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三人目:魔王の娘ヘルクレア

我が名は、フリューケン・フリル

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しばらく気を失っていたらしい。

気がつくと魔界だった。

ごつごつとした、荒れ果てた大地に遠方にはマグマの噴出している火山。

「そうか・・戻ってきたのか・・・私は・・」

自分の手を見る。

「滝谷・・」

ぼそりと呟く

「呼んだ?」

!!!!?

横にバっと振り向くと、そこには滝谷が、あぐらで座っていた。

「な、なななな、貴様っっ!なぜここにいる!!」

「ついてきちゃったv」

呆れ顔をするヘルクレアだったが、どこかその顔は少し赤くそまっていた。

「まったく・・・貴様というやつは・・ん?」

ポケットに手を突っ込むと、手先に何かがあたった。

取り出してみると茶色の袋だった。

中身を見てみると、何かの苗のようなものだった。

滝谷がそれを見たときに、アッという声を出して言った。

「フリルさん!これ、カリバヤの苗ですよ!!
これがあれば、この荒れ果てた大地にも緑の空間を作ることができるよ!!」

「そうか・・これは、あのとき、終夜から渡されたやつをそのままポケットに入れて
忘れていたんだ・・」

「この苗さえあれば、私の作りたかった緑の世界で満ち溢れた世界、あの世界と同じような世界を作れる!!」




その時だった、遠くから悪魔の群れと遭遇する。
剣と盾、槍と盾、トカゲのような体に、鎧に身を纏っている。

「あぁあん?見たことのねぇ悪魔がいるじゃねぇか、てめぇらココが誰の縄張りか知ってて踏み込んでやがんのか、あぁあ?」

ヘルクレアは魔剣ファントムダンサーを手に取ると立ち上がる。

「ん?あのピンク色の髪・・どこかで・・・なぁ、魔界を統括していた魔王様の娘にそっくりじゃねぇか?」

「バカ言うなよ、統括してる場所からどれくらい離れてると思ってるんだ?それに王の娘は成り上がるために
魔力を帯びた黒いドレスを着てるはずだろ?」

群れの一人が名前を伺う。

「てめえ!何モンだ!!!」

「私か?私の名はヘル・・いや、そうだな。私は生まれ変わったんだ。もう昔の私ではない」

「我が名は、フリューケン・フリル!!この魔界を統括する者だ!!!」

名前を聞くや、魔界を統括すると聞いて爆笑する魔族達

「ギャハハハハハ!!!ハッーーー!!!笑わせてくれるなよ小娘。一瞬ヘルクレアなのかと疑っちまったが
そうじゃねーなら全く問題ねぇや!!てめぇら!!やっちまいな!!!!」

魔物たちが武器を振り上げて走ってきた。

「そういえば、滝谷、貴様丸腰だったな」

仁王立ちしたまま、首だけを動かし、後ろを少し見るように立つ
ピンク色の長髪が風でなびく、かなり美しい。

「まぁ、そうですね」

「ルピエット、今をもって、私の使い魔ではなく、滝谷の使い魔となることを命ずる」

「エエッッ!!ご主人さまぁああ クビぢゅかあああ?!」

ルピエットがショックのあまり毛が逆立つ

「安心しろ、離れるわけじゃない、滝谷とはこれからもずっと一緒に行動を共にするさ」

「いいな?ルピエット、滝谷の剣となれ」

それを聞いたルピエットは飛び跳ねて喜んだ

「了解だーーっぢゅ!!! それじゃあ滝谷しゃん、これからよろしくお願いしますぢゅー」

ペコペコと頭を下げるネコ、あぁこちらこそこちらこそと 頭を下げる滝谷。

「いつまでも漫才やってないで行くぞ、滝谷!!」

「あ、はいはいっ」




二人は魔物の軍勢に突っ込んだ。

力の差は圧倒的で、その場にいた悪魔達は全員震え上がった。

この二人の悪魔の存在はすぐに魔界全土に広まり。

この二人を悪魔達は「クロスジェノサイド」と呼ぶようになる。

そして統括したあと、魔界全土を緑の世界にしたとき

最初に植えた苗が巨大な巨木となり、太さが800m、前兆5kmという

伝説の木「ユグドラシル」を誕生させることはまだ知らない。
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