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おまけ
リベンジ
しおりを挟む夏祭りのリベンジではないけれど、周と僕は秋祭りに出掛けることにした。
この前みたいにすれ違う事のないように注意して。
練習終わりの周と待ち合わせをしている。
バレー部はやっぱり今日も部活があって、僕のバドミントン部とは雲泥の差。
今日は練習休もうか?と聞かれたけれど、それも何だか違うよな、と僕は首を横に振った。
「大丈夫。今日は練習試合で遠征しているわけじゃないし、学校だよね。そんな離れてないし会えるって。」
もし遅れそうなら連絡して、と伝えて練習に送り出した。
渋々という言葉を顔に載せながら、周は部活へ向かって行った。
時間は遅々として進まない。
それでもスマホでゲームをして時間を潰したり、夕飯の用意を手伝ったりと何とか時間までやり過ごす。
リベンジだからという訳ではなかったけれど、絶対すれ違いたくなかった僕は練習終わりに学校まで周を迎えに行くことにした。
どうしてここに?と驚く周の顔が見たかったのが一つと。
少しでも早く周に会いたくて、少しでも長く周と一緒にいたいと思ったのが迎えに行く理由だった。
「あれ、大礼じゃん。」
周以外には見つからないようにしていたのに、何故か直ぐに見つかった。
不思議なことに文化部の駒瀬くんが学校にいる。
「あれ、何でいるの?何かあったん?」
見知った顔についふらふらと出て行って駒瀬くんの前に躍り出た。
何か問題でもあったのか、と心配になったけれど、目の前の駒瀬くんはそんな焦ったような顔つきじゃなく、いつものように飄々とした態度だったので安心した。
「あー、ちょっと先生に頼まれもの。今度文化祭あるだろ。その打ち合わせ。」
文化祭シーズンはもうすぐで、僕のクラスも何をやるかで揉めていた。
クラス委員でもある駒瀬くんは責任も重くて大変だな、なんて丸っきり他人事のように思っていた。
「お疲れさま。本当、駒瀬くんは働き者だね。」
「よせやい、褒めたって何も出やしねぇ。」
江戸っ子みたいな切り返しで笑った駒瀬くんは、僕の格好を目に留めると、面白そうに笑った。
「もしかして秋祭りか?似合うじゃん、浴衣。」
「や、やめてよ。」
普段着で行こうと思っていたのに、秋祭りに行くと知った母が僕に無理やり浴衣を着せてきた。
周以外に見られたくなかったのはこの所為だ。
童顔が浴衣を着ると三割増しで幼く見えるのだ。
反対に周は浴衣を着ると三割増しで大人っぽく見える。
素材の違いね、と母には言われる。
「う~~ん、いいねぇ。お祭り浴衣、屋台に浴衣、うんうん良い、良い。」
謎の調子でそう言うと、駒瀬くんは僕の頭をポンポンと撫でた。
ほら、やっぱり年下みたいに扱われる。
ちょっと仏腐れて頬を膨らませた所で、駒瀬くんの後ろから足早にこっちに向かってくる周が見えた。
「あっ、周!」
「大礼っ。お前どうした?学校まで。」
「驚いた?今日はすれ違いたくなかったからさ、お迎えにきました。」
そう言って敬礼したら周と駒瀬くんの視線が絡まって、僕はすぐさま周にその場から連れ去られた。
「じゃ~な~大礼、周。また来週~。」
呑気な駒瀬くんの姿に僕は小さく手を振った。
*
「周っ、あれ、あれっ。あそこの焼きそば屋さんのが量多そうっ。」
「ね、あっちのは?りんご飴だけじゃなくていちご飴とかあった。透子のお土産どっちがいいかな?」
僕が話しかけても、周はほとんど返事を返さない。
僕が学校に行ったから、周は機嫌を損ねたのかも知れない。
夏祭りリベンジのはずだったけど、今日もリベンジならず、になってしまうかもしれない。
どうして周が怒っているのか、僕には分からず次第に周から遅れ始める。周りは大勢の人でごった返していて、一度はぐれると厄介だ。
こんな時間を過ごしたかったわけじゃないのに。最初から待ち合わせの場所で大人しく周を待っていたら良かったのかな、と数時間前の自分に教えてやりたい。
トボトボと歩みが遅くなって、視線を上げられなかった僕は前から来る人にぶつかってしまった。
「あっ」
衝撃が強すぎてそのまま道に倒れ込みそうになった時、グイっと腕を引かれて身体を起こされる。
「大礼っ。」
周が少し焦ったような顔で僕を呼んだ。
「悪いっ、見失った。」
周の姿を見ただけで僕の気持ちは落ち着いてくる。ああ、僕を置いていった訳じゃないんだって気付いて安心した。
「うん、大丈夫。良かった見つけてくれて。」
そう言って周に笑ったら、バツの悪い顔をして周は僕を人混みの少ない道の外れに連れて行った。
「周、どうしたの?」
どうしてこんな場所に?と思って周を見上げると、周は眉を下げて、僕に頭を下げた。
「ごめんっ。態度悪くて。大礼を嫌な気持ちにさせたよな。本当にごめん。」
「え、う、うん。もう、機嫌悪くない?僕が周を迎えになんて行ったからだよね。僕の方こそごめん。」
そう言うと、周は弾かれたように身体を起こして僕に詰め寄った。
「そうじゃない。大礼の所為じゃなんだ、俺が機嫌悪かったのは。」
「違うの?僕の所為じゃない?」
「ああ、大礼の所為なんかじゃないよ。あれは俺がわるかったんだ。」
物凄く言いにくそうに理由を教えてくれた。
「あれはさ……その……嫉妬、嫉妬したんだよっ。」
「へ?嫉妬?何に?誰に?」
「駒瀬と話してただろう。それもそんな可愛い格好でさ。俺より先に浴衣姿を見たのも悔しいのに、楽しそうに2人で話してるのも腹が立ったんだよ。」
ええっ、周が嫉妬するなんてそんな事思ってもみなかった。
驚きに言葉を無くしていると、
「それに…俺を迎えに来てくれるとか…何それ、可愛いって思ったら、もう照れくさくてさ。ちょっと大礼の顔が見れなかったんだ。でもそれで大礼に怪我させそうになるとか、俺って駄目だな。」
そっか、僕が迎えに行った事、嬉しかったんだ。と思ったら胸の中がほんわりと温かくなった。
「だからごめんな。折角夏祭りのリベンジって言ってたのに。」
「ううん、もういいんだ。もう謝らないでよ。それに、また秋祭り終わってないよ?」
そう言うと、周は僕の手に何かを差し出した。
「おめん?」
どうして?と聞くよりも先に、僕の顔の前にお面を寄せて、周はお面に隠れて僕にキスをした。
「今日は雨じゃないから。傘の代わり、な。」
不意打ちに嬉しそうに笑った周が本当に楽しそうだったから、僕も一緒になって笑った。
さぁ、と差し出された手を取って、僕たちは温かな提灯の灯りに向かって歩いて行く。
まだ秋祭りは終わらない―――。
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