22 / 49
二十二 クリスのガーデン・パーティ
しおりを挟む
そして、ガーデンパーティの日、うちまで迎えに来てくれたユリアン様とルークお兄様の間ではバチバチと何かが飛んでいた。
「(大事な)アーシアを頼んだよ(貴様になぞ託すのはやはり心配だ)」
「勿論、心得えております。ルークお義兄さん」
「……(貴様に)兄呼ばわりをされる言われは、まだ無いようだが? (いやこれからもな)」
――隣で見ていると何だか二人の内心がだだ漏れのような気がします。
私は強張りきった笑みのままユリアン様を促して馬車に乗り込んだ。
――それより、私は気になるのよ。クリス様の性別。早く行って確かめたいわ。
子爵家の中でも名門であるレイン家のガーデンパーティは盛況だった。正式な社交イベントではないもののデビューしている名門子息や令嬢方も参加して華やかな雰囲気を醸し出していた。
――流石にガブちゃんは参加してないみたい。まあ、お兄様ルートとか言ってたし。お兄様はここにこられないからね。それよりも確認したいのは……。
ユリアン様にエスコートされて子爵家の中庭に着くとそこは素晴らしい花々の庭だった。クリス様は私達に気がつくと直ぐに挨拶にいらした。
「ユリアン様、アーシア様。我が家のパーティにお出でていただけて光栄です」
そういうとクリス様は洗練された優雅な礼をなさったのでこちらも礼を返した。
「本日はお招きいただいて……」
今日の私は令嬢のドレス姿だから淑女の礼をしても全然おかしくないわ。今日はガーデンパーティ用に動きやすいデザインだけどね。
でも、やっぱりコルセットが何気に苦しい! キツイ! 特に今日は侍女に思いっきり締め上げられた。うう、ここのところずっと男装していたから、どうにも苦しい。
今日のドレスは白を基調としたものでフリルとレースを贅沢に使った逸品。お母さまとお兄様御用達のお店よ。リボンも素敵で可憐な出来映え。鏡で見ると我ながら芸術的な作品に仕上がっています。うちの使用人の技術は卓越しているわ。素晴らしい出来栄えよね! でも今日の頭はドリルに近いけど。小ドリルを沢山盛った頭になってるわ。
そんな完璧な令嬢姿なのにクリス様からの視線は痛いくらいだったの。
――ええ? 今日の私は完璧な令嬢姿の筈ですよ? 男装ではふぉざいません。服装コードには何ら問題は無いと思いますわ。あ、ひょっとして、もしや、……クリス様は男性の方がお好みだったのかしら? それは忌々しき問題ですわね。
「……どうそ、お楽しみください。今日は様々な花で趣向を凝らせております」
クリス様はふいと視線を逸らせて、他の方々の挨拶に向かった。
でも私達もユリアン様の知り合いの方々に囲まれて挨拶することに忙しく、私はクリス様の性別を確かめるチャンスはこなかった。
やっと一通り挨拶を終えると私はクリス様を探した。そして、クリス様を見つけるとじっとその姿を観察してみた。客人の中を確認するように歩くクリス様は女性のような線の細さの美貌の持ち主で肩をまでのふわふわのストロベリーブロンドの髪は光を受けて一層煌いている。クリス様もそこだけスポットライトが当たってるような美形。
――一体どちらなのかしら? クリス様の性別次第ではここが異世界なのか乙女ゲームの『ゆるハー』の中かどうか分かるのよね。
私はやや伏せた視線の先でクリス様の動向を窺い続けた。その内、クリス様はゆっくりと人々の中を外れて何処かに向かっているようだった。私もその後に続いた。
いつの間にか庭奥の薔薇園まで来ていて、そこは迷路のような造りになっていた。私はそれに何故か既視感があって、つい周囲に気を取られて、いつの間にかクリス様を見失ってしまった。私は足を止めて周囲を見遣った。
――ああ、これって見覚えがあるような気が……。
「アーシア様。お一人では危険ですよ。我が家もセキュリティには十分気をつけておりますが、ご令嬢が付き添いもなく歩かれるのはあまり感心しませんね」
それは私の真後ろから聞こえてきたのだった。私は驚いて思わず飛び上がりそうになった。そして、後ろを振り返ってるとクリス様がいらっしゃった。
「ご、ごめんなさい。つい……」
「つい?」
クリス様はその幼げながらセクシーな面立ちに怪訝そうな表情を浮かべていた。
――ええ、あなたが男か女か確かめたかったというか……。
私はクリス様のお姿で確認したいけれど、クリス様は今日もきっちりとした服を着込んでいた。
これは、あれか、直に触らないと分かりそうもないかも……。さりげなく倒れたふりをしてクリス様に触れるしかないでしょう!
