汽車に乗りあてもない旅に出かけた。それは生まれ過ごした国へのーーーーーーーー

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彼女に嘘をついた男

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絵を描くのが本当に好きなんですね
 

彼女と出会った日、夕方

描いた絵をみせた時に言われた言葉。

それに対して私は


頬がゆるみかけたが

同時に息がつまる感覚を覚えた。



好きだから絵を描いてたわけではなかった。




彼女と出会う少し前、

王都の守護兵士の集団を見かけた。


「やっぱかっこ良いなぁ!」

「さすが王都を守る兵士は他とは何か違うね!」

周りはそんな感想を洩らす。

だけど私の呼吸はだんだん荒くなっていく。

王都の守護兵士


見かけると今でも思い出す。10歳の頃の記憶

あの大雨の日のことを

母とともに追われたあの日ことを



ひとりで逃げて! お願い!

逃げる途中、ぬかるんだ土に足をとられ転倒した母が

最後に私にみせた表情は今でも忘れられない。


そしてその母の背後から迫ってくる兵を見て私は


逃げた。逃げてしまった。


それから


どれだけ走ったか分からない、雨の中


ただ一人どこに向かってるのか分からず


雨粒と涙で視界がだんだんぼやけて

やがて意識を失った。






再び目を覚ますとどこかの家のベッドの上にいた。


ベッドの横で私を心配そうに見守る二人


私は町の外れのある農家の夫婦の家にいた。



その夫婦によると

旅人が私を抱えて訪れ、預かって欲しいと夫婦に頼んだそうだ。



「その旅の方から聞いたけど……いつから親がいないの?」

女性は遠慮がちに私に聞いた。

私は驚いた。なぜ旅人が親がいないことを知ってたのか

母があの後どうなったかは




もう分かってる。


その様子を旅人が見かけたのなら話のつじつまはあう。


母の場合は、だ。


その日の朝のことだった。

ドアの外で何か鳴き声が聞こえ、外に出てみると

不思議なことにそこには何もいなく、その代わり手紙が落ちていた。

  
書かれていたのはただ一言



殺された、はやく逃げられよ








誰が誰に殺されたかは書かれていない。急ぎで書いたのだろう。だけど母と私には伝わった。




ついに明日かぁ!  緊張するけど、この時計は今までで1番の出来だからきっと大丈夫だ!



2日前の晩

国王への謁見に意気込む父を見て私は誇らしく思えた。

時計職人の父が国王に献上品を渡す。

その献上品が気に入ってもらえず


父は殺されたというのか?

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