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第二章
嬉しくない信頼
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「え? 私? どういう事でしょうか?」
ジャンはアウグスト辺境伯に尋ねる。
「ジャン子爵はダル公国と一戦でかなりの戦力差があったのにもかかわらず勝利したって有名ですよ?」
「いや、それだけで……私に何をして欲しいんですか?」
辺境伯は、首を少し傾けながら掌を首元にトントンッと。
「勿論狙いますよ大将首」
「私がですか!?」
「ジャン子爵こそが適任で、他の方々には出来ないと思っています」
「一体誰を狙うんですか?」
「ベラトリア連合国の総大将はバーフェンという人物です。そして副将にヴァリックが控えています。バーフェンは攻撃するのが大好きな将軍で副将のヴァリックは真逆で守りが堅いです! バーフェンはヴァリックが裏で控えてくれて、尚且作戦を考えてくれるからこそ、何も気にせずこちらに突っ込んでこれるんです」
「バーフェンも厄介ですが、それよりも裏で控えているヴァリックが最も厄介なのです。ヴァリックを開戦前に仕留める事が出来れば、相手の戦力は半減すると思っていいでしょう」
「つまり、堅守なヴァリック将軍の首を獲って来いという事ですか?」
「話が早くて助かります」
「ちょっと待って下さい!!」
一人の貴族が話に割って入る。
「どうしましたか?」
「そんな重要な事をこんな奴にやらせるんですか!?」
「こんな奴とは一体どういう意味でしょうか?」
「ジャン・アウル子爵にやらせるという意味ですよ! 成人したばかりのガキに成し遂げられるとは到底思えません!」
「なるほど! なるほど! ではあなたがやりますか?」
「……」
発言した貴族は口を噤む。
「ジャン子爵はこの場所とは反対側にいつも居るので分からないかも知れませんが、他の方々はヴァリックが如何に臆病で、さらに倒しづらい相手か知っていますよね?」
「いつもなら、あれこれ策を講じたり、口八丁な事もしますが今回そんな余裕はありません。この一手が失敗すれば、ここにいる全員が死にます。仲良くおサバラです! ヴァリックを仕留める事が出来るのはジャン子爵しかいません。他の方々では不可能です」
「アウグスト辺境伯、一つ聞いてもいいでしょうか?」
「なんでしょう」
「失敗した時の予備の対策はあるんですか?」
「ハハハ! ありませんよ! 失敗したら終わりです。ですが、ジャン子爵なら成功すると思っています。そこからやっと活路が開けてきます」
(なんか腹が立つな辺境伯。どっちみち断れないだろ! 勝算あるのか?)
(どうだろ? 全く分からない)
「ちなみにどうやって? そして何日の猶予があるんでしょうか?」
「十日以内にお願いします」
「!?!?!?!?!?」
周りがざわついた。
「気にしないで下さい。周りの方々は絶対に不可能だと思ったから反応しただけです。ジャン子爵地図を見て下さい。ヴァリックはここに本陣を置いているはずです」
アウグスト辺境伯が指差したのは山の中だった。
「ここ……ですか?」
ジャンが不審に思うのも無理はない。こんな山の中に陣なんてものがあるのだろうか。
「間違いありません。何回も戦ったからこそ分かる事があります。ヴァリックという人物は、ありえないというような場所に本陣を敷く傾向があります。私が導き出した答えです! 本陣を見つけた後どうするかはジャン子爵に全て任せます」
ジャンは何か考えているようだった。
「ヴァリックはどんな魔法を使うのですか?」
「土魔法です。攻撃魔法は不得意なようですが、地形を変えたりするほどの広範囲の魔法が得意だと聞いています。お任せしてもいいですか?」
「分かりました。私にお任せ下さい」
「よろしくおねがいいたします」
アウグスト辺境伯は立ち上がって頭を下げた。
「他の方々はどうするか、ご説明します。まず――」
アウグスト辺境伯による作戦を皆が静かに聞いていた。
ジャンが成功する前提で話が進んでいく。
(何か考えがあるのか?)
