【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華

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二章 その後の俺は

2‐03 嘘と本音

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「あの龍冴が初対面っぽい先輩と仲良さそうに話してるの、結構珍しいじゃん?」

 教室に入ると、一部始終を見守っていたらしい雅玖が話し掛けてきた。

「見てたのか」

 指摘されて少し気恥ずかしい気持ちになったが、すぐに打ち解けたのは事実のため何も言えない。

「……けど本当になんだろうな。ああいう明るい奴、あんまり好きじゃないんだよ、正直」

「わっかる、お前陰キャだしー」

「人のこと言えないんじゃないかな?」

 雅玖がふざけたふうに指をさしてきたため、即座に笑みを浮かべて返す。

「怒ってそうなのに全然怒ってないよな、そういうとこ可愛いぞ~」

「わ、おいやめろ、撫でんな!」

 手を伸ばされ、わしわしと頭を撫でられる。

 けれど本気で避けないのは、この男を心から信頼しているからに他ならない。

「……あ、そういやそれだっけ? 落としたの」

 やがて満足したのか、雅玖の視線が机に向いた。

 まだ袋から取り出していないが、雅玖にはその日のうちに駅前のビルを出た後に何があったのか細かく教えていた。

 本を落とした事はもちろん、椰一とは顔を合わせなかったものの、隣りに居た女子が本命かもしれないこと。

 真偽がどうあれ、もう椰一のことを好きじゃなくなってしまったことも通話で伝えた。

『──そう、かぁ。やっぱりか』

 終始雅玖はなんとも言えない声音だったが、これで龍冴以外に以外にも付き合っている者が居る事は確定した。

 それでも面と向かって『別れてください』と言うと丸め込まれる可能性があるため、確たる証拠が必要だということも互いに話し合った。

 実際、幸と別れ話になった時も半ば逆ギレされて別れたのだという。

『しばらくは恋人いらない、って言ってたな。まぁ俺と出会って今付き合ってるんだけど』

『ナチュラルに惚気るの、やめてもらっていいですかね?』

 しかし仮にも幼馴染みにそういう事情があって、当時はあまりも無神経だったように思う。

 明確に言葉にしていないだけまだいいのかもしれないが、椰一と付き合っている期間中──まだ何も知らなかった自分と幸が顔を合わせていなくて良かったと思ったほどだ。

(幸がまた思い出したら嫌だし)

 どんな経緯であれ、龍冴が椰一と付き合っていた事実は変えられないのだから。

 龍冴はそっと目を伏せ、袋の上から本を撫でる。

「……わざわざ届けてくれなくても良かったのにな」

 ぽそりと呟いた言葉は半分が本音で、半分は嘘だった。

 この一冊のために大和は朝から一年生の棟まで来てくれ、もし落とし主が見つからなければ三年生の棟まで出向いていただろう。

 ありがたかったものの、こちらの不注意で迷惑を掛けたことに変わりはない。

 試験期間中のため部活は無いが、大和からはかすかに制汗剤の臭いがした。

 それは急いで来てくれたのは明白で、しかしいくらなんでも早過ぎやしないかと思った。

 教室にはちらほらと生徒が増えてきているが、まだ始業までだいぶ時間がある。

 次第に騒がしくなるかもしれないな、とぼんやりと思った時、ふと脳裏にある考えが浮かんだ。

「──って、もしかして朝練してたとか?」

 本人に聞いてみないことには分からないが、それなら大和から汗の臭いがしたのは納得がいく。

 ただ、それはそれでよっぽどその競技が好きか、単に身体を動かすことが毎日のルーティンかもしれないのだが。
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