DTガール!

Kasyta

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がっこうにいこう!

153話「覗きはNG」

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 ――パコッ。
 丸めた教科書の一撃が眠っていたニーナの頭に直撃し、静まり返った教室に小気味の良い音を響かせた。

「ひゃっ!?」
「夜遅くまで頑張るのは良いけれど、授業中に眠るのは感心しないね、ニーナ君?」

「ご、ごめんなさ~い。」

 その後は、うつらうつらと船を漕ぎながらも何とか午前中の授業を乗り切ったニーナ。
 しかし、昼休みの開始を告げる鐘の音が終わると同時に、机の上に沈没してしまった。

「大丈夫なのか、ニーナ?」
「うぅ・・・・・・ヒノカ姉。うん、午後からは体動かすだけだから。」

「そちらの方が心配なのだがな・・・・・・。」

 寝不足状態で剣なんか振り回してたら、下手すりゃ大怪我でも済まない。
 ニーナなら、剣術であれば寝ててもこなしてしまいそうだが。

「アリスならともかく、貴女までアンナ先生の工房に入り浸って・・・・・・一体二人して何を企んでるのよ。」
「企むだなんて、人聞きが悪いなぁ。」

「普段の行いを省みたらどうかしら、アリス?」
「ま、まぁそれはともかく・・・・・・ニーナは私を倒す為の秘密兵器を作ってるって言ってたよ。」

「それ・・・・・・”秘密”兵器って言えるの?」
「作ってるところは見せてくれないしね。」

「じゃあ二人で何かを作っている訳では無いのね。」
「そういう事。」

「その秘密兵器とやらは完成しそうなのか、ニーナ?」
「うん・・・・・・大体は出来たから、後は上手くやるだけだよ。」

 この言い方だと・・・・・・試作が出来てて、試験と改良で詰めていく感じだろう。
 完成は近そうだ。

「・・・・・・それより、お昼は?」
「そうだにゃ! おなか減ったにゃ!」

「まぁまぁ、今日はお弁当だからそんなに慌てなくても・・・・・・。」

 それにフラムがまだ黒板を写して・・・・・・あ、消された。

「ぁぅ・・・・・・。」
「後で私のを写せばいいからね、フラム。」

「う、うん・・・・・・ご、ごめん、ね・・・・・・。」
「フラムはちゃんと頑張ってるんだから、気にしないで。」

「そう、フラムはね・・・・・・。ニーナ、貴女これ何て書いてあるのよ?」
「う、う~ん・・・・・・・・・・・・何て書いてるの?」

「どうして私に聞くのよ。貴女が書いたんでしょうに・・・・・・。」

 ニーナのノートにのたうつミミズを見て、頭を抱えるリーフ。
 半分寝た状態でノートを取ってたんだから、中身はそうなってるわな。

「・・・・・・ニーナも後で私のを写しておきなよ。」
「うん、ありがと!」

「秘密兵器とやらの前に、先ずは勉強でアリスに勝つことを考えたらどうなの?」
「そんなのボクには無理に決まってるじゃん。リーフだって勝てないのに。」

「き、気概よ気概!」

 実際のところ、リーフの成績はかなり良い。
 一日の長で辛うじて俺が勝っているだけで、同年代の頃だったら足下にも及んでいないだろう。
 とはいえ、そんな事を言えるはずもなく。

「と、とりあえず準備してお昼にしよう。もう教室は私たちだけになっちゃったよ。」

 もう学食も購買も戦争状態になっている筈だ。

「そうだにゃ! 早く行くにゃ!」
「ご、ごめんね。ちょ、ちょっと待ってね。」

 いそいそと机の上を片すフラムを手伝う。
 沈没していた筈のニーナは、既に片付けを終えて鞄を提げていた。いつの間に・・・・・・。

「それじゃあ、いつもの所で食べようか。」

 鞄を提げたフラムの背を押し、俺たちは教室を後にした。

*****

「ゼッタイ覗いちゃダメだからね!」
「分かってるよ。頑張ってね、ニーナ。」

 工房の一室に籠るニーナを見送り、作業机に向かう。

「さて・・・・・・、今夜も小遣い稼ぎといきますか。」

 メニューを起動し、チャット画面を立ちあげる。
 新着メッセージは届いていないようだ。

「依頼は無し・・・・・・。じゃあ螺子でも作るか、面倒だけど。」

 四次元化して土を詰めたインベントリからブロック化した土をいくつか取り出し、作業机の上に広げる。
 そこから更に一摘み。指先を通して土に魔力を流し込んでいく。
 頭に浮かべた設計図と同じになるよう、ゆっくり丁寧に。
 魔力を得た土が蠢き、徐々に形を形成していく。

