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第二章
四十九 それは未来へと続く道
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ざわざわと周囲が騒ぐ。
「私は――」
――嫌ぁぁ。待って王太子様、今何て仰いました?
ジョーゼットが青ざめて涙ぐんでいるのが分かる。私は駆け寄って自分の無罪を訴えたかった。
「お待ちください! 殿下」
ざわめきの中でユリアン様の声が響いた。そして、ユリアン様はジョーゼットの肩を抱いて支えるように二人でアベル王太子様に向かって歩き出した。まるで伝説の海が割れたように人波が分かれていく。
「そなたは、ライル伯爵家のユリアン……」
王太子の発言を遮るなど高位貴族でも不敬罪にとられる。私は思わずぎゅううと手を握り締めていた。いざとなったら二人を逃がすの? こういうときでも携帯しているムチの存在を私は思い返した。そう、日本のアニメの某お色気キャラのように太ももにムチを装備しているのよ。
「恐れながら、王太子殿下にあらせられましては今までジョーゼット嬢との仲睦まじいご様子であり、我々はそれを拝見しておりました。今回、何ら非の無い彼女との婚約を破棄するとはどのようなことでありましょうか?」
ユリアン様の言葉に周囲のざわめきが静まり、皆固唾を飲んで見守っていた。
「それは……。そこにいるアーシア嬢との」
「それはジョーゼット嬢への愛情も薄れたということなのでしょうか?」
「そんなことは無いぞ。私はジョーゼットを幼いころから大切に想っておる!」
「では、解消する意味は無いではありませんか」
「いや、救国の少女がでたとなれば、王家としても」
「はて、そのようなことは初耳でございます。あの祭典にいたのはモードレット家の嫡男で彼がした演出であります。そうでしょう? あの場でいらした方も見ていた筈です」
そう言って言葉を切ると周囲は静まり返ってしまった。あの時は私はルークお兄様の身代わりになっていた。親しい人にはバレバレだけど結構似ていたと思う。それにローレン公爵様が控えめに肯いていた。事の主役だから大きな声で肯定すると返って嘘らしくなると考えているのだろう。
「救国のなどど騒いでいるのは一時のことでしょう。どうか今一度ご一考を」
「……私は初めてお会いした日から殿下を……」
ユリアンの横で涙目で訴えるジョーゼットはとても可憐で美しかった。見ている私まで思わず涙ぐみそうだった。そして、ユリアンは私を見つめてから尚も王太子殿下に訴えた。
「そして、私もアーシアとは幼い頃に誓いを交わした仲でございます。どうか殿下にありましては仲を引き裂くようなことをなさらいで下さい」
そう言ってユリアン様は跪いた。王太子様も黙ってユリアン様を見下ろしていた。何処からか拍手が起きてそれが会場に広まっていった。
王太子様はユリアン様を立たせると微笑んだ。
「そうであったな。愛は何よりも尊いものだったな。ジョーゼット。今一度私と共に歩んでくれるか?」
「……はい。殿下。私で宜しければ」
そう言うとお二人は抱き締めあったのよ。見ていて感極まったように歓声が上がったわ。割れんばかりの歓声と拍手で秋の大舞踏会は無事終わったのよ。
――私のムチの出番は無かったわ。それに、私もユリアン様の宣言で無事婚約発表までできたのよ。これも怪我の功名? ルークお兄様は今回の騒ぎでユリアン様とのことを渋々ながらお認めになったようで良かったわ。
この舞踏会のことは愛の大舞踏会と今後も語り伝えられたのだった。そして、それから舞踏会で告白するのが流行したのよ。
無事私もユリアン様と婚約を発表できて、めでたし、めでたしといきたいのだけど新学期が始まったから、それぞれの学園に戻っていった。
ジョーゼットとも再会して、彼女は婚約を発表してから更に美しさを増したようで、いきいきとしていた。近々ご婚儀のことなどの準備で学園もお辞めになるようだった。私はそれに少しジョーゼットに文句を言っていた。
「残念だわ。折角ジョーゼットと仲良くなれたのにいなくなるなんて」
「ふふ。でもこれからは社交行事で会えるじゃない? それにお家にいつでもいらして頂戴。それに……。アーシアなら私が王宮に入ってからも支えてくれると思ってるの」
――そうか、婚約したとはいえまだまだいろいろな妨害がでてくるわよね。今回もそうだったし、何があるやら分からないわよね。私はユリアン様一筋だったから、ジョーゼットのライバルに成らなかったけれど、これからだってどんなご令嬢が現れるか分からないものね。
「仕方が無いわね。でも、男装はしないわよ。もうこりごり。劇の題材になんてもうなりたくない」
私がそう言うとジョーゼットは花が綻ぶように微笑んだ。背景に薔薇の花が咲き誇っているように見える。勿論私のフィルターだけだけどね。
でも、貴族の秋の恒例の社交行事の狩猟大会ではドレスでなく、狩猟着を着たのよ。それも男性の……。ムチで獣を追い立てろって? 冗談じゃないわよ。……それでも狩りはしたけどね。
これは乙女ゲームに良く似た世界に転生した女性が悪役令嬢になり損ねたよくある令嬢のお話。
今までどうもありがとうございました。
「私は――」
――嫌ぁぁ。待って王太子様、今何て仰いました?
