人間と犬と優子と僕

yuraaaaaaa

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〜自由と不自由〜

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 今日も俺は子分と一緒に外を歩いている。いつもの違うのは,子分だけなのである。
 ご主人は一緒ではない。俺と子分だけで外に出掛けている。

 これはチャンスではないか? そう俺は思った。
 今までいつも隣にはご主人が居たために,好きに動こうと思っても制止されてしまい,好きに動けない事が多かった。

 子分だけならいつでも逃げ切れる事が出来る。俺は自由に,好きにしてみたかった。
 「ごめんな!!!」
 俺は思いっきり駆け出した。

 「コロー! コロー! 駄目ー!」
 後ろで俺の事を叫ぶ声がしたが,俺には関係なかった。

 「自由だーー!!」
 俺はひた走った。知らない場所へと駆け巡る。

 見るもの,匂い,音全てが新鮮だった。
 息が切れ,肺が破裂しそうな程走った。子分の匂いもしなくなる程遠くへ来たようだった。

 「はぁ~。はしゃぎすぎて疲れたな……」
 俺は喉が渇いたので,とりあえず水場がある所を探した。

 水の匂いがする方へと進んで行くと,水場を見つけた。
 喉がカラカラだった俺は勢いよく喉を潤していく。

 「何だオメェー。野良犬じゃねえな! でも一人か?」
 人間の声が聞こえ俺はそっちに顔を向けた。

 俺が知っている人間と同じとは思えない臭いを漂わせている人間が目の前に立っていた。
 じっとお互い見つめていた。

 「なんだ? 捨てられたのか? いや! 勝手に逃げてきたのか。捨てられたとしたらこの鎖が付けたままにはしないもんなぁ。首輪だって外すよなぁ。勝手に逃げて飼い主達はきっと心配してるぞ。いいのか?」

 その人間はしゃがみ込んで俺の目線で話しかけてきた。敵意は感じられない。
 「まあいい! 保健所の奴らに捕まって殺されるなよぉ。じゃあな!」

 俺はその人間に興味が湧いて後を付いて行く事にした。
 「なんだ? 付いてきてもしゃーないぞお前!」

 付いて行くと,人間は青いビニールが張られている中へと入っていく。
 「まあ……勝手にしろ」
 一緒に中に入ると,中はごちゃごちゃした場所だった。
 俺は自分が横になれる場所を探し,小さくくるまって横になった。

 俺の首に付いていた鎖をその人間は外してくれた。
 「ん?? なんだ?? お前コロって名前なのか?? しかもご丁寧に住所まで書いてあるじゃねえか! お前さん……どうしたいんだ?」

 「とりあえず,何か食わしてもらえないか?」
 理解してもらえる分からないが,訴えてみる。

 「なんだ? お腹空いてるのか? 本当にしょうがねえな」
 奥のほうから人間が何かを取り出してきた。

 人間は俺の前に何か出してきた。食べ物だった。
 ニオイを嗅ぐが食べられない物ではないようなので俺は口にした。
 「本当は俺の飯の一つだったんだぞ!」

 初めて食べた味だったが,食べられなくない味だった。
 腹が膨れた俺は,走り回ったせいか急激に眠くなり眠りについた。

 人間が朝早く起きて準備する音がし,外に出ていった。
 朝っぱら何をするんだ? 俺はそう思っていた。

 「ちょっくら行ってくるからコロは待ってろ」
 寝床から人間が出ていく。俺はまだ眠かったので再び眠りについた。

 やっと目が覚めて俺は起きる。
 体を伸ばし,体を目覚めさせる。そしてちょっと外へと出ていく事にした。

 「あぁ~。よく寝たな~! だけどとりあえず腹減ったなぁ」
 俺は自分でご飯を探しに行く事にした。

 ニオイをたどって食べ物を探そうとするのだが,中々食べ物は見つからなかった。
 仕方ないと俺は思い,そこら辺に生えてる草や虫を食べてどうにか飢えを凌いだ。
 水だけは近くにあるので渇きを潤す。

