〜鉄塊〜

yuraaaaaaa

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第二章

〜再起と師匠〜

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 「あれ? 雄二これからどっか行くの?」
 「え? ああ透。夜これから自主練しようと思ってさ!」

 「え? 大丈夫? 学校だけでもキツイのに!」
 「ん~そうだね! キツイけどちょっと頑張ろうって思ってさ」

 「そっか! まああんまり無理するなよ! 怪我もまだ治ってないし」
 「おう!」

 俺は寮に出て一人練習を始めた。俺に大切な事というのは,格闘の技術が足りないと思っている。体力作りではく,授業で習った事を愚直に繰り返し練習をした。

 練習して強くなろうという思いもあったが、今は身体を動かして何も考えずにいたいという感じだった。
 俺は夜の中で一人汗を流した。
 
 部屋に戻ると、透はすでに寝ていた。俺はシャワーを浴びながらまだ癒えない傷に痛みを感じた。
 シャワーから出るといつものように月明かりが窓から入ってきていた。

 あの日会話を交わした日もこんな日だったなと考えに更けた。
 ベッドに横になるとすぐに俺は夢の中に入っていった。

 次の日の朝を迎え朝食を済ませ学校へと向かう。
 身体中は痛いし、筋肉痛も酷い! だけど何故か俺の足取りは昨日より軽かった。

 心の中のつかえが多少とれた気がしたからだと思う!
 俺は学校の授業で、組手を行った。山口先生との組手にいつもより熱を入れて行う。

 「先生、もう一本お願いします……」
 「えぇ~まあいいけど、あんまり無茶するなよ!」

 そう息巻くが何をしても簡単にやられてしまう。

 「山口先生、どうすれば、強くなれますか??」
 「攻撃はできなくても、多少でもいいんで、防御や回避はできないといけないと思ってるんです」

 「え!? まあそんなすぐに出来るもんじゃねえよ」
 「毎日の積み重ねでしか、強くなることはねぇ!」

 「コツみたいなのないんですか?」
 「あったらみんな強くなるだろ! 一つ言えばセンスだな」

 「センスなんて元も子もないじゃないですか?」
 「まあでもそんなもんだろ? 努力も大事だけどな~」

 山口先生にそう諭される。
 
 「じゃあとにかく先生と組手し続けるしかないってことですね?」
 「まあとりあえずはそうだな! だけど雄二お前弱すぎてまだアドバイスもないけどな」
 山口先生に好き勝手に言われるが,とにかく先生に俺は挑み続けた。

 「じゃあそろそろ授業終わり~! ほら! 皆教室戻れ~!」
 今日も先生に一撃も当てることも防ぐ事も出来なかった。

 俺はひっくり返った身体を起こし教室へと戻った。
 俺は俺の力で唯一皆より優れている事を考えていた。

 それはやっぱり鉄騎との適合率の高さしかないと思う。
 適合率が高い事で出来る事はなんだろうか? と考えたけど,何も良いアイディアは浮かんではこなかった。

 とある人物の元へ俺は向かうことにした。

 「お!? 雄二じゃねえか! どうしたんだその顔!?」
 飄々と話す彼に俺はアドバイスをもらいにきた。

 「まあちょっと友達と喧嘩して……」
 「変な顔だなお前!! それよりどうしたんだ珍しい!」

 「いや! ちょっと和久さんに意見をもらおうと思って……」
 「俺に?? どうしたんだ?」

 そう,俺は和久さんの元へと訪れた。自分と同じ世界で生きていた自称天才の彼の発想をもらいにきた。

 「自称天才の和久さんに俺が鉄騎に乗って強くなる方法を教えてもらいえないかと」
 「俺は天才だが,格闘や戦闘の経験も知識もないぞ! 鉄騎を造る側だからな」

 「そんな事は分かってる! だけど,この世界の常識が通用しない世界の人の発想のアドバイスが欲しいと! 和久さんしかいないじゃないですか」
 「なるほどなぁ~そういう事か」

 和久さんが何か考えているような素振りを見せていた。
 彼にアドバイスをもらうのは間違っているのかもしれない。

 「お前,雄二自身はどういう鉄騎乗りになりたいんだ??」
 「ん~,今はメンバーの皆をフォロー出来るようになりたいなと!」

 「つまりは守りたいって事だな。RPGゲームでいうと戦闘職より回復職や支援職を目指したいってイメージで合ってるか?」
 「そうですね! 合ってます! 銃も剣も戦闘の技術がない俺はフォローの方が向いていると思ってます」

