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流された実感はある。

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「ん~、今日も可愛いな、ハルカは。」

その声に俺が目を覚まして、真っ先に飛び込んできたものは視覚の暴力とでもいうだろうか。
タイガの逞しい胸筋と鍛えまくって割れてる腹筋と、そしてデロデロな顔で俺を見ている普段ならイケメンなタイガの崩れた顔だった。

「起きたか~ハルカ♡」

それはもう目じりを下げて、俺を見てニコニコしているタイガを見て、俺は昨日タイガとえっちしてしまった事を想い出した。流された感満載だったけど、あんなに好き好き言ってくれるタイガに絆されたんだろうなぁと思う。

散々逃げ回っていて、今さらタイガと恋人同士になりました、なんてちょっと恥ずかしい事ではあるんだろうけど。
でも、周りが煽りに煽った結果でもあるからそこは開き直っちゃってもいいかな、と思う。

「んっ、タイガ、おはよう。」
「ああっ、おはようっ。ハルカが俺の名前を呼んで、俺のベッドで目を覚ますだなんて。今日は記念日だな。お祝いしないとなっ。」
「いやいや、何考えてんのっ。そんな世間サマに宣言するような事しなくていいからっ。」

全力で止めた。
それこそ必死になって。
だって周りに公言するって事だろ。
『昨日タイガとえっちしました~~~』って。
そんな恥知らずな事出来っこない。

そもそも何であんな事になったんだ。
痴漢から助けてくれたタイガの頼りがいのある態度や、俺にだけ傾けてくれる愛情にうっかり・・・そう、うっかりと「いいかな」なんて思っちゃったんだ。

今思うと赤面モノだし、押し倒されて流されて、結局良いように美味しくいただかれちゃったんじゃないのかっても思うんだけど。

それでも、最後の一線を越えないでくれたタイガに少しだけ感謝する。
あのままなし崩しみたいに最後までえっちしていたら俺、結局タイガの事心から信頼出来なくなっちゃうんじゃないかと思ったから。

タイガの気持ちに絆されるのはしょうがなくても、やっぱり自分もタイガの事が好きって思えるようになってから最後の一線は越えたいじゃん。
って思考が乙女で恥ずいんだけど。

でも同性だし、男女よりもずっと好きでい続ける事が難しいんじゃないかと思う。
なら、自分の気持ちが揺らがないぐらいタイガの事好きになりたい。

どっぷり深みにはまり込んで、結局抜け出せなくなって、捨てられて、とーーーっても落ち込んで死んでしまいそうになっても。
それが自分が好きになった結果なら、何となく納得もいくんじゃないか、とか思うんだよね。

まぁ、頭の中で考えている事だから実際にそうなった場合・・・・・・。

やめやめっ。
起きてもない事を想像するなんて愚の骨頂。
今は取り合えず起きて学校に行く!
毎日のルーティーンを変えないで過ごす!
それが一番気持ち的に落ち着く事だよね。

そう思って隣でマテ待ちしていたタイガに声を掛ける。

「タイガ、今何時?」
「ん~俺のハルカ♡今は七時だよ。」
「えっ、もうそんな時間なのっ。起きて学校行かなくちゃ。」

”俺の~”発言をスルーしてタイガを促せば、ハーハーと鼻息の荒いタイガが腰を浮かす所だった。

やばっ

俺は咄嗟に枕をタイガに投げつけてベッドから飛び起きて洗面所へ向かう。
昨日教えてもらったから場所はバッチリだ。

「もうっ、朝からダメだからなっ。顔洗ってくるっ。」

タイガが追ってこない事に、割とあっさり引き下がったな、と首を捻りながら洗面所へ向かった俺は、
ノーパンにタイガのTシャツを引っ掛けただけという尻隠さず状態なことに気付きもしなかった。

俺の後ろ姿を見ながら、タイガがその名の如く虎のような獰猛な目つきで俺を見て、ペロリと舌なめずりをする姿をみていたら、きっとそのまま何としてでも家に帰って引きこもっただろうに。

ある意味、その姿を見なかった俺は幸運だったんだろう。

もう決して逃れられないタイガの獲物としてロックオンされていたのだから。

俺が何を思っていたとしても関係なかったのだ、と気付いたのは、タイガの箍が外れて俺が頭から喰われたその時だったけれど。

今はまだタイガの気まぐれで長ーい首輪をつけられたまま放し飼いにされている俺だった。
あー早く気付けば良かったのになぁ・・・。


***

「あーあ、あんなに焦っちゃって。」

クスリと笑いが漏れる。

俺のぶかぶかのTシャツを素肌に着たハルカがパタパタと洗面所へ向かって小走りで走って行った。
Tシャツの裾から伸びるすらりとした脚はツルツルすべすべで同じ性だとは思えない。

昨日はあの滑らかな脚に触って、ハルカと俺のペニスを一緒に擦って出してやった。

気を失うように意識を飛ばしたハルカに、もっともっと先へ進みたかった俺はそのまま奪ってしまおうかと思ったのだが、ハジメテが意識のない状態ってのはあまりにも可哀想かと思いとどまった。

もちろん、一回出しただけじゃ物足りなくて、ちょうど飛び散ったハルカと俺の精液を潤滑剤にしてハルカの後ろの蕾も念入りに弄ってやった。

くふん、と鼻を鳴らすような声を上げて、俺の指が出し入れするたびに小刻みに吐息を漏らすハルカの痴態に俺は燃えに燃え、自分の左手で擦っては出し、しまいにはあまりに治まる気配がないからハルカの脚をぎゅっと揃えて、いわゆる素股をしてしまった。

ゴリゴリと俺のペニスと健気に勃起していたハルカのペニスが何度も擦れ、ハルカの腹に飛び散った精液がぬちゃぬちゃと音を立ててそれはエロくて気持ち良かった。

抉るようにハルカの竿や双珠を俺のペニスで嬲り、散々弄り倒して意識のないままもう一度果てたハルカの姿をおかずにして俺もまた気持ち良く果てた後は、ハルカを抱えたまま風呂に入り、身体を綺麗にしてベッドに運び、後ろから抱き込んで寝た。

すっぽりと腕の中に入り込むハルカの身体と温かな体温、そして適度な運動に、俺もあっという間に眠りについてしまい気付いたらもう朝だった。

こんなに熟睡した事などここ最近なかったな、とビックリしつつ。
腕の中でスピースピーと寝息をたててるハルカの寝顔を飽きずに眺めていた。

愛しいってこんな気持ちなんだな、と柄にもなくセンチな気持ちになっていたけどその内ハルカの瞼がピクピクと動き、大きな瞳が俺を見つめた。

すぐにキスしたかったさ。
もう、口の中舐めまわして、俺の唾液を注ぎ込んで。
身体中まさぐって、朝から快感に酔わしてやりたかったけど。

起きた途端、見えないバリアを張られたのがわかったからそこは引いてみたって訳。

昨日の様子じゃ俺の事、そんなに嫌いじゃないみたいだし。
無理矢理奪わなかったのがハルカにとって高得点だったのも分かったから。

今はまだ、この手に自分から落ちてくるまでゆっくりと。
嬲るように甚振るように。
何処にも逃げ場のなくなるように愛して愛して、愛しつくしてやろうと思う。

首に巻かれた鎖が見えるようになったら、その時こそ俺が奪いつくしてやるよ、と。
バスルームから微かに聞こえるシャワーの音をBGMに、俺はニヤリと笑みを零した。
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