私の邪な考えにクリス様は悩ましげな表情で私を見つめて口を開いた。
「……アーシア様はお気をつけられた方がよろしいかと……」
「何のことでしょうか?」
私は自分の考えが見透かされたのではとかなり焦りつつ訊ねてみた。でもクリス様の様子が腹黒お兄様や最近のユリアン様の様子に近い雰囲気に変わったことに気がついた。
――あれ? 私って、なんかクリス様の地雷を踏んだ?
クリス様はなおも私をじっと眺めていた。
――え? そんなに見なくても今日の私は完璧な令嬢姿でしてよ? きゅっとくびれたウエストは侍女達に感嘆の溜息をついておりましたし、胸元はちゃんと上げて寄せましたよ? だから谷間も綺麗に見えている筈です。それはそれはとても芸術的な作品に仕上がっていることを自信を持って宣言いたします。
「このような奥まったところに高位のご令嬢が男性と二人きり。それも未婚のご令嬢がこんな風に無防備に男性と二人きりになるものではありませんよ?」
「……男性?」
まさかと言うべきか、やはり、と言うべきなのか、クリス様は男性? でもね。クリス様はまるで捕食者のような眼で私を射抜いているのよ。……あれ? 私は何かいけないことになってる?
「(大事な)アーシアを頼んだよ(貴様になぞ託すのはやはり心配だ)」
「勿論、心得えております。ルークお義兄さん」
「……(貴様に)兄呼ばわりをされる言われは、まだ無いようだが? (いやこれからもな)」
――隣で見ていると何だか二人の内心がだだ漏れのような気がします。
私は強張りきった笑みのままユリアン様を促して馬車に乗り込んだ。
――それより、私は気になるのよ。クリス様の性別。早く行って確かめたいわ。
子爵家の中でも名門であるレイン家のガーデンパーティは盛況だった。正式な社交イベントではないもののデビューしている名門子息や令嬢方も参加して華やかな雰囲気を醸し出していた。
――流石にガブちゃんは参加してないみたい。まあ、お兄様ルートとか言ってたし。お兄様はここにこられないからね。それよりも確認したいのは……。
ユリアン様にエスコートされて子爵家の中庭に着くとそこは素晴らしい花々の庭だった。クリス様は私達に気がつくと直ぐに挨拶にいらした。
「ユリアン様、アーシア様。我が家のパーティにお出でていただけて光栄です」
そういうとクリス様は洗練された優雅な礼をなさったのでこちらも礼を返した。
「本日はお招きいただいて……」
今日の私は令嬢のドレス姿だから淑女の礼をしても全然おかしくないわ。今日はガーデンパーティ用に動きやすいデザインだけどね。
でも、やっぱりコルセットが何気に苦しい! キツイ! 特に今日は侍女に思いっきり締め上げられた。うう、ここのところずっと男装していたから、どうにも苦しい。
今日のドレスは白を基調としたものでフリルとレースを贅沢に使った逸品。お母さまとお兄様御用達のお店よ。リボンも素敵で可憐な出来映え。鏡で見ると我ながら芸術的な作品に仕上がっています。うちの使用人の技術は卓越しているわ。素晴らしい出来栄えよね! でも今日の頭はドリルに近いけど。小ドリルを沢山盛った頭になってるわ。
そんな完璧な令嬢姿なのにクリス様からの視線は痛いくらいだったの。
――ええ? 今日の私は完璧な令嬢姿の筈ですよ? 男装ではふぉざいません。服装コードには何ら問題は無いと思いますわ。あ、ひょっとして、もしや、……クリス様は男性の方がお好みだったのかしら? それは忌々しき問題ですわね。
「……どうそ、お楽しみください。今日は様々な花で趣向を凝らせております」
クリス様はふいと視線を逸らせて、他の方々の挨拶に向かった。
でも私達もユリアン様の知り合いの方々に囲まれて挨拶することに忙しく、私はクリス様の性別を確かめるチャンスはこなかった。
やっと一通り挨拶を終えると私はクリス様を探した。そして、クリス様を見つけるとじっとその姿を観察してみた。客人の中を確認するように歩くクリス様は女性のような線の細さの美貌の持ち主で肩をまでのふわふわのストロベリーブロンドの髪は光を受けて一層煌いている。クリス様もそこだけスポットライトが当たってるような美形。
