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誤算 ②
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「た、太陽って何なんですか?」
「獣人にとって命と同じ存在のものです。身の内に取り込んでもそれでも足りない。それほど特別な存在というものです。」
そう言えば……。
以前イスカンダーから『太陽』に触れていいか、と聞かれた事がある。
あの時の『太陽』がエドマンドの言う『太陽』であるならば、それはつまり……。
あの時、自分は何をイスカンダーに伝えただろう。
確か、空にある『太陽』に触れることは叶わない、とそう伝えなかっただろうか。
ああっ、だから。
アンセルは自分が言った言葉の意味に気付いた。
だからあの時、イスカンダーの瞳は狂おしい色に染まったのか。
激しく求めた自らの『太陽』に拒絶されたと思ったから……。
だから逃がさないと力で屈する方法を選んだのか。
アンセルはあの時のイスカンダーの恐ろしい姿を思い出し、その情熱がアンセルに逃げられると思われるその恐怖から生まれたものだと理解した。
「あ、ああっ、ぼ、僕っ……。」
「アンセル様、イスカンダー様はあなた様を失う事が何よりも恐ろしいのです。もし、仮にあなた様がイスカンダー様の前から消え失せてしまえば……きっとあの方は正気を失ってしまうでしょう。それ程獣人にとっての『太陽』というものは重く、自分の命と等しい存在なのです。」
エドマンドの言葉は部屋の隅々まで広がってその重みで床に降り積もったように思えた。
「そ、そ、な。」
言葉が出て来ない。
自分の存在がその『太陽』だと信じられない。
それに、もし自分がイスカンダーの命と同じぐらい大切な存在だというのが事実だとしたら……。
そんな大それたものが自分だなんて、イスカンダーに申し訳ない。
アンセルは混乱し、それでも何とかエドマンドの言葉を理解しようと努力した。
「も、もし僕がその『太陽』だと、して。僕がそ、それをじ、辞退したら。」
「アンセル様。ご自分の意思とは関係ないのです。本能が『太陽』を求め、焦がれ、慈しむのです。」
アンセルはどうしたらいいのか分からなくなった。
イスカンダーに対する愛情はまだ気付いたばかりで、イスカンダーがアンセルに向ける思いと同じ大きさだとは思えない。
「ぼ、僕もイスカンダー様をお慕いしています。でも、イスカンダー様はソーンヴェル家のご当主。僕なんかがお側にいていい存在ではないと……。」
「いえ、アンセル様。あなた様は人間でいらっしゃる。人間は性の区別なく子を為すことが可能です。それだけでもアンセル様の身は尊い。そして心から望む『太陽』との間には奇跡が起こると言われております。ならばどなたであってもアンセル様を蔑ろにする事など出来ないのです。」
エドマンドはそう言うと改めてアンセルの前で頭を下げた。
「アンセル様、どうぞイスカンダー様の『太陽』としてこの屋敷に残って下さいますよう私からもお願い申し上げます。」
エドマンドの姿にアンセルは言葉を飲み込んだ。
アンセルとてイスカンダーの傍を離れたいと思っているわけではない。
もしエドマンドの言うように、自分がイスカンダーにとっての唯一無二の存在であるならばずっとそばにいたいと思う。
ただ、初めて知った情報が多すぎて、自分の気持ちを理解できない。
もっとじっくり噛み砕いて自分の気持ちを整理したい。
「エドマンドさん。」
「はい。」
「僕、少し1人になりたいです。でも勝手にいなくなったりしません。イスカンダー様のおそばにいたい気持ちは嘘じゃないですから。ただ、少し……本当に少しだけ自分と向き合いたいんです。」
エドマンドはアンセルの言葉を聞いて少し考え、
「分かりました。それでは温室へ参りましょう。花を見に行くと伝言を残せばイスカンダー様も安心なさるでしょう。」
そう言って穏やかに笑った。
「さぁ、私が付き添います。イスカンダー様の為にも私が適任でしょう。」
