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条件5*休憩中の密会禁止!
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今日は週半ばの水曜日。
夢の様な先週の金曜日の夜から抜け出せずにいる私は、仕事中もボーッとする事が多かった。
データ入力をすればミスは起きるし、会議室を掃除すれば掃除機を倒してゴミをぶちまけてしまった。
そんな姿を見られたら、『浮つくな』と相良さんに指摘されてしまうだろう。
お昼の休憩時間になり、会社付近にあるパン屋さんでランチしようと公園を抜け道にする。
公園を通るとパン屋さんが近いのだ。
木陰を選んで進んで行くと猫の様な鳴き声がした。
「にゃぁ」
猫の鳴き声がした方向に歩き、付近のベンチを見渡すとトラ猫を膝に乗せた相良さんが座っていた。
「あっ!さ、相良さん!?…お疲れ様です」
木陰とは言え、真夏なので空からも地面からもジリジリと照りつける暑さ。
相良さんは暑さなどものともせず、猫の背中を撫でていた。
「お疲れ様です…」
仕事モードの相良さんはいつも通りの眼鏡に紺色のスーツ姿で、金曜日の姿とは掛け離れている。
猫を膝の上に乗せていても無表情で、ただ単に背中を撫でているだけな感じ。
猫も怖がらずに近寄るという事は、動物の本能が本当の姿を見抜いているのかもしれない。
ゴロゴロして、猫も懐いているみたい。
「猫好きなんですね」
私を見つけても、挨拶しか交わさない相良さんを覗き込むように問いかけた。
「人間1つくらいは好きなモノがあっても良いと思いますが…」
低い声のトーン、冷たい言い方で返事をされ、凹む。
会社付近では接近禁止なので、その反応は理解出来なくはないが、金曜日のデートの後だからか正直言ってキツい。
「お昼はもう済ませましたか?」
「はい、済みました」
ベンチの隅にはお弁当箱の包みが見えた。
「お弁当…ですか?」
「…毎朝、用意してあるので」
「…そうですか」
「…………」
会話が続かなくなってきた。
多分、相良さんは私に近寄って欲しくないのだろう。
分かりました、理解のあるフリをしてこの場を去ります。
「では、失礼します」
一礼をし、パン屋さんまで歩く。
そう言えば、相良さんはエチケットブラシ持っているかな?
猫の毛がスーツについてしまってるんじゃないか?
私はガザガサとバッグの中からエチケットブラシを取り出しUターンし、暑い中、急ぎ足で引き返す。
「はぁっ、良かった。まだ居た!はい、これ、使って下さいねっ。では、今度こそ失礼します」
戻ると相良さんはまだ同じ場所に座って居たので、ベンチにそっと置いてパン屋さんへと急いだ。
時間が少なくなってしまったので定番のパンを購入し、手早く口に放り込み、お茶で流し込む。
パン屋さんの中は涼しくて、足早に歩いて火照った身体を冷やしてくれた。
会社に戻る途中、バッグの中からスマホが震えているのに気付いて取り出す。
"心配されなくても、エチケットブラシくらい持ってる"
相良さんからのメールだったが、お礼の言葉はない訳ね!
…つまり、私が余計な事をしたと言いたい訳?
"余計なお世話をしてすみませんでした"と返信すると"いえ、ありがとう"と間隔を空けずに返信が戻ってきた。
今更、ありがとうって…?
素直じゃないから良く分からない。
相良さんの攻略方法があるならば知りたい。
けれどもメールをくれたり、気にかけてくれるので付き合っているんだと実感は出来る。
一歩ずつ、歩み寄って行こう。
スマホをバッグに戻し、公園通りを抜ける。
相良さんと猫の姿は既になかったが、思い出すと微笑ましかった。
またお昼休みに通ってみよう、っと。
指摘されるのは覚悟の上、で───……
金曜日、奈子ちゃんが体調不良の為に私は一人で受付カウンターに座っていた。
急な場合は他の派遣社員が捕まらない時もあり、一人で業務をこなす。
データ入力をこなしながら御案内をして、時にはお茶出しもする時もある。
パソコンと睨めっこしていた午後、カウンターにパサリと何かが置かれた。
目の前には相良さんが立っていて、置かれたのは先日のハンカチとエチケットブラシだった。
「お疲れ様です、ありがとうございました」
「お疲れ様です。こちらこそ、届けて頂きありがとうございます」
社交辞令の様な挨拶を交わし、スマートに過ぎ去る相良さんの後ろ姿を見てはキュンと心が締め付けられる。
ハンカチは隅々まで綺麗にアイロンがかけられ、エチケットブラシは貸した時以上に綺麗にメンテナンスされていた。
几帳面な相良さんらしい対応におもわず、笑みが溢れた。
適わないな、相良さんには…!
ハンカチとエチケットブラシをしまおうと手に取ると、ハンカチからカサカサと言う音がしたので広げると小さなメモが挟まっていた。
"土日の件、どうしたいかメール入れといて下さい"と手帳から切り取った様なメモに書かれていた。
相良さんの字はとても綺麗で、教科書のお手本の様だった。
真っ先に手帳に挟んで、私の宝物になる。
ハンカチもエチケットブラシも勿体なくて使えそうもなく、保管用になりそうだ。
一喜一憂して、些細な事でときめいて、まるで学生時代の様な恋。
今日は一人だから忙しいけれど、相良さんのおかげでやる気が増す単純な私。
仕事が終わったら、早速メールしよう。
ミニレターに書かれていた内容を思い出す。
土日はどうしたいのかを決めてと書かれていたいたので、完全に私に決定権を委ねられた事になる。
どうしようか…?
"土日"という事はお泊まりなのか、両方会えるという事なのか、どちらなんだろう?
夜中になってしまった先日の帰り、仮眠するかどうかを訪ねたら、親切心よりも下心を見抜かれてしまった様で注意を受けたのを思い出した。
お泊まりの計画を立てれば、また注意を受け兼ねないが、こないだの別れ際のキスは相良さんもまだ一緒に居たかったという印なのかな?
何度か"和奏"って呼んでくれたのに、いつの間にか"胡桃沢さん"に戻っていたし…。
そもそも、相良さんは私をからかっているのが面白いだけで好きではないのかな?
好きではなくてもキスは出来るもの?
様々な憶測が頭を過ぎるけれど、相良さんが私の事を好きでも、好きではなくても、私の方がどうしようもなく好きでも、今はただ単に一緒にいたい。
そうだ、二日間あるならば、一日ずつ決めるのはどうだろう?
昼間のデートは初めてだから、相良さんに呆れられない様に計画を立てないと!
夢の様な先週の金曜日の夜から抜け出せずにいる私は、仕事中もボーッとする事が多かった。
データ入力をすればミスは起きるし、会議室を掃除すれば掃除機を倒してゴミをぶちまけてしまった。
そんな姿を見られたら、『浮つくな』と相良さんに指摘されてしまうだろう。
お昼の休憩時間になり、会社付近にあるパン屋さんでランチしようと公園を抜け道にする。
公園を通るとパン屋さんが近いのだ。
木陰を選んで進んで行くと猫の様な鳴き声がした。
「にゃぁ」
猫の鳴き声がした方向に歩き、付近のベンチを見渡すとトラ猫を膝に乗せた相良さんが座っていた。
「あっ!さ、相良さん!?…お疲れ様です」
木陰とは言え、真夏なので空からも地面からもジリジリと照りつける暑さ。
相良さんは暑さなどものともせず、猫の背中を撫でていた。
「お疲れ様です…」
仕事モードの相良さんはいつも通りの眼鏡に紺色のスーツ姿で、金曜日の姿とは掛け離れている。
猫を膝の上に乗せていても無表情で、ただ単に背中を撫でているだけな感じ。
猫も怖がらずに近寄るという事は、動物の本能が本当の姿を見抜いているのかもしれない。
ゴロゴロして、猫も懐いているみたい。
「猫好きなんですね」
私を見つけても、挨拶しか交わさない相良さんを覗き込むように問いかけた。
「人間1つくらいは好きなモノがあっても良いと思いますが…」
低い声のトーン、冷たい言い方で返事をされ、凹む。
会社付近では接近禁止なので、その反応は理解出来なくはないが、金曜日のデートの後だからか正直言ってキツい。
「お昼はもう済ませましたか?」
「はい、済みました」
ベンチの隅にはお弁当箱の包みが見えた。
「お弁当…ですか?」
「…毎朝、用意してあるので」
「…そうですか」
「…………」
会話が続かなくなってきた。
多分、相良さんは私に近寄って欲しくないのだろう。
分かりました、理解のあるフリをしてこの場を去ります。
「では、失礼します」
一礼をし、パン屋さんまで歩く。
そう言えば、相良さんはエチケットブラシ持っているかな?
