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三人目:魔王の娘ヘルクレア
別次元の私6
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そして夜になり、夕食を終夜と過ごす。
光沢の混じった木目のテーブル、どこか手作りのような感じのするそのテーブルの上には
二人分の食事が用意されている。
私は同じ材質で出来た椅子に座ると目の前の食事を見下ろした。
二人で使っても広いと感じるそのテーブルの上には
終夜が狩猟で捕まえてきたシカやイノシシを使った、肉巻きや、ステーキ
山菜を使ったサラダなど、様々な料理が並んでいた。
「どうかな、おいしそうなものはあるかい?」
対面に座っている終夜が にこっとして私を見ていた。
「おいしそうなもの・・・というか、どれもおいしそうに見えて
何から手をつけていいか・・・」
戸惑いながらも、目にとまった肉巻きを一掴みして口に運ぶ。
終夜お手製のジュレだれのかかった肉巻きは、程よい酸味と肉の味がおいしい。
肉に包まれたシャキシャキとした山菜がみずみずしい清涼感を与える。
「・・おいしい」
素直な感想が、自然とでてしまっていた。
「あなたは、狩猟の道ではなく、シェフの道を歩むべきだったのでは?」
終夜は眼鏡のずれを直す。
「私の料理の腕は、狩猟によって磨かれたものさ。
初めの頃は今のようにはいかなくて、黒こげにしてしまうことも多かったさ。
でも、私にはこの道しかできる気がしなくてね
ここの土地では、狩猟許可の降りている動物や、山菜が豊富なのを知ってね
それからはずっとここで暮らしているのさ」
何の食材かわからないけど、ポトフのようなスープを飲みながら聞いている。
「そうだ、さっきもチラっと話したけど 明日からもう学校には通えるから
あとで自分の部屋で確認しておくように!」
「自分の部屋?」
「うん、フリルの部屋は2階の突き当たりだよ」
「準備が早いのね、どうしてあなたは私に優しくしてくれるの?」
終夜の手が止まる。
「なんでかな、わからない。ただ本能が助けろと言ってる気がしてね」
なにそれって感じの顔をする。
「まぁ気にする必要はないさ!フリルが記憶を取り戻すまで学生生活を満喫したらいいさ、ね?」
「行くアテも、何をすればいいかもわからないし・・今は、終夜に従ってみる」
うんうんと頷く終夜。
食事を終えて食器を洗う音が聞こえる。
私は2階にある自分の部屋とやらに行ってみることにした。
台所から見える階段を登っていると終夜が体を反らして私に呼びかける。
「お風呂も沸かしてあるから、寝る前にはちゃんと入るよーに!」
私は終夜の顔を見て軽く頷くと自分の部屋の前に来た。
ドアの前にはフリルの部屋という名札が貼り付けてあった。
私はドアノブに手をかける。
ドアを開けると、森?わからないけど木の香りが ふわっと立ち込めていた。
壁は白で統一されていて、部屋には転々と花や観葉植物などが置かれていた。
そして天井と床が繋がるほど大きな窓がそこにあった。
私は窓辺に立ち、外を眺めた。
夜間ということもあり、あまりよくは見えないが昼間に見れば絶景なのかもしれない。
私はシャーッとカーテンを閉め、すぐ横に置かれているふかふかのベッドに身を沈めた。
足を揃えて、手は開き大の字で仰向けになる。
「私は、誰なのだろうな・・・。」
ふっと視界がぼやける、疲れていたのだろう、何の抵抗もなく眠りについてしまった。
どれくらいの時が過ぎたのだろうか
ただひたすらに真っ暗でしかなかった世界が赤に染まる。
城・・・崩壊した城・・?
