上 下
31 / 93
二人目:吟遊詩人は少女に謳う

詩人と少女19

しおりを挟む
「はあっ!!はあっ!!!」
ロンは出口目指して走っていたが、後ろから男の声が聞こえる

「待て!!!!にがさねぇぞ!!!!」
ロンは両手で抱きかかえるようにダイアをもって走る
この炭鉱の足場は最悪で凹凸が激しい上に、今のロンは
重さが少しあるダイアの塊を抱えて走っているため、思うように走ることができない。
「はあっ・・はあっ・」
ロンの持久力はアベルよりも低い、走りの限界が来ていた。
その時、ついにロンが男に捕まってしまう
ロンの肩を掴んだ男は力まかせに振り向かせると、ロンの顔に拳をめりこませた。
ロンはダイアを地面に落としてぶっ飛び、砂煙が舞い上がった。
「がはっげほっっげほっ!!!!!」
これほど強烈な痛みを味わったことのないロンは顔面蒼白になり
恐怖に支配され、頭を抱えてまるくなってしまう。
ビクビク震え上がるロンを横目に男は地面に落ちたダイアを拾う。
「へへ・・・素直にわたしゃーいいものをよぉ」
男はロンに背を向け、再びアベルの方に歩き出す。
(怖い怖い怖い怖い怖い痛い痛い痛い痛い、もういやだ こんな思いしたくない
怖いのはイヤだ もういやだ 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い)
恐怖に支配されていたロンの心の中に、恐怖ではない何かが語りかけてくる。
(あの時みたいに、もう一度家族で過ごせたら)
心臓がどくんと大きく揺れ動く
(お兄ちゃんが言ってくれた言葉 信じて待ってるからっっ)
どくんっどくんっ!
倒れこんだロンの目の前には 錆びてボロボロになったつるはしが横たわっていた。
(もう一度、みんなで!!!!)
ロンはつるはしを握った!!!
唇を血が出るほど噛み締め、ロンは目覚めるかのように走り出した。
「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」

唐突の叫びに驚き振り向いた男はその両目を見開くと同時に
男の肩から首にかけて 鋭いつるはしが鮮血を噴出しながら突き刺さる!!
「ギャアアアアアアアア!!!!!!」
男は悲痛の絶叫をするなか、ロンは発狂しているのか何度もつるはしを振り下ろした。
ロンが正気に戻る頃には男の頭はぐちゃぐちゃになっていた。
その時!!
洞窟の中から地響きが始まる
「な、なんだっ!!地震か?!」
洞窟が崩壊を始めた。
パラパラと落石がはじまり、砂煙が常に舞う
「げほっげほっ・・・ここにいたら危ないっ すぐにでも洞窟からでなきゃ!!!」
走り出そうとしたときだった。
今すぐにでも洞窟から出なければ危険なのだが どうしてもロンの足が動かなかった。
「だ、だめだ・・・・やっぱりアベルさんを置いていくなんてできっこない
あの人のおかげで僕は・・っ」

しおりを挟む

処理中です...