 「まあここの子供は小さい時から格闘技の授業からあるから基本的な事は皆出来るからな!! いうてもそこは問題じゃないと思う。精密な射撃や剣技が全く必要ない程の広範囲の攻撃にすればそんな技術とか問題ではないと思うからな」

 「だけどチームで動いているからそういうわけにもいかないか。極論だけど,核爆弾みたいな攻撃だったら,敵を狙うなんて必要すらないからな! 関係ないだろ?」
 「そういう事もできなくもない! っていう事も頭に入れておいた方がいいぞ」

 「なるほど……そういう攻撃にすれば,技術も何も必要ないですもんね」
 「まあ極論だけどな!」

 「チームで動いているから味方を守ったり支援出来るような事をしたいって事だろ?」
 「雄二お前,透明になったり,バリアを張ったり無意識にしてたろ?」

 「あれ味方に付ける事出来ないのか? 味方にバリア張ったり,透明にしたりする事が出来たら結構強いと単純に思うけどな!」
 「もっと言うと,雄二自身透明になれるんだから,Antsybalから狙われる事もないんじゃないか?」
 「集中して後方支援出来るんじゃないか?」
 
 「俺も鉄騎の全てを知っている訳じゃないし,操作した事ないからわからないけど,雄二の適合率なら何でも具現化出来るんじゃないのか?」
 「そうなんですかね? でも実際に具現化して使えるかどうか? やってみないとわからないですけどね」

 「まあ俺だったら雄二の今までの戦闘を見る限り,味方にはAntsybalからの攻撃はバリアでそして自分の盾を使って守ってやり,援護射撃はドローンで展開。味方の最後の一撃もしくはここぞの攻撃の時には透明化して支援したりするかな?」

 「後は自分の盾で防いだ時に同時に攻撃出来る手段を考えておくのもいいな」

 「それと共に,味方にも内緒にしておく,もしもの時の為に,攻撃手段を一つか二つ隠し持っておく事をしておくかな」

 「なるほど……でもびっくりしました。以外に現実的だなと」
 「あぁ!? 俺をなんだと思ってるんだよ! 仮に凄い事を思いついても出来なきゃ意味がないだろ?」

 「何かウルトラCのような突拍子もない発想をしてくるものだと思ってて」
 「そういう事を考えなくない。だけど…………いやこっちの話だ気にしないでくれ」
 
 「何ですかそれ! まあ和久さんに聞いて何か方向性が若干見えた気がするよ!」
 和久さんが溜めた発言が少し気になった。

 「それはそれは,良かったよ! まあ何かあれば何でも聞いてくれよ。俺とお前は唯一共感出来る人間だからな」

 「それに,俺達が帰れるかもしれない手段を見つける事が出来るのも雄二だけだからな手伝える事があれば,なんでも手伝うよ!」
 「ありがとうございます。それじゃあまた和久さん」

 「おう! またな」
 和久さんからの意見で多少の方向性が見えた俺は,研究室を後にする。

 「雄二! 頑張れ……」
 
 前にも和久さんは頑張れとそう言っていたが,もしかしたら今の現状や状況になると分かっていたのかもしれない。

 俺に辛い事や現実が起こると分かっていたのかもしれない。
 そんな俺に何か投げかける言葉として一言頑張れ! なのかもしれないと思った。

 「おばちゃん! ご飯おかわり!」
 「あれ? 雄二おかわりなんて初めてじゃないかい?」

 「え? まあそうかもしれないですね!」
 「はいよ! ほら雄二沢山食いな」

 「ありがとうございます」

 俺はとにかく喰らった。おばちゃんが食え食え! とにかく食え! って言っていた意味が今になって分かる気がする。

 腹が減っては戦はできぬ。なんて言葉があるけど,それとは別に食べることで元気にもなるんだなとこの時は感じていた。

 透もいきなり俺が元気になった事を驚いていた。
 俺自身だって驚いているんだから透から見たら余計にそうだろう。

 俺は一日訓練に明け暮れ,夜には自主練する日々を繰り返すこととなった。
 考えている暇など無い! いや! それでいい。

 それでももっと何か出来る事があるのでは? そう思ったら,とある人物から教えを. おうと思った。

 「あの~……」
 「あら? 珍しい! どうしたんですか?」

 「清美ねえちゃんに,武道の特訓をしてもらえないかと……」
 そう俺は清美ねえちゃんの元へ訪れた。最強と噂の清美ねえちゃんに教わるのが一番いいと考えたからだ。

 「ふ~ん! そうなんですか? 何故私に?」
 「清美ねえちゃんがこの学校で一番強いって聞きましたんで……清美ねえちゃんなら俺に足りないものを指摘してくれるかなと」
 俺は今までの経緯とどう強くなりたいか? どうなりたいか? という事を清美ねえちゃんに説明した。

