DTガール!

Kasyta

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BACK TO THE ・・・・・・

00003話「罠」

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 装甲車の片側に何かがぶつかった衝撃が走ると同時に、逆方向へガクンと沈むようにして装甲車が傾く。

「くっ・・・・・・ダメだ、堪えきれない!」

 声を上げたシラインが座る運転席の方へ視線を向けると、運転席の窓から外の様子が見える。
 ぶつかったものに押し出されるように、俺たちの乗っている装甲車が道から外れようとしていた。
 問題は道を外れた先に地面が無いことである。
 装甲車はちょうど山道を進んでおり、押し出される方向には崖が広がっていたのだ。

「カレン、その子を守るんだ!」

 シラインがこちらへ向いて叫ぶと、俺を抱いていたカレンの腕にぎゅっと力が籠った。
 そして――俺たちの乗った装甲車は道の外へと投げ出された。

 緩やかでない山の斜面を、重力に引かれながら装甲車がゴロゴロと回転して転がっていく。
 数秒の間に車内はシェイクされて考える暇もなく崖下へと打ち付けられ、轟音を響かせた。
 くそ・・・・・・今日二回目だぞ、落ちるの。

「怪我は無いか、チビ?」

 カレンの問いに頷いて答える。

「だ、大丈夫です。」

 彼女は装甲車がゴロゴロと回っている間もずっと俺のことを抱き止めてくれていたようだ。
 こうして抱いてくれていなかったら、あちこちに身体をぶつけてしまっていただろう。

「ぜ、全員無事か!?」

 ガムア隊長の声に、最初にゼスタが反応した。

「オ、オレは大丈夫ッス・・・・・・ひぃぃっ、シ、シライン!!?」

 ゼスタの悲鳴に、反射的にシラインが座っていた運転席の方へ視線を向ける。
 運転席には目を背けたくなるような惨状が広がっていた。
 何本かの鉄筋のような鉄の棒が運転席の窓と、シラインの・・・・・・身体を貫いていたのだ。
 そのうちの一本は彼の頭を綺麗に貫通しており、もう手遅れだという事が分かる。

「ウ、ウソだろ・・・・・・。おい、シライン!」

 カレンは俺をゼスタに押し付けて這うように運転席へ近寄り、シラインの身体を揺らす。
 しかし彼が答えることは無く、身体が揺らされた反動で黒ずんだ血がドロリと滴り落ちた。

「なんで・・・・・・なんでお前なんだよ、なぁ・・・・・・何とか言ってくれよ、シライン・・・・・・。」

 嗚咽を漏らしながらシラインの亡骸に縋りつくカレン。
 今はそっとしておこう。

「ガムア隊長。ウェルナも・・・・・・殉職です。」

 倒れていたウェルナの脈を測ったグレッソが、首を横に振りながらガムア隊長に報告した。
 横たわっている彼女の首はあらぬ方向へと折れ曲がってしまっている。こうなってしまえば俺の治癒魔法も意味をなさない。
 ちょうど装甲車を衝撃が襲った時、彼女だけが席を立っていたため、どこかに強くぶつけてしまったのだろう。
 グレッソは静かにウェルナの身体を整え、彼女の顔にハンカチを被せて小さく敬礼をした。

「残ったのは儂とグレッソ、ゼスタ、カレン・・・・・・それに民間人の嬢ちゃんか。車の機能は全部死んじまってるな。」
「どうしましか、ガムア隊長。」

「ふむ、まずは・・・・・・。」

 言いながらガムア隊長はシラインの亡骸に縋っていた胸倉を掴んで立たせ、思い切り張り手を浴びせた。
 カレンの体は吹き飛び、壁に打ち付けられる。

「ぐあ・・・・・・っ、ガ、ガムア隊長・・・・・・?」
「カレン、お前にはこの子を任せる。シラインの最期の言葉・・・・・・忘れてないな?」

「っ・・・・・・はい。」

 カレンはヨロヨロと立ち上がり俺の手を取ったが、まだ心ここにあらずと言った様子だ。
 かける言葉が見つからず、カレンの手を握り返す。

「よし、まずは外に出て状況を確かめる。油断はするなよ。」

 装甲車内に転がっていた武器を拾い集めた後、歪んでしまった後部の扉をこじ開け、順番に外に這い出る。
 横転した装甲車の傍には、ぶつかったと思われる大岩が転がっていた。

「ただの落石・・・・・・ではなさそうだな。」

 地面には無数の鉄筋や木の杭が剣山のように生えており、大部分は落ちてきた装甲車によってひしゃげている。
 見ようによっては落とし穴の底にトゲトゲがある罠のようだ。
 俺たちの座っていた場所は分厚い装甲で守られたが、運転席の窓はそうもいかなかった。

「ガムア隊長、ゴブリン共に囲まれてます!」

 声を上げ、銃を構えて倒れた装甲車の陰に入るグレッソ。同時に他の隊員たちも同様に動き銃口を上げる。
 俺たちを包囲していたのは金属製の板を盾のように構えたゴブリンだった。生い茂る木々の間から顔を覗かせ、こちらの様子を伺っている。
 目には見えないが、俺の魔力探知では更に森の奥にも魔物の反応がある。

