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突如、現れる
高校まで、徒歩、自転車、バス、と電車以外の交通手段でいける距離。
そうつまり、俺の家は微妙な位置にあり、割と学校からは遠い場所に建っていた。
いっそ電車通学が可能なぐらい遠い所なら、俺も選択肢が限られていたから楽だったのに。
選ぶ項目が増えるといつも迷う。
ハルカは優柔不断な男だった。
「ハルカ、今日は何で行くんだ?」
「んっと、タイガは自転車で来たのか?(じゃ、自転車以外の選択肢を・・・)」
「ん~にゃ、今日はバスで行こうと思ってたから歩いてきた。」
歩いてきたって俺と正反対の場所に住んでるのに朝何時に家を出たんだ。
俺はタイガの行動力に感心すると共にそんな事までしてもらう筋合いもないので、ちょっと引いてしまう。
「お前、俺の家に迎えに来たりしないで、そのまま学校行けばいいだろう。手間も時間も勿体ない。」
「何をおっしゃる。ハルカの送り迎えは大事な事だぞ。むしろ、一人でなんか行かせられないだろう。絶対襲われる!」
タイガが言う意味は理解不能だが、俺の送り迎えは本当に必要ない。
俺は幼稚園児でもないし。
ましてや襲われて泣き寝入りしてしまうか弱い女子でもないんだ。
確かに体つきは華奢で身長も低いが、立派な男子高校生。
痴漢にも立ち向かえる。
タイガだって痴漢と同じようなもんだけど。
「俺は女の子じゃないから守ってもらわなくても大丈夫だ。一人で学校ぐらい行けるし。明日から一人で行けばいいだろ。」
少し突き放したように言うと、タイガはちょっと考えて・・・
「よし、じゃ、今日はバスで行くから丁度いい。もし、ハルカが危ないめにあっても一人で問題を対処できるって証明してくれれば俺も送り迎えを考えてやってもいいぜ。」
と言った。
タイガの機嫌の良さそうな顔を見て、不審に思えばよかったんだ。
それなのに、俺はやっとタイガから解放される!とそればかり思っていて、タイガのニヤリと笑った口元を見なかった。
それが俺の敗因だ・・・。
バスはちょうど通勤、通学時間の真っ最中。
俺たちの高校以外の学生も、会社へ向かうOLやサラリーマンのおじさんもたくさん乗っていて、ああ、これが嫌なんだよなってゲンナリした。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれたバスの中。
俺は吊り金具に手が届かない。
いや、最初は届いていたんだけど、人がどんどん乗ってきて流されて流されて。
結局その勢いに押されるままに通路の真ん中の辺りで人の輪に埋もれている。
「ん?」
最初は気のせいだと思った。
こんなキツキツの状態だし、バスが信号のたびにブレーキを踏んだり、右や左に曲がるたびにバスが揺れるからその振動なのかな、と。
でもある時ギュッと握られたんだ。
そう、握られた!俺のナニが!
一瞬だったし、すぐに離れていったけど。
それでも他人の手が俺のものを握った感覚があった。
そしたら途端に気になって。
今まで感じた違和感がブワッと鮮明になってきて。
俺は痴漢されていることに思い至った。
尻をソウっと撫でられ、服の上から輪郭を確かめるように下の方から持ち上げられる。
お椀の上に置かれた餅のような感じで手の平に俺の尻っぺたが置かれた状態って言えばいいのか。
ぷるぷるとその弾力を味わっているかのように揺さぶられ、その振動が伝わる。
最初、犯人はどうぜタイガだろうと思った。
馬鹿野郎、公衆の面前で、本当に痴漢するなんてって気持ちにもなった。
俺にそんなセクハラを仕掛けてくる奴なんてそうそういないと思ったから。
なのに気付いたらタイガは俺の隣にはいなくて。
じゃ、後ろか、と思ったら俺の斜め前辺りに立っていて。
位置的にもこの痴漢はタイガではありえない。
そう思ったら、一気にぞわぞわとした感覚がせり上がり、周りに知られたくない恥辱感や、男なのに痴漢に遭ってる劣等感。
誰か知らないやつに触られている嫌悪感が浮かんできてどうしようもない。
「やっ・・・。」
思わず小さな声が出た。
周りに気付かれたくないって思いが出したSOS。
赤の他人がいいように俺の身体に手を這わせる。
周りに大勢の人がいようと関係なしに大胆に触れてくる。
そんな奴が真っ当な人間であるはずがない。
もし、俺が暴れたら、刃物なんかそいつが持ってたら、俺以外の人間もケガをする。
もし、大声を出したら、身体を傷つけられるかもしれない。
そんな想像をしたら、もう怖くて怖くて、身体が震えだす。
どうしよう、どうしよう。どうしたらいいんだろう。
そう思っていたら、急にグイッと身体を引かれた。
バスが左に曲がる所で、スムーズにその流れに乗った俺の身体はすんなりと動いて、誰かの身体にぶつかった。
「ほい、ここなら安全。ハルカ大丈夫か?」
ぶつかってすぐにタイガの身体に包まれる。
おかしい、これじゃ抱き合ってるみたいだ。
そう思うのに、さっきの痴漢に遭っていた時の嫌悪感とか恐怖心とか、そんな負の感情が全く浮かんでこない。
清潔な制汗剤の香りがタイガから漂ってきて、俺は何だかドキドキとなる心臓の音を聞きながら、そのままタイガの腕の中に納まっていた。
