神の手プロジェクト~新世界創造したつもりが奴に蝕まれていく~

くりくりさん

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第3章 ケットシー編

23 人類とのファーストコンタクト?

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「もう少しで着きそうだ」

 地図を片手に、マナトは森を東へ移動していた。

 初めての苦い戦闘の後、マナトは空間収納に、ジェンレーンの地図があることを思い出した。
 早速、空間収納を呼び出し、剣のときと同じ要領で、地図が欲しいと願う。
 するとこの地図が現れた、という寸法だ。

 しかもこの地図、ただの紙の地図ではなかった。
 魔法でもかかっているのか、マナトの現在地を光の点滅で教えてくれるのだ。
 魔法の世界にもGPSもどきがあるだなぁ、と便利機能に感謝だ。
 でなければ、いくら方向音痴ではないつもりだとはいえ、現在地も分からないマナトに、森を東に、と具体的に理解することは不可能だっただろう。

「でもジェンレーンって、ドーナツ型してんだな」

 大陸と言えば地球を思い浮かべるマナトは、地図を見るたび、あの見慣れた形ではないことに違和感を覚える。

 地球に似ているといえば似ている。

 地図で見るジェンレーンは、中央に謎の空間がぽっかりできた一続きの大陸になっていた。
 外輪には、諸島は存在しているが、それ以上の国を成せそうな大きな島はなさそうだ。

 今、マナトが向かっているのは、大陸の東の端に位置するミグという村だった。

「まだか……。着いたら情報集めて、早く寝たい」

 ステータスでは、ストレスは軽減されない。
 神だが、元二十五歳のサラリーマンには身に余る出来事が起こり過ぎて、早くも疲労困憊だった。

 地図上では、マナトの位置を示す光の点滅が、すでにミグの村の上なのに、と思っていると視界が開けて村が現れた。

 門で囲まれた向こう側に、屋根があるのが見える。
 テレビでよく見る西洋の田舎の村のようだ。
 材料は木材や煉瓦のようで、機械のような科学的な物は一切見当たらない。
 文化的には中世の時代を思わせる。

「本当に、知的生命体がいるんだな……」

 村を見たマナトの感想がそれだった。
 地図を見て村があるのは分かっていたが、実際見てみるまで現実味がなかったのだ。
 心のどこかで嘘だったらいいのにという思いが、そうさせたのかもしれない。

 マナトは粗末な造りの門の前に立つ。
 門は閉まっていて、開けてもらおうにも門番はいなかった。
 叫べば誰か出てきてくれるだろうか。
 何気なく門を押すと、ギギと年代物の木造の音を立てて開いた。

 (不用心だなぁ……)

 これは入っていいということなのか。
 中途半端に門を押した体勢で、マナトは悩む。

 (まぁ、いいや。取りあえず入って、人を見かけたら勝手に入ったことを謝ろう)

「……お邪魔します」

 泥棒する訳でもないのに、つい小声になってしまう。
 するりと身体を滑り込ませた瞬間——

 ヒュンと、マナトの左頰スレスレを何か小さい物が通り抜けて行った。
 背後で音がして驚いて振り返ると、門に小刀が突き刺さっていた。

 血の気が引く。

 (えっ、俺狙われた? な、なんで? 勝手に入ったからか?)

 いきなり小刀を投げつけるなんて、警告にしても物騒すぎる。一歩間違えば顔に穴が開いていてもおかしくない。
 現代日本でこれをやったら、家宅侵入より過剰防衛でそっちの方が捕まりそうだ。
 
 足を竦めたマナトに、声がかけられた。

「誰だ、お前は! 勝手に入ってきて怪しい奴め!
 村に危害を加えるなら、僕が許さないぞ!」

「ジュリアン、落ち着いて」

 今にも噛み付いてきそうな少年と、それを宥める少年。
 目の前に現れた二人組に、マナトは息を飲んだ。

 (本当にいるんだな。俺の世界に人間が……。
 に、してもなんで言葉が日本語なんだ? 話が通じないと洒落にならねぇから嬉しいけど。
 ——ああ、そうだった)

 マナトは思い出した。
 言葉が通じるのは、アバターを作るときに組み込んだ言語翻訳機能のおかげだ。
 ジェンレーンで使われている、ほぼ全ての言語を習得していて、マルチリンガルもびっくりなグローバルな人材になっていた。世界を股に活躍する気はさらさらないが。
 
 ルキナに感謝だ。
 マナト一人でアバターを作っていたら、言語が違うなんて当たり前のことにも思い至らずに、今頃言葉の壁にぶち当たっていたに違いない。

 マナトには日本語にしか聞こえないが、彼らはジェンレーンの言葉を喋っているのだろう。
 言語翻訳の機能は秀逸で、喋っている言葉と翻訳されて聞こえる日本語とでは、口の動きが絶対に違うはずなのに、全くといっていいほど違和感がない。
 なので、ストレスフリーで会話できる。

 警戒されているにも関わらず、マナトは知的好奇心から、まじまじと二人組を観察した。
 初めて出会うマナトの世界の住人だ。興味がないはずがなかった。

 空気を吸って吐いて呼吸している。頬の赤みから体温を感じる。
 きっと心臓があって血を循環させているのだろう。その血は赤色なのだろうか。骨格、筋肉のつき方なんかも、元人間のマナトとなんら変わらない。
 それが動いて喋っている。

 (これがパソコンから創られたなんて信じられない。
 でもそう考えれば、俺もルキナのパソコンで創られたはずだから、そう思えて当然か……。
 ん、あれは?)

 マナトと同じだと思っていたのに、二つ違う点を発見して、目が釘付けになった。
 それは——

 猫耳と尻尾だった。
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