DTガール!

Kasyta

文字の大きさ
416 / 453
BACK TO THE ・・・・・・

00046話「定食屋での戦い」

しおりを挟む
 闇に包まれた街のどこからともなく悲鳴が上がった。
 耳にこびりつく叫びを振り払うように路地裏を駆け抜ける。
 ここを抜ければ定食屋はもう目の前だ。

「マズいッス、店が囲まれてるッスよ!」

 やっとの思いでたどり着いた定食屋には、ゴブリンたちが群がっていた。
 だがまだ占拠されてはいないようだ。店の中からは悲鳴交じりの怒号と、銃声が聞こえてくる。
 同時に、美味しそうな匂いが漂ってきた。おそらくウチと同じで夜食でも作ろうとしたのだろう。

「さっさと助けに行くぞ、ゼスタ!」
「ま、待ってくださいよカレンさん! あれじゃあ近寄れないッスよ!」

 時折、店の中で放たれた魔力弾が窓を突き破り、俺たちのすぐ傍の壁に小さな穴を作る。
 幸い銃を持ったゴブリンは居ないようだが、不用意に突っ込めばフレンドリーファイアの餌食になってしまいそうだ。

「嬢ちゃん、流れ弾をどうにかしたらヤツらをやれるか?」
「そうですね。銃を持ったヤツは居ないみたいですから、流れ弾が飛んでこなければ大丈夫です。」

 俺が答えを聞いたカレンが納得いかなさそうに、ガムア隊長に非難の声を上げる。

「お、おい、ガムア隊長!」
「そ、そうッスよ、子供に任せるなんて・・・・・・!」

「うるせぇ、それが最善だってことくらいお前らにも分かってるだろ! それともお前ら嬢ちゃんより強ぇのか?」
「ぐっ、でもよぉ・・・・・・。」「そりゃあ、そうッスけど・・・・・・。」

 ガムア隊長の反論に、二人は二の句を継げなくなる。
 俺としては二人には援護に回って欲しいので、ありがたい申し出なのだが。

「すまねぇな嬢ちゃん。状況が状況だ、頼まれてくれるか?」
「私なら大丈夫ですから、任せて下さい。」

「でも、流れ弾なんてどうやって止めるんッスか、ガムア隊長?」
「こうするんだよ! どりゃああああ!!」

 言葉と同時に、ガムア隊長が身をかがめながら店に向かって突撃していく。

「ちょっ、隊長ぉ!?」

 魔力弾が頭上を掠めるも、怯まずに突撃していくガムア隊長。
 なんとか無事に店まで近づくと、ガムア隊長はゴブリンたちの鳴き声に負けじと声を張り上げた。

「聞こえるかバルドー、ガムアだ!!! 援軍を連れてきた!!! 外のヤツらは任せろ!!! 流れ弾は寄越すなよ!!!」

 な、何とも強引な・・・・・・。だがその強引な方法が功を奏したようだ。
 店の中からまたデカい声で返事が返ってくる。

「任せたぞ、ガムア!!!」

 店のオヤジさんの声だ。マレルが怒鳴られる時の様子が頭に浮かび、思わず口元がニヤついてしまう。

「って、あんな声出すから魔物に気付かれたッスよ!」
「クソッ、隊長を助けるぞ!」

 飛び出そうとした二人を慌てて触手で押さえつける。

「うぉ、何だこりゃ!?」
「二人はそこで援護をお願いします!」

 二人の代わりに飛び出し、今にも取り囲まれそうなガムア隊長のもとへ駆けつける。
 強化した俺の脚なら、ガムア隊長が走った距離程度なら一足飛びだ。

「隊長さんを喰っても不味いよ、たぶん!」
「ガッハッハ! 儂の筋肉は硬くて不味いぞ、魔物ども!」

 剣と触手で殺到するゴブリンたちを斬り、貫いて死体を積み上げていく。

「ガムアさんは二人のところまで下がってください!」
「スマンな、嬢ちゃん!」

 後退をはじめたガムアとは逆に、俺は前へと歩みを進める。
 俺の姿を捉えたゴブリンたちが、美味しそうに見えたのかこちらへと矛先を変えてくる。
 丁度良い、自分を囮にしてしまうのが楽そうだ。
 襲い来るゴブリンたちを倒しながら、未だ店を囲んでいるゴブリンへ向かって魔法で水の玉をぶつけ、こちらへ注意を向けてやる。

「ほらほら、私の方が美味そうだろ!?」

 何体かのゴブリンは、俺に近づくことすら出来ず、援護射撃によって討ち取られていく。
 ただ、もうちょっと時間は掛かりそうだな。

*****

「よしっ、これで最後かな。」

 十分ほど続いた戦闘も、最後の一体を斬り捨て終了した。剣にこびりついた血を振り落とす。

「アリスちゃん!」

 店に隠れていたマレルが飛び出してくる。
 怪我も無く元気そうだ。

「マレルさんも無事でしたか、良かったです。」
「無事でしたか、じゃないでしょ! アリスちゃんこそ大丈夫なの!? こんな子を戦わせるなんて・・・・・・怪我は無い!?」

「これくらいなら慣れてますから、大丈夫ですよ。」
「な、慣れてるって・・・・・・アリスちゃんて一体・・・・・・。」

 俺たちの隣では、ガムア隊長と店のオヤジさんが再開を喜び合っている。
 店の中には他にも近所の人が結構な人数避難していたようだ。武装してるのは傭兵団の人たちだろう。

