社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"

桜井 響華

文字の大きさ
4 / 31
条件2:社内では接近禁止!

『退勤を押してからなら、お付き合いしましょう』とのお返事を貰い、酔いつぶれて失態を晒した日から今日で5日目。

私は定時で上がれるけれど、相良さんは副社長の仕事次第なので上がり時間が定まらず、その後は出かけてもいない。

社内では接近禁止命令を出されているので、見かけても近付く事さえも出来ない。

よく良く考えたら携帯の番号も知らない。

何故、あの日に聞かなかったのだろうと酷く後悔している。

「あ、あの人ですよ。副社長の婚約者!企画開発部のエース、確か…秋葉さんだと思います。彼女、スタイルもいいし可愛いですよね」

「うん、そうだね。仕事もプライベートも充実してるっていーなぁ…」

新人なのに、既に情報通の奈子ちゃんがコソコソと話し出す。

副社長の婚約者の秋葉さんは企画開発部で新商品等のデザインをしている。

歩く度に揺れるふわふわなウェーブ、大きな瞳、引き締まったウエストにそこそこボリュームがありそうな胸、バランスのとれたスタイルに目が惹かれる。

私が思うに仕事もプライベートも充実しているからこそ、キラキラオーラが増していて目を惹くのだと思う。

副社長も秋葉さんもキラキラオーラが沢山出ている。

「先輩が気になってる相良さんって、秋葉さんと良く話してますよね。無表情ですけど、お互いに見かけるとエレベーターに乗るまでずっと話してる事が多いですね。副社長繋がりなのかな?

相良さんと仲良くなるには秋葉さんから攻略したらどうかな?」

奈子ちゃんがふと言ったが、今、正に私もそう思っていた。

私が秋葉さんを気にする理由は可愛いからだけではなく、相良さんと仲が良さそうだからだ。

私は社内では相良さんに近付けないが、秋葉さんは相良さんと話している姿を良く見かける。

秋葉さんと仲良くなれたら、相良さんにももっと近付けるだろうか?

そんな邪な願いから、彼女と仲良くなりたいと願う。

「けど、秋葉さんの周りって、絶対的エースな存在ばっかりで固まっているから近付くのが難しいですよね!」

確かに秋葉さんの周りには、企画開発部の若くカッコイイ部長、女子力半端ない綺麗な同僚、総務課の癒し的存在の男性社員など、キラキラオーラをまとっている人達ばかりが集う。

その中に相良さんが入ったとしても違和感はないが、私が入ったとしたら浮いた存在になりそうだ。

どちらかと言えば童顔で特別可愛い訳でもないし、スタイルが飛び抜けて良い訳でもない、……相良さんに釣り合う存在ではないのかもしれない。

相良さんの彼女でいたいから、私も努力しなきゃいけないな。

隣に並んでも違和感がない存在を目指そう───……

「これでよしっ…!」

次の日の午後、会議室の掃除当番だった。

受付嬢と言っても座ってお客様を応対しているだけではなく、交代で会議室を掃除したり、手の空いた時にデータ入力作業をしている。

掃除機をかけて、明日の会議のセッティングをして準備は完了。

告白の日から、相良さんは会議室に現れなかった。

その前は何故、相良さんが覗きに来ていたのだろうか?

偶然?通りすがり?

今日も多分、来ないはずだ。

会いたいな、話をしたい、相良さんの車でドライブしたい。

先日のお詫びもしていない。

どうしたら、もっと親密になれるのだろうか?

掃除道具をしまい、受付カウンターまで戻ろうとエレベーターの降下ボタンを押す。

エレベーターが止まり、ぼんやりと考え事をしながら乗るとボタンを押し間違えた事に気付いた。

マズい、最上階に向かっている。

降下ボタンではなく、上昇ボタンを押していたらしい。

最上階と言えば、社長室、副社長室、秘書室など、一般社員は余程の事がない限りは立ち入らない場所だ。

ど、どうしよう…!

万が一、どなたかに会ったら真っ先に謝る覚悟で行くしかないと思った。

いざエレベーターが最上階で止まり、扉が開くと女性が立っていた。

お互いに驚いて目が丸くなり、目線を反らし、社交辞令の『お疲れ様です』を交わす。

目の前にはスタイルが良く、可愛い女子社員が立っていた。

もしかして、この人が秋葉さん?

首から下げていた社員証を確認すると、やっぱり秋葉さんで間近で見ると本当に可愛い。

肌も白くて、目元もパッチリ、ナチュラルメイクに見えるけれどこんなにも可愛いのは、素顔が元々可愛いからだと思った。

「あ、あの…その制服は受付の方ですか?図々しいお願いなんですけど、今、ここで会ったのは内緒にして欲しいんです… 」

推測だけれども、副社長に会いに来たのだと思われる。

「大丈夫ですよ、誰にも言いません。私は押し間違えて最上階に来てしまいました」

「ありがとうございます!すみません、初対面なのに…」

ペコリとお辞儀をしてお礼を伝える秋葉さんは物腰柔らかな方で、話しをしやすそうだった。

「わ、私からも1つ聞いても大丈夫ですか?」

「はい、どうぞ?」

秋葉さんに近付くチャンスなんて、そうそうない。

勇気を出して相良さんの事を聞いたのだが、咄嗟に出たのは、
「相良さんって…いつも無表情ですか?」
だった。

「……そうですね、でも、とても素敵な方だと思いますよ。では、また」

企画開発部の階にエレベーターが止まり、微笑みとふんわりと良い残り香を残して彼女は去った。


感想 0

あなたにおすすめの小説

公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

水錵 咲
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった! 『推しのバッドエンドを阻止したい』 そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。 推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?! ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱ ◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!  皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*) (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

先輩、お久しぶりです

吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社 秘書課 × 藤井昂良 大手不動産会社 経営企画本部 『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。 もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』 大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。 誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。 もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。 ――それも同じ会社で働いていた!? 音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。 打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……

フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛

望月 咲妃
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。

逢いたくて逢えない先に...

詩織
恋愛
逢いたくて逢えない。 遠距離恋愛は覚悟してたけど、やっぱり寂しい。 そこ先に待ってたものは…

絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。

孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。 その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。 そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。 同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。 春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。 昔から志穂が近くにいてくれるから……。 しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。 登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。 志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。 彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。 志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。 そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。 その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。