三人の人影が薄っすらと見える。
3人とも下を向いて何かブツブツと喋っているようだ。
彼らの足元を見ると大柄の男が倒れこんでいる。
倒れこんでいる男を見たとき、顔は見えなかったが、何か心に引っかかる感じがした。
その時、3人のうちの一人がコチラを見る。
「ミツケタ」
その言葉を聴いた時、なぜだかゾっとして体が冷たくなったのを感じて目を覚ました。
気がつくとすっかりと夜は明け、朝になっていた。
「うっ・・・」
眠い目をこすりながら、上体をゆっくりと起こすと、丁度ドアを開けて終夜が入ってきた。
「ああ、よかった。ちょうど起こそうと思っていたところだったんだ」
そう言い、終夜は私に近づいてくる。
「さぁ、これに着替えて」
ずいっと学校の制服を渡される。
「それじゃぁ、それに着替えたら降りてきて、朝食を食べにきてね」
終夜はそれだけ言って部屋を後にした。
光沢の混じった木目のテーブル、どこか手作りのような感じのするそのテーブルの上には
二人分の食事が用意されている。
私は同じ材質で出来た椅子に座ると目の前の食事を見下ろした。
二人で使っても広いと感じるそのテーブルの上には
終夜が狩猟で捕まえてきたシカやイノシシを使った、肉巻きや、ステーキ
山菜を使ったサラダなど、様々な料理が並んでいた。
「どうかな、おいしそうなものはあるかい?」
対面に座っている終夜が にこっとして私を見ていた。
「おいしそうなもの・・・というか、どれもおいしそうに見えて
何から手をつけていいか・・・」
戸惑いながらも、目にとまった肉巻きを一掴みして口に運ぶ。
終夜お手製のジュレだれのかかった肉巻きは、程よい酸味と肉の味がおいしい。
肉に包まれたシャキシャキとした山菜がみずみずしい清涼感を与える。
「・・おいしい」
素直な感想が、自然とでてしまっていた。
「あなたは、狩猟の道ではなく、シェフの道を歩むべきだったのでは?」
終夜は眼鏡のずれを直す。
「私の料理の腕は、狩猟によって磨かれたものさ。
初めの頃は今のようにはいかなくて、黒こげにしてしまうことも多かったさ。
でも、私にはこの道しかできる気がしなくてね
ここの土地では、狩猟許可の降りている動物や、山菜が豊富なのを知ってね
それからはずっとここで暮らしているのさ」
何の食材かわからないけど、ポトフのようなスープを飲みながら聞いている。
「そうだ、さっきもチラっと話したけど 明日からもう学校には通えるから
あとで自分の部屋で確認しておくように!」
「自分の部屋?」
「うん、フリルの部屋は2階の突き当たりだよ」
「準備が早いのね、どうしてあなたは私に優しくしてくれるの?」
終夜の手が止まる。
「なんでかな、わからない。ただ本能が助けろと言ってる気がしてね」
なにそれって感じの顔をする。
「まぁ気にする必要はないさ!フリルが記憶を取り戻すまで学生生活を満喫したらいいさ、ね?」
「行くアテも、何をすればいいかもわからないし・・今は、終夜に従ってみる」
うんうんと頷く終夜。
食事を終えて食器を洗う音が聞こえる。
私は2階にある自分の部屋とやらに行ってみることにした。
台所から見える階段を登っていると終夜が体を反らして私に呼びかける。
「お風呂も沸かしてあるから、寝る前にはちゃんと入るよーに!」
私は終夜の顔を見て軽く頷くと自分の部屋の前に来た。
ドアの前にはフリルの部屋という名札が貼り付けてあった。
私はドアノブに手をかける。
ドアを開けると、森?わからないけど木の香りが ふわっと立ち込めていた。
壁は白で統一されていて、部屋には転々と花や観葉植物などが置かれていた。
そして天井と床が繋がるほど大きな窓がそこにあった。
私は窓辺に立ち、外を眺めた。
夜間ということもあり、あまりよくは見えないが昼間に見れば絶景なのかもしれない。
私はシャーッとカーテンを閉め、すぐ横に置かれているふかふかのベッドに身を沈めた。
足を揃えて、手は開き大の字で仰向けになる。
「私は、誰なのだろうな・・・。」
ふっと視界がぼやける、疲れていたのだろう、何の抵抗もなく眠りについてしまった。
どれくらいの時が過ぎたのだろうか
ただひたすらに真っ暗でしかなかった世界が赤に染まる。
城・・・崩壊した城・・?
三人の人影が薄っすらと見える。
3人とも下を向いて何かブツブツと喋っているようだ。
彼らの足元を見ると大柄の男が倒れこんでいる。
倒れこんでいる男を見たとき、顔は見えなかったが、何か心に引っかかる感じがした。
その時、3人のうちの一人がコチラを見る。
「ミツケタ」
その言葉を聴いた時、なぜだかゾっとして体が冷たくなったのを感じて目を覚ました。
気がつくとすっかりと夜は明け、朝になっていた。
「うっ・・・」
眠い目をこすりながら、上体をゆっくりと起こすと、丁度ドアを開けて終夜が入ってきた。
「ああ、よかった。ちょうど起こそうと思っていたところだったんだ」
そう言い、終夜は私に近づいてくる。
「さぁ、これに着替えて」
ずいっと学校の制服を渡される。
「それじゃぁ、それに着替えたら降りてきて、朝食を食べにきてね」
終夜はそれだけ言って部屋を後にした。
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