「やはり・・・・・・罠か。」
「そ、そんな!? 落ちる直前まで探知機に反応はなかったッスよ!?」

「奴らは魔導銃を持っていない。だから反応が無かったんだろう。あの大岩も、奴らの仲間が落としたものみたいだな。」

 どうやら装甲車に付いていた探知機というのは、彼らの装備が持つ固有の魔力を探知できるだけの代物らしい。
 ゴブリンが人の武器を奪って使う習性を利用したものなのだろうが、それを逆手に取られてしまったようだ。

「おいゼスタ、ヤツらが持ってる盾の塗装・・・・・・。」
「行方不明になっていた隊が乗ってる装甲車の車体番号・・・・・・ッス。」

「儂らと同じく罠に嵌められたようだな。ゴブリンにも頭の良い奴がいるらしい。」
「ど、どうするんッスか、ガムア隊長!?」

「落ち着け。もうすぐ定時連絡の時間だ。連絡が取れなければ他の部隊がすぐに駆け付ける手筈になってる。」
「それじゃあ、耐えていれば援軍が――」

「何言ってんだよ隊長!」

 ゼスタの言葉をカレンの声が遮る。

「ヤツらはシラインの仇だ! アタシが全員ぶっ殺してやる!」

 そう叫ぶや否や装甲車の陰から飛び出し、ゴブリンたちに向かって乱射するカレン。
 しかしゴブリンたちの持つ盾によって銃弾は全て防がれてしまった。

「馬鹿野郎! 魔力充填機はもう使えねえんだ! 無駄撃ちするんじゃねえ!」
「放せよ、隊長!」

 ガムア隊長はカレンの首根っこを掴み、再び装甲車の影へと引きずり込んだ。
 それを隙と捉えたのか、魔物たちが一斉に動き出す。
 盾を構えたゴブリンたちを飛び越えて、オオカミ型の魔物ヴォルフが俺たちに襲い掛かってくる。

「ヴォルフだと!? 奴らが使役してるのか!? ぐぁっ、噛みつきやがった、クソッ!!」

 ガムア隊長が腕に噛みついたヴォルフの頭を魔導銃で吹き飛ばす。
 だがそれだけでは終わらない。

「今度は足かよ、クソがっ!」
「ひぇぇっ、こっちにも来てるッスよ!」

 次々と襲い掛かってくるヴォルフを隊員たちが撃ち殺していく。

「こっちの残弾を減らそうって魂胆か!?」

 手数が足りず、徐々に押し込まれていく。
 どうする、俺も手を貸すか・・・・・・?
 でも、ここで俺の力を使ったら後々面倒にならないか?
 いやそんなことを言ってる場合でもない、けど・・・・・・。

 思考を巡らせている間に、あるものが目に入る。
 そうだ、アレを借りて――

「カレン、そっちにもう一匹行ったぞ!」

 咄嗟にカレンが腰に吊るしていた小型の魔導銃を抜き取り、彼女に飛び掛かろうとしたウォルフを撃ち落とした。

「お・・・・・・お借りしました。」
「チビ・・・・・・お前、やるじゃねえか。いいぜ、そいつはお前にやる! 好きに使いな!」

「あ、ありがとうございます。」

 これである程度の手数は増やせそうだ。
 魔導銃に混じえてコッソリ触手も使い、ヴォルフを間引いていく。
 しかし、急に魔導銃が動かなくなった。

「あ、あれ?」
「コイツを使いな!」

 投げ渡されたものを見ると、どうやら交換用弾倉のようだ。
 弾倉の中には魔結晶がギッシリと詰め込まれ、魔力が充填された状態になっている。
 魔導銃に装着されていた弾倉を取り外すと、魔結晶の魔力は殆ど無い状態になっていた。
 なるほど、弾切れ・・・・・・というか魔力切れで魔導銃が動かなくなったのか。

「ということは・・・・・・。」

 弾倉が嵌まっていた部分を覗き込むと・・・・・・あった、魔法陣だ。
 そして中に触手をねじ込んで、あっちの魔法陣とこっちの魔法陣を繋げて魔力を送って引き金を引けば・・・・・・。
 撃ち出された魔力の弾がヴォルフの額に穴を空ける。
 成功だ。これで俺の魔力が切れない限りは撃ち続けられるだろう。

「危ない、カレン!」

 グレッソがカレンを突き飛ばした。
 次の瞬間、グレッソの体に無数の穴が空き、ビシャリと血が飛び散った。

「クッソォォォ!!」

 カレンの銃弾が、グレッソを撃ったゴブリンの頭を吹き飛ばす。

「あぁ、グレッソ、グレッソォー!」

 倒れたグレッソをゼスタが抱え上げるも・・・・・・彼はすでに事切れていた。

「ゼスタ! 銃持ちが居るじゃねえか!」
「さ、さっきは本当に探知にかからなかったんスよぉ・・・・・・。」

「おそらく、銃持ちを装甲車の探知範囲外に配置してたんだろう。あっちの増援の方が早く来ちまったようだな。」

 ゴブリンたちがけしかけてきたヴォルフはただの時間稼ぎ要因だった、ということか。
 装甲車の影から少しだけ顔を覗かせると、様々な形の魔導銃を構えたゴブリンがズラリと並んでいた。
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