(今の所はない……とにかく本陣を見てからだね全ては)
「こんな感じです! 何か質問はありますか? ありませんね? では解散します。ジャン子爵は何か必要とあらば用意できる物は用意しますので声をかけて下さい」
「分かりました」
パチンッ。と手を叩くアウグスト辺境伯。
「では皆さんよろしくおねがいいたします」
辺境伯は酒瓶を手に取って飲み始めた。
テントを出るジャン。
「ジャン様……これからどうされますか?」
「リリアも連れて、三人で今から本陣があるのか見に行くよ」
「分かりました。リリアを連れて参ります」
――。
「それじゃあ行くよ」
ジャンは馬に乗って走り出した。
「主様! 私達はどこへ向かっているのですか?」
「ベラトリア連合国の副将、ヴァリックの本陣に向かっている。ヴァリックの首を獲ってこいという命令が下った。相手の本陣を見て作戦を考える」
辺りはすっかり夜になっていたが、月明かりを頼りに馬を走らせた。
アウグスト辺境伯が言っていたポイントの近くまで来たので馬から降り、今度は走っていく。
「本当にこんな場所に本陣なんかあるのでしょうか?」
「どうだろう? 分からない……」
山道から外れて木々の生えている森の中へと入り、上へと登っていく。
しばらく登ると、山々に囲まれた場所にある窪みのような、盆地のような場所にたどり着くと、その場所には自分達のより遥かに大きな陣が敷かれていた。
「本当にあったな。ジェイド、リリア、あの本陣を見てどう思う? 襲えると思う?」
二人は黙ってしばらく考え込む。
「私が思うに、かなり難しいかなと思います」
「主様。天気が悪くならないんですかね? 大雨が降ればあの場所では厳しくなるのでは?」
「雨ね~。この辺ってあまり雨が降らない地域なんだよ……それにしばらくは良い天気が続きそうだよ。雨を降らすほどの水魔法の使い手が居たらまた違うかもしれないけどね」
「流石にそんな使い手……いないですよ」
「いないね。仮に居たとしても、ヴァリックは対策してあると思うよ」
(色々と考えてそうだが、結局どうなんだ? やれそうなのか?)
(無理だね!!)
(無理なのかよ!!)
「ジャン様……どうするんですか?」
「今すぐには思い付かない。今日は戻ろうか」
「「はっ!」」
ヴァリックの本陣がある事を確認したジャンは、自分らの陣へと戻る。
戻る頃にはすっかり朝になっていた。
自分のテントに入り、椅子に腰掛けるジャン。
(それで、ヴァリックぶっ殺す作戦、思い付いたか?)
「普通にやっても駄目、きっと奇襲も駄目、人数でも駄目、強力な魔法もない、僕が思い付くのは反吐が出るような作戦しか思い付かない……」
(難しく言うなよ! 要は作戦を思いついたんだな!?)
「作戦なんて呼べる代物でもないよ。成功する確率は三割といった所……」
(えっ!? 三階に一回の成功って事!?)
「確率が少ない――」
(馬鹿か! 十分だろ? 三割上等だよ! やってやろうぜ!)
「とんでもなく痛い目に遭うよ?」
(なんだよ!? 怖気付いたのか? やらなきゃ全滅なんだろ? 任せろ)
「分かった……ユウタがそう言うなら僕も覚悟を決めるよ」
眠らないまま作戦が俺に伝えられ、作戦を実行に移していく。
ジャンはアウグスト辺境伯に尋ねる。
「ジャン子爵はダル公国と一戦でかなりの戦力差があったのにもかかわらず勝利したって有名ですよ?」
「いや、それだけで……私に何をして欲しいんですか?」
辺境伯は、首を少し傾けながら掌を首元にトントンッと。
「勿論狙いますよ大将首」
「私がですか!?」
「ジャン子爵こそが適任で、他の方々には出来ないと思っています」
「一体誰を狙うんですか?」
「ベラトリア連合国の総大将はバーフェンという人物です。そして副将にヴァリックが控えています。バーフェンは攻撃するのが大好きな将軍で副将のヴァリックは真逆で守りが堅いです! バーフェンはヴァリックが裏で控えてくれて、尚且作戦を考えてくれるからこそ、何も気にせずこちらに突っ込んでこれるんです」
「バーフェンも厄介ですが、それよりも裏で控えているヴァリックが最も厄介なのです。ヴァリックを開戦前に仕留める事が出来れば、相手の戦力は半減すると思っていいでしょう」
「つまり、堅守なヴァリック将軍の首を獲って来いという事ですか?」
「話が早くて助かります」
「ちょっと待って下さい!!」
一人の貴族が話に割って入る。
「どうしましたか?」
「そんな重要な事をこんな奴にやらせるんですか!?」
「こんな奴とは一体どういう意味でしょうか?」
「ジャン・アウル子爵にやらせるという意味ですよ! 成人したばかりのガキに成し遂げられるとは到底思えません!」
「なるほど! なるほど! ではあなたがやりますか?」
「……」
発言した貴族は口を噤む。
「ジャン子爵はこの場所とは反対側にいつも居るので分からないかも知れませんが、他の方々はヴァリックが如何に臆病で、さらに倒しづらい相手か知っていますよね?」
「いつもなら、あれこれ策を講じたり、口八丁な事もしますが今回そんな余裕はありません。この一手が失敗すれば、ここにいる全員が死にます。仲良くおサバラです! ヴァリックを仕留める事が出来るのはジャン子爵しかいません。他の方々では不可能です」
「アウグスト辺境伯、一つ聞いてもいいでしょうか?」
「なんでしょう」
「失敗した時の予備の対策はあるんですか?」
「ハハハ! ありませんよ! 失敗したら終わりです。ですが、ジャン子爵なら成功すると思っています。そこからやっと活路が開けてきます」
(なんか腹が立つな辺境伯。どっちみち断れないだろ! 勝算あるのか?)