――一体どちらなのかしら? クリス様の性別次第ではここが異世界なのか乙女ゲームの『ゆるハー』の中かどうか分かるのよね。
私はやや伏せた視線の先でクリス様の動向を窺い続けた。その内、クリス様はゆっくりと人々の中を外れて何処かに向かっているようだった。私もその後に続いた。
いつの間にか庭奥の薔薇園まで来ていて、そこは迷路のような造りになっていた。私はそれに何故か既視感があって、つい周囲に気を取られて、いつの間にかクリス様を見失ってしまった。私は足を止めて周囲を見遣った。
――ああ、これって見覚えがあるような気が……。
「アーシア様。お一人では危険ですよ。我が家もセキュリティには十分気をつけておりますが、ご令嬢が付き添いもなく歩かれるのはあまり感心しませんね」
それは私の真後ろから聞こえてきたのだった。私は驚いて思わず飛び上がりそうになった。そして、後ろを振り返ってるとクリス様がいらっしゃった。
「ご、ごめんなさい。つい……」
「つい?」
クリス様はその幼げながらセクシーな面立ちに怪訝そうな表情を浮かべていた。
――ええ、あなたが男か女か確かめたかったというか……。
私はクリス様のお姿で確認したいけれど、クリス様は今日もきっちりとした服を着込んでいた。
これは、あれか、直に触らないと分かりそうもないかも……。さりげなく倒れたふりをしてクリス様に触れるしかないでしょう!
私の邪な考えにクリス様は悩ましげな表情で私を見つめて口を開いた。
「……アーシア様はお気をつけられた方がよろしいかと……」
「何のことでしょうか?」
私は自分の考えが見透かされたのではとかなり焦りつつ訊ねてみた。でもクリス様の様子が腹黒お兄様や最近のユリアン様の様子に近い雰囲気に変わったことに気がついた。
――あれ? 私って、なんかクリス様の地雷を踏んだ?
クリス様はなおも私をじっと眺めていた。
――え? そんなに見なくても今日の私は完璧な令嬢姿でしてよ? きゅっとくびれたウエストは侍女達に感嘆の溜息をついておりましたし、胸元はちゃんと上げて寄せましたよ? だから谷間も綺麗に見えている筈です。それはそれはとても芸術的な作品に仕上がっていることを自信を持って宣言いたします。
「このような奥まったところに高位のご令嬢が男性と二人きり。それも未婚のご令嬢がこんな風に無防備に男性と二人きりになるものではありませんよ?」
「……男性?」
まさかと言うべきか、やはり、と言うべきなのか、クリス様は男性? でもね。クリス様はまるで捕食者のような眼で私を射抜いているのよ。……あれ? 私は何かいけないことになってる?
11
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~
咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】
あらすじ
「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」
聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。
彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。
しかし、エリーナはめげなかった。
実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ!
北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。
すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。
「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」
とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。
以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。
最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる