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条件4*週末でもお泊まり不可!
1
───相良さんが行きつけのカフェバーに入ると週末だからか、今日はジャズピアノの生演奏が行われていた。
店内は先日よりも混んでいて、私達は隅の席に通された。
この場所からは伴奏者は見えずにピアノの音しか聞こえないが、とても綺麗な音色にうっとりする。
「大貴も今日は弾いて行けば?明日は休みならラストまで付き合ってよ」
「…別にいい、弾かなくても」
こないだも居たお友達のバーテンダーが、相良さんをピアノに誘導する。
「あ、あの…相良さんって、ピアノ弾けるんですね!聞いてみたいです」
「うん、大貴のピアノは格別だよ。聞きたいよね?ほら、彼女が聞きたいって!」
そう言いながら相良さんの背中を二回叩く、バーテンダー。
相良さんが返事をせずにムスッとした表情をしているが構わず私に、
「彼女、お名前は?こないだ聞きそびれちゃったから。俺はバーテンダーしてます、後藤 翔平(ごとう しょうへい)です」
と自己紹介してくれた。
「相良さんと同じ会社で働いている、胡桃沢 和奏です」
「くるみさわ?名字も名前も可愛いね」
後藤さんがヘラヘラと笑って私と話をしている内に、ピアノの生演奏の音が聞こえなくなり拍手喝采で終わりになった様だった。
私達の話を聞いていた相良さんはいつの間にかご機嫌斜めになり、ジャケットを脱ぎ、ネクタイも外してどこかに消えた。
後藤さんが「またね」と言って手を振り、この場を去った時に先程の演奏者ではないと思われるピアノの音色が聞こえた。
まさか、とは思うけど…!
私はいても立ってもいられない気持ちになり、席を立ち上がりピアノのある場所へと向かう。
陰からこっそりと覗く姿に心を奪われた。
しなやかに動く細長い指からは、軽快な音色が繋がり、華麗さが広がる。
私の姿を見つけた演奏者は、更に速さを上げて私を挑発するかの様に指を弾かせた。
「目が離せないでしょ?これが大貴の演奏。俺も大好きなんだ。なかなか弾いてくれないけどね」
感動して目をうるうるさせている私を見つけた後藤さんは、私に助言をして隣で一緒に聞く。
相良さん、カッコイイ通り越して、何て言うか…物凄く綺麗。
周りのテーブルのお客もうっとりと聴き惚れている様子で、引き終えるとスタンディング・オベーションが沸き起こる。
一礼をし、私と後藤さんに『してやったよ』的な不敵な微笑みを浴びせる。
拍手が鳴り止まず、アンコールに期待が寄せられたが、もう一曲は弾く気はないらしい。
惜しまれつつ、相良さんは私も引き連れながら席に戻った。
「ハンカチどうぞ」
相良さんの前髪の隙間から、汗の粒が見えたのでハンカチを取り出して渡す。
演奏中は眼鏡はせず、Yシャツのポケットにしまっていた。
その後もかける様子もなく、無言で受け取ったハンカチで汗を拭く。
ドキドキ…ドキドキ…。
先程の感動が忘れられず、興奮が冷めやらず。
更に仕事中では絶対に見られない相良さんの姿にときめき、ただ、ひたすらに見つめていた。
「相良さん、とっても素敵でした!」
ついつい声を張り上げてしまったが、相良さんは驚く様子はなく、淡々と…
「…胡桃沢さんも弾いて来たら?全国小学生ピアノコンクール優勝者が弾いた方が盛り上がるんじゃないの?」
と言い返してきた。
「な、何で知って…る、んですか!?」
確かに私は全国小学生ピアノコンクールの優勝経験がある。
惰性で習っていたピアノがたまたま上手だったというだけで、だんだんと楽しいと思えなくなり、中学時代には触りもしなくなった。
「俺も、あの場所に居たから。最初で最後のコンクールになったけど…」
そうなんだ、知らなかった。
男の子は何人か居たけれど、相良さんの様に心を揺さぶれる弾き方の男の子は居なかったと思う。
「…俺はコンクールに出た訳じゃなくて、オープニングで弾いただけだけどね」
オープニング?
確か、あの日の審査員の息子さんがオープニングでピアノを披露したのは覚えてる。
「繊細で神経質な音を奏でた男の子は相良さんだったんですね。一音、一音が教科書通りの音で個性がなかった。私は今の相良さんの演奏の方が好きですよ。自由さに華やかさがあって、また聞いてみたいです」
「……誰も評価を述べろとは言ってないけど!」
「は!?す、すみません、私うっかりして…」
「…面白い、胡桃沢さんって…」
余計な事を言ってしまい、慌てて口を手で覆い隠した私を見て、クスクスと笑う相良さん。
こんなに笑っているのを初めて見た。
普段は無表情でクールなイメージなんだけれど、眼鏡をかけずに笑っている姿は私と同年代の男の子らしく見える。
そう言えば、審査員の息子さんと言うことは、この人、もしかして…!
「も、もしかして、相良真一さんの息子さんですか?」
「…そうだけど。やっと気付いたんだ?」
現在はアメリカに在住、世界的ピアニストの相良 真一(さがら しんいち)さんの息子さんだったとは…。
確か相良さんの奥様はフルート奏者だったと記憶の片隅にある。
「凄い、すごいっ。相良真一さんって今、アメリカで活躍してるんですよね」
「……みたいだね。俺には関係ないんだけど。そんな事いいからさ、早く食べなよ。料理冷めちゃうよ?」
「は、はい。いただきますっ」
自分から話題を振ってきたくせに、ご機嫌予報の雲行きが怪しくなってきた。
お父さんの事は、これ以上聞かない方が身のためだ。
有線から流れるカフェミュージックに合わせて、テーブルに置かれた左手の指がリズムを刻む。
この曲、好きなのかな?
細くて長い指がしなやかに弾む時、素敵な旋律が生まれる。
普段は無表情で怖い時もあるけれど、演奏してる時は本当に楽しそうに見えた。
「何なの?指ばっかり見てるけど、指フェチ?」
「え、あ、ち、違いますっ。相良さんの指が動いてたから…音楽に合わせてたのかな、って…」
「音を拾ってた。落ち着かない時は、音を拾って繋げる」
言わいる、絶対音感なのかな?
音を拾って演奏する事が出来るなんて、尊敬します。
「…落ち着かない?私のせいですか?」
私が騒ぎ過ぎたせいだろうか?
「違う。…口についてる」
右手を伸ばし、人差し指で生クリームを掬い取られる。
掬い取られた生クリームは相良さんの舌に絡め取られて、なくなる。
王道シチュエーションにドキリ、と胸が高鳴った。
相変わらず、眼鏡は外したままで無表情。
先程、演奏した時に汗でワックスが流れたのか、普段はまとめられている前髪が落ちていて俯き加減の切れ長な瞳にかかる。
ホットケーキを口に頬張りながら思う、…やっぱりカッコイイな、相良さん。
今日は先日の様な失態を晒してはいけないと思い、カクテルは除外。
相良さんと同じカフェオレ、三段あるホットケーキの上に生クリームとチョコソース、アイスクリーム。
相良さんはチキンが混ぜられたサラダにピザトースト。
こないだから思っていたけれど、少食だ。
サラダばっかり食べているし、ベジタリアンかな?
「…遅くなっても平気?」
「は、はい。明日は休みだから大丈夫です」
私は相良さんの鑑賞に浸っていたが、突然の問いに我に返った。
遅くなる…という事は、大人の関係になっちゃうのでしょうか?
「…何で、そんなに真っ赤なの?暑い?」
「いや、えと…暑くはない、です」
「ふうん…」と言う相良さんは少し呆れている様な気がした。
もしかしたらお泊まりになってしまうかも?とか、相良さんの言葉で想像力を掻き立てられ、一人で赤面してしまった。
男子中高生かっ!…という様な突っ込みが入りそうな想像力に自己嫌悪。
"遅くなる"とは、この後も一緒にいられると言う確約だけれども、具体的な内容については語られてはいない。
相良さんとまだ一緒に居ても良いんだという幸せにただ、ただ喜びを感じる。
「今度は何?ニヤニヤしてるみたいだけど…?」
「え!?し、してません!」
嬉しさ全開なのが顔に出ていたのか、いつの間にかニヤニヤしていたらしい。
このままでは完璧に変な奴だと思われる。
話題を探さなきゃ!
「さ、相良さんって、お休みの日は何をしているんですか?」
「……部屋の掃除、料理、たまに副社長のお世話、ドライブ」
「掃除とか料理って一人暮らしですか?」
「……違う。けど、土日はしなきゃいけない」
要点しか言わないから、謎が解けるのに時間がかかる。
「副社長のお世話って?土日も仕事ですか?」
「まぁ、プライベートと半々かな?最近は秋葉さんが居るから呼びつけられなくなったけど、前は頻繁に呼びつけられた」
「友達だからじゃなくて?」
「…それもあるけど。車出して欲しい時とか…買い物付き合ってとか。人の休みを何だと思ってるんだか知らないけど…!」
いやいや、ただ単に友達として出かけたいから副社長はお誘いしてただけでは?
相良さんって束縛を嫌う人なんだろうな。
自由気ままで過ごしたいけれど、言われると断れないとか?
あれ?私も無理に誘ってるのかな?
「相良さんって、一人でいたいタイプですか?」
言葉を選んで言ったつもりがキツい言い方になってしまったかもしれないが、相良さんは動じずに淡々と答えた。
「……別にそーゆー訳じゃない。ただ、副社長とは友達にはなり切れない事情がある」
「そうなんですか…」
相良さんと副社長の間には複雑な"何か"が隠されている様だ。
私には仲が良さげに見えるし、副社長も親友の様に信頼しきって接している様に見える。
副社長といる時の垣間見える、穏やかな表情は安心している証拠だと思っていた。
「うちの祖父母が生きている時、副社長の実家で執事と言うか…家政婦業をしていて、その頃からお世話になっていたから、完全に友達と呼べないのはそのせいだよ。そんな暗い顔しなくても、別にそれだけだから」
相良さん的にわだかまりがあるとしたら、祖父母のお手伝いさんとしての名残りからなんだろう。
祖父母が亡くなっても、主従関係は健在というわけか…。
店内は先日よりも混んでいて、私達は隅の席に通された。
この場所からは伴奏者は見えずにピアノの音しか聞こえないが、とても綺麗な音色にうっとりする。
「大貴も今日は弾いて行けば?明日は休みならラストまで付き合ってよ」
「…別にいい、弾かなくても」
こないだも居たお友達のバーテンダーが、相良さんをピアノに誘導する。
「あ、あの…相良さんって、ピアノ弾けるんですね!聞いてみたいです」
「うん、大貴のピアノは格別だよ。聞きたいよね?ほら、彼女が聞きたいって!」
そう言いながら相良さんの背中を二回叩く、バーテンダー。
相良さんが返事をせずにムスッとした表情をしているが構わず私に、
「彼女、お名前は?こないだ聞きそびれちゃったから。俺はバーテンダーしてます、後藤 翔平(ごとう しょうへい)です」
と自己紹介してくれた。
「相良さんと同じ会社で働いている、胡桃沢 和奏です」
「くるみさわ?名字も名前も可愛いね」
後藤さんがヘラヘラと笑って私と話をしている内に、ピアノの生演奏の音が聞こえなくなり拍手喝采で終わりになった様だった。
私達の話を聞いていた相良さんはいつの間にかご機嫌斜めになり、ジャケットを脱ぎ、ネクタイも外してどこかに消えた。
後藤さんが「またね」と言って手を振り、この場を去った時に先程の演奏者ではないと思われるピアノの音色が聞こえた。
まさか、とは思うけど…!
私はいても立ってもいられない気持ちになり、席を立ち上がりピアノのある場所へと向かう。
陰からこっそりと覗く姿に心を奪われた。
しなやかに動く細長い指からは、軽快な音色が繋がり、華麗さが広がる。
私の姿を見つけた演奏者は、更に速さを上げて私を挑発するかの様に指を弾かせた。
「目が離せないでしょ?これが大貴の演奏。俺も大好きなんだ。なかなか弾いてくれないけどね」
感動して目をうるうるさせている私を見つけた後藤さんは、私に助言をして隣で一緒に聞く。
相良さん、カッコイイ通り越して、何て言うか…物凄く綺麗。
周りのテーブルのお客もうっとりと聴き惚れている様子で、引き終えるとスタンディング・オベーションが沸き起こる。
一礼をし、私と後藤さんに『してやったよ』的な不敵な微笑みを浴びせる。
拍手が鳴り止まず、アンコールに期待が寄せられたが、もう一曲は弾く気はないらしい。
惜しまれつつ、相良さんは私も引き連れながら席に戻った。
「ハンカチどうぞ」
相良さんの前髪の隙間から、汗の粒が見えたのでハンカチを取り出して渡す。
演奏中は眼鏡はせず、Yシャツのポケットにしまっていた。
その後もかける様子もなく、無言で受け取ったハンカチで汗を拭く。
ドキドキ…ドキドキ…。
先程の感動が忘れられず、興奮が冷めやらず。
更に仕事中では絶対に見られない相良さんの姿にときめき、ただ、ひたすらに見つめていた。
「相良さん、とっても素敵でした!」
ついつい声を張り上げてしまったが、相良さんは驚く様子はなく、淡々と…
「…胡桃沢さんも弾いて来たら?全国小学生ピアノコンクール優勝者が弾いた方が盛り上がるんじゃないの?」
と言い返してきた。
「な、何で知って…る、んですか!?」
確かに私は全国小学生ピアノコンクールの優勝経験がある。
惰性で習っていたピアノがたまたま上手だったというだけで、だんだんと楽しいと思えなくなり、中学時代には触りもしなくなった。
「俺も、あの場所に居たから。最初で最後のコンクールになったけど…」
そうなんだ、知らなかった。
男の子は何人か居たけれど、相良さんの様に心を揺さぶれる弾き方の男の子は居なかったと思う。
「…俺はコンクールに出た訳じゃなくて、オープニングで弾いただけだけどね」
オープニング?
確か、あの日の審査員の息子さんがオープニングでピアノを披露したのは覚えてる。
「繊細で神経質な音を奏でた男の子は相良さんだったんですね。一音、一音が教科書通りの音で個性がなかった。私は今の相良さんの演奏の方が好きですよ。自由さに華やかさがあって、また聞いてみたいです」
「……誰も評価を述べろとは言ってないけど!」
「は!?す、すみません、私うっかりして…」
「…面白い、胡桃沢さんって…」
余計な事を言ってしまい、慌てて口を手で覆い隠した私を見て、クスクスと笑う相良さん。
こんなに笑っているのを初めて見た。
普段は無表情でクールなイメージなんだけれど、眼鏡をかけずに笑っている姿は私と同年代の男の子らしく見える。
そう言えば、審査員の息子さんと言うことは、この人、もしかして…!
「も、もしかして、相良真一さんの息子さんですか?」
「…そうだけど。やっと気付いたんだ?」
現在はアメリカに在住、世界的ピアニストの相良 真一(さがら しんいち)さんの息子さんだったとは…。
確か相良さんの奥様はフルート奏者だったと記憶の片隅にある。
「凄い、すごいっ。相良真一さんって今、アメリカで活躍してるんですよね」
「……みたいだね。俺には関係ないんだけど。そんな事いいからさ、早く食べなよ。料理冷めちゃうよ?」
「は、はい。いただきますっ」
自分から話題を振ってきたくせに、ご機嫌予報の雲行きが怪しくなってきた。
お父さんの事は、これ以上聞かない方が身のためだ。
有線から流れるカフェミュージックに合わせて、テーブルに置かれた左手の指がリズムを刻む。
この曲、好きなのかな?
細くて長い指がしなやかに弾む時、素敵な旋律が生まれる。
普段は無表情で怖い時もあるけれど、演奏してる時は本当に楽しそうに見えた。
「何なの?指ばっかり見てるけど、指フェチ?」
「え、あ、ち、違いますっ。相良さんの指が動いてたから…音楽に合わせてたのかな、って…」
「音を拾ってた。落ち着かない時は、音を拾って繋げる」
言わいる、絶対音感なのかな?
