RISE

滅びゆく国11

　国境ってどこかな。遠いかな？知りたいけどこれを聞いたら、私はどうやって国境に入ったのかってなる。

　黙り込んだ愛俚にショーンの母親は思い付いたように手を叩いた。

 ｢そうだ。換金所まで行くのも大変だし、うちで少し替えたら？｣

 ｢え？でも日本のお金ですよ？｣

　使えないのに……。

 ｢いいのよ。日本のお金を持ってるなんてすごいじゃない。ね？お父さん｣

　そう言うと母親はレジからいくつかの紙幣とコインを取り出した。

 ｢あの、本当にいいんですか？｣

　その問いに母親だけでなく、父親もにこりと微笑んだ。

 ｢これがこの国のお金。通貨名はリノ｣

 ｢リノ……可愛い名前。えっとこれでどれくらいの物が買えるんですか？｣

　コインが6枚、紙幣が3枚、日本と同じだ。愛俚は一枚のコインを手に取った。

 ｢これは100R(リノ)。そうね、これ一枚だと今はこれ一つしか買えないわ｣

　母親が手にしたのはカウンターに置いてあったカゴの中のアメ玉一つ。

 ｢あ、アメ一つ？｣

　えーと、日本でアメ一つって言うと30円くらい？

 ｢こんな国になる前は10リノあればアメ2つ買えたんだ。100リノあればチョコレートやラスク、クッキーまで買えた｣

　えーと、計算が難しいな。つまり日本円に例えてみると、昔はアメが2つ10円で買えて100円あればチョコレートやラスク、クッキーまで買える。

　日本じゃ100円でチョコレートは買えても1つ。チロルチョコならたくさん買えるけど、チョコレートやクッキー、ラスクを買って100円はない、よね。でも今は100円でアメ1つって高っ！！

 ｢これは？｣

 ｢これは1000リノ。1000リノあればパンや果物が2つは買えるわ。｣

　千円でパン2つ！？

 ｢あ、あの……ちなみにお店で何かを食べるとしたらいくらぐらい？｣

　愛俚の表情から聞きたいことを察した母親は笑った。