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第一章
“肉体の死”との邂逅 Ⅲ
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『これから毎日1時間、私と対話の時間を作ろう』
翌日、本当に対話の時間が設けられることになった。首吊り痕を隠すネックウォーマーを身に着け、自室にタナトスを招く。
「コーヒーって飲めますか、死神さん」
「ああ。牛乳と砂糖があると有り難い」
意外。この人って牛乳と砂糖入れてコーヒーを飲んだりとかする人なんだ。見るからに大人だからブラックコーヒーとかしか飲まないのかと思った。コーヒーカップの準備をして、頷く。
「いいですよ~…。そこの椅子にかけてお待ち下さい。」
「ありがとう、手間をかけさせてすまない」
猫を被っていた時もそうだけど、この人ってありがとうが言えるんだよな。自分の周りは地獄みたいだったけど、自分のすぐ近くにいる親、親族、死神に至ってはまともな大人しかいなくて、やっぱり恵まれてはいるのかもしれない。
「さて、本日の話題についてだが…やはり外に出る機会が少なすぎるように思うので日光に当たりに行く目的で外出を増やすべきだと考えている、日光に当たるとセロトニン等の、ストレス軽減や自律神経の調整に役立つ物質も分泌されるしな。無論、お前だけでは何が起きるかわからないので私も陰から同行するとして…」
すごく、まともなことを言っている。
言っているのだが。
ぼちゃぼちゃぼちゃ、ぼちゃ。
あくまで真剣に話しながら、その手は絶え間なくコーヒーに角砂糖とミルクを入れている。
……角砂糖、入れすぎじゃない?
「あ、あの、死神さん。話の腰を折るようで恐縮なのですが」
「む、何だ。私の言うことに疑問が生じたか。まあ、今まであまり外出していなかったのもただ外に出たくなかったからという訳でもなさそうだからな…」
「すみません、そうではなく。…コーヒー、溢れそうですよ。」
ああ、と何でもなさそうな顔でコーヒーを見やってスプーンで混ぜるタナトス。
「平気だ、加減はよく分かってる」
すごく、じゃりじゃりと音がなってる。多分砂糖の音だ。なんでこんなに入れてるの?
「この辺りはお前のような子供一人で行くと危ないからな。…私のものでよければ移動手段も貸してやれるし、少しなら力になれると思うが」
何食わぬ顔で飲んでまた話を続けようとするので、また制止をかける。
「それ、味は。味は大丈夫なんですか」
きょとん、とした顔で首を傾げるタナトス。その仕草を顔が綺麗な人間がやると、2次元のキャラクターじみている。
「ああ……わたしは、エネルギー補給としてしか糖分を摂取しない。後天的に味覚がないんだ。」
「え゙っ」
味覚がなくなるって、相当強いストレスに晒されないと起こらないはずだった気がする、確か。
だから大丈夫だ、と目を伏せるタナトス。
…この人も相当、メンタルが死んでいるのかもしれない。とても、心配になった。わたしがあまり反発しすぎると胃を痛めたりするんじゃないか、とか。
「まあ死ぬのはやめませんけど…」
「不穏な独り言が聞こえた気がするんだが」
「気の所為ですよ」
もう少し、タナトスの身を慮ることに決めたのだった。
翌日、本当に対話の時間が設けられることになった。首吊り痕を隠すネックウォーマーを身に着け、自室にタナトスを招く。
「コーヒーって飲めますか、死神さん」
「ああ。牛乳と砂糖があると有り難い」
意外。この人って牛乳と砂糖入れてコーヒーを飲んだりとかする人なんだ。見るからに大人だからブラックコーヒーとかしか飲まないのかと思った。コーヒーカップの準備をして、頷く。
「いいですよ~…。そこの椅子にかけてお待ち下さい。」
「ありがとう、手間をかけさせてすまない」
猫を被っていた時もそうだけど、この人ってありがとうが言えるんだよな。自分の周りは地獄みたいだったけど、自分のすぐ近くにいる親、親族、死神に至ってはまともな大人しかいなくて、やっぱり恵まれてはいるのかもしれない。
「さて、本日の話題についてだが…やはり外に出る機会が少なすぎるように思うので日光に当たりに行く目的で外出を増やすべきだと考えている、日光に当たるとセロトニン等の、ストレス軽減や自律神経の調整に役立つ物質も分泌されるしな。無論、お前だけでは何が起きるかわからないので私も陰から同行するとして…」
すごく、まともなことを言っている。
言っているのだが。
ぼちゃぼちゃぼちゃ、ぼちゃ。
あくまで真剣に話しながら、その手は絶え間なくコーヒーに角砂糖とミルクを入れている。
……角砂糖、入れすぎじゃない?
「あ、あの、死神さん。話の腰を折るようで恐縮なのですが」
「む、何だ。私の言うことに疑問が生じたか。まあ、今まであまり外出していなかったのもただ外に出たくなかったからという訳でもなさそうだからな…」
「すみません、そうではなく。…コーヒー、溢れそうですよ。」
ああ、と何でもなさそうな顔でコーヒーを見やってスプーンで混ぜるタナトス。
「平気だ、加減はよく分かってる」
すごく、じゃりじゃりと音がなってる。多分砂糖の音だ。なんでこんなに入れてるの?
「この辺りはお前のような子供一人で行くと危ないからな。…私のものでよければ移動手段も貸してやれるし、少しなら力になれると思うが」
何食わぬ顔で飲んでまた話を続けようとするので、また制止をかける。
「それ、味は。味は大丈夫なんですか」
きょとん、とした顔で首を傾げるタナトス。その仕草を顔が綺麗な人間がやると、2次元のキャラクターじみている。
「ああ……わたしは、エネルギー補給としてしか糖分を摂取しない。後天的に味覚がないんだ。」
「え゙っ」
味覚がなくなるって、相当強いストレスに晒されないと起こらないはずだった気がする、確か。
だから大丈夫だ、と目を伏せるタナトス。
…この人も相当、メンタルが死んでいるのかもしれない。とても、心配になった。わたしがあまり反発しすぎると胃を痛めたりするんじゃないか、とか。
「まあ死ぬのはやめませんけど…」
「不穏な独り言が聞こえた気がするんだが」
「気の所為ですよ」
もう少し、タナトスの身を慮ることに決めたのだった。
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