そうつまり、俺の家は微妙な位置にあり、割と学校からは遠い場所に建っていた。
いっそ電車通学が可能なぐらい遠い所なら、俺も選択肢が限られていたから楽だったのに。
選ぶ項目が増えるといつも迷う。
ハルカは優柔不断な男だった。
「ハルカ、今日は何で行くんだ?」
「んっと、タイガは自転車で来たのか?(じゃ、自転車以外の選択肢を・・・)」
「ん~にゃ、今日はバスで行こうと思ってたから歩いてきた。」
歩いてきたって俺と正反対の場所に住んでるのに朝何時に家を出たんだ。
俺はタイガの行動力に感心すると共にそんな事までしてもらう筋合いもないので、ちょっと引いてしまう。
「お前、俺の家に迎えに来たりしないで、そのまま学校行けばいいだろう。手間も時間も勿体ない。」
「何をおっしゃる。ハルカの送り迎えは大事な事だぞ。むしろ、一人でなんか行かせられないだろう。絶対襲われる!」
タイガが言う意味は理解不能だが、俺の送り迎えは本当に必要ない。
俺は幼稚園児でもないし。
ましてや襲われて泣き寝入りしてしまうか弱い女子でもないんだ。
確かに体つきは華奢で身長も低いが、立派な男子高校生。
痴漢にも立ち向かえる。
タイガだって痴漢と同じようなもんだけど。
「俺は女の子じゃないから守ってもらわなくても大丈夫だ。一人で学校ぐらい行けるし。明日から一人で行けばいいだろ。」
少し突き放したように言うと、タイガはちょっと考えて・・・
「よし、じゃ、今日はバスで行くから丁度いい。もし、ハルカが危ないめにあっても一人で問題を対処できるって証明してくれれば俺も送り迎えを考えてやってもいいぜ。」
と言った。
タイガの機嫌の良さそうな顔を見て、不審に思えばよかったんだ。
それなのに、俺はやっとタイガから解放される!とそればかり思っていて、タイガのニヤリと笑った口元を見なかった。
それが俺の敗因だ・・・。
バスはちょうど通勤、通学時間の真っ最中。
俺たちの高校以外の学生も、会社へ向かうOLやサラリーマンのおじさんもたくさん乗っていて、ああ、これが嫌なんだよなってゲンナリした。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれたバスの中。
俺は吊り金具に手が届かない。
いや、最初は届いていたんだけど、人がどんどん乗ってきて流されて流されて。
結局その勢いに押されるままに通路の真ん中の辺りで人の輪に埋もれている。
「ん?」
最初は気のせいだと思った。
こんなキツキツの状態だし、バスが信号のたびにブレーキを踏んだり、右や左に曲がるたびにバスが揺れるからその振動なのかな、と。
でもある時ギュッと握られたんだ。
そう、握られた!俺のナニが!
一瞬だったし、すぐに離れていったけど。
それでも他人の手が俺のものを握った感覚があった。
そしたら途端に気になって。
今まで感じた違和感がブワッと鮮明になってきて。
俺は痴漢されていることに思い至った。
尻をソウっと撫でられ、服の上から輪郭を確かめるように下の方から持ち上げられる。
お椀の上に置かれた餅のような感じで手の平に俺の尻っぺたが置かれた状態って言えばいいのか。
ぷるぷるとその弾力を味わっているかのように揺さぶられ、その振動が伝わる。
最初、犯人はどうぜタイガだろうと思った。
馬鹿野郎、公衆の面前で、本当に痴漢するなんてって気持ちにもなった。
俺にそんなセクハラを仕掛けてくる奴なんてそうそういないと思ったから。
なのに気付いたらタイガは俺の隣にはいなくて。
じゃ、後ろか、と思ったら俺の斜め前辺りに立っていて。
位置的にもこの痴漢はタイガではありえない。
そう思ったら、一気にぞわぞわとした感覚がせり上がり、周りに知られたくない恥辱感や、男なのに痴漢に遭ってる劣等感。
誰か知らないやつに触られている嫌悪感が浮かんできてどうしようもない。
「やっ・・・。」
思わず小さな声が出た。
周りに気付かれたくないって思いが出したSOS。
赤の他人がいいように俺の身体に手を這わせる。
周りに大勢の人がいようと関係なしに大胆に触れてくる。
そんな奴が真っ当な人間であるはずがない。
もし、俺が暴れたら、刃物なんかそいつが持ってたら、俺以外の人間もケガをする。
もし、大声を出したら、身体を傷つけられるかもしれない。
そんな想像をしたら、もう怖くて怖くて、身体が震えだす。
どうしよう、どうしよう。どうしたらいいんだろう。
そう思っていたら、急にグイッと身体を引かれた。
バスが左に曲がる所で、スムーズにその流れに乗った俺の身体はすんなりと動いて、誰かの身体にぶつかった。
「ほい、ここなら安全。ハルカ大丈夫か?」
ぶつかってすぐにタイガの身体に包まれる。
おかしい、これじゃ抱き合ってるみたいだ。
そう思うのに、さっきの痴漢に遭っていた時の嫌悪感とか恐怖心とか、そんな負の感情が全く浮かんでこない。
清潔な制汗剤の香りがタイガから漂ってきて、俺は何だかドキドキとなる心臓の音を聞きながら、そのままタイガの腕の中に納まっていた。
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