エドマンドの言葉にアンセルの顔にも穏やかな笑顔が浮かんだ。
「獣人にとって命と同じ存在のものです。身の内に取り込んでもそれでも足りない。それほど特別な存在というものです。」
そう言えば……。
以前イスカンダーから『太陽』に触れていいか、と聞かれた事がある。
あの時の『太陽』がエドマンドの言う『太陽』であるならば、それはつまり……。
あの時、自分は何をイスカンダーに伝えただろう。
確か、空にある『太陽』に触れることは叶わない、とそう伝えなかっただろうか。
ああっ、だから。
アンセルは自分が言った言葉の意味に気付いた。
だからあの時、イスカンダーの瞳は狂おしい色に染まったのか。
激しく求めた自らの『太陽』に拒絶されたと思ったから……。
だから逃がさないと力で屈する方法を選んだのか。
アンセルはあの時のイスカンダーの恐ろしい姿を思い出し、その情熱がアンセルに逃げられると思われるその恐怖から生まれたものだと理解した。
「あ、ああっ、ぼ、僕っ……。」
「アンセル様、イスカンダー様はあなた様を失う事が何よりも恐ろしいのです。もし、仮にあなた様がイスカンダー様の前から消え失せてしまえば……きっとあの方は正気を失ってしまうでしょう。それ程獣人にとっての『太陽』というものは重く、自分の命と等しい存在なのです。」
エドマンドの言葉は部屋の隅々まで広がってその重みで床に降り積もったように思えた。
「そ、そ、な。」
言葉が出て来ない。
自分の存在がその『太陽』だと信じられない。
それに、もし自分がイスカンダーの命と同じぐらい大切な存在だというのが事実だとしたら……。
そんな大それたものが自分だなんて、イスカンダーに申し訳ない。
アンセルは混乱し、それでも何とかエドマンドの言葉を理解しようと努力した。
「も、もし僕がその『太陽』だと、して。僕がそ、それをじ、辞退したら。」
「アンセル様。ご自分の意思とは関係ないのです。本能が『太陽』を求め、焦がれ、慈しむのです。」
アンセルはどうしたらいいのか分からなくなった。
イスカンダーに対する愛情はまだ気付いたばかりで、イスカンダーがアンセルに向ける思いと同じ大きさだとは思えない。
「ぼ、僕もイスカンダー様をお慕いしています。でも、イスカンダー様はソーンヴェル家のご当主。僕なんかがお側にいていい存在ではないと……。」
「いえ、アンセル様。あなた様は人間でいらっしゃる。人間は性の区別なく子を為すことが可能です。それだけでもアンセル様の身は尊い。そして心から望む『太陽』との間には奇跡が起こると言われております。ならばどなたであってもアンセル様を蔑ろにする事など出来ないのです。」
エドマンドはそう言うと改めてアンセルの前で頭を下げた。
「アンセル様、どうぞイスカンダー様の『太陽』としてこの屋敷に残って下さいますよう私からもお願い申し上げます。」
エドマンドの姿にアンセルは言葉を飲み込んだ。
アンセルとてイスカンダーの傍を離れたいと思っているわけではない。
もしエドマンドの言うように、自分がイスカンダーにとっての唯一無二の存在であるならばずっとそばにいたいと思う。
ただ、初めて知った情報が多すぎて、自分の気持ちを理解できない。
もっとじっくり噛み砕いて自分の気持ちを整理したい。
「エドマンドさん。」
「はい。」
「僕、少し1人になりたいです。でも勝手にいなくなったりしません。イスカンダー様のおそばにいたい気持ちは嘘じゃないですから。ただ、少し……本当に少しだけ自分と向き合いたいんです。」
エドマンドはアンセルの言葉を聞いて少し考え、
「分かりました。それでは温室へ参りましょう。花を見に行くと伝言を残せばイスカンダー様も安心なさるでしょう。」
そう言って穏やかに笑った。
「さぁ、私が付き添います。イスカンダー様の為にも私が適任でしょう。」
エドマンドの言葉にアンセルの顔にも穏やかな笑顔が浮かんだ。
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