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3.この部長、鬼教官である。
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全社員合同年始総会が終わり、私は自分の部署へと向かった。
勤続4年目に突入した私もある意味新人なのか、よく見かける他部署の上司とすれ違う際にこう言われたのだ。
「キミ、新入社員説明会は3階の大会議室だよ。今すぐ移動したまえ」
よく見かけるのよ? 社員食堂でご一緒したこともあるのよ?
カラ返事をしてこの場をやり過ごし、私は第一営業部の広報宣伝課の前に着いた。ドアノブに手を掛けた瞬間、握る私の手に重なるように、もう一つの手が置かれた。
あっ、この綺麗な爪は――
「やぁやぁ新人くん。また一緒になったねぇ!」
「……千春」
入社から同じ部署だった千春も、今回私と同じ部署に異動となっていた。たった3年務めただけで人事異動というのも、良くあることなのかは私は知らない。ただ、千春と一緒なおかげで私は内心ほっとしていた。
「あなたもここでは新人でしょ……」
「あっはっはー!」
ドアを開けて中に入ると、まるで小説家のように書類が山積みになっている机が沢山並んでいた。ネームプレートが置かれた綺麗な机は私たちのものだろう。整理整頓され、上にはパソコンが一台置かれているだけだった。
「おっ、来たな」
スラっとした身長の、割とがっちりとした身体の中年男性が私たちに声を掛けた。立った席の位置からして、私たちの上司であることが分かった。
良く見ると、新入社員であろう若い男性が二人、上司の近くに立っていた。
その上司はパンパンッと手を叩き、皆の注目を集めさせた。
「よし、みんな一旦作業を止めて集まってくれ!」
部屋の前方、上司の机の周りに部署員が集まる。
「今日からこの部署に入る新入社員が二名、異動してきた二名を紹介する。先に言っておこう、私がキミ達の上長である栗山健生だ。この広報宣伝部の部長だ、宜しくな」
挨拶をする部長の方を向いて一礼し、新入社員の二人から順に挨拶をする。この並びからすると、私の出番は若い彼らの次だ。
しかし意外なことに、なんと千春が先陣を切った。
「里山千春、25歳です! 第一開発研究部、商品開発課から本日異動して参りました! 人一倍元気な性格と御茶汲みが取柄ですが、心機一転、精一杯務めさせていただきます! 宜しくお願いします!」
オォッと拍手が沸き起こる。なるほど、この部署は男性比率のほうが高いらしい。千春の爽やかな笑顔とショートヘアーの可愛らしさ、更には私にはない大きな胸という武器で、見事に初手から大きく皆を圧倒した。凄いなぁ。
そして一斉に私の方へ視線が集まる。あっ、私の番……えっと……
「……紀国安奈です……」
「ん? 声が小さいぞ。もっと皆に聞こえるように頼む」
注目される恥ずかしさで顔が真っ赤になるも、長い髪のせいで項垂れる私の表情は伝わらない。もはや前髪は私の顔を覆っていた。
あぁ、3年前を思い出す。あの時は、ホラー映画に出てくる「貞子だ」って周りから幽霊扱いされたんだっけ。
「……きの……安奈……」
「ほら、もっと大きな声で! 聞こえないぞ、腹から声を出してみろ!」
くっ、鬼教官のようなことを言わないでよ。
私は気合いを入れ、腹から声を出そうとした。緊張から口の中が乾いていた。
「……ボボボボボボボボボボ」
極度のダミ声で、まるでデスボイスのような音が響いた。そして、正面の先輩方から声が聞こえてきた。
「おい、あれだ、貞子だ」
「貞子だなありゃ……」
く、悔しい!!
勤続4年目に突入した私もある意味新人なのか、よく見かける他部署の上司とすれ違う際にこう言われたのだ。
「キミ、新入社員説明会は3階の大会議室だよ。今すぐ移動したまえ」
よく見かけるのよ? 社員食堂でご一緒したこともあるのよ?
カラ返事をしてこの場をやり過ごし、私は第一営業部の広報宣伝課の前に着いた。ドアノブに手を掛けた瞬間、握る私の手に重なるように、もう一つの手が置かれた。
あっ、この綺麗な爪は――
「やぁやぁ新人くん。また一緒になったねぇ!」
「……千春」
入社から同じ部署だった千春も、今回私と同じ部署に異動となっていた。たった3年務めただけで人事異動というのも、良くあることなのかは私は知らない。ただ、千春と一緒なおかげで私は内心ほっとしていた。
「あなたもここでは新人でしょ……」
「あっはっはー!」
ドアを開けて中に入ると、まるで小説家のように書類が山積みになっている机が沢山並んでいた。ネームプレートが置かれた綺麗な机は私たちのものだろう。整理整頓され、上にはパソコンが一台置かれているだけだった。
「おっ、来たな」
スラっとした身長の、割とがっちりとした身体の中年男性が私たちに声を掛けた。立った席の位置からして、私たちの上司であることが分かった。
良く見ると、新入社員であろう若い男性が二人、上司の近くに立っていた。
その上司はパンパンッと手を叩き、皆の注目を集めさせた。
「よし、みんな一旦作業を止めて集まってくれ!」
部屋の前方、上司の机の周りに部署員が集まる。
「今日からこの部署に入る新入社員が二名、異動してきた二名を紹介する。先に言っておこう、私がキミ達の上長である栗山健生だ。この広報宣伝部の部長だ、宜しくな」
挨拶をする部長の方を向いて一礼し、新入社員の二人から順に挨拶をする。この並びからすると、私の出番は若い彼らの次だ。
しかし意外なことに、なんと千春が先陣を切った。
「里山千春、25歳です! 第一開発研究部、商品開発課から本日異動して参りました! 人一倍元気な性格と御茶汲みが取柄ですが、心機一転、精一杯務めさせていただきます! 宜しくお願いします!」
オォッと拍手が沸き起こる。なるほど、この部署は男性比率のほうが高いらしい。千春の爽やかな笑顔とショートヘアーの可愛らしさ、更には私にはない大きな胸という武器で、見事に初手から大きく皆を圧倒した。凄いなぁ。
そして一斉に私の方へ視線が集まる。あっ、私の番……えっと……
「……紀国安奈です……」
「ん? 声が小さいぞ。もっと皆に聞こえるように頼む」
注目される恥ずかしさで顔が真っ赤になるも、長い髪のせいで項垂れる私の表情は伝わらない。もはや前髪は私の顔を覆っていた。
あぁ、3年前を思い出す。あの時は、ホラー映画に出てくる「貞子だ」って周りから幽霊扱いされたんだっけ。
「……きの……安奈……」
「ほら、もっと大きな声で! 聞こえないぞ、腹から声を出してみろ!」
くっ、鬼教官のようなことを言わないでよ。
私は気合いを入れ、腹から声を出そうとした。緊張から口の中が乾いていた。
「……ボボボボボボボボボボ」
極度のダミ声で、まるでデスボイスのような音が響いた。そして、正面の先輩方から声が聞こえてきた。
「おい、あれだ、貞子だ」
「貞子だなありゃ……」
く、悔しい!!
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