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〜残された遺物と奏でる音〜
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「おいローレンツとやら,ここが美味い食事を出す店なのか??」
「……一応」
見ると外観はボロボロ,ドアも壊れていた。ガラスは全て割られている。店をやっているとは到底思えない程荒れている店構えだった。
中へと入る。
「おい!! おっちゃん!! おっちゃんいるのか??」
ローレンツが大声を出して呼ぶ。すると奥から体格のいいおじさんが出てきた。
「ローレンツじゃねえか久しぶりだな!」
「おっちゃんこれはどういう事だよ!?」
「そうよブライアン。なんで店がこんな事になってるのよ」
ルイーザも声を荒らげた。
「まあそこに座れ」
店の中にあるテーブルや椅子もほとんど壊れていて,壁などは穴が空いていた。
「どうしちまったんだよ。王国一の酒場ライデンがなんでこんな事になっちまったんだよ」
ブライアンと呼ばれる男の話しによると,新興貴族が街に同じような店を開業し,ライバル店であるブライアンの店に嫌がらせをするようになったのが,最初だったという。
だんだんと嫌がらせが悪化していき,とどめはブライアンに怪我を負わせ,長期休業したのが最後の決め手となり,店は閑古鳥が鳴くようになってしまったという。
「どうにか出来なかったのか??」
「色々な所と繋がっているって悪い噂も流れてる貴族で,貴族でもあるから,こっちからは手を出せなかったんだよ」
「好き放題されてしまったのね」
「酷い話です……」
ルイーザとエリスが答える。
「嫁と娘もいるからな。これ以上続けると俺以外の家族にまで危ない目に合うかもしれん。だから店を畳もうと思っててな」
「ブライアン本当かよ!! この店をなくすってのか!?」
「ああ……せっかくローレンツ達が久しぶりに来たんだ何か作ってやる」
「おお! 何か食わしてくれるのか? ありがたいのじゃ!!」
「そういや普段見ねぇ~顔が二人いるけど,誰なんだ?」
「今日冒険者になったばっかの新人だよ! 縁があってこの店に連れてきたんだ」
「そうだったのか。わり~なせっかく来てもらったのによ。でも美味しい食事出してやるよ。調理場だけは無事なんだ」
ブライアンは奥の調理場へと行き,調理を始めた。心地よい調理をしている音と共に,食欲を刺激する匂いが流れてくる。
「ここの店はそんなに有名なんですか??」
「そうだな! この世界を救ったと言われる伝説の冒険者が常連だったと言われていて箔があるのもそうだし,王都では老舗の店なんだ。味は超一流,なのに値段はそこそこで,冒険者からも普通の一般のお客も大勢いて,大人気のお店だったんだよ……」
皆黙ってしまって空気が重くなる。
クロエはウキウキした様子で身体を左右に振って料理が待ちきれない子供のようだった。
「さあ,今日は俺からの奢りって事でどんどん食ってくれ!」
ブライアンから料理と飲み物が次々に運ばれてきた。この世界に来て初めてのちゃんとした食事を目の前にし,俺は我慢できずにがっついた。
「う,う,うめぇ~~!!」
「そうだろ!? うちの店の高級料理にだって負けないぜ!」
「久しぶりに食べたけどやっぱりここの料理は世界最高ね」
「うむ」
「美味しい」
皆が料理にがっつく。俺は店に入った時から気になっていた事をブライアンに聞いてみた。
「ブライアンあそこに見えるのは楽器だと思うんですけど,店で弾いてたんですか?」
「!?!?!?」
ブライアンが驚いた表情を見せる。
「お前さんあの遺物が何なのか知ってるのか?」
「遺物って。ただのピアノでしょ!?」
「ピアノって言うのか?? あれは一体何なんだ??」
「何って……音が出る楽器ですよ!? 知らないんですか?」
ブライアンの顔を見ても,周りを見ても皆知らなそうだった。