「・・・・・・・・・・・・よし。」

 たっぷり時間をかけ、一つ目が完成した。
 小さい部品だが、それだけに精度を要求されるため時間が掛かる上に疲れる。

「まぁ、これ一個を銀貨一枚で買い取ってくれるってんだから、ボロい商売だよなぁ。」

 正直、冒険者をやってるより遥かに割が良い。
 これで儲けた分は、インベントリやらの機能拡張で消えてしまっているが。

 集中力が途切れないうちに次の作成に取り掛かる。
 作った分は全て買い取ってくれると言う話なので、作り過ぎるということもない。
 螺子以外にも釘やボルトナット、その他諸々の注文も受けているので、それらをローテーションさせれば問題ないだろう。

 しかもご丁寧に、それらのサイズごとの設計図を受け取っているのだ。
 しばらくはお金に困りそうにない。

 依頼主はリタの義足を設計製作した「ドク」と呼ばれている魔女。
 その名の通り、色々と発明をしているらしい。
 タイムマシンもその内に作ってしまうんじゃなかろうか。

 ――ポッポー!! ガンッ!! ポッポー!! ガンッ!!

 巨大鳩時計が真夜中を報せる。

「うぇっ!? もうこんな時間!?」

 気付けば作業机の上に螺子が数十個転がっていた。
 良い感じに集中出来ていたらしい。
 数時間の作業で凝り固まった肩と首をグリグリと回しながら身体を伸ばして解す。

「ま、今日はこんなところかな。」

 出来上がった螺子をバザーに出品し、その旨のメッセージをドクへ送る。
 するとすぐに『出品していたアイテムが売れました』というシステムメッセージがポップした。

「相変わらず速攻で買うなぁ・・・・・・。」

 作業机を片付けていると、ニーナが部屋から飛び出してきた。

「アリスぅ~どうしよぉ~。」
「ちょっ、どうしたのニーナ!?」

 ニーナが着ている白かった筈のシャツが、真っ赤に染まっている。
 血だ。
 何か事故でも起こしたのか?
 それにしてはあまり焦っている様子ではないが・・・・・・。

「って・・・・・・鼻血、それ?」
「うぅ~、止まんないよぉ~。」

 ダラダラと鼻から垂れる血が、手や首を伝ってシャツにベトベトと付いている。
 なんだ・・・・・・一瞬心臓が縮み上がったぜ・・・・・・。
 そういや、俺も子供の頃よく鼻血出てたっけ。

「慌てないで、まず座って。」
「う、うん。」

 俺が使っていた椅子にニーナを座らせ、医療品を詰め込んだインベントリから取り出した包帯を小さく丸めて鼻にそっと詰める。
 インベントリを拡充しておいて正解だった。

「後はしばらく鼻を摘んで下を向いてて。」
「うぅ~・・・・・・なんか、きもちわるい~・・・・・・。」

 まぁ、気持ちの良いものではないだろう。

「頭を使い過ぎたんじゃないの?」
「・・・・・・ソウカモ。」

 ニーナの額に手を当ててみるが、熱は無い。
 いつもなら既にグッスリ寝ている時間だし、寝不足が祟ったか。

「ん~、とりあえず今日はこっちに泊めてもらうといいよ。明日も気分が悪いようなら保健室に行こう。」

 素人判断は危険だけど、医者を頼るには時間が遅すぎる。
 緊急外来なんてものは無いし。

「アリスは・・・・・・どうするの?」

 ニーナが不安気な表情を見せる。
 「私も一緒に」と言ってやりたいが、帰らないと寮のフィー達が心配するだろう。
 電話でもあれば戻る必要もないんだがな・・・・・・・・・・・・あ、そうだ。

「私もこっちに泊まるよ。」
「・・・・・・いいの?」

「うん、血が止まってから仮眠用の寝台を使うといいよ。・・・・・・アンナ先生は使わないと思うし。」

 床で幸せそうな顔して寝てるアンナ先生を横目に、チャットウィンドウを開く。
 オンライン表示になっていたレンシアに状況を説明し、部屋の子たちに伝言を頼んだ。

「アリス、どうしたの?」

 メニュー操作をしていた俺を不審に思ったのか、ニーナが声を掛けてくる。

「な、何でもないよ。」

 レンシアの『りょーかい』という返信に礼を返してチャットを閉じた。
 もうちょっと上手く操作出来る様にした方が良さそうだ。

「風邪ひきますよ、アンナ先生。」

 先生を触手で持ち上げてソファへ寝かせ、毛布を掛ける。
 その程度では目覚めそうもない。

「ニーナ、鼻血は止まりそう?」
「うん・・・・・・あ、止まってる。」

「ならもう休みなよ。汚れた服は綺麗にするから脱いでおいて。」
「ふぁ~い。」

 ニーナが脱いだ服を広げ、血の付いた部分を魔法で綺麗にしていく。
 ・・・・・・って、なんでパンツまで脱いであるんだ!

「ちょっ、ニーナ! ・・・・・・もう寝てるし。」

 余程眠かったのだろう。
 服を全て綺麗にし、畳んでニーナの傍へ置いておく。

「さて・・・・・・俺はどこで寝れば良いんだ?」
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