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プロローグ
3 死んで仕事放棄って、それならもっと早くやってよ
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「死後の世界ってことは、俺は死んだ……ってことか?」
そう呟いたとき、フラッシュバックのように、直前の記憶が思い出された。
あの時、真人は何かに背中を押されたのだ。
たたらを踏んで道路に飛び出したところを、眩しい光が襲ってきて、振り返ったら大型のトラックが目前に迫っていた。
うるさいくらいトラックがこちらに向かって何度もクラクションを鳴らしながらも、スピードは落ちなくて、真人は思わず目を閉じたところまでは覚えている。
しかし、そこから先の記憶がなかった。
女神ルキナは、物分かりのいい真人に満足して頷いた。
「そうだ。君は話が早くて助かる。
ここは死後の世界、正確には三途の川の手前と言ったところか。
ここから、生前の罪の重さによって、天国行きか地獄行きかを決定する。一時的な魂の保管場所だな」
真人は、女神ルキナの話を不思議と嘘だとは思わなかった。
真実だとすれば、真人がなぜこの白い空間にいるのか謎が解けたからだ。
あのとき、あのままトラックに轢かれて、そして死んだ。
真人の身体のどこにも傷が見当たらないのは、世間一般でいう魂の状態だからなのだろう。
普通なら短い二十五年の人生だったな、とか、しみじみした感想が浮かぶ場面なのかもしれないが、咄嗟に真人が思ったのは、
(だったら、あのクソのような量の仕事を上司に押しつけられる前に殺して欲しかった)
だった。
やり遂げてやると息を巻きながらも、仕事の量が多すぎて、この調子では間に合わないと、孤独な職場でずっと格闘するストレスが、短い二十五年~よりも上回ったのだから仕方ない。
「で、俺が行くのは天国か地獄のどっち?」
そういう経緯もあって気軽に訊ねた真人に、女神ルキナは眉根を寄せた。
あまりにも淡々と自分の状況を受け止めているように見える真人が、逆におかしく感じられたのだろう。
「ほんとに君は人間か? 君のような人間は初めてだ。
いや、悪い意味で言っている訳ではなく、むしろ感心しているんだが、理解が早すぎないか?
君は特に若い。お年寄りですら足掻くというのに。
もっとこう、死にたくない! とか、天国へ行けますよね、でへへ、とか何か言うことないのか?」
女神ルキナは、下手なモノマネをするが、そもそも有名人でもない人の真似をされても興味はない。
(今どき『でへへ』なんて笑う奴、いるか?)
よっぽど、この世界には死にたくないと足掻く人間が多いらしい。一度も否定的なことを言わない真人が、新鮮に思えたのだろう。
(生き返っても、もう仕事は間に合わないしな。上司に怒られに戻るほど、俺にはMっ気はないんだ。
生き返るつもりがないんだから慈悲を乞うだけ、時間の無駄ってもんだ)
何が苦痛って、寝たいのに寝れないこの状態が一番苦痛なのに。
面倒くさい、早く解放されたい。そして寝たい。
その思いが、シンプルに口をついて出た。
「なんでもいいんで、天国でも地獄でもさっさと送ってください。俺、寝たいんで。
——あぁ、でも一つだけ気になることがあるんだけど。
俺は誰に殺されたの?」
言ってる途中で、ふとそう思った。
背中を押されたから、自殺でないのは確かだ。
その犯人が、真人と分かった上での殺意だったのか、何かの拍子で押してしまった不幸な事故なのか、自分の死因がちょっと気になる。
自分を女神と名乗るルキナなら、魔法みたいな能力で過去が見れて犯人を知ってるかもと思ったのだ。
死んだという事実は変わらなさそうなので、もし知らないと言われても、そうですかで済ませられるほどのちっぽけな興味だが。
だけど、返ってきたのは真人が考えていた答えよりもっと酷い、史上最悪のものだった。