「それでガムア。他のヤツらは何処だ?」
「他のヤツら?」

「援軍を連れてきたんだろ?」
「そこに居るだろうが。今しがた大活躍した援軍がよ。防衛隊も形無しだな!」

 そう言ってガムア隊長が俺を指す。

「そ、それは見てたが・・・・・・本当にお前らだけなのか?」
「そうだ。他に寄り道もしなかったしな。結果的には正解だったみたいだ。」

「相変わらずだな、ガムア。だがもう此処は使えそうにないぞ。」

 オヤジさんが、先の戦闘でボロボロになった店構えを見上げる。
 店に立て籠もるには損傷が激しい。もう一度でも襲撃があれば倒壊する可能性もあるだろう。もっとしっかりとした場所を拠点にしたいところである。

「そうよ! 魔物のせいで私たちのお店がめちゃくちゃに・・・・・・グスッ。」
「泣くなマレル。建て直せばいい。」

「ガッハッハ、そうだな! 命があったんだからもっと喜ばんかい!」
「い、痛いわよガムアさん!」

 ガムア隊長の無遠慮でゴツい手がマレルの背中をバンバンと叩く。

「それで、これからどうするんッスか、ガムア隊長?」
「人数もおるし、もっと広くてしっかりところを拠点にしたいな。心当たりはあるか?」

「アタシらに聞かれてもな・・・・・・。」

 頭を捻る彼らに、手を挙げて答える。

「私の通ってる学校はどうですか?」
「学校か・・・・・・確かに広くて頑丈だが、窓が多いな。守るにしても銃が足りんぞ。」

 店のオヤジさんが冷静に答える。彼の言う通り窓から数で攻められると一溜りもないか・・・・・・。
 守り切れるほどの戦力があれば別だろうが、それだけの戦力は俺から見ても無さそうだ。

「なら、博物館はどうじゃ? そこらの建物より頑丈に出来とるし、窓も少ないぞ。 ちと遠いがの。」

 次に提案してきたのは、古銭を売った時に世話になった古道具屋のお爺さんだった。

「ジイさん、生きてたのか!?」
「勝手に殺すな! それで、どうじゃ?」

「悪くはないが・・・・・・魔力の残りが心もとないな。」
「心配し過ぎだぞバルドー、何とかなるだろ! それに、いつまでもここでジッとしてるわけにもいかんしな。準備を整えたら出発するぞ。」

 ガムア隊長が決めてしまったが、オヤジさんも反論は無いようだ。
 下手にその辺りを建物を拠点にしても、此処の二の舞になってしまうだろう。
 これからの方針は決まったようだが、俺は・・・・・・。

「あの~、私はしばらく別行動しても良いですか?」
「な、なに言ってるんッスか、危ないッスよ! それにアリスちゃんが居なかったら・・・・・・。」

 確かに俺が抜ければ大幅な戦力ダウンになってしまうが、簡単にやられることはないはずだ。

「ゼスタは黙ってろ。何か理由があんのか、アリス?」
「えっと・・・・・・友達の様子を見に行きたくて。」

 彼らなら頼めば一緒に行ってくれるだろうが、俺一人なら素早く動くことが出来る。その早さが明暗を分けることもあるだろう。
 それに、街の様子も調べておきたい。

「そうか。隊長、聞いた通りアリスは別行動だ。良いな?」
「まぁ、嬢ちゃんなら大丈夫だろう。友達んとこ行ってやりな。こっちは大丈夫だからよ。」

「ほ、本当に良いんですか?」
「ガッハッハ! いつまでも嬢ちゃんにおんぶに抱っこってわけにはいかんだろう、なぁカレン!」

「ほら、さっさと行ってきな。心配なんだろ?」
「あ、ありがとうございます! それじゃあ、行ってきます!」

 返事を聞くや、魔力で強化した足で大地を蹴った。
 自分で考えていたよりも気が逸っていたらしい。
 かくして、今度は一人で闇に包まれた街へと飛び出した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

見上げた空は、今日もアオハルなり

木立 花音
青春
 ──私の想いは届かない。私には、気持ちを伝えるための”声”がないから。  幼馴染だった三人の少年少女。広瀬慎吾(ひろせしんご)。渡辺美也(わたなべみや)。阿久津斗哉(あくつとおや)。そして、重度の聴覚障害を抱え他人と上手くうち解けられない少女、桐原悠里(きりはらゆうり)。  四人の恋心が激しく交錯するなか、文化祭の出し物として決まったのは、演劇ロミオとジュリエット。  ところが、文化祭の準備が滞りなく進んでいたある日。突然、ジュリエット役の桐原悠里が学校を休んでしまう。それは、言葉を発しない彼女が出した、初めてのSOSだった。閉ざされた悠里の心の扉をひらくため、今、三人が立ち上がる!  これは──時にはぶつかり時には涙しながらも、卒業までを駆け抜けた四人の青春群像劇。 ※バレンタイン・デイ(ズ)の姉妹作品です。相互にネタバレ要素を含むので、了承願います。 ※表紙画像は、ミカスケ様にリクエストして描いて頂いたフリーイラスト。イメージは、主人公の一人悠里です。

処理中です...