 「なるほど! 話は分かりました。私で力になれる事があればなりましょう」
 「本当ですか? ありがとうございます!」

 「じゃあさっそくですけど,外に行きましょうか」
 「はい! お願いします」

 清美ねえちゃんの後に続いて寮の外に行く。
 少し行った所で清美ねえちゃんが立ち止まる。

 「私が教えられる事なんて,そんな多くないですよ! でもとりあえず雄二くんの実力を見たいと思います。構えてください……では行きますよ」

 そう言った清美ねえちゃんは凄い風と共に一瞬で姿を消した。
 俺はどうなったのか全く分からなかった。

 「なるほど。雄二くんの実力が分かりました」
 俺の背中から声がした。振り向くと俺の後ろに清美ねえちゃんはいた。

 「私は今の一瞬で,当ててはいませんが,計四発打ち込みました。勿論寸止めです」
 「雄二くんは私の姿を目で追うことは出来ていませんでした。仮に見えていなくても身体の感覚や感性,感で私の攻撃を防御しようともしていませんでした」

 「つまりは何一つ反応出来なかった実力という事です」
 「これで雄二くんに必要な練習が分かりました」

 「これだけで……分かったんですか?」
 「ええ,雄二くんにはこれから毎日,私と一時間組手をします」

 「でもそれは普通の組手ではなく,超スローモーションで行います」
 「この練習はスローで行う事で筋力トレーニングとバランスの強化,そして防御する事,攻撃する事を同時に強化出来るトレーニングです」

 「まあ今理論を話してもわからないだろうから早速始めます」
 「ではいきます」

 始まった組手は本当に超スローモーションだった。
 拳が俺の顔に到達するまでに三秒か四秒か??
 動きが全てスローモーションで驚いた。こんな簡単な事でいいんだろうか?
 と思えたのは最初だけだった。

 確かにゆっくりだからどこに攻撃がくるかどうかはっきりと分かる。ゆっくりだからほとんど痛くもない。

 二十分以上過ぎた辺りだろうか? とてつもなくこのスロー組手は疲れる。

 全てがゆっくりだから受ける型や形を維持しなくていけない。そして中腰になったり様々な体勢をとって維持する為に清美ねえちゃんが言っていた筋力とバランスの鍛錬に確かになっている。 
 三十分を超えた辺りだろうか? 途中途中で受けきれず当たってしまう事が出てきた。
 清美ねえちゃんが徐々に難しい攻撃を繰り出してきてるのは分かるが,スローなので,問題ではなかったのだが,集中力がだんだん切れてきた。

 ふと集中力が途切れると,ゆっくりでも当たってしまう。

 最初はこんな事が練習になるのか? と思っていたけど,とてつもなく今の俺に適した練習だと実感した。

 普段の山口先生との組手は,先生が速いから考えたり反応したりする前に全てが終わってしまう。

 けどこの練習はゆっくりだから考える時間もきちんとある。こういう体勢でこういう受けをしよう。こういった避け方をしよう。と考える時間と実行するだけの時間がある。
 
 あの一度の一瞬だけで,この練習を導き出した清美ねえちゃんはとんでもない人なんだと確信した。これから俺は清美ねえちゃんの事を師匠と呼ぶことにしよう。

 あれからちょうど一時間経っただろうか?
 「じゃあ今日はこの位で終わりにしようかな」
 「え…………はい」
 
 もう立ってられない程疲れて俺は横になった。
 かたや師匠は汗一つかいていない。本当にこの世界は超人しかいない。

 「清美ねえちゃん……これから師匠って呼んでもいいですか?」
 「私の事をですか? 別に構わないですよ!」

 「今日はもう弟子の雄二くんは早く寝なさい。多分明日は筋肉痛が酷いと思うけど,明日もまたやりますからね」
 「俺はこれから強くなれますかね?」

 「それは雄二くん次第だと思いますよ」
 「そうですね……今日はとにかく早く寝ますありがとうございました」

 俺は寮の部屋に戻ると泥のように眠った。
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