(どうだろ? 全く分からない)
「ちなみにどうやって? そして何日の猶予があるんでしょうか?」
「十日以内にお願いします」
「!?!?!?!?!?」
周りがざわついた。
「気にしないで下さい。周りの方々は絶対に不可能だと思ったから反応しただけです。ジャン子爵地図を見て下さい。ヴァリックはここに本陣を置いているはずです」
アウグスト辺境伯が指差したのは山の中だった。
「ここ……ですか?」
ジャンが不審に思うのも無理はない。こんな山の中に陣なんてものがあるのだろうか。
「間違いありません。何回も戦ったからこそ分かる事があります。ヴァリックという人物は、ありえないというような場所に本陣を敷く傾向があります。私が導き出した答えです! 本陣を見つけた後どうするかはジャン子爵に全て任せます」
ジャンは何か考えているようだった。
「ヴァリックはどんな魔法を使うのですか?」
「土魔法です。攻撃魔法は不得意なようですが、地形を変えたりするほどの広範囲の魔法が得意だと聞いています。お任せしてもいいですか?」
「分かりました。私にお任せ下さい」
「よろしくおねがいいたします」
アウグスト辺境伯は立ち上がって頭を下げた。
「他の方々はどうするか、ご説明します。まず――」
アウグスト辺境伯による作戦を皆が静かに聞いていた。
ジャンが成功する前提で話が進んでいく。
(何か考えがあるのか?)
(今の所はない……とにかく本陣を見てからだね全ては)
「こんな感じです! 何か質問はありますか? ありませんね? では解散します。ジャン子爵は何か必要とあらば用意できる物は用意しますので声をかけて下さい」
「分かりました」
パチンッ。と手を叩くアウグスト辺境伯。
「では皆さんよろしくおねがいいたします」
辺境伯は酒瓶を手に取って飲み始めた。
テントを出るジャン。
「ジャン様……これからどうされますか?」
「リリアも連れて、三人で今から本陣があるのか見に行くよ」
「分かりました。リリアを連れて参ります」
――。
「それじゃあ行くよ」
ジャンは馬に乗って走り出した。
「主様! 私達はどこへ向かっているのですか?」
「ベラトリア連合国の副将、ヴァリックの本陣に向かっている。ヴァリックの首を獲ってこいという命令が下った。相手の本陣を見て作戦を考える」
辺りはすっかり夜になっていたが、月明かりを頼りに馬を走らせた。
アウグスト辺境伯が言っていたポイントの近くまで来たので馬から降り、今度は走っていく。
「本当にこんな場所に本陣なんかあるのでしょうか?」
「どうだろう? 分からない……」
山道から外れて木々の生えている森の中へと入り、上へと登っていく。
しばらく登ると、山々に囲まれた場所にある窪みのような、盆地のような場所にたどり着くと、その場所には自分達のより遥かに大きな陣が敷かれていた。
「本当にあったな。ジェイド、リリア、あの本陣を見てどう思う? 襲えると思う?」
二人は黙ってしばらく考え込む。
「私が思うに、かなり難しいかなと思います」
「主様。天気が悪くならないんですかね? 大雨が降ればあの場所では厳しくなるのでは?」
「雨ね~。この辺ってあまり雨が降らない地域なんだよ……それにしばらくは良い天気が続きそうだよ。雨を降らすほどの水魔法の使い手が居たらまた違うかもしれないけどね」
「流石にそんな使い手……いないですよ」
「いないね。仮に居たとしても、ヴァリックは対策してあると思うよ」
(色々と考えてそうだが、結局どうなんだ? やれそうなのか?)
(無理だね!!)
(無理なのかよ!!)
「ジャン様……どうするんですか?」
「今すぐには思い付かない。今日は戻ろうか」
「「はっ!」」
ヴァリックの本陣がある事を確認したジャンは、自分らの陣へと戻る。
戻る頃にはすっかり朝になっていた。
自分のテントに入り、椅子に腰掛けるジャン。
(それで、ヴァリックぶっ殺す作戦、思い付いたか?)
「普通にやっても駄目、きっと奇襲も駄目、人数でも駄目、強力な魔法もない、僕が思い付くのは反吐が出るような作戦しか思い付かない……」
(難しく言うなよ! 要は作戦を思いついたんだな!?)
「作戦なんて呼べる代物でもないよ。成功する確率は三割といった所……」
(えっ!? 三階に一回の成功って事!?)
「確率が少ない――」
(馬鹿か! 十分だろ? 三割上等だよ! やってやろうぜ!)
「とんでもなく痛い目に遭うよ?」
(なんだよ!? 怖気付いたのか? やらなきゃ全滅なんだろ? 任せろ)
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