「あれ、言ってなかったか? 君は私が殺したんだ」
真人を殺した犯人は悪びれず、にこやかに自供してくれました。
そう呟いたとき、フラッシュバックのように、直前の記憶が思い出された。
あの時、真人は何かに背中を押されたのだ。
たたらを踏んで道路に飛び出したところを、眩しい光が襲ってきて、振り返ったら大型のトラックが目前に迫っていた。
うるさいくらいトラックがこちらに向かって何度もクラクションを鳴らしながらも、スピードは落ちなくて、真人は思わず目を閉じたところまでは覚えている。
しかし、そこから先の記憶がなかった。
女神ルキナは、物分かりのいい真人に満足して頷いた。
「そうだ。君は話が早くて助かる。
ここは死後の世界、正確には三途の川の手前と言ったところか。
ここから、生前の罪の重さによって、天国行きか地獄行きかを決定する。一時的な魂の保管場所だな」
真人は、女神ルキナの話を不思議と嘘だとは思わなかった。
真実だとすれば、真人がなぜこの白い空間にいるのか謎が解けたからだ。
あのとき、あのままトラックに轢かれて、そして死んだ。
真人の身体のどこにも傷が見当たらないのは、世間一般でいう魂の状態だからなのだろう。
普通なら短い二十五年の人生だったな、とか、しみじみした感想が浮かぶ場面なのかもしれないが、咄嗟に真人が思ったのは、
(だったら、あのクソのような量の仕事を上司に押しつけられる前に殺して欲しかった)
だった。
やり遂げてやると息を巻きながらも、仕事の量が多すぎて、この調子では間に合わないと、孤独な職場でずっと格闘するストレスが、短い二十五年~よりも上回ったのだから仕方ない。
「で、俺が行くのは天国か地獄のどっち?」
そういう経緯もあって気軽に訊ねた真人に、女神ルキナは眉根を寄せた。
あまりにも淡々と自分の状況を受け止めているように見える真人が、逆におかしく感じられたのだろう。
「ほんとに君は人間か? 君のような人間は初めてだ。
いや、悪い意味で言っている訳ではなく、むしろ感心しているんだが、理解が早すぎないか?
君は特に若い。お年寄りですら足掻くというのに。
もっとこう、死にたくない! とか、天国へ行けますよね、でへへ、とか何か言うことないのか?」
女神ルキナは、下手なモノマネをするが、そもそも有名人でもない人の真似をされても興味はない。
(今どき『でへへ』なんて笑う奴、いるか?)
よっぽど、この世界には死にたくないと足掻く人間が多いらしい。一度も否定的なことを言わない真人が、新鮮に思えたのだろう。
(生き返っても、もう仕事は間に合わないしな。上司に怒られに戻るほど、俺にはMっ気はないんだ。
生き返るつもりがないんだから慈悲を乞うだけ、時間の無駄ってもんだ)
何が苦痛って、寝たいのに寝れないこの状態が一番苦痛なのに。
面倒くさい、早く解放されたい。そして寝たい。
その思いが、シンプルに口をついて出た。
「なんでもいいんで、天国でも地獄でもさっさと送ってください。俺、寝たいんで。
——あぁ、でも一つだけ気になることがあるんだけど。
俺は誰に殺されたの?」
言ってる途中で、ふとそう思った。
背中を押されたから、自殺でないのは確かだ。
その犯人が、真人と分かった上での殺意だったのか、何かの拍子で押してしまった不幸な事故なのか、自分の死因がちょっと気になる。
自分を女神と名乗るルキナなら、魔法みたいな能力で過去が見れて犯人を知ってるかもと思ったのだ。
死んだという事実は変わらなさそうなので、もし知らないと言われても、そうですかで済ませられるほどのちっぽけな興味だが。
だけど、返ってきたのは真人が考えていた答えよりもっと酷い、史上最悪のものだった。
「あれ、言ってなかったか? 君は私が殺したんだ」
真人を殺した犯人は悪びれず、にこやかに自供してくれました。
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