 ああ……自由を求めた分,苦労しなくてはいけない事もあるのか。
 俺は自分が不自由だと思っていたけども,実は自由だったんだなとしみじみ感じていた。

 時間が経って,少し冷えてくる頃になると人間が帰ってきた。
 「おーい! コロ! どこだ? 帰って来たぞ!」
 呼ぶ声がして俺は人間の元へと駆け寄った。

 「コロ。今日は何をしてんだ? 楽しかったか?」
 人間が俺の頭を撫でる。

 俺にとってご主人でもない,子分でも兄貴でもない人間に触れられたけど,何故か嫌な気分にはならなかった。それが何故なのかは俺には分からなかった。
 「ほら! コロ飯だぞ!」

 昨日までなかった赤い器に入れられた,人間が食べるであろう食べ物を差し出してくれた。
 お腹は減っていたが,俺は口を付けなかった。

 「何だ? 食べねぇーのか? 心配すんな! ちゃんとコロ用に取ってきた飯だ。俺のじゃねえから安心して食っていいぞ!」
 俺はその声を聞いて,出された食べ物を口にする。

 正直美味しいとは思えなかったが,腹の足しにするには十分だった。
 「なあコロ……お前さんはこんな所にいないで,自分の家に帰った方が良いんじゃねえか? 俺はそう思うんだよなぁ……」
 人間に撫でられながら俺は欠伸をした。

 「お前さんの事をもの凄く探していると思うんだよなぁ俺は。それに俺の所に居たって幸せにはなれないぞ!? 家族の元に帰った方が幸せだと思うぞ?」
 俺のすぐ側で横になった人間はすぐに寝息を立てていた。

 次の日も同じ様に朝早くから外へと人間は出ていく。
 俺は普段より何故か眠かったので一日中ゆっくりして過ごした。
 
 「コロー! コロー!」
 ん? 子分が俺のことを呼んでいる? 子分が俺の事を呼ぶ声が聞こえた。
 離れてからちょっとしか時間が経っていないのに,何故か懐かしく感じた。

 気付くと,呼んでいた声は子分のものではなかった。
 「コロ! 起きたか? ちょっと出掛けるぞ……」
 俺の首に鎖を付けて,外へと連れ出された。

 何処へ向かうのかは分かってないが大人しく付いていくことにした。
 疲れているのか分からないけども,ご主人達と一緒に住んでいる時より力が出なかった。

 辺りはすでに暗く,街灯の灯りだけが俺達を照らす。向かっている場所は余計に不明だった。
 人間は俺に特に話す事はなく,ただただ歩いているだけだった。

 しばらく歩いていると,知っている匂いが俺の鼻先をかすめた。
 どんどん匂いが濃い方へと向かっていく。

 とうとう俺でも分かる場所に到着した。
 「コロ? お前は自分の家に戻った方がいい。俺なんかと一緒に居ないほうがいい」
 人間がしゃがんで俺の顔を撫でてそっと立ち上がり,来た道を戻っていく。

 「ありがとうな!! 楽しかったぜ!!」
 俺の声に人間は手を振って答えてくれた。その後姿うしろすがたはすぐに闇夜に消えていった。

 「コロ!? コロー!?」
 家から子分とご主人達が出てきた。

 「悪かったなー! ただいま」
 「どこ行ってたのよ!!!」
 子分が俺に感情をぶつけてくるのが分かった。

 「心配してたんだぞ?」
 ご主人も俺の事を怒っているようだった。
 「とりあえず風呂とご飯だなコロ。体のあちこちが随分汚れているからなぁ」

 俺は家の中へと入ると,風呂場に連れて行かれ体をご主人に洗ってもらった。
 体を拭いてもらい,乾かしてもくれた。とっても気持ちがよかった。
 その時に,ご主人には全く伝わってないと思うが,自分が何処で何をしていたのかを話した。

 すっかり綺麗になった後,ご飯を出してくれた。俺は自分のヨダレが垂れるのが分かった。
 「しっかり食いな」
 すぐにがっついて俺は食べ尽くす。

 不自由で自由がないと思っていた生活だけれども,俺はこんなにも恵まれていたのだと実感した瞬間だった。ご主人達は優しいし,子分の事を俺は手のかかる人間だという認識だったけれど,居なければ居ないで寂しいと感じてしまっていたようだった。

