23 / 48
第3章 ケットシー編
23 人類とのファーストコンタクト?
しおりを挟む
「もう少しで着きそうだ」
地図を片手に、マナトは森を東へ移動していた。
初めての苦い戦闘の後、マナトは空間収納に、ジェンレーンの地図があることを思い出した。
早速、空間収納を呼び出し、剣のときと同じ要領で、地図が欲しいと願う。
するとこの地図が現れた、という寸法だ。
しかもこの地図、ただの紙の地図ではなかった。
魔法でもかかっているのか、マナトの現在地を光の点滅で教えてくれるのだ。
魔法の世界にもGPSもどきがあるだなぁ、と便利機能に感謝だ。
でなければ、いくら方向音痴ではないつもりだとはいえ、現在地も分からないマナトに、森を東に、と具体的に理解することは不可能だっただろう。
「でもジェンレーンって、ドーナツ型してんだな」
大陸と言えば地球を思い浮かべるマナトは、地図を見るたび、あの見慣れた形ではないことに違和感を覚える。
地球に似ているといえば似ている。
地図で見るジェンレーンは、中央に謎の空間がぽっかりできた一続きの大陸になっていた。
外輪には、諸島は存在しているが、それ以上の国を成せそうな大きな島はなさそうだ。
今、マナトが向かっているのは、大陸の東の端に位置するミグという村だった。
「まだか……。着いたら情報集めて、早く寝たい」
ステータスでは、ストレスは軽減されない。
神だが、元二十五歳のサラリーマンには身に余る出来事が起こり過ぎて、早くも疲労困憊だった。
地図上では、マナトの位置を示す光の点滅が、すでにミグの村の上なのに、と思っていると視界が開けて村が現れた。
門で囲まれた向こう側に、屋根があるのが見える。
テレビでよく見る西洋の田舎の村のようだ。
材料は木材や煉瓦のようで、機械のような科学的な物は一切見当たらない。
文化的には中世の時代を思わせる。
「本当に、知的生命体がいるんだな……」
村を見たマナトの感想がそれだった。
地図を見て村があるのは分かっていたが、実際見てみるまで現実味がなかったのだ。
心のどこかで嘘だったらいいのにという思いが、そうさせたのかもしれない。
マナトは粗末な造りの門の前に立つ。
門は閉まっていて、開けてもらおうにも門番はいなかった。
叫べば誰か出てきてくれるだろうか。
何気なく門を押すと、ギギと年代物の木造の音を立てて開いた。
(不用心だなぁ……)
これは入っていいということなのか。
中途半端に門を押した体勢で、マナトは悩む。
(まぁ、いいや。取りあえず入って、人を見かけたら勝手に入ったことを謝ろう)
「……お邪魔します」
泥棒する訳でもないのに、つい小声になってしまう。
するりと身体を滑り込ませた瞬間——
ヒュンと、マナトの左頰スレスレを何か小さい物が通り抜けて行った。
背後で音がして驚いて振り返ると、門に小刀が突き刺さっていた。
血の気が引く。
(えっ、俺狙われた? な、なんで? 勝手に入ったからか?)
いきなり小刀を投げつけるなんて、警告にしても物騒すぎる。一歩間違えば顔に穴が開いていてもおかしくない。
現代日本でこれをやったら、家宅侵入より過剰防衛でそっちの方が捕まりそうだ。
足を竦めたマナトに、声がかけられた。
「誰だ、お前は! 勝手に入ってきて怪しい奴め!
村に危害を加えるなら、僕が許さないぞ!」
「ジュリアン、落ち着いて」
今にも噛み付いてきそうな少年と、それを宥める少年。
目の前に現れた二人組に、マナトは息を飲んだ。
(本当にいるんだな。俺の世界に人間が……。
に、してもなんで言葉が日本語なんだ? 話が通じないと洒落にならねぇから嬉しいけど。
——ああ、そうだった)
マナトは思い出した。
言葉が通じるのは、アバターを作るときに組み込んだ言語翻訳機能のおかげだ。
ジェンレーンで使われている、ほぼ全ての言語を習得していて、マルチリンガルもびっくりなグローバルな人材になっていた。世界を股に活躍する気はさらさらないが。
ルキナに感謝だ。
マナト一人でアバターを作っていたら、言語が違うなんて当たり前のことにも思い至らずに、今頃言葉の壁にぶち当たっていたに違いない。
マナトには日本語にしか聞こえないが、彼らはジェンレーンの言葉を喋っているのだろう。
言語翻訳の機能は秀逸で、喋っている言葉と翻訳されて聞こえる日本語とでは、口の動きが絶対に違うはずなのに、全くといっていいほど違和感がない。
なので、ストレスフリーで会話できる。
警戒されているにも関わらず、マナトは知的好奇心から、まじまじと二人組を観察した。
初めて出会うマナトの世界の住人だ。興味がないはずがなかった。
空気を吸って吐いて呼吸している。頬の赤みから体温を感じる。
きっと心臓があって血を循環させているのだろう。その血は赤色なのだろうか。骨格、筋肉のつき方なんかも、元人間のマナトとなんら変わらない。
それが動いて喋っている。
(これがパソコンから創られたなんて信じられない。
でもそう考えれば、俺もルキナのパソコンで創られたはずだから、そう思えて当然か……。
ん、あれは?)
