玄愛-genai-

槊灼大地

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玄愛Ⅱ《雅鷹side》

玄愛Ⅱ《雅鷹side》4

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撃沈した。



三科雅彦…思っている以上に完璧すぎる男だった。



顔も体も最高級、
性格もいいし、
ユーモアもあって、
資産もある、




これは誰でも好きになって当然。



哀沢くんも引きずるわけだ。



俺なんて…金があるぐらいしか張り合えない…



帰宅してもずっとそんなことを考えてなかなか眠れなかった。



「どーしたよ雅鷹?」



翌日の朝、



俺が寝不足でどんよりしたオーラで登校したからそれに気付いたアヤちゃんが話しかけてきた。



「んー…性格よくなりたいなって」



自分から色々聞きたいとか言って、落ち込んでるあたりが性格最悪だよね。



「…頭でもぶつけたか?」



そしてアヤちゃんは俺の頭を撫でて言う。



「そういや俺の叔父が3月にシャレた居酒屋をオープンするんだ。あの駿河大典スルガタイテンプロデュースなんだぜ。プレオープンの日に1部屋空いてるから4人で来れば?って言われたんだけど皆で集まらねぇ?」


「駿河大典ー!すごいじゃん!いいねぇ、いつ?」



駿河大典って超有名テーマパークとかホテルとかプロデュースしてる人じゃん。



「3月17日の金曜日。次の日学校休みだしどう?」



みんなでわいわい居酒屋で集まるの楽しそう。



しかも大好きな駿河大典…



哀沢くんのとなりに座って癒されよう。




そして登校してきた哀沢くんに駆け寄り、アヤちゃんがすぐに報告。



「俺はその日は部活が終わってから部員と懇親会で無理だ。3人で行ってこいよ」



マジか…バスケ部に殺意っ!



「そっか残念。もう予約もいっぱいで、その日しか空いてねぇんだよな…そっちキャンセルできねぇの?」


「世話になった先輩達が来るから無理だな」



バスケ部の先輩に殺意っ!



まぁ、それは仕方ない。
残念だけど。



「じゃあ次は哀沢くんが来れる時を選ばないとね」


「炯来ねぇけど雅鷹は来んの?」


「行くー!だって駿河大典でしょー!俺大好きなの、行きたい行きたい!」



というわけで居酒屋は哀沢くん抜きで行くことに決まった。











―3月17日ー




それから1ヶ月以上経ち、今日は居酒屋の日。



哀沢くんは部活へ行ってしまった。



このまま帰ってもいいんだけど、ちょっとだけ哀沢くんに会ってから帰りたいなと思ってバスケ部の部室へ向かった。



「山田?」


「あ、ごめんね部活前に…」


「あぁ、…今日居酒屋行くんだよな?」


「うん。これから家帰ってお風呂入って着替えてから出かける」




幸い、部室には誰もいなかった。



今から誰か来るかもしれないけど。



「居酒屋行く前に、哀沢くんにちょっと会いたくて、会いに来ちゃった……誰もこないよね?」



俺はバスケ部の部室のドアを開けて、左右を確認し、誰か歩いていないか確認してまたドアを閉めた。



そして哀沢くんの唇に、自分の唇を軽く重ねた。



「本当は哀沢くんと一緒に行きたかったけど、懇親会は仕方ないもんね」



あぁ、本当はもっと長いキスしたかったな。



「だから哀沢くんの唇の温もりだけ一緒に連れてくね」



でも部員に見つかるかもしれないし。




「じゃあ哀沢くんも楽しんで」



そう言って俺がバスケ部の部室を出ようとドアに手をかけた瞬間、哀沢くんに声を掛けられた。

 

「山田」



そして哀沢くんは俺の引っ張り抱き寄せて、激しいキスをする。



「んっ…は…ぁ…」



誰か来るかもしれないのに。



1分ぐらいキスをしてから哀沢くんが言う。



「舌の感触も連れて行け」



俺の胸がキュンってなってる。




「哀沢くんが絡めたこの舌で、美味しい料理堪能してくるからねっ」



俺は哀沢くんの大きな背中に腕を回して、ぎゅうっと抱きしめて言った。




「大好き…じゃあ部活頑張ってね」




そしてルンルンで家に帰った。




家に帰って入浴して着替えてから目的の場所へ向かった。








PM6:00




「うわ…すっご…」 



居酒屋というか見た目はホテルとテーマパークが足されたような場所。



でも神威家らしく和のイメージもあってわくわくする。



さすが駿河大典!



「ご予約されていらっしゃいますか?」


「あ、神威綾さんの友達の山田です」


「ご案内致します」


リョウさんだって。なんか新鮮。


案内人に付いていき部屋の扉を開けると、アヤちゃんと愁ちゃんが先にいた。


「アヤちゃん、愁ちゃん。ちょっと遅れちゃったー」


「おっす雅鷹」


「ねー、もう雰囲気からして最高じゃんここ。また絶対来たい」


「叔父さんに伝えとくよ」



『すごいすごいオシャレだよー』



『大きなアクアリウムもあるしお料理も最高』


『哀沢くんもまた一緒に来ようね』


『釣れたてのお魚のお造りー!』



哀沢くんに逐一メッセージ送っちゃう。



全然既読にならないけど。



あっちも懇親会だしね。





「で、まだ抱いてもらえてねぇの?」



ニヤニヤして俺たちの進展を確認してくる性格の悪い神威家の三男。



俺は軽く流して飲食に集中した。



「そうなんだよね。なんか最近キスだけでもいいかなーって。あ、これすごく美味しい。果実酒?」


「悲しいこと言ってんなよ。それ最高級みかんの果実酒。意外と度数高くてすぐクるから飲み過ぎんなよ」


「飲まれるわけないじゃん。俺結構強いんだから。ね、愁ちゃん」


「あぁ。山田はパーティーでもよく飲んでるけど普通だもんな」



俺のグラスが空くと、瓶に入った果実酒をどんどん注ぐ愁ちゃん。



そういやパーティーでも愁ちゃんが飲んでるのって見たことないな。



お酒強いのかな?



「山田もっと飲むといい。嫌なことは忘れよう」


「うん!どんどん注いで!哀沢くんの舌の分も飲んじゃう!」


「俺叔父さんに呼ばれたからちょっと応接間行ってくるわ」


そう言ってアヤちゃんは部屋を出ていった。

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