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二章 その後の俺は
2‐08 感謝と約束
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「そう、か」
何やら聞いてはいけないことを聞いた気がして、龍冴は反射的に前を見つめる。
それほど病状が悪いとは思わなくて、けれど今日は体調がいいのか、華月の声は落ち着いていた。
「それだけなの、君らしいね」
くすりと華月が笑う気配がした。
「龍ちゃんには言っておこうかなって。だって、俺に一番に声を掛けてくれたから」
君はなんでもないって言うんだろうけど、と前置くと不意に目の前に影が差す。
そっと顔を上げると、これ以上ないほど嬉しそうに笑っている華月と目が合った。
「……嬉しかったんだ、本当に。他の人は話し掛けても無視するか、そっけないから」
(無視……?)
さもなんでもないことのように告げられ、華月が何を言っているのか分からなかった。
それではイジメと同じで、しかしクラスが違うため華月がどう過ごしているのか分からない。
そもそも龍冴と顔を合わせていない時も登校しているのか、また連絡先すらも知らないのだが。
「なぁ華月」
「うん?」
「スマホ出せ」
言いながら、龍冴はさっとポケットから携帯を取り出す。
「え、どうして?」
「いいから」
何が何やら分からないといったふうだが、華月は不思議そうにしながらもカバンから携帯を出した。
「入院してる時暇だろ、何日で退院するのかは知らないけど──あ、あった」
お互いにメッセージアプリを開き、ひとまず龍冴の方でQRコードを表示させる。
それを華月の携帯で読み込むと、茶トラの猫が気持ちよさそうに眠っている画像が表示された。
「……え、猫飼ってる?」
がばりと顔を上げ、しかし猫と華月とを交互に見る。
見る間に寝息が聞こえてきそうなそれは、華月が撮ったものなのだろうか。
自慢ではないが、龍冴は動物全般が好きだ。
しかし両親が不在にする事もあって、動物カフェなり動物園の触れ合いコーナーで触れ合うくらいで我慢していた。
(もふもふしてて可愛い、どんな目してるんだろ……やっぱ金色かな、茶トラだし)
「そう、だけど。……それより龍ちゃん、もしかして気遣ってくれてる?」
いつになく興奮している龍冴の勢いに圧倒されたのか、華月が半歩ほど後退る。
しかし何事もなかったように淡く笑うと、華月はこうも続けた。
「大丈夫だよ、慣れてるし。それに、病院生活も案外悪くないんだよ?」
知らないのかぁ、とさも楽しげに言うさまは、強がっているようにも聞こえる。
(あ、また『大丈夫』って言った)
それは無意識なのか、華月は龍冴と会うと必ず二度は『大丈夫』と言うのだ。
己の中にある不安を気取らせないようにしているようで、隠し切れていないのがなんともやるせなく思う。
「……心配するのは当たり前だろ、友達なんだから」
そうでなければこうして話したりしない。
まして、連絡先も交換したいと思わないのだ。
しかしさすがに許可なく追加したのはまずかったか、と思いながら華月に携帯を渡す。
すると華月は文字通り目を輝かせ、声高に言った。
「ありがとう、嬉しい! へへっ、夏休みの間も龍ちゃんと話せるね!」
何やら聞いてはいけないことを聞いた気がして、龍冴は反射的に前を見つめる。
それほど病状が悪いとは思わなくて、けれど今日は体調がいいのか、華月の声は落ち着いていた。
「それだけなの、君らしいね」
くすりと華月が笑う気配がした。
「龍ちゃんには言っておこうかなって。だって、俺に一番に声を掛けてくれたから」
君はなんでもないって言うんだろうけど、と前置くと不意に目の前に影が差す。
そっと顔を上げると、これ以上ないほど嬉しそうに笑っている華月と目が合った。
「……嬉しかったんだ、本当に。他の人は話し掛けても無視するか、そっけないから」
(無視……?)
さもなんでもないことのように告げられ、華月が何を言っているのか分からなかった。
それではイジメと同じで、しかしクラスが違うため華月がどう過ごしているのか分からない。
そもそも龍冴と顔を合わせていない時も登校しているのか、また連絡先すらも知らないのだが。
「なぁ華月」
「うん?」
「スマホ出せ」
言いながら、龍冴はさっとポケットから携帯を取り出す。
「え、どうして?」
「いいから」
何が何やら分からないといったふうだが、華月は不思議そうにしながらもカバンから携帯を出した。
「入院してる時暇だろ、何日で退院するのかは知らないけど──あ、あった」
お互いにメッセージアプリを開き、ひとまず龍冴の方でQRコードを表示させる。
それを華月の携帯で読み込むと、茶トラの猫が気持ちよさそうに眠っている画像が表示された。
「……え、猫飼ってる?」
がばりと顔を上げ、しかし猫と華月とを交互に見る。
見る間に寝息が聞こえてきそうなそれは、華月が撮ったものなのだろうか。
自慢ではないが、龍冴は動物全般が好きだ。
しかし両親が不在にする事もあって、動物カフェなり動物園の触れ合いコーナーで触れ合うくらいで我慢していた。
(もふもふしてて可愛い、どんな目してるんだろ……やっぱ金色かな、茶トラだし)
「そう、だけど。……それより龍ちゃん、もしかして気遣ってくれてる?」
いつになく興奮している龍冴の勢いに圧倒されたのか、華月が半歩ほど後退る。
しかし何事もなかったように淡く笑うと、華月はこうも続けた。
「大丈夫だよ、慣れてるし。それに、病院生活も案外悪くないんだよ?」
知らないのかぁ、とさも楽しげに言うさまは、強がっているようにも聞こえる。
(あ、また『大丈夫』って言った)
それは無意識なのか、華月は龍冴と会うと必ず二度は『大丈夫』と言うのだ。
己の中にある不安を気取らせないようにしているようで、隠し切れていないのがなんともやるせなく思う。
「……心配するのは当たり前だろ、友達なんだから」
そうでなければこうして話したりしない。
まして、連絡先も交換したいと思わないのだ。
しかしさすがに許可なく追加したのはまずかったか、と思いながら華月に携帯を渡す。
すると華月は文字通り目を輝かせ、声高に言った。
「ありがとう、嬉しい! へへっ、夏休みの間も龍ちゃんと話せるね!」
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