マナトと同じだと思っていたのに、二つ違う点を発見して、目が釘付けになった。
それは——
猫耳と尻尾だった。
地図を片手に、マナトは森を東へ移動していた。
初めての苦い戦闘の後、マナトは空間収納に、ジェンレーンの地図があることを思い出した。
早速、空間収納を呼び出し、剣のときと同じ要領で、地図が欲しいと願う。
するとこの地図が現れた、という寸法だ。
しかもこの地図、ただの紙の地図ではなかった。
魔法でもかかっているのか、マナトの現在地を光の点滅で教えてくれるのだ。
魔法の世界にもGPSもどきがあるだなぁ、と便利機能に感謝だ。
でなければ、いくら方向音痴ではないつもりだとはいえ、現在地も分からないマナトに、森を東に、と具体的に理解することは不可能だっただろう。
「でもジェンレーンって、ドーナツ型してんだな」
大陸と言えば地球を思い浮かべるマナトは、地図を見るたび、あの見慣れた形ではないことに違和感を覚える。
地球に似ているといえば似ている。
地図で見るジェンレーンは、中央に謎の空間がぽっかりできた一続きの大陸になっていた。
外輪には、諸島は存在しているが、それ以上の国を成せそうな大きな島はなさそうだ。
今、マナトが向かっているのは、大陸の東の端に位置するミグという村だった。
「まだか……。着いたら情報集めて、早く寝たい」
ステータスでは、ストレスは軽減されない。
神だが、元二十五歳のサラリーマンには身に余る出来事が起こり過ぎて、早くも疲労困憊だった。
地図上では、マナトの位置を示す光の点滅が、すでにミグの村の上なのに、と思っていると視界が開けて村が現れた。
門で囲まれた向こう側に、屋根があるのが見える。
テレビでよく見る西洋の田舎の村のようだ。
材料は木材や煉瓦のようで、機械のような科学的な物は一切見当たらない。
文化的には中世の時代を思わせる。
「本当に、知的生命体がいるんだな……」
村を見たマナトの感想がそれだった。
地図を見て村があるのは分かっていたが、実際見てみるまで現実味がなかったのだ。
心のどこかで嘘だったらいいのにという思いが、そうさせたのかもしれない。
マナトは粗末な造りの門の前に立つ。
門は閉まっていて、開けてもらおうにも門番はいなかった。
叫べば誰か出てきてくれるだろうか。
何気なく門を押すと、ギギと年代物の木造の音を立てて開いた。
(不用心だなぁ……)
これは入っていいということなのか。
中途半端に門を押した体勢で、マナトは悩む。
(まぁ、いいや。取りあえず入って、人を見かけたら勝手に入ったことを謝ろう)
「……お邪魔します」
泥棒する訳でもないのに、つい小声になってしまう。
するりと身体を滑り込ませた瞬間——
ヒュンと、マナトの左頰スレスレを何か小さい物が通り抜けて行った。
背後で音がして驚いて振り返ると、門に小刀が突き刺さっていた。
血の気が引く。
(えっ、俺狙われた? な、なんで? 勝手に入ったからか?)
いきなり小刀を投げつけるなんて、警告にしても物騒すぎる。一歩間違えば顔に穴が開いていてもおかしくない。
現代日本でこれをやったら、家宅侵入より過剰防衛でそっちの方が捕まりそうだ。
足を竦めたマナトに、声がかけられた。
「誰だ、お前は! 勝手に入ってきて怪しい奴め!
村に危害を加えるなら、僕が許さないぞ!」
「ジュリアン、落ち着いて」
今にも噛み付いてきそうな少年と、それを宥める少年。
目の前に現れた二人組に、マナトは息を飲んだ。
(本当にいるんだな。俺の世界に人間が……。
に、してもなんで言葉が日本語なんだ? 話が通じないと洒落にならねぇから嬉しいけど。
——ああ、そうだった)
マナトは思い出した。
言葉が通じるのは、アバターを作るときに組み込んだ言語翻訳機能のおかげだ。
ジェンレーンで使われている、ほぼ全ての言語を習得していて、マルチリンガルもびっくりなグローバルな人材になっていた。世界を股に活躍する気はさらさらないが。
ルキナに感謝だ。
マナト一人でアバターを作っていたら、言語が違うなんて当たり前のことにも思い至らずに、今頃言葉の壁にぶち当たっていたに違いない。
マナトには日本語にしか聞こえないが、彼らはジェンレーンの言葉を喋っているのだろう。
言語翻訳の機能は秀逸で、喋っている言葉と翻訳されて聞こえる日本語とでは、口の動きが絶対に違うはずなのに、全くといっていいほど違和感がない。
なので、ストレスフリーで会話できる。
警戒されているにも関わらず、マナトは知的好奇心から、まじまじと二人組を観察した。
初めて出会うマナトの世界の住人だ。興味がないはずがなかった。
空気を吸って吐いて呼吸している。頬の赤みから体温を感じる。
きっと心臓があって血を循環させているのだろう。その血は赤色なのだろうか。骨格、筋肉のつき方なんかも、元人間のマナトとなんら変わらない。
それが動いて喋っている。
(これがパソコンから創られたなんて信じられない。
でもそう考えれば、俺もルキナのパソコンで創られたはずだから、そう思えて当然か……。
ん、あれは?)
マナトと同じだと思っていたのに、二つ違う点を発見して、目が釘付けになった。
それは——
猫耳と尻尾だった。
0
あなたにおすすめの小説
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる