人間と犬と優子と僕

yuraaaaaaa

文字の大きさ
8 / 10

〜子分の試験〜

しおりを挟む
 あの日から子分は音を鳴らす事が無くなり,部屋に籠もる事が多くなった。
 私はてっきり毎日外に連れ出してくれるものだと思っていたが,そうではないようだ。
 むしろ以前よりも連れて行ってくれる事が少なくなった。

 その代わりご主人が連れて行ってくれるようになった。
 「コロ散歩行くよ?」
 「分かったよ~」

 今日もご主人と共に歩く。
 「ごめんねコロ! 優子は高校に行くために勉強に励んでるから,受験が終わるまでは構ってあげられないと思うんだよ。その代わり私かお父さんが散歩に連れて行くからね」

 「優子もあんな難しい高校受験しなくてもいいのに……今のままでは絶対に合格出来ないって先生に言われちゃったんだってさ。だから頑張ってるからコロも応援してあげてね」

 「たまにはご主人との散歩もいいよね~」
 私はご主人と散歩を楽しんだ。

 子分と顔すら合わせない日々が続くようになった。
 帰りも遅くなり,帰ってきてもすぐに部屋に閉じこもってしまうのだった。
 そんな子分の態度にご主人達は心配よりむしろ喜んでいるようだった。

 私には分からないが,子分が何か頑張っている事は分かった。

 季節が移り行き寒い季節がやってきた。
 私はこの季節が好きだった。私にとってはむしろ丁度いい位だからだ。
 外に出て遊んでもそんなに暑くならないし快適なのだ。

 「コロー! 久しぶりに散歩行こっか??」
 「珍しいな! いいのか?」
 「じゃあ行くよ~コロ!」
 久々に子分と散歩に出掛ける。

 「う~。さぶ~い!! コロは寒くないの?」
 「気持ちいい! いい感じだな」
 「もふもふしてるからコロは平気か。あ~もう寒い」
 私は元気に走り出す。

 「走らないでよ!」
 私は気分が上がっている。
 
 「ねえコロ? 私……合格出来るかな? 最近不安になってきたんだよ……」
 「久しぶりだし遊ぼうぜ! 遊ぼうぜ!」
 「コロはいつも元気で悩みも無さそうで羨ましいな~」
 
 私は広場で駆けずり回っていた。
 「いや~気持ちいいぜ! 子分も一緒にどうだ?」
 「コロどうしたの? もっと遊んで欲しいの?」
 「それそれ! 投げてくれ」

 ちょっと前までボールを全く投げる事が出来なかった子分が,いつからかちゃんと投げられるようになっていた。

 私は子分が投げたボールを取りに行き,咥えて子分に届ける。すると再び子分が投げてくれた。
 少し前だったらしょうがないと思いつつ付き合ってやってた事が,今ではちょっと楽しいと私は感じている。

 暫く遊び,私はクタクタになって家に戻る。
 私はよく遊び,よく食べ,よく寝た。

 とある日の朝,ご主人達と子分が緊張した雰囲気を醸し出していた。
 普段と明らかに違う事は分かっていた。何故なら朝ごはんを忘れてるからだ!!

 「おいおい! ご飯忘れてるぞ! お腹空いたぞー!」
 そんな事を私が訴えても気付いてもらえる訳もなかった。
 どうにも仕方ないので,夜ご飯まで静かに待った。

 「優子大丈夫かしら? もし落ちちゃったらどうしよう……」
 「大丈夫だろ? あれだけ必死にずっと勉強していたんだし! 合格率もA判定だったんだろ?」
 「そうだけども,もしも不合格だったら……と思うとね」
 「まあ待つしかないさ!」

 私はやる事がないので眠る事にした。
 「……」

 「……」
 「……」
 私はいい匂いに誘われて目が覚めた。

 珍しくご主人達が二人並んでいるのが見えた。
 「珍しいな!!」

 「おお,コロ起きたのか? そろそろ優子も帰ってくるから,ご飯はその時にな」
 「コロのご飯も豪勢にしたから後で楽しみにしててね!」

 ガチャガチャ。ドアを開ける音がした。
 「やっと帰って来たか! こっちは朝からお前のせいで何も食べれてないんだよ!」
 私は興奮気味に玄関へと向かう。ご主人達も一緒にだった。

 ドアが開くと,勿論子分の姿だった。
 「ホラ! 早くしろ! 早くしろ!」
 「コロただいまー!」
 「優子どうだったの?」
 「合格だった!!!」
 子分が軽快は声と嬉しそうにそう話した。

 「「おめでとう」」
 「ありがとう」

 「おら! 早くしろよー! 腹が減って仕方ないんだ!」

 ご主人達と子分は嬉しそうな声がしていた。
 「今日のご飯は豪勢だから,早く手を洗って支度してらっしゃい」
 「は~い!」

 子分が二階へと上がっていく。
 鼻腔《びくう》をくすぐる匂いに私の胃袋は限界だった。
 私は子分を急かす為に二階へと上がる。

 「おーい! 早くしろ!」
 「待ってコロー」
 ドアが開く。

 「そんなに興奮してコロどうしたの?」
 「いいから早くしろ」
 「待って待って」
 急いで一階へと降りていく。

 「ご主人達,早くご飯くれぃ!」
 「あらあら。コロも分かってるのかしら!? 喜んでくれてるの?」
 「きっとそうかもしれないな!」

 「今日は豪勢だねママ」
 「合格祝いだからね。コロにもはい!」
 目の前に豪勢な食事が運ばれてきた。

 「うひょー! 美味そうだ!」
 「じゃあいただきます」
 「「いただきます」」

 私は一心不乱に食べ進める。

 「優子本当におめでとう。高校入ったらどんな事したいんだい?」
 「パパまだ早いよ! でも悔しかったらやっぱ吹奏楽頑張りたいかな? その為にわざわざ吹奏楽強い高校選んだんだもん」

 「私達は応援するから頑張りなさい」
 「ありがとうママ」
 楽しそうな声が聞こえるが,私は皿を咥えておかわりを要求する。
 朝食べてないしいいかなと思ったのだ。

 「コロ? おかわり欲しいの?」
 「駄目だぞコロ。残念だけど,おかわりは無しだよ」
 どうやら私の要求は通らなかったようだった。

 まあしかし,今日は豪勢な食事だったから良しとした。
 食事をすると眠くなるのは何故なんだろうか?
 ご主人達の楽しそうな声を耳にして私は横になる。

 「コロ? コロ?」
 私を呼ぶ声に目を開け反応する。
 「今日は一緒に寝よ?」

 子分に呼ばれ,欠伸をしながら子分の部屋に向かう。
 子分の匂いが染み付いた部屋で子分の隣で横になる。
 自分のニオイではないのに,そのニオイで落ち着いている自分がいた。
 私の事を子分が抱きかかえる。私はその腕の中で眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

秘書と社長の秘密

廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。 突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。 ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?

処理中です...