ジョーゼットが青ざめて涙ぐんでいるのが分かる。私は駆け寄って自分の無罪を訴えたかった。
「お待ちください! 殿下」
ざわめきの中でユリアン様の声が響いた。そして、ユリアン様はジョーゼットの肩を抱いて支えるように二人でアベル王太子様に向かって歩き出した。まるで伝説の海が割れたように人波が分かれていく。
「そなたは、ライル伯爵家のユリアン……」
王太子の発言を遮るなど高位貴族でも不敬罪にとられる。私は思わずぎゅううと手を握り締めていた。いざとなったら二人を逃がすの? こういうときでも携帯しているムチの存在を私は思い返した。そう、日本のアニメの某お色気キャラのように太ももにムチを装備しているのよ。
「恐れながら、王太子殿下にあらせられましては今までジョーゼット嬢との仲睦まじいご様子であり、我々はそれを拝見しておりました。今回、何ら非の無い彼女との婚約を破棄するとはどのようなことでありましょうか?」
ユリアン様の言葉に周囲のざわめきが静まり、皆固唾を飲んで見守っていた。
「それは……。そこにいるアーシア嬢との」
「それはジョーゼット嬢への愛情も薄れたということなのでしょうか?」
「そんなことは無いぞ。私はジョーゼットを幼いころから大切に想っておる!」
「では、解消する意味は無いではありませんか」
「いや、救国の少女がでたとなれば、王家としても」
「はて、そのようなことは初耳でございます。あの祭典にいたのはモードレット家の嫡男で彼がした演出であります。そうでしょう? あの場でいらした方も見ていた筈です」
そう言って言葉を切ると周囲は静まり返ってしまった。あの時は私はルークお兄様の身代わりになっていた。親しい人にはバレバレだけど結構似ていたと思う。それにローレン公爵様が控えめに肯いていた。事の主役だから大きな声で肯定すると返って嘘らしくなると考えているのだろう。
「救国のなどど騒いでいるのは一時のことでしょう。どうか今一度ご一考を」
「……私は初めてお会いした日から殿下を……」
ユリアンの横で涙目で訴えるジョーゼットはとても可憐で美しかった。見ている私まで思わず涙ぐみそうだった。そして、ユリアンは私を見つめてから尚も王太子殿下に訴えた。
「そして、私もアーシアとは幼い頃に誓いを交わした仲でございます。どうか殿下にありましては仲を引き裂くようなことをなさらいで下さい」
そう言ってユリアン様は跪いた。王太子様も黙ってユリアン様を見下ろしていた。何処からか拍手が起きてそれが会場に広まっていった。
王太子様はユリアン様を立たせると微笑んだ。
「そうであったな。愛は何よりも尊いものだったな。ジョーゼット。今一度私と共に歩んでくれるか?」
「……はい。殿下。私で宜しければ」
そう言うとお二人は抱き締めあったのよ。見ていて感極まったように歓声が上がったわ。割れんばかりの歓声と拍手で秋の大舞踏会は無事終わったのよ。
――私のムチの出番は無かったわ。それに、私もユリアン様の宣言で無事婚約発表までできたのよ。これも怪我の功名? ルークお兄様は今回の騒ぎでユリアン様とのことを渋々ながらお認めになったようで良かったわ。
この舞踏会のことは愛の大舞踏会と今後も語り伝えられたのだった。そして、それから舞踏会で告白するのが流行したのよ。
無事私もユリアン様と婚約を発表できて、めでたし、めでたしといきたいのだけど新学期が始まったから、それぞれの学園に戻っていった。
ジョーゼットとも再会して、彼女は婚約を発表してから更に美しさを増したようで、いきいきとしていた。近々ご婚儀のことなどの準備で学園もお辞めになるようだった。私はそれに少しジョーゼットに文句を言っていた。
「残念だわ。折角ジョーゼットと仲良くなれたのにいなくなるなんて」
「ふふ。でもこれからは社交行事で会えるじゃない? それにお家にいつでもいらして頂戴。それに……。アーシアなら私が王宮に入ってからも支えてくれると思ってるの」
――そうか、婚約したとはいえまだまだいろいろな妨害がでてくるわよね。今回もそうだったし、何があるやら分からないわよね。私はユリアン様一筋だったから、ジョーゼットのライバルに成らなかったけれど、これからだってどんなご令嬢が現れるか分からないものね。
「仕方が無いわね。でも、男装はしないわよ。もうこりごり。劇の題材になんてもうなりたくない」
私がそう言うとジョーゼットは花が綻ぶように微笑んだ。背景に薔薇の花が咲き誇っているように見える。勿論私のフィルターだけだけどね。
でも、貴族の秋の恒例の社交行事の狩猟大会ではドレスでなく、狩猟着を着たのよ。それも男性の……。ムチで獣を追い立てろって? 冗談じゃないわよ。……それでも狩りはしたけどね。
これは乙女ゲームに良く似た世界に転生した女性が悪役令嬢になり損ねたよくある令嬢のお話。
今までどうもありがとうございました。
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