 ご飯を食べた後に子分が鳴らす音が,少し前は雑音にしか聞こえなかったのに,改めて今聞くと,落ち着く音に変わっていた。

 何処どことなく閉鎖された環境で毎日の繰り返しだった日常,そんな生活に飽きた俺が突然飛び出したはいいが,外で生きていくには厳しい環境だったのは間違いなかった。

 飛び出した時にあの人間に出会ってなければ,もっと酷い事になっていたかもしれない。
 俺は自分自身で勝手に不自由だと思っていたけれど,本当は一番自由なのかもしれない。

 「それにしてもよくコロ戻って来れたわね」
 「首輪に住所が書いてあるから誰かが届けてくれたんじゃないか?」
 「もしそうなら届けてくれた人に感謝したいわね……」

 子分が俺に抱きつく。
 「コロ~! 本当に戻って来て良かったよー! 今度は逃げちゃ駄目だよ?」
 「冒険したし楽しかったからもう逃げないかな?」

 「コロはもう逃げたりしないよ! しっかり帰って来たのがその証拠だよ。コロそうだろ?」
  ご主人が俺の頭を撫でてくれるから,俺はご主人の手を舐めた。

 あの一件以来,外に行かせてもらえる事が少なくなってしまった。
 ご主人と一緒じゃないと外に連れ出してもらえなくなったのだ。

 それは確かに仕方ないよね本当に。
 しかし,今日はご主人抜きで子分と二人で外に行く事になった。

 「コロ! 散歩行くよ?」
 「大丈夫か? また逃げちゃうぞ?」
 「もうコロにあっちこっちに振り回されたりしないんだからね!」
 「まあいいけども……じゃあ行こうか!」

 私は子分と外に行くことに。
 歩いていると向こうからピチピチのギャルが歩いてくるのが見えた。

 「知らない犬を見るといつも飛び出して近くに行って興奮して吠えていたのに,コロどうしちゃったの?」

 私の事を子分は覗き込んできた。
 「私はもうそんなガキじゃなくなったんだ。紳士のたしなみとして,紳士的に話しかけるんだ」

 「お嬢さん! 私と遊びませんか??」
 「え? 私あんたみたいなおじさん嫌いなのよ。あっちいって」

 おじさんって……私はもうそんな歳になってしまったのか??
 いつかはつがいになって,幸せになりたいと思っているんだけどな。

 「コロどうしたの? フラれちゃったの? 私が一緒に付いててあげるよ?」
 「私はガキんちょには興味ないんだ。レディーがいいんだ」

 前からピチピチのギャルが歩いて来た。私は興奮して飛び出してしまった。
 しまった……紳士の嗜みが……。

 行こうとしたが途中で私は,止められてしまった……。
 振り向くと子分が私に繋がれた鎖をギュッと握って,私をある一定の距離から動けなくしていた。

 あれ?? いつの間に子分は私より力が強くなったんだ?
 それとも私が弱くなったのか?

 「エヘヘッ! もうコロに負けたりしないんだからね」
 私は驚いた。

 そういえば子分の姿が,前より遥かに大きくなっている。
 以前は私とそこまで変わらない大きさだったのに……。
 その後は普段と変わらない散歩をして,家へと戻った。

 「ママ~,ただいま!」
 「おかえり優子,お散歩どうだった!?」
 「大丈夫だったよ。私一人でも大丈夫だった」
 「そう? なら良かった。優子も大きくなったのね」
 「エッヘン!」

 私は沢山動いたので,水を飲んで喉の渇きを潤す。
 子分が私の事を撫でてくるが,首を振って私は嫌がった。

 「コロは私の事嫌いなの? そんな事ないよね?」
 「子分なんだから気軽に触るなよ!」
 「コロはいい子だなぁ~」

 ご主人ならまだしも子分に触られるのはプライドが許さない。しかし,自分の中で徐々に子分を受け入れてしまっている心がある事もまた事実だった。
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