「ピアノって言ったか? あれは曾祖父さんがこの店をやってる時,伝説の冒険者が置いていった代物なんだ。魔法がかかっていてずっと何十年と綺麗なままなんだよ」
「弾いてもいいですか……?」
「ああ勿論いいぞ」
元の世界にいた時は,ほぼ毎日見ていたピアノだったが,久しぶりに見た気がする。
蓋を開けると現れる白い鍵盤と黒い鍵盤がやけに綺麗に見えた。
本当に魔法がかかっているのか,ホコリ一つなく綺麗だった。
人差し指で音を出してみた。とても澄んだ綺麗な音がした。
魔法がかかっているからなのか,年月がそうさせたのか,この世界の気候なのか素材なのか分からないが,今まで聴いた音の中で一番綺麗な音がした。
ブライアンは胸のポケットから手紙を出した。それを俺に差し出した。
「遺物を知ってる者が現れたら渡してくれって言われてる手紙だ。読んでくれ」
俺は手紙を開封し,中身を見た。手紙はなんと英語で書かれていた。
『私は地球という世界から来た異世界人だ。最初は戸惑ったがこの世界を精一杯生きて楽しんだ。しかしこの世界で唯一残念なのは私が好きだった音楽という文化がほとんど育っていないということだ。それもそうだろう。ずっと種族間で戦争をしているから音楽なんて文化が育つ筈もない。だから私は冒険者になり,世界を平和にした。そしてピアノを作った。手紙を読んでいるあなたはきっとピアノを弾けるだろう。楽しい音楽を奏でて,この世界に音楽を広めてほしい。私の故郷では音を楽しむと書いて音楽という。さあ楽しい音楽の世界を魅せてくれ。
冒険者 さすけ より』
「なんと書かれてたんじゃ!? 知らん文字じゃな」
「楽しい音楽を奏でてくれってさ!」
「おおそうかそうか! じゃあせっかくだから遺物とやらで音を奏でてくれ」
「わかったわかった」
俺は椅子に座り鍵盤に指を乗せる。音を楽しむか……
いつからそんな感情がなくなってしまったか。評論家に評価されるような音楽。お金を得るために弾いていた音楽。音ではなく,俺が演奏しているというだけで評価をする聴衆。
でも今はそんな事はない。俺の事を知らない世界,ピアノの存在も知らない世界で俺は今ピアノの音を鳴らそうとしている。せっかくだ楽しもうじゃないか。
「……一応」
見ると外観はボロボロ,ドアも壊れていた。ガラスは全て割られている。店をやっているとは到底思えない程荒れている店構えだった。
中へと入る。
「おい!! おっちゃん!! おっちゃんいるのか??」
ローレンツが大声を出して呼ぶ。すると奥から体格のいいおじさんが出てきた。
「ローレンツじゃねえか久しぶりだな!」
「おっちゃんこれはどういう事だよ!?」
「そうよブライアン。なんで店がこんな事になってるのよ」
ルイーザも声を荒らげた。
「まあそこに座れ」
店の中にあるテーブルや椅子もほとんど壊れていて,壁などは穴が空いていた。
「どうしちまったんだよ。王国一の酒場ライデンがなんでこんな事になっちまったんだよ」
ブライアンと呼ばれる男の話しによると,新興貴族が街に同じような店を開業し,ライバル店であるブライアンの店に嫌がらせをするようになったのが,最初だったという。
だんだんと嫌がらせが悪化していき,とどめはブライアンに怪我を負わせ,長期休業したのが最後の決め手となり,店は閑古鳥が鳴くようになってしまったという。
「どうにか出来なかったのか??」
「色々な所と繋がっているって悪い噂も流れてる貴族で,貴族でもあるから,こっちからは手を出せなかったんだよ」
「好き放題されてしまったのね」
「酷い話です……」
ルイーザとエリスが答える。
「嫁と娘もいるからな。これ以上続けると俺以外の家族にまで危ない目に合うかもしれん。だから店を畳もうと思っててな」
「ブライアン本当かよ!! この店をなくすってのか!?」
「ああ……せっかくローレンツ達が久しぶりに来たんだ何か作ってやる」
「おお! 何か食わしてくれるのか? ありがたいのじゃ!!」
「そういや普段見ねぇ~顔が二人いるけど,誰なんだ?」
「今日冒険者になったばっかの新人だよ! 縁があってこの店に連れてきたんだ」