猫の毛がスーツについてしまってるんじゃないか?
私はガザガサとバッグの中からエチケットブラシを取り出しUターンし、暑い中、急ぎ足で引き返す。
「はぁっ、良かった。まだ居た!はい、これ、使って下さいねっ。では、今度こそ失礼します」
戻ると相良さんはまだ同じ場所に座って居たので、ベンチにそっと置いてパン屋さんへと急いだ。
時間が少なくなってしまったので定番のパンを購入し、手早く口に放り込み、お茶で流し込む。
パン屋さんの中は涼しくて、足早に歩いて火照った身体を冷やしてくれた。
会社に戻る途中、バッグの中からスマホが震えているのに気付いて取り出す。
"心配されなくても、エチケットブラシくらい持ってる"
相良さんからのメールだったが、お礼の言葉はない訳ね!
…つまり、私が余計な事をしたと言いたい訳?
"余計なお世話をしてすみませんでした"と返信すると"いえ、ありがとう"と間隔を空けずに返信が戻ってきた。
今更、ありがとうって…?
素直じゃないから良く分からない。
相良さんの攻略方法があるならば知りたい。
けれどもメールをくれたり、気にかけてくれるので付き合っているんだと実感は出来る。
一歩ずつ、歩み寄って行こう。
スマホをバッグに戻し、公園通りを抜ける。
相良さんと猫の姿は既になかったが、思い出すと微笑ましかった。
またお昼休みに通ってみよう、っと。
指摘されるのは覚悟の上、で───……
金曜日、奈子ちゃんが体調不良の為に私は一人で受付カウンターに座っていた。
急な場合は他の派遣社員が捕まらない時もあり、一人で業務をこなす。
データ入力をこなしながら御案内をして、時にはお茶出しもする時もある。
パソコンと睨めっこしていた午後、カウンターにパサリと何かが置かれた。
目の前には相良さんが立っていて、置かれたのは先日のハンカチとエチケットブラシだった。
「お疲れ様です、ありがとうございました」
「お疲れ様です。こちらこそ、届けて頂きありがとうございます」
社交辞令の様な挨拶を交わし、スマートに過ぎ去る相良さんの後ろ姿を見てはキュンと心が締め付けられる。
ハンカチは隅々まで綺麗にアイロンがかけられ、エチケットブラシは貸した時以上に綺麗にメンテナンスされていた。
几帳面な相良さんらしい対応におもわず、笑みが溢れた。
適わないな、相良さんには…!
ハンカチとエチケットブラシをしまおうと手に取ると、ハンカチからカサカサと言う音がしたので広げると小さなメモが挟まっていた。
"土日の件、どうしたいかメール入れといて下さい"と手帳から切り取った様なメモに書かれていた。
相良さんの字はとても綺麗で、教科書のお手本の様だった。
真っ先に手帳に挟んで、私の宝物になる。
ハンカチもエチケットブラシも勿体なくて使えそうもなく、保管用になりそうだ。
一喜一憂して、些細な事でときめいて、まるで学生時代の様な恋。
今日は一人だから忙しいけれど、相良さんのおかげでやる気が増す単純な私。
仕事が終わったら、早速メールしよう。
ミニレターに書かれていた内容を思い出す。
土日はどうしたいのかを決めてと書かれていたいたので、完全に私に決定権を委ねられた事になる。
どうしようか…?
"土日"という事はお泊まりなのか、両方会えるという事なのか、どちらなんだろう?
夜中になってしまった先日の帰り、仮眠するかどうかを訪ねたら、親切心よりも下心を見抜かれてしまった様で注意を受けたのを思い出した。
お泊まりの計画を立てれば、また注意を受け兼ねないが、こないだの別れ際のキスは相良さんもまだ一緒に居たかったという印なのかな?
何度か"和奏"って呼んでくれたのに、いつの間にか"胡桃沢さん"に戻っていたし…。
そもそも、相良さんは私をからかっているのが面白いだけで好きではないのかな?
好きではなくてもキスは出来るもの?
様々な憶測が頭を過ぎるけれど、相良さんが私の事を好きでも、好きではなくても、私の方がどうしようもなく好きでも、今はただ単に一緒にいたい。
そうだ、二日間あるならば、一日ずつ決めるのはどうだろう?
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