音を拾って演奏する事が出来るなんて、尊敬します。
「…落ち着かない?私のせいですか?」
私が騒ぎ過ぎたせいだろうか?
「違う。…口についてる」
右手を伸ばし、人差し指で生クリームを掬い取られる。
掬い取られた生クリームは相良さんの舌に絡め取られて、なくなる。
王道シチュエーションにドキリ、と胸が高鳴った。
相変わらず、眼鏡は外したままで無表情。
先程、演奏した時に汗でワックスが流れたのか、普段はまとめられている前髪が落ちていて俯き加減の切れ長な瞳にかかる。
ホットケーキを口に頬張りながら思う、…やっぱりカッコイイな、相良さん。
今日は先日の様な失態を晒してはいけないと思い、カクテルは除外。
相良さんと同じカフェオレ、三段あるホットケーキの上に生クリームとチョコソース、アイスクリーム。
相良さんはチキンが混ぜられたサラダにピザトースト。
こないだから思っていたけれど、少食だ。
サラダばっかり食べているし、ベジタリアンかな?
「…遅くなっても平気?」
「は、はい。明日は休みだから大丈夫です」
私は相良さんの鑑賞に浸っていたが、突然の問いに我に返った。
遅くなる…という事は、大人の関係になっちゃうのでしょうか?
「…何で、そんなに真っ赤なの?暑い?」
「いや、えと…暑くはない、です」
「ふうん…」と言う相良さんは少し呆れている様な気がした。
もしかしたらお泊まりになってしまうかも?とか、相良さんの言葉で想像力を掻き立てられ、一人で赤面してしまった。
男子中高生かっ!…という様な突っ込みが入りそうな想像力に自己嫌悪。
"遅くなる"とは、この後も一緒にいられると言う確約だけれども、具体的な内容については語られてはいない。
相良さんとまだ一緒に居ても良いんだという幸せにただ、ただ喜びを感じる。
「今度は何?ニヤニヤしてるみたいだけど…?」
「え!?し、してません!」
嬉しさ全開なのが顔に出ていたのか、いつの間にかニヤニヤしていたらしい。
このままでは完璧に変な奴だと思われる。
話題を探さなきゃ!
「さ、相良さんって、お休みの日は何をしているんですか?」
「……部屋の掃除、料理、たまに副社長のお世話、ドライブ」
「掃除とか料理って一人暮らしですか?」
「……違う。けど、土日はしなきゃいけない」
要点しか言わないから、謎が解けるのに時間がかかる。
「副社長のお世話って?土日も仕事ですか?」
「まぁ、プライベートと半々かな?最近は秋葉さんが居るから呼びつけられなくなったけど、前は頻繁に呼びつけられた」
「友達だからじゃなくて?」
「…それもあるけど。車出して欲しい時とか…買い物付き合ってとか。人の休みを何だと思ってるんだか知らないけど…!」
いやいや、ただ単に友達として出かけたいから副社長はお誘いしてただけでは?
相良さんって束縛を嫌う人なんだろうな。
自由気ままで過ごしたいけれど、言われると断れないとか?
あれ?私も無理に誘ってるのかな?
「相良さんって、一人でいたいタイプですか?」
言葉を選んで言ったつもりがキツい言い方になってしまったかもしれないが、相良さんは動じずに淡々と答えた。
「……別にそーゆー訳じゃない。ただ、副社長とは友達にはなり切れない事情がある」
「そうなんですか…」
相良さんと副社長の間には複雑な"何か"が隠されている様だ。
私には仲が良さげに見えるし、副社長も親友の様に信頼しきって接している様に見える。
副社長といる時の垣間見える、穏やかな表情は安心している証拠だと思っていた。
「うちの祖父母が生きている時、副社長の実家で執事と言うか…家政婦業をしていて、その頃からお世話になっていたから、完全に友達と呼べないのはそのせいだよ。そんな暗い顔しなくても、別にそれだけだから」
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