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時間 ①
しおりを挟む「ん……んぅ。」
アンセルの意識が浮上する。
ベッドに横になったまま目を覚ますのは何日目だろうか。
真っ白で清潔なベッドの上で朝となく昼となく、日がな一日アンセルは横になり、一日の大半の時間を過ごしていた。
イスカンダーから監禁を告げられたその日から、アンセルは本当にこの部屋から出る事が出来なくなった。足枷の鎖はずっと外される事はなく、イスカンダーの手によって身体を清潔にされる時しか例外はなかった。
尊い身分のイスカンダーにそんな事をさせる訳にはいかない、と必死にアンセルは濡れた布巾を手に取ろうとしたけれど、もとより体格が違う。
イスカンダーが拒否すればそれは覆す事が出来なかった。
イスカンダーがこの部屋に来る頻度は高くなった。それは同じ建物内というだけが理由でもないだろう。イスカンダーはアンセルから目を離す事が出来なかった。
ほんの少し目を離した隙に腕の中からいなくなった出来事が未だ脳裏に焼き付いている。
いつも手が届く場所にアンセルを置いておかないと不安でしかたがない。
一番安全だと思うのは自分の傍ではあったが、自身の立場上ずっとアンセルと共に部屋に籠っているわけにはいかなかった。
妥協案としてイスカンダーの私室に監禁する事で、少しの安寧を得たのだ。
目覚めたアンセルの身体には濃い情交の痕が残っている。
何度も何度も執拗に吸い付いてアンセルの肌に痕を付ける。
アンセルが良い声で鳴く場所は鮮やかな赤を通り越して今や濃い紫に変わっている。
それこそ頭の先から足の先まで。
イスカンダーの口づけが届いてない場所は見当たらなかった。
イスカンダーのしつこい求めをアンセルは甘んじて受け入れた。
求められる事はアンセルにとって喜びであり、決して辛い責め苦ではなかったからだ。
寝ても覚めても傍らにイスカンダーの気配を感じた。
自分がイスカンダーにとって特別で大切な存在であるかのように感じる。そんな事あり得ないと思っていたが、夢を見るのは自由とばかりに、アンセルは自分がイスカンダーに愛されていると想像して幸せな時間を過ごした。
反面、イスカンダーの表情は晴れなかった。
この監禁がアンセルの意思など無視した行為だと理解していたからだ。
内心でアンセルが喜んでいるとは思いつきもしなかった。
「アンセル、お前は私の傍にいるのだ。」
「はい、イスカンダーさま。」
呪文のように繰り返される言葉に同じように返事を返す。
イスカンダーが望む事ならば、それはアンセルにとっても同じ望みなのだ。
「僕、イスカンダーさまのお傍に居ります。あなたが望むのならずっと、ずっとです。」
「それが真実だと、どう証明するのだ?お前がずっと私の傍にい続ける保証など、何処にもないのに。」
「僕は嘘など申しません。絶対にイスカンダー様のお傍を離れたりしません。信じて下さい。」
「ああ、それが信じられたらいいのに……。」
何度傍にいると訴えても、イスカンダーの心には届かなかった。
むしろ、これほど傍にいると伝えるのは、私の信用を得て隙を見てこの部屋から出ていくためではないか、と疑心
暗鬼に陥った。
「許さんっ、許さんぞっ。」
イスカンダーの瞳はギラギラと怒りの炎に燃え、アンセルの手足をベッドの四方に括りつけ、身動き取れないようにした。
乱れた夜着からはアンセルの白い肌がチラチラと垣間見え、連日の行為で敏感になった肌がイスカンダーの強い視線を感じて興奮に姿を変えているのが見える。
「なんだ、反応しているな。まだ触れてもいないのに……アンセル、こんな身体では外に出られないな。」
イスカンダーはそう言うと、ツ―――と臍の辺りから胸へと指を這わす。
感覚は鋭敏になり、思わず腰が引けた。
そんなアンセルの反応を見て口元に笑みを浮かべ、イスカンダーは胸の突起をピンと弾いた。
「あぅっ。」
尖った乳首はいともたやすく捉えられ、イスカンダーの思うままに揉まれ、弄られる。
摘まんでは扱いたり、乳輪をクルリと優しくなぞられたり。
一つ一つの動作にアンセルはピクリ、ピクリと身体が跳ねた。
「どうした、アンセル。こんなにして。」
意地の悪い顔でイスカンダーは胸に顔を寄せた。
身動きの取れない状態で、イスカンダーの動きが目に入る。
肉厚の唇に自分の尖り切った乳首の先端が含まれていくのをドキドキしながら見つめ続けた。
「うぅんっ。」
イスカンダーはちゅぅっと音を立てて乳首に吸い付くと口の中で育てるように扱き上げた。
「あぅ、うんっ、んっ。」
ビクン、ビクン、と身体が動いて背を弓なりに反らせてしまう。
自ずと胸元をイスカンダーの口に押し付けるようになってしまった。
「ああ、アンセル。気持ちいいんだな。」
アンセルの姿にイスカンダーの機嫌は良くなり手付きも優しくなる。
胸、臍、脚、イスカンダーの手は少しずつアンセルの快感を高めていく。
「ああ、イスカンダー様……イスカンダー様……僕はいつもお側にいます。んっ、」
「アンセルっ、アンセルっ。」
次第に深くなるイスカンダーからの愛撫に、言葉を乗せてアンセルはイスカンダーの身体を抱きしめた。
イスカンダーからの執着がアンセルには心地よく。
それでも、今以上を望んでは罰が当たるとも思える。
イスカンダーの心を求める事は、アンセルには恐れ多い事であった。
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