「そうだったのか。わり~なせっかく来てもらったのによ。でも美味しい食事出してやるよ。調理場だけは無事なんだ」
ブライアンは奥の調理場へと行き,調理を始めた。心地よい調理をしている音と共に,食欲を刺激する匂いが流れてくる。
「ここの店はそんなに有名なんですか??」
「そうだな! この世界を救ったと言われる伝説の冒険者が常連だったと言われていて箔があるのもそうだし,王都では老舗の店なんだ。味は超一流,なのに値段はそこそこで,冒険者からも普通の一般のお客も大勢いて,大人気のお店だったんだよ……」
皆黙ってしまって空気が重くなる。
クロエはウキウキした様子で身体を左右に振って料理が待ちきれない子供のようだった。
「さあ,今日は俺からの奢りって事でどんどん食ってくれ!」
ブライアンから料理と飲み物が次々に運ばれてきた。この世界に来て初めてのちゃんとした食事を目の前にし,俺は我慢できずにがっついた。
「う,う,うめぇ~~!!」
「そうだろ!? うちの店の高級料理にだって負けないぜ!」
「久しぶりに食べたけどやっぱりここの料理は世界最高ね」
「うむ」
「美味しい」
皆が料理にがっつく。俺は店に入った時から気になっていた事をブライアンに聞いてみた。
「ブライアンあそこに見えるのは楽器だと思うんですけど,店で弾いてたんですか?」
「!?!?!?」
ブライアンが驚いた表情を見せる。
「お前さんあの遺物が何なのか知ってるのか?」
「遺物って。ただのピアノでしょ!?」
「ピアノって言うのか?? あれは一体何なんだ??」
「何って……音が出る楽器ですよ!? 知らないんですか?」
ブライアンの顔を見ても,周りを見ても皆知らなそうだった。
「ピアノって言ったか? あれは曾祖父さんがこの店をやってる時,伝説の冒険者が置いていった代物なんだ。魔法がかかっていてずっと何十年と綺麗なままなんだよ」
「弾いてもいいですか……?」
「ああ勿論いいぞ」
元の世界にいた時は,ほぼ毎日見ていたピアノだったが,久しぶりに見た気がする。
蓋を開けると現れる白い鍵盤と黒い鍵盤がやけに綺麗に見えた。
本当に魔法がかかっているのか,ホコリ一つなく綺麗だった。
人差し指で音を出してみた。とても澄んだ綺麗な音がした。
魔法がかかっているからなのか,年月がそうさせたのか,この世界の気候なのか素材なのか分からないが,今まで聴いた音の中で一番綺麗な音がした。
ブライアンは胸のポケットから手紙を出した。それを俺に差し出した。
「遺物を知ってる者が現れたら渡してくれって言われてる手紙だ。読んでくれ」
俺は手紙を開封し,中身を見た。手紙はなんと英語で書かれていた。
『私は地球という世界から来た異世界人だ。最初は戸惑ったがこの世界を精一杯生きて楽しんだ。しかしこの世界で唯一残念なのは私が好きだった音楽という文化がほとんど育っていないということだ。それもそうだろう。ずっと種族間で戦争をしているから音楽なんて文化が育つ筈もない。だから私は冒険者になり,世界を平和にした。そしてピアノを作った。手紙を読んでいるあなたはきっとピアノを弾けるだろう。楽しい音楽を奏でて,この世界に音楽を広めてほしい。私の故郷では音を楽しむと書いて音楽という。さあ楽しい音楽の世界を魅せてくれ。
冒険者 さすけ より』
「なんと書かれてたんじゃ!? 知らん文字じゃな」
「楽しい音楽を奏でてくれってさ!」
「おおそうかそうか! じゃあせっかくだから遺物とやらで音を奏でてくれ」
「わかったわかった」
俺は椅子に座り鍵盤に指を乗せる。音を楽しむか……
いつからそんな感情がなくなってしまったか。評論家に評価されるような音楽。お金を得るために弾いていた音楽。音ではなく,俺が演奏しているというだけで評価をする聴衆。
でも今はそんな事はない。俺の事を知らない世界,ピアノの存在も知らない世界で俺は今ピアノの音を鳴らそうとしている。せっかくだ楽しもうじゃないか。
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