が告白する側か。

 星奈ちゃんの夢ってどんなのだろう。
 ここは進学校ではないからな。医者とかそういうのじゃなさそうな気がする。

 というか、何故俺は一人でここにいるのだろう。
 星奈ちゃんと一緒に行こうかと思ったら、ちょっと待ってて、と言ってどこかに行ったんだ。

「待たせてごめんね」

 お、来た。

「いや、大丈夫」

 星奈ちゃんが俺の正面に立つ。

 いじらしく金色の髪の毛先を指でいじる。

「……私と付き合ってください」

「ふへ?」

 大きくも小さくもない声なのに俺の耳にしっかりと届いたその言葉。
 でも、俺の脳がそれを噛み砕くには少しの時間を要した。

「ゆ、夢は?」

 星奈ちゃんの顔が赤くなっている。

「伊織くんと付き合うのが夢なの」

 照れながらもきちんと言葉にする。
 俺まで恥ずかしくなってきたな。

 というか、嘘だろ?俺のためにアイドル辞めたのか?いや、いつ俺に惚れる要素があった?

「……嬉しいよ。まさか星奈ちゃんが俺のことが好きだったなんて」

「く、口に出さないで!恥ずかしいから……。
 嬉しいってことは、いいの?」

 告白に対しての俺の応えは……。

「……ごめんなさい」

 俺は星奈ちゃんに頭を下げる。

「ふへ?」

 星奈ちゃんが目を見開いて俺を凝視している。

「俺が好きな星奈ちゃんって、アイドルの星奈ちゃんなんだ。プライベートの星奈ちゃんのこと俺はまだ知らないし、そもそも星奈ちゃんみたいな美少女と俺なんかが釣り合うわけがないっていうか」

「……うそ、ふられた?そんな……」

 なんだかいたたまれないな。
 これは一人にしといてあげようかな。

「じゃ、じゃあまたね……」

 どうすんだよ明日から。隣同士だし気まずいぞ。

「ちょ、ちょっと待って!私初恋なの!だから、1回フラレたくらいで諦めないから!絶対に絶対に落としてみせるから!その時は私と付き合って下さい!」

 涙目の星奈ちゃん。

「わかったよ」

 なんて、余裕かまして言ったけど星奈ちゃんが本気でアタックしてきたら瞬殺する自信しかない。

 いや、付き合いたくないわけじゃないんだけどな。
 俺って見た目悪いからな。付き合ったときに星奈ちゃんの泊が下がりそうなんだよな。

 あ、星奈ちゃん引退したからグッズ代とか浮くじゃん。少しは自分磨きしようかな、星奈ちゃんに完全に落ちるのも時間の問題だと思うし。




 
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...