地獄で捧げる狂死曲(ラプソディー)~夢見る道化は何度死んだって届けたい、笑顔を君に~

norikurun

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地獄体験~あれ? 思ったよりも~

ブルーメリー(仮)の遺言 3

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 ボクと前世のボクの人生時間は、五秒と六十余年。
 永遠にも思えた追体験だけど、実際には刹那の出来事。

 体感時間は遥かに膨大なのに、現実では一呼吸の間もない一瞬だった。

 『彼』の知識は、あらゆる分野に造詣が深く、大変に価値のあるものばかりだった。

 ただ、それでも赤ん坊の命を救い出せなかった。

 ――そもそも、知識はあっても、目も開いてない赤ちゃんにできることなんてないのだ。
 生存本能さんは意外とうっかりさんなのかもしれない。

 結局――――敢え無く、ボクは即死し、その魂が体から離れ、今に至る。
 

 ちなみに、この場所《じごく》は『彼』の経験にはない。『彼』も来たことがない場所だ。

「こんなマグマが流れ出る場所には、基本何かしらのスーツの装着が必要になるはずだ。国が用意するような、かなりガッチガチにフォーマルなスーツが――」

 色々と残念なボクの所見は……これでも的を得ている。

 ボクの体が感じ取れないだけで、気温や気圧、酸素……火山性ガスを無視できない場所だと一目でわかるし、湧き出す水たまりをたくさん見かけるにも関わらず、生き物が全くいないのだ。――人が生身で来れない証明だった。

 『彼』のことを覗き見し始めた当初、ボクの知能は“赤ちゃん”だったから、当然、知識の抜け漏れは大いにある。『彼』の記憶も全部を覚えていない。だけどそれを差し引いても、どれだけ科学が発展したところで、ここまではこれなさそうだった。

 ひょっとしたら生まれ変わりの瞬間に、ここか天国のような場所に来たことがあったかもしれないし……。いつか、できることなら、もう一度、最初っから『彼』の人生を体験し直したい。

 ひとしきりの回想を終えたところで、灼熱の大地を見つめて想う――

「やっぱり、もう一度味わいたいなぁ。アイスクリームとかかき氷を!」

 ――お子